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スピンオフ『厨房の見習いは夢を見る』
第五章:料理大会への招待状
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翌朝の厨房は、いつになくにぎやかだった。
「おいおい、昨日のスープ、本当にお前が作ったのか?」「うまかったぞ、あれ。なんだろ、胃に優しいっていうか」
冒険者たちの言葉に、トムはただただ恐縮しながら、パンを配って回っていた。
「ほら、照れてないでちゃんと“ありがとう”って言わなきゃ」
と、アイリスがからかうように肘でつつく。
「い、いや、あの……でも僕の料理なんてまだまだで……!」
「そんなことないわよ。ちゃんと届いてた。“想いのこもった味”だったわ」
ほんの少し、背筋が伸びる。
(……届いてたんだ。昨日のスープ)
* * *
昼下がり。
栄作が届けられた一通の手紙を持って厨房に入ってきた。
「おい、トム。お前宛てだ」
「えっ、僕に?」
差し出された封筒は、見たことのない紋章で封がされていた。
剣と杓文字を交差させた、金色の印章。
「《王都料理祭実行委員会》……?」
封を切ると、中には招待状と、短い文章。
----
厨房見習いトム殿
先日、視察に訪れた当方の調理監察官補佐カイルより、
貴殿の料理に高い評価を受けたと報告を受けました。
よって、来月開催予定の【王都料理祭・新人部門】において、
特別推薦出場枠への参加をお願い申し上げます。
王都料理祭実行委員会より
----
「……っ! これって……!」
「そういうことだ」
栄作が頷く。
「王都一の料理祭。《料理人の登竜門》とも呼ばれる大会に、お前が招待されたってわけだ」
頭が真っ白になる。
料理祭。
ギルドでも、冒険者たちが時折話題にしていた、年に一度の大規模な料理の祭典。
腕自慢の料理人が集い、名声と未来をかけて競う場所。
「む、無理ですっ! 僕なんて、まだ見習いで……!」
「はじめから完璧な奴なんていない」
栄作は言った。
「大事なのは、“届けたい味”があるかどうか、だ」
「届けたい、味……」
トムの頭に浮かんだのは、昨日のスープを飲んでくれた冒険者たちの顔だった。
笑ってくれたアイリス。
“覚えておこう”と言ったカイル。
「……行ってみたいです」
その言葉が口をついた瞬間、厨房の空気が一瞬だけ静まり、
そして次の瞬間、栄作がぽんと背中を叩いた。
「よし、じゃあ今日から“特訓メニュー”に切り替えだな」
「えっ」
「料理祭で戦うには、魔力コントロール、仕込み、時間配分、演出、味の引き算……全部必要だ。今まで以上の密度でいくぞ」
「えっ、あの、はいっ!」
笑いながらも、心は震えていた。
夢に見ていた舞台が、今、自分の目の前に現れたのだ。
厨房の隅、記録ノートに書き加える。
「第五日目。料理祭への招待状が届いた。怖いけど……それ以上に、楽しみだ」
「おいおい、昨日のスープ、本当にお前が作ったのか?」「うまかったぞ、あれ。なんだろ、胃に優しいっていうか」
冒険者たちの言葉に、トムはただただ恐縮しながら、パンを配って回っていた。
「ほら、照れてないでちゃんと“ありがとう”って言わなきゃ」
と、アイリスがからかうように肘でつつく。
「い、いや、あの……でも僕の料理なんてまだまだで……!」
「そんなことないわよ。ちゃんと届いてた。“想いのこもった味”だったわ」
ほんの少し、背筋が伸びる。
(……届いてたんだ。昨日のスープ)
* * *
昼下がり。
栄作が届けられた一通の手紙を持って厨房に入ってきた。
「おい、トム。お前宛てだ」
「えっ、僕に?」
差し出された封筒は、見たことのない紋章で封がされていた。
剣と杓文字を交差させた、金色の印章。
「《王都料理祭実行委員会》……?」
封を切ると、中には招待状と、短い文章。
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厨房見習いトム殿
先日、視察に訪れた当方の調理監察官補佐カイルより、
貴殿の料理に高い評価を受けたと報告を受けました。
よって、来月開催予定の【王都料理祭・新人部門】において、
特別推薦出場枠への参加をお願い申し上げます。
王都料理祭実行委員会より
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「……っ! これって……!」
「そういうことだ」
栄作が頷く。
「王都一の料理祭。《料理人の登竜門》とも呼ばれる大会に、お前が招待されたってわけだ」
頭が真っ白になる。
料理祭。
ギルドでも、冒険者たちが時折話題にしていた、年に一度の大規模な料理の祭典。
腕自慢の料理人が集い、名声と未来をかけて競う場所。
「む、無理ですっ! 僕なんて、まだ見習いで……!」
「はじめから完璧な奴なんていない」
栄作は言った。
「大事なのは、“届けたい味”があるかどうか、だ」
「届けたい、味……」
トムの頭に浮かんだのは、昨日のスープを飲んでくれた冒険者たちの顔だった。
笑ってくれたアイリス。
“覚えておこう”と言ったカイル。
「……行ってみたいです」
その言葉が口をついた瞬間、厨房の空気が一瞬だけ静まり、
そして次の瞬間、栄作がぽんと背中を叩いた。
「よし、じゃあ今日から“特訓メニュー”に切り替えだな」
「えっ」
「料理祭で戦うには、魔力コントロール、仕込み、時間配分、演出、味の引き算……全部必要だ。今まで以上の密度でいくぞ」
「えっ、あの、はいっ!」
笑いながらも、心は震えていた。
夢に見ていた舞台が、今、自分の目の前に現れたのだ。
厨房の隅、記録ノートに書き加える。
「第五日目。料理祭への招待状が届いた。怖いけど……それ以上に、楽しみだ」
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