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そしてジェイドとして生まれ、エクトルに育てられたことは自分にとって素晴らしいものだったと話した。
ジェイドとしての人生は終わってしまったが、その短い生涯幸せに過ごせたのはエクトルがたくさんの愛情を注いでくれたからだ。
そこまで報告すると、最後に親不孝をしてしまったことを謝る。
「父さんを裏切り者の父親にしてしまってごめんなさい。でも私はこの世界の異変を止めるために、私に出きることをしようと思ってる」
そこまで報告したところで、背後から葉擦れの音がしたので立ち上がり慌てて振り返りランプで照らしたが、そこにはなにもいなかった。
翡翠はもう一度エクトルの方に向き直る。
「父さん、また来るね」
そう言って宿に戻った。
こうして翡翠のイーコウ村への訪問は終わり、翌日翡翠たちを乗せた馬車はホークドライ区域に向けて走り始めた。
イーコウ村ではカーレルの過去の話を聞いたり、ジェイドの家でのこともあったりと、翡翠はやはり少しカーレルを以前より意識してしまったていたが、カーレルはいつもと変わった様子はなかった。
いい加減にしなさい、なにを期待していたの翡翠。
馬車の中でそう自分に言い聞かせると、窓の外に視線を移した。
ホークドライ区域へは少し距離があり、途中イリ村という小さな村で休憩をとることになった。
カーレルは馬車を降りると、部下に呼ばれ翡翠に向かってその場で待つように言い残すとその場を去っていった。
イリ村の近くには湖がある。翡翠は気分転換にそこへ行ってみようと思い、そばにいた護衛のカークに声をかけた。
「湖に行ってみたいのですが、連れていってもらえませんか?」
するとカークは少し戸惑った様子で言った。
「ですが、王太子殿下からこの場を離れるなと申し付かっております」
「少しだけだし、上官に伝えておけば王太子殿下も怒ったりしないと思うんです」
「はぁ、ですが上官も許可を出すかどうか……」
「じゃあ私からお願いしてみますね」
翡翠はその護衛の上官のところまで行くと、頭を下げてお願いした。するとあまり遠くに行かないと約束できるならと、許可が出た。
「ほら、大丈夫だったでしょう?」
そう言って、翡翠はフードで顔を隠したままカ湖に向かって歩き始めると、カークがそれを引き止めた。
「賢人様、周囲が見えないとこの道は危険です。私にエスコートさせてください!」
「はい、ではお願いします」
そう言うと、翡翠はカークの腕につかまった。
ずっと馬車の中でカーレルと一緒にいて絶えず緊張していたこともあり、正直カーレルの監視なしに外の空気を吸えるのはありがたかった。
湖までは、森の中を五十メートルほど進んだ距離にあった。
「風も心地いいし、少しだけ周囲を歩きませんか?」
「あまり遠くへ行くことはできませんから、すぐに折り返すのなら」
翡翠がうなずくと、二人は湖の畔を歩き始めた。
水面がキラキラと輝いてとても美しく、湖の向こうに見える山脈が水面から少し浮いて見えた。
「カーク、あれって蜃気楼ですか?」
「今日は少し暖かいですから、蜃気楼が見えていてもおかしくはありませんね」
そう言うとカークは立ち止まった。
「賢人様、もうお戻りにならないと」
「そうですね、あまり遅くなると心配をかけるかもしれませんしね」
そのとき突然、背後から誰かに腕をつかまれる。振り返るとそこにはカーレルが立っていた。
カーレルは翡翠から視線を逸らさずにカークに命令する。
「カーク、お前はもう下がれ」
「は、はい! 私は失礼いたします」
カークはそう言って慌てて敬礼すると、その場を立ち去った。
翡翠は勝手に行動したことでカーレルが怒っているのだと思った。
「勝手に行動してすみません。カークには無理やり付き合わせました。それに、あの、今ちょうど戻ろうと思っていたところで……」
そう言った瞬間、カーレルは翡翠を引き寄せ抱きしめた。
「また一人で行ってしまったかと……」
