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第百六十一話 道化
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「お嬢様、お誕生日おめでとうございます。こうしてこの先何年も、何十年も変わらずお誕生日のお祝いの言葉を言わせて下さいね」
そう言うと、リカオンはふとアルメリアの胸元を見て満面の笑みを浮かべた。
「そのブローチ着けて下さったんですね!」
「せっかくプレゼントしてくれたのですもの、大切なときに着けようと思ってましたの。それにこのブローチ、デザインがこのドレスにぴったりなんですのよ」
本当にまるでドレスに合わせてデザインしたかのように、ブローチの色もデザインもドレスに合っていた。
「こんなに大切な場面で着けてくださるなんて、嬉しいかぎりです。お嬢様……貴女のおそばにいられて本当によかった。さぁ、では、行きましょう」
アルメリアは、リカオンにエスコートされ会場になっているアザレアの間の控え室へ向かった。
控え室にはムスカリがアームチェアに座り、アルメリアがくるのを待っていてくれた。
ムスカリはアルメリアに気づくと、アルメリアが挨拶をする間もあたえずに、リカオンから奪い取るように手を取り腰を引き寄せた。
「アルメリア、今日も美しいね。あのデザイナー、変わった人物だが腕だけは確かなようだ」
そう言ってアルメリアを見つめた。アルメリアはリカオンが気になり振り向いてお礼を言った。
「リカオン、ありがとう。またあとで」
リカオンは苦笑しながら首を振って答えた。それを確認するとアルメリアは、ムスカリを見上げて言った。
「殿下、こんなに素敵なドレスをありがとうございます」
「うん。私もこんなに楽しい買い物は初めてだ。これは癖になりそうだな。ところで、緊張しているか?」
アルメリアは首を振る。
「大丈夫ですわ。お気遣いありがとうございます」
「それはよかった。君は黙って私の横に立っているだけでかまわない。あの令嬢がなんと言っても、相手にしてはいけないよ? いいね?」
「はい、承知しました」
すると、ムスカリはアルメリアの手を取り手の甲にキスをすると言った。
「今日のこの日を私がどんなに夢見てきたか、君にはわからないだろうな。おそらく、君より私の方が緊張しているかもしれない。それなのにあの令嬢の対応をしなければならないとは、実に不愉快なものだ」
「殿下……」
「すまない、君が気に病む必要はない。さて貴族たちが揃ったようだ、私たちも会場に入ろう」
そうしてムスカリのエスコートで、会場へ入った。
アルメリアとムスカリの姿を見つけると、会場にいる貴族たちは一斉にアルメリアたちを見つめた。
十分注目が集まったところで、ムスカリが挨拶をした。
「今日はここにいるアルメリア・ディ・クンシラン公爵令嬢の誕生日のお祝いと大切な発表をかねて集まってもらった。彼女はクンシラン領をその計り知れない知識を生かして発展させ、更にはイキシア騎士団にも関与しこの国に対しても実に素晴らしい貢献をみせてくれている。そんな彼女を私は心からお祝いしたい」
そう言うと、ムスカリはアルメリアに向きなおった。
「アルメリア、誕生日おめでとう」
次の瞬間、その一言を聞いたその場にいる貴族たちが拍手しながら一斉にアルメリアに対するお祝いの言葉を口々にした。
「ありがとうございます。私もこの良き日を無事に迎えられたことを、大変嬉しく思っております。特にムスカリ王太子殿下におかれましては、日頃よりお気遣いいただき大変感謝しております……」
そこへ突然貴族たちの背後から声がした。
「ねぇ、もう挨拶はよろしいのではなくて?! 今日はそんなことより重大な発表がありますでしょう?」
貴族たちは全員振り返り、その声の主を見つめる。その視線の先にはダチュラがいた。
