喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉

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089.作戦

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 翌日、宰相室を訪れたヒナにイケオジ3人は夜会の作戦を教えてくれた。
 さらにそのあとチェロヴェ国が取るであろう行動と、その対策まで。

「それではアレクが……」
 アレクサンドロが利用されるだけになってしまうと言うヒナに、イケオジ3人は「王太子だから仕方ない」と笑った。

 またイケオジ3人からの愛のムチですか!

 イワライの父マートン・ニールのことは、プチィツァ国が調べてくれたことにしたとコヴァック公爵はヒナに説明した。
 すでにプチィツァ国王の了解は得ているそうだ。

 イケオジ3人の本気がすごい。

 昨日イワライとここを訪れてからまだ24時間も経っていないのに。
 イケオジ3人に全然敵わない。
 作戦も、スピードも。

「今日、イワライ・エバレットを呼び出したよ」
 また土下座スタートだったとコヴァック公爵が笑う。

 やっぱり牢屋? とイワライは驚いただろうな。
 土下座するイワライの姿を思い出し、ヒナは苦笑した。

「ちょっと彼に頼み事をしたけれど笑わないでくれ」
 笑う?
 ロウエル公爵の言葉にヒナは首を傾げた。

 イワライはまだ眼鏡の聖女と、ユリウスの妹を別人だと思っているそうだ。
 そのままで作戦のコマになってもらうと言うロウエル公爵にヒナは頷く。

「後の問題は使用人カレブだな」
 宰相は使用人カレブの目的と動機をヒナに教えた。

「アレクのせいじゃないのに」
 恨むなら毒を盛った人だ。

 犯人はすでにこの世にはいない。
 カレブの母が亡くなり、当時の恨みが蘇ったのではないかとコヴァック公爵は苦笑した。

「狙われるのはイーストウッドの娘。しばらくワンピース姿は控えるように」
「わかりました」
 ヒナが頷くと、イケオジ3人は顔を見合わせ頷いた。


 その後も変わらず文官と武官で働き、あっという間に12月は終わった。

 この世界には当然だがクリスマスはなく、年越しも初詣もない。
 いつも通りに1日が終わり、起きると1月1日。
 でもそれが何ということもなく、普通の日曜日だったのは驚いた。

 夜会は1月8日。
 あと1週間。
 まだ使用人カレブは見つかっていない。
 イーストウッドの娘が現れないからかもしれない。

 このままでは夜会が危険ではないだろうか?
 ロウエル公爵はカレブは夜会に入れないので大丈夫だと言ったが……。
 使用人に紛れたらわからないのではないだろうか?

 ヒナは昼食のベーコンエッグを焼きながら溜息をついた。

 昼食後は狼のアレクサンドロをもふもふしながらブラッシング。

 ヒナは最近このほのぼのした時間が結構好きだと気がついた。
 ピクピク動く三角耳も、ふさふさ揺れる尻尾も好きだ。
 グレーの眼は強そうなのに優しい。

 ユリウスは良い雰囲気の2人をリビングに残し、そっと扉を閉めた。

 昨晩父から聞いた夜会の作戦をまだアレク様には伝えていない。

 喜ぶだろうか、それとも切なそうな顔をするだろうか。

『期間限定の婚約者候補』
 夜会の日から、チェロヴェに慰謝料を払わせるまで。

 ヒナはダンスが踊れない。
 エスコートと交渉の手伝いをするためだけの婚約者候補。

 婚約者ではないので自然消滅してもデメリットはないし、あくまで候補なのでお互い自由だ。
 誰とどこで会おうが口出しする権利はない。

 夜会でヒナの隣にずっと居られるという利点はあるが、ヒナから頼られない限りアレクサンドロは動くことはできない。

 アレクサンドロを婚約者候補に決めたのはヒナではない。
 果たしてヒナはアレクサンドロを頼るのか。

 チェロヴェに請求する慰謝料の一部、マートン・ニールという人物の説明はされなかった。
 一体誰なのか。

 ユリウスは手帳を見ながら溜息をついた。

 部屋に響くノックの音。
 ユリウスはパタンと手帳を閉じた。

「アレク、いる?」
 扉からひょっこり覗いたイワライにユリウスは驚いた。

「どうしたんですか? その髪」
 イワライの茶髪が銀髪になっている。
 一瞬誰かわからないくらいに。

「あぁ、コレ? イメチェン」
 イワライは前髪を触りながら微笑んだ。

「最近気になってる子がさ、銀髪が好きみたいで」
 なんてね。と笑いながらイワライはアレクサンドロが好きなスナック菓子を差し出した。

「アレク様は休憩中ですよ」
「じゃ、また今度来るね」
 手をヒラヒラさせながら扉を出て行くイワライ。

「呼びますよ?」
「いや、いいんだ。また来るからさ」
 嬉しそうに笑うイワライにユリウスは首を傾げた。

 アレクサンドロとユリウスを裏切らずにすんだ。
 まだ交渉がうまくいくかはわからないけれど。

 あの翌日、ロウエル公爵が環境局まで迎えに来て驚いた。
 父と母が一緒に暮らせるならなんだってやりますと答えた。
 髪の色を銀狼一族の色に変えるくらいどうってことはない。

 イワライは前髪を一房持ち上げ、そんなに似合わないかなと苦笑した。

 ユリウスは休憩が終わったアレクサンドロにスナック菓子を渡しながらイワライが銀髪だったと告げた。

「銀?」
 似合わなさそうだと笑うアレクサンドロ。

「見たかったな」
 お気に入りのスナック菓子を開けながら言うアレクサンドロに、また来るそうですとユリウスは答えた。

「気になる子が銀髪好きと言っていましたよ?」
「ふぅん」
 返事をした後にふと思った。

 以前、眼鏡のヒナをオススメしていたイワライ。
 気になる子がヒナだとしたら銀髪はランディ……?

 菓子を持ったアレクサンドロの手が止まる。

「アレク様、夜会について宰相から連絡があったのですが」

 ユリウスが作戦を説明すると、アレクサンドロは切なそうな顔で「そうか」と呟いた。
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