そう呟くと、さらに力をこめて翡翠を抱きしめた。
わかってはいたが、カーレルが今だに疑っていることにショックを受けた翡翠は、それを悟られないよう明るく言った。
「私はどこにも行きません」
「わかった」
カーレルは気を取り直したように、翡翠を離すと微笑む。
「すまない、君の姿がなくて少し動揺したようだ。もう少し散歩を続けるか?」
翡翠は首を横に振った。こんな気持ちでは散歩どころではない。
「もう、戻りましょう。あまり遅くなると、みんなも心配するはずですから」
「そうか、では戻ろう」
カーレルは少し悲しそうに微笑むと翡翠に手を差し出し、翡翠は無言でその手を取り二人で馬車の方へ戻った。
馬車に乗るとカーレルはすぐに翡翠のフードを外し、翡翠をじっと見つめた。
「翡翠、なにかあったのか?」
「えっ? 大丈夫ですよ? 殿下こそどうされたのですか?」
翡翠はそう言って微笑むと、カーレルを見つめ返す。
そうしてしばらくお互いに見つめ合っていたが、カーレルが根負けしたように視線を逸らして言った。
「わかった、ならいい」
「殿下はとても心配性なのですね」
翡翠はそう言って窓の外に視線を移した。
それからも途中で休憩を挟みながらホークドライ区域へ向かったが、翡翠は絶対にカーレルのそばから離れないようにした。
これ以上無駄な心配をカーレルにかけたくなかったからだ。
カーレルは時折翡翠をじっと見つめ、なにか言いたそうにしていたが、翡翠がその視線に気づいて見つめ返すとなにも言わずに微笑んで目を逸らすのだった。
それからホークドライ区域に着くまでの数日、二人はそうしてなんとなくぎこちないまま過ごした。
ホークドライ区域に入ると、まずは宿で休憩をとることになった。
「長旅で疲れたろう。ここには数日泊まる予定だ。まだ先は長い、この間に少し体を休めよう」
「そうなのですか? わかりました、ゆっくりさせてもらいます」
そう笑顔で返したものの、ホークドライにいい思い出がない翡翠は少しがっかりした。
とはいえ数日も狭い馬車に押し込められ、野営をすることもあったのでしばらくまともなベッドで寝られることはありがたかった。
ジェイドとしての人生は終わってしまったが、その短い生涯幸せに過ごせたのはエクトルがたくさんの愛情を注いでくれたからだ。
そこまで報告すると、最後に親不孝をしてしまったことを謝る。
「父さんを裏切り者の父親にしてしまってごめんなさい。でも私はこの世界の異変を止めるために、私に出きることをしようと思ってる」
そこまで報告したところで、背後から葉擦れの音がしたので立ち上がり慌てて振り返りランプで照らしたが、そこにはなにもいなかった。
翡翠はもう一度エクトルの方に向き直る。
「父さん、また来るね」
そう言って宿に戻った。
こうして翡翠のイーコウ村への訪問は終わり、翌日翡翠たちを乗せた馬車はホークドライ区域に向けて走り始めた。
イーコウ村ではカーレルの過去の話を聞いたり、ジェイドの家でのこともあったりと、翡翠はやはり少しカーレルを以前より意識してしまったていたが、カーレルはいつもと変わった様子はなかった。
いい加減にしなさい、なにを期待していたの翡翠。
馬車の中でそう自分に言い聞かせると、窓の外に視線を移した。
ホークドライ区域へは少し距離があり、途中イリ村という小さな村で休憩をとることになった。
カーレルは馬車を降りると、部下に呼ばれ翡翠に向かってその場で待つように言い残すとその場を去っていった。
イリ村の近くには湖がある。翡翠は気分転換にそこへ行ってみようと思い、そばにいた護衛のカークに声をかけた。
「湖に行ってみたいのですが、連れていってもらえませんか?」
するとカークは少し戸惑った様子で言った。
「ですが、王太子殿下からこの場を離れるなと申し付かっております」
「少しだけだし、上官に伝えておけば王太子殿下も怒ったりしないと思うんです」
「はぁ、ですが上官も許可を出すかどうか……」
「じゃあ私からお願いしてみますね」
