竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです

みゅー

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 サイはそれだけ言うと興味なさそうに座った。彼女は他の候補には全く興味がなく、ちゃんと挨拶をするつもりもないのだろう。

 そしてシーディの番になったので挨拶をする。

「シーディと申します。コジという村から参りました。よろしくお願いいたします」

 すると、スエインとタイレルはシーディに聞こえるようにひそひそ話を始める。

「スエイン様、コジって村はどこにあるのかご存知かしら?」

「さぁ、ごめんなさい。私も無知なもので初めて聞きましたわ」

 そう言うとクスクスと笑った。シーディはこの二人はこうしていつもくっついて行動するのだろう、やれやれ。と思いながらそれを無視した。

 その日から、毎日その部屋でカーリムから様々な作法を学ぶことになった。

 まず基礎的な教養について、カーリムが個々の技量を見るとのことで一人一人がみんなの前でなんの指導もなく各々違う課題を一通りやって見せることになった。

 シーディは『目上の方に対する挨拶とその立ち振舞い』が課題だったので、昔を思い出しながらなんとかそれをこなした。

 その間、スエインとタイレルがクスクスと笑っている声がしたので、なにか失敗をしたのだと感じたが最後まで堂々としていた。

 全員が作法を終えると、カーリムは笑顔で言った。

「素晴らしい、みんな基本はしっかりできているようだ」

 そこでタイレルが手を上げた。

「どうした、タイレル」

「はい、今先生は全員基本ができてると言いました。ですが、シーディの作法は通常の作法ではありませんでした」

 その発言にスエインもサイまでもが頷く。シーディはやってしまったと思った。流石に十六年以上前の記憶では間違いもあるだろう。

 そう思っているとカーリムが朗らかに笑った。

「みんなよく見ているね。確かに、シーディは普通の作法と違っていた。あの作法は後宮内の独特な作法だったからね、一般の教養を学んだだけではわからなかったろう」

 そう言うとカーリムはシーディに向き直る。

「そういった意味で、作法が一番完璧だったのはシーディ、君ただひとりということになるな」

 すると、スエインが明らかに悔しそうに鋭い目付きでシーディを睨み、タイレルは不愉快な顔をした。

 思いもよらぬところで変な恨みを買ってしまったかもしれないと、シーディは俯いた。

 その後も字の読み書きの勉強に入ったが、これに関しても前世で読書をするために学んでいたので問題なかった。

 だが、教養で他の候補から恨みを買っていたシーディは、字の読み書きができることを隠すことにした。すると、カーリムがシーディに尋ねる。

「君は読み書きが得意だとリューリから聞いている。素晴らしいね一体どこで習ったんだ?」

「いえ、あの、そんなことはありません」

「いやいや、君が村を出るときに父親にすらすらと手紙を書いていたのをリューリが横で見たと言っていた」

 それ以上なにも言わないでー!

 内心そう思いながら小さく返事を返した。シーディはスエインがこちらを見ているのに気づいたが、どんな顔をしているのか怖くて見ることができなかった。

 これ以上目立つ訳にはいかない。

 シーディはそう思い、次の時間に舞をやると知ったとき先手を打つことにした。シーディは舞いが一番得意なのだが、流石にこれ以上目をつけられるわけにはいかない。

「カーリム先生」

 素早くシーディが手を上げる。

「どうしたんだシーディ」

「実は私は舞が得意ではありません。なのでみなさんの足を引っ張ることになるかもしれません」

 すると、早速スエインとタイレルが反応し小声で囁く。

「聞きました? スエイン様。舞もできないなんて、ねぇ?」

「タイレル、笑ってはいけないわ。仕方がないのよ、コジ村では舞を習えないのかもしれないでしょう?」

 勝手に言ってなさいよ。

 シーディはそう思いながら話を続ける。

「ですから、そのことで後でお話ししたいのですが」

「シーディ、そんなに心配しなくても君は聡明だからすぐに上達すると思うが? まぁ、とにかく後で話そう」

「ありがとうございます」

 シーディが頭を下げるとカーリムは頷き、他の候補たちを見ると、舞について説明し始めた。

「さて、ここまでの説明で他になにか質問がある人はいるかな? いなければ今日はこのくらいにしよう」

 そう言って解散となった。

 シーディはカーリムと話をするためにその場に残り、二人きりになると先にカーリムが口を開いた。

「で、本当はなんの話がしたいのかな?」

 シーディはカーリムには敵わないと思いながら答える。

「嘘をついて申し訳ありません。気づいてらっしゃるとは思うのですが、スエイン様やタイレル様は私のことをあまりよくは思っていないようなのです」

 わかりやすくカーリムはため息をついた。

「そのようだね。あの年頃の少女たちにはよくあることだけれど。特に君は平民だしね」

「はい。私は本当は一番舞が得意です。ですが、これ以上なんでもできると知られれば……」

「そうだね、確かに」

「なので、舞は下手くそということにしたいのです」

 カーリムはしばらく考えてから言った。

「君はそれでいいの?」

「はい、余計な争いはしたくありませんから」

「そういうことなら。でもなぜ僕に相談したの? 下手くそなふりをするだけでいいんじゃないの?」

「先生は心眼をお持ちです。わざと下手に舞っても見抜いてしまうでしょう。なので、先に相談をした方が得策だと思ったのです」

「なるほどね」

 そう言ったあと、カーリムは真っ直ぐにシーディを見つめる。

「もうひとつ質問をさせて」

「はい、答えられることなら」

「君は一体何者?」

 あまりにもストレートな質問にシーディは思わず笑ってから答える。

「私はシーディです」

 そう言ってカーリムを真っ直ぐ見つめ返した。

 カーリムは微笑むと一言。

「なるほど」

 そう言って頷いた。
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