ダチュラは貴族たちの人混みをかき分け真っ直ぐムスカリの方へ歩いてけると、ムスカリの横に並び腕に手を絡める。
「殿下、私本当はここにくるのは嫌だったのですけれど、今日は殿下のためにきましたのよ? わかりますでしょう? クンシラン公爵令嬢はとても怖い方ですわ、本当はこんなところへ来たらなにを言われるかわかったものではありませんもの、遠慮したかったんですのよ? でも私は、殿下の婚約者とも常々仲良くしたいと思ってますもの、それでこうして駆けつけたんですわ」
ムスカリは口角を上げダチュラに言った。
「そうか、ありがとう。だが、君が無理に付き合う必要はないよ」
ダチュラは瞳を潤ませながら、上目遣いで答える。
「でも、そういうわけにはいきませんでしょう?」
「そうだろうな。今日はそんな君のことを紹介して、みんなにわからせるために呼んだんだ。これは必要なことなのだよ」
すると、そばにいたパウエル侯爵が言った。
「殿下、恐れながら申し上げます。本日はクンシラン公爵令嬢の誕生会でございます。そのように他の令嬢を……」
すると、ムスカリは鋭い視線をパウエル侯爵に向けて言い放った。
「黙れ、私には私の考えがある。このままこの令嬢の言うことを聞くのだ!」
そう言うと、ダチュラに向きなおる。
「私もクンシラン公爵令嬢の誕生会で君を紹介するのは大変不本意ではあるが、しっかりとした紹介は後日改めてやることにして、今は君のことを知らしめるために、軽く紹介しておこう」
そうして、前方を向いて改めて言った。
「彼女はダチュラ・ファン・クインシー男爵令嬢、訳あって幼少の頃から市井で育った。そういったわけで、少々社交界に馴染めないこともあるかも知れないが、見守ってやってほしい」
紹介されたダチュラは、堂々と答える。
「ご紹介に預かりました、私ダチュラ・ファン・クインシーと申します。今後は社交界にも顔を出すことがあると思いますわ、みなさんよろしくお願いいたしますわね」
そう言ってカーテシーをしたところで、ムスカリがダチュラに囁く。
「今日は私の立場もある、君を紹介するだけにとどめよう。後日君のための君を主役にした盛大な舞踏会を開いてあげよう。それまでは大人しくできるね?」
そう言うと、リカオンはふとアルメリアの胸元を見て満面の笑みを浮かべた。
「そのブローチ着けて下さったんですね!」
「せっかくプレゼントしてくれたのですもの、大切なときに着けようと思ってましたの。それにこのブローチ、デザインがこのドレスにぴったりなんですのよ」
本当にまるでドレスに合わせてデザインしたかのように、ブローチの色もデザインもドレスに合っていた。
「こんなに大切な場面で着けてくださるなんて、嬉しいかぎりです。お嬢様……貴女のおそばにいられて本当によかった。さぁ、では、行きましょう」
アルメリアは、リカオンにエスコートされ会場になっているアザレアの間の控え室へ向かった。
控え室にはムスカリがアームチェアに座り、アルメリアがくるのを待っていてくれた。
ムスカリはアルメリアに気づくと、アルメリアが挨拶をする間もあたえずに、リカオンから奪い取るように手を取り腰を引き寄せた。
「アルメリア、今日も美しいね。あのデザイナー、変わった人物だが腕だけは確かなようだ」
そう言ってアルメリアを見つめた。アルメリアはリカオンが気になり振り向いてお礼を言った。
「リカオン、ありがとう。またあとで」
リカオンは苦笑しながら首を振って答えた。それを確認するとアルメリアは、ムスカリを見上げて言った。
「殿下、こんなに素敵なドレスをありがとうございます」
「うん。私もこんなに楽しい買い物は初めてだ。これは癖になりそうだな。ところで、緊張しているか?」
アルメリアは首を振る。
「大丈夫ですわ。お気遣いありがとうございます」
「それはよかった。君は黙って私の横に立っているだけでかまわない。あの令嬢がなんと言っても、相手にしてはいけないよ? いいね?」