翡翠はその護衛の上官のところまで行くと、頭を下げてお願いした。するとあまり遠くに行かないと約束できるならと、許可が出た。
「ほら、大丈夫だったでしょう?」
そう言って、翡翠はフードで顔を隠したままカ湖に向かって歩き始めると、カークがそれを引き止めた。
「賢人様、周囲が見えないとこの道は危険です。私にエスコートさせてください!」
「はい、ではお願いします」
そう言うと、翡翠はカークの腕につかまった。
ずっと馬車の中でカーレルと一緒にいて絶えず緊張していたこともあり、正直カーレルの監視なしに外の空気を吸えるのはありがたかった。
湖までは、森の中を五十メートルほど進んだ距離にあった。
「風も心地いいし、少しだけ周囲を歩きませんか?」
「あまり遠くへ行くことはできませんから、すぐに折り返すのなら」
翡翠がうなずくと、二人は湖の畔を歩き始めた。
水面がキラキラと輝いてとても美しく、湖の向こうに見える山脈が水面から少し浮いて見えた。
「カーク、あれって蜃気楼ですか?」
「今日は少し暖かいですから、蜃気楼が見えていてもおかしくはありませんね」
そう言うとカークは立ち止まった。
「賢人様、もうお戻りにならないと」
「そうですね、あまり遅くなると心配をかけるかもしれませんしね」
そのとき突然、背後から誰かに腕をつかまれる。振り返るとそこにはカーレルが立っていた。
カーレルは翡翠から視線を逸らさずにカークに命令する。
「カーク、お前はもう下がれ」
「は、はい! 私は失礼いたします」
カークはそう言って慌てて敬礼すると、その場を立ち去った。
翡翠は勝手に行動したことでカーレルが怒っているのだと思った。
「勝手に行動してすみません。カークには無理やり付き合わせました。それに、あの、今ちょうど戻ろうと思っていたところで……」
そう言った瞬間、カーレルは翡翠を引き寄せ抱きしめた。
「また一人で行ってしまったかと……」
そう呟くと、さらに力をこめて翡翠を抱きしめた。
わかってはいたが、カーレルが今だに疑っていることにショックを受けた翡翠は、それを悟られないよう明るく言った。
「私はどこにも行きません」
「わかった」
カーレルは気を取り直したように、翡翠を離すと微笑む。
「すまない、君の姿がなくて少し動揺したようだ。もう少し散歩を続けるか?」
翡翠は首を横に振った。こんな気持ちでは散歩どころではない。
「もう、戻りましょう。あまり遅くなると、みんなも心配するはずですから」
「そうか、では戻ろう」
カーレルは少し悲しそうに微笑むと翡翠に手を差し出し、翡翠は無言でその手を取り二人で馬車の方へ戻った。
馬車に乗るとカーレルはすぐに翡翠のフードを外し、翡翠をじっと見つめた。
「翡翠、なにかあったのか?」
「えっ? 大丈夫ですよ? 殿下こそどうされたのですか?」
翡翠はそう言って微笑むと、カーレルを見つめ返す。
そうしてしばらくお互いに見つめ合っていたが、カーレルが根負けしたように視線を逸らして言った。
「わかった、ならいい」
「殿下はとても心配性なのですね」
翡翠はそう言って窓の外に視線を移した。
それからも途中で休憩を挟みながらホークドライ区域へ向かったが、翡翠は絶対にカーレルのそばから離れないようにした。
これ以上無駄な心配をカーレルにかけたくなかったからだ。
カーレルは時折翡翠をじっと見つめ、なにか言いたそうにしていたが、翡翠がその視線に気づいて見つめ返すとなにも言わずに微笑んで目を逸らすのだった。
それからホークドライ区域に着くまでの数日、二人はそうしてなんとなくぎこちないまま過ごした。
ホークドライ区域に入ると、まずは宿で休憩をとることになった。
「長旅で疲れたろう。ここには数日泊まる予定だ。まだ先は長い、この間に少し体を休めよう」
「そうなのですか? わかりました、ゆっくりさせてもらいます」
そう笑顔で返したものの、ホークドライにいい思い出がない翡翠は少しがっかりした。
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