【完結】料理人は冒険者ギルドの裏で無双します

vllam40591

文字の大きさ
32 / 34
スピンオフ『厨房の見習いは夢を見る』

第十章:王都の厨房で火花を

しおりを挟む
「課題は“テーマ食材を使った自由料理”。
素材はこの木箱に入っているものの中から、三品選んでください」

実技試験の会場。
広い石造りの厨房には、十数人の参加者たちが並んでいた。

「制限時間は一時間。火器は魔導調理器のみ使用可。
審査基準は“味・創造性・提供時の印象”の三点。――準備ができ次第、開始を」

一斉に動き出す参加者たちの中で、トムはひとり、食材の箱を開けた。

中にあったのは――

金色の鱗を持つ淡水魚「ルーナフィッシュ」

鮮やかな赤をした小さな果実「ファイアベリー」

ねっとりとした甘さのある根菜「ホロスイート」

(全部、初めて見る食材ばかり……でも……)

トムの頭の中では、すでに“味の地図”が広がっていた。

(ルーナフィッシュは白身系のクセがない魚。
ファイアベリーの酸味と甘みをアクセントに、ホロスイートで全体にコクを出す……)

「よし、やるぞ」

彼は手際よく調理を始める。
魚を三枚におろし、皮目に細かく切れ目を入れる。
ホロスイートをスライスして火にかけ、ベリーとともにソースに仕立てていく。

周囲では、怒号や焦りの声も飛んでいたが、トムの動きは終始なめらかだった。

――そして、その様子をじっと見ている一人の男がいた。

「……ふーん。田舎者にしては、やるじゃないか」

金髪の青年。王都支部の出場者・レオン・グランシェフ。
名門料理貴族“グランシェフ家”の末弟であり、“天才”と呼ばれる存在だ。

「へえ、君がセイジの弟子か。……少し興味が湧いてきたよ」

* * *

一時間後。

「それでは、トム・シュヴァリエ。作品を提出してください」

審査官の前に置かれたのは、一皿の温製料理。

◆ルーナフィッシュの香草焼き ~ファイアベリーとホロスイートの温サラダを添えて~

白身魚は皮目がパリパリに焼かれ、香草の香りが立ち上っていた。
ベリーの酸味とスイートの甘みが絶妙に絡み、盛り付けも美しかった。

ひとくち食べた審査官の箸が止まる。

「……なるほど。素材のポテンシャルをよく理解している。
何より、“人を喜ばせよう”という気持ちが、味に表れている」

会場が静まり返る。

「合格とします。次のステージへ進んでください」

トムは深く礼をした。

だがその背中に、レオンが声をかけてきた。

「――料理は“気持ち”じゃ勝てないぞ」

振り向くと、彼はにやりと笑っていた。

「決勝で当たることがあったら、全力で叩き潰す。
これが“王都の厨房”ってやつさ。楽しみにしてるよ、田舎の料理人くん」

(――負けない)

トムは静かに、心の中で返した。

(あの人に教わった包丁の重みも、少年の一匙も――全部、僕の中にある)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

転生先の説明書を見るとどうやら俺はモブキャラらしい

夢見望
ファンタジー
 レインは、前世で子供を助けるために車の前に飛び出し、そのまま死んでしまう。神様に転生しなくてはならないことを言われ、せめて転生先の世界の事を教えて欲しいと願うが何も説明を受けずに転生されてしまう。転生してから数年後に、神様から手紙が届いておりその中身には1冊の説明書が入っていた。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

追放された俺の木工スキルが実は最強だった件 ~森で拾ったエルフ姉妹のために、今日も快適な家具を作ります~

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺は、異世界の伯爵家の三男・ルークとして生を受けた。 しかし、五歳で授かったスキルは「創造(木工)」。戦闘にも魔法にも役立たない外れスキルだと蔑まれ、俺はあっさりと家を追い出されてしまう。 前世でDIYが趣味だった俺にとっては、むしろ願ってもない展開だ。 貴族のしがらみから解放され、自由な職人ライフを送ろうと決意した矢先、大森林の中で衰弱しきった幼いエルフの姉妹を発見し、保護することに。 言葉もおぼつかない二人、リリアとルナのために、俺はスキルを駆使して一夜で快適なログハウスを建て、温かいベッドと楽しいおもちゃを作り与える。 これは、不遇スキルとされた木工技術で最強の職人になった俺が、可愛すぎる義理の娘たちとのんびり暮らす、ほのぼの異世界ライフ。

処理中です...