喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉

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067.不審者

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「……戻ろうか」
 馬車に乗り、王宮へ。
 ヒナの部屋の前まで送るとアレクサンドロはヒナの手を取った
 手の甲に口づけするとまた後でねと微笑む。

「菓子は預かった」
 後で取りに来るようにと笑うアレクサンドロ。
 ヒナはクスクス笑いながら部屋へと入った。

 シャワーを浴び、ズボンに眼鏡の姿になる。
 いつもどおりアレクサンドロと一緒に夕食を食べ、金平糖を2人でかじった。
 狼のアレクサンドロをもふもふしながらベッドへ横になると、グレーの眼と目が合う。

「アレク、今日はありがとね」
 野イチゴ懐かしかったねと笑うヒナ。
 狼のアレクサンドロはヒナの口をペロリと舐めると枕にポフンと顔を埋めた。

 歩きつかれたのかすぐに眠ってしまうヒナ。
 規則正しい息が聞こえてくる。
 どうしたら婚約してくれるだろうか?
 どうしたら俺を好きになってくれるだろうか?
 アレクサンドロは眠るヒナに擦り寄るとゆっくりと目を閉じた。


「うん、だいぶコントロールできるようになってきたね」
 木曜日はランディと魔力操作の練習をしてからオオカミ厩舎だ。
 早く可愛いオオカミに会うためには魔力操作を順調に終わらせないといけない。

「そんなに早く会いたいの?」
 妬けるなと笑うランディ。

「もふもふですごく可愛いんです」
 今日はもしかしたら3匹よりも増えているかもしれないとヒナが笑うと、ランディは7匹になっているよと教えた。

「7匹!?」
 もふもふパラダイス!

「だいぶ魔力が安定してきたから、11月からは戦術を勉強しようと思う」
「はい。お願いします」

 普段は相変わらず魔力は見えないが、意識して魔力を出すことができるようになった。
 調印後は嘘のように熊族も豹族も侵入して来なくなったので、武官もケガをしなくなった。
 ヒナが魔力を使う機会はないが、その方が安全でいい。
 結界の張り方はわからないが、このまま魔力を高めていけばいつかできるようになるのだろう。

「ダンスの練習も始めるって聞いたけれど」
「エリスお姉様にお辞儀や歩き方を習って、そろそろダンスかなと言われたけれど踊った事がなくてイメージも湧かなくて」
 知らない曲で困っていると笑うヒナ。

「じゃぁ、ダンスの練習のお相手もしようかな」
「ダンスって踊らないとダメ?」
 踊ったこともないし、2ヶ月で出来るようになるとは思えないとヒナが困った顔をする。

「婚約者がいれば1曲だけで済むけどね」
 婚約者ナシは争奪戦だねとランディは困った顔で微笑んだ。

「……だから婚約……」
 思わず口に出してしまったヒナは、慌てて口を噤んだ。
 
「さぁ、オオカミ厩舎へ行こうか」
 ランディと世間話をしながらオオカミ厩舎へ向かうと、入り口にバインダーを持った白衣の男性の姿が見えた。

 イワライさん?
 今日も環境チェックだろうか。
 ランディとヒナに気づくとお辞儀をして慌てて行ってしまう。

「何だ?」
 白衣が来るなんて珍しいとランディが首を傾げた。

「月曜も環境チェックに来ましたよ?」
「環境チェック? 月曜に来たのに今日も?」
 変だなと言いながらランディとオオカミ厩舎へ入ると可愛いもふもふがたくさんいるのが見えた。

「ひーくん、その子捕まえて!」
「えぇ! 待って!」
 慌てて手を洗い柵の中に入るヒナ。
 ヨチヨチと壁まで進む1匹の子供のオオカミをヒナは抱き上げた。

「元気いっぱいだね」
「キュイ」
 返事をしてくれるオオカミ。

 ヒナは7匹のもふもふパラダイスの中で幸せな時間を過ごした。
 日に日に子供のオオカミが増えてくる厩舎。
 翌週には19匹になり賑やかになった。
 母乳ではなくミルクを哺乳瓶で飲み始める子も出てきた。
 たった1週間でもヨチヨチからぴょんぴょん跳ねるくらいに成長するオオカミ。

「あっという間に大きくなっちゃう!」
 嘆くヒナをリッキーが笑った。


 武官の仕事の後はワンピースに着替えて食材の受け取りのためカフェテリアへ。
 買い物袋を抱えて部屋に戻ると、奥のアレクサンドロの部屋の扉が開いた。
 慌てて鍵を開けて部屋に入る。
 姿を見られていないよね?
 はぁ。と息を吐き、買い物袋をキッチンに置いた。

 ハム、パン、レタス、キャベツ。
 買い物袋から取り出し、まず卵を冷蔵庫へ。

 えっ?
 ガチャガチャという不審な音にヒナは驚いた。

 ……誰かがドアを触っている?

 動くドアノブ。
 鍵は閉まっているので扉が開く事はないけれど。

 誰??

 ヒナの身体が震える。

 怖い。
 誰?

 ガチャガチャと数回ドアノブが動いた後、音はなくなった。

 急いでズボンに眼鏡の姿になり、アレクサンドロの部屋へ。
 だが、部屋には誰もいなかった。
 アレクサンドロもユリウスもいないのに、アレクサンドロの部屋から出てきた?

 一体誰?
 もしかしてこっちの部屋にも入って来たのだろうか?

 どうしよう。
 誰だったかちゃんと見ればよかった。

 時計はもうすぐ夕方5時。
 ディーンは今日お休み。
 ランディはまだ武官にいるだろうか?
 アレクサンドロの部屋を突っ切り、ヒナは奥の扉から出ようと手をかけた。

「ひゃっ」
「わっ」
 扉が開き驚くヒナと、急に目の前にいたヒナに驚いたアレクサンドロ。

「ヒナか。びっくりした」
「アレク! アレク! ドア!」
 震えながらしがみつくヒナ。

「どうした?」
「どうしましたか?」
 ヒナの異常な怯えに驚いたアレクサンドロは、振り返りユリウスと顔を見合わせた。
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