「はい、承知しました」
すると、ムスカリはアルメリアの手を取り手の甲にキスをすると言った。
「今日のこの日を私がどんなに夢見てきたか、君にはわからないだろうな。おそらく、君より私の方が緊張しているかもしれない。それなのにあの令嬢の対応をしなければならないとは、実に不愉快なものだ」
「殿下……」
「すまない、君が気に病む必要はない。さて貴族たちが揃ったようだ、私たちも会場に入ろう」
そうしてムスカリのエスコートで、会場へ入った。
アルメリアとムスカリの姿を見つけると、会場にいる貴族たちは一斉にアルメリアたちを見つめた。
十分注目が集まったところで、ムスカリが挨拶をした。
「今日はここにいるアルメリア・ディ・クンシラン公爵令嬢の誕生日のお祝いと大切な発表をかねて集まってもらった。彼女はクンシラン領をその計り知れない知識を生かして発展させ、更にはイキシア騎士団にも関与しこの国に対しても実に素晴らしい貢献をみせてくれている。そんな彼女を私は心からお祝いしたい」
そう言うと、ムスカリはアルメリアに向きなおった。
「アルメリア、誕生日おめでとう」
次の瞬間、その一言を聞いたその場にいる貴族たちが拍手しながら一斉にアルメリアに対するお祝いの言葉を口々にした。
「ありがとうございます。私もこの良き日を無事に迎えられたことを、大変嬉しく思っております。特にムスカリ王太子殿下におかれましては、日頃よりお気遣いいただき大変感謝しております……」
そこへ突然貴族たちの背後から声がした。
「ねぇ、もう挨拶はよろしいのではなくて?! 今日はそんなことより重大な発表がありますでしょう?」
貴族たちは全員振り返り、その声の主を見つめる。その視線の先にはダチュラがいた。
ダチュラは貴族たちの人混みをかき分け真っ直ぐムスカリの方へ歩いてけると、ムスカリの横に並び腕に手を絡める。
「殿下、私本当はここにくるのは嫌だったのですけれど、今日は殿下のためにきましたのよ? わかりますでしょう? クンシラン公爵令嬢はとても怖い方ですわ、本当はこんなところへ来たらなにを言われるかわかったものではありませんもの、遠慮したかったんですのよ? でも私は、殿下の婚約者とも常々仲良くしたいと思ってますもの、それでこうして駆けつけたんですわ」
ムスカリは口角を上げダチュラに言った。
「そうか、ありがとう。だが、君が無理に付き合う必要はないよ」
ダチュラは瞳を潤ませながら、上目遣いで答える。
「でも、そういうわけにはいきませんでしょう?」
「そうだろうな。今日はそんな君のことを紹介して、みんなにわからせるために呼んだんだ。これは必要なことなのだよ」
すると、そばにいたパウエル侯爵が言った。
「殿下、恐れながら申し上げます。本日はクンシラン公爵令嬢の誕生会でございます。そのように他の令嬢を……」
すると、ムスカリは鋭い視線をパウエル侯爵に向けて言い放った。
「黙れ、私には私の考えがある。このままこの令嬢の言うことを聞くのだ!」
そう言うと、ダチュラに向きなおる。
「私もクンシラン公爵令嬢の誕生会で君を紹介するのは大変不本意ではあるが、しっかりとした紹介は後日改めてやることにして、今は君のことを知らしめるために、軽く紹介しておこう」
そうして、前方を向いて改めて言った。
「彼女はダチュラ・ファン・クインシー男爵令嬢、訳あって幼少の頃から市井で育った。そういったわけで、少々社交界に馴染めないこともあるかも知れないが、見守ってやってほしい」
紹介されたダチュラは、堂々と答える。
「ご紹介に預かりました、私ダチュラ・ファン・クインシーと申します。今後は社交界にも顔を出すことがあると思いますわ、みなさんよろしくお願いいたしますわね」
そう言ってカーテシーをしたところで、ムスカリがダチュラに囁く。
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