追い出されたら、何かと上手くいきまして

雪塚 ゆず

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留年回避編

第百一話 干物セット

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学園長から一ヶ月の留年回避時期がもうけられ、一週間が経過した。
生徒会メンバーの一人であるキノロンは、現状をどうにかして打破したいと考えていた。

「……会長と副会長が、もう三日前から息してないのよね」
「それ俺じゃないとダメなやつか」

友人をひっ捕え、そんなことを相談する。
友人は忙しいらしく、キノロンの話を聞いている暇はないとばかりの対応だ。

「えー、聞いてよ」
「じゃあもうアレク君に聞いてもらえよ」
「アレク君? 会長と副会長の弟くんだよね?」
「そうそう。弟だし、事情もわかってくれるだろ」
「そっか! ありがとう!」

友人の助言を元に、キノロンは早速アレクのクラスまで駆けつけた。

「こんにちはー。アレク君いる?」
「アレクは僕ですけど」

出てきた少年に、キノロンは思わず叫び出しそうになった。

「かっっっ」
「か?」

(可愛い!!!)

くりくりとした大きな瞳に、そのくらいの年頃の少年にしては小さな背丈。
何より整った顔立ちのアレクから見上げられ、キノロンは卒倒しそうになった。
キノロンは無類の可愛いもの好きである。

(おっといけない)

気を取り直して、キノロンは本題に入った。

「あのねアレク君。ちょっと相談があって」
「相談ですか? 悪いんですけど、明日でいいですかね」
「用事でもあった?」
「僕今、留年回避するために、先生達の雑用やってるんです」

留年回避、の言葉に、キノロンはピシリと固まる。
現在キノロンの頭を悩ませている原因が、双子の留年回避期間であった。
アレクも同じことをしているということは、三人で何かやらかしたのだろうか。

「じゃあ明日、購買の前で放課後待ち合わせましょう。それじゃあ」
「あっ、うん」

忙しそうにアレクは去っていった。
キノロンは明日を待ち遠しく思うと共に、今日は一体どうしようかと思う。

(とりあえず、生徒会室に戻るかぁ)

仕事場へと戻れば、重い空気がその場を満たしている。
会長と副会長ーーガディとエルルが、屍の如く、生徒会室の床を占拠していた。

「会長ぅうううううう! 頼むから起きてください! これの締め切り今日までなんですよ!」
「副会長ぅううううう! お願いですから、仕事投げ出さないでください! あなたしかできないんです!」

この並んだ干物セットに、生徒会メンバーは半泣きになって叫ぶ。
ガディとエルルは、この世の終わりのような顔をして呟いた。

「もう無理だ……アレクから離されて一週間……アレクが足りない……」
「アレク……ああ無理死んじゃう。あの悪魔の娘と二人きりとか……え、もしかして、痴情のもつれが」

ちなみにアレクとアリスは二人ではない。
屋敷に住み着く、ムマという妖精がいるからだ。
しかも、二人がそういう関係ではないということは、誰の目から見ても明らかである。
疑う者など、エルルぐらいしかおるまい。
そんなガディとエルルに、キノロンはため息をついて声をかけた。

「お二人共、仕事してください。学園長先生から二人の見張りを言いつけられてます」
「キノロン……お前優秀だから、俺らの仕事くらいできるだろ」
「冗談言わないでください。仕事量ハンパないんですよ」

生徒会の仕事量は凄まじい。
校則の定期的な見直し、校内の巡回、果ては地域ボランティアまでに及ぶ。
そんな状況で、仮にも仕事のできる二人にこんな干物みたいになられては、たまったものではないのだ。

「こんな時の秘密兵器……どうぞ」

キノロンがそっと、一枚の写真を差し出す。
二人は写真を見ると、がばりと体を起こした。

「そっ、それは! 体育大会のアレク!」
「仕事が終わったらあげます」
「待てキノロン。なぜその写真をお前が持っている。ひょっとしてストーカーか?」
「無理言って新聞委員会から融通してきたんですよ。ストーカーじゃありません」

ノータイムで否定したキノロンに、渋々といった様子で仕事に取り掛かる二人。
にしても鈍い。
もっと早く動けるだろうに、ノロノロとしか動かない。
ここで、生徒会メンバーの一人が、キノロンに耳打ちしてくる。

「キノロンが持ってくる弟の写真で誤魔化してきたけど、そろそろ限界だぞ……」
「だよね。だからボク、弟くんに直接会ってきたのよ」
「えっ。弟にか」
「どうにかしてくれないかなぁって。二人に会うことはできないけど」
「どうにかなるもんなのか……?」

双子の濁り切った死んでいる目を見ると、もはや一種の同情すら湧いてくる。
しかし仕事はやってもらわねばなるまい。
こういった対応で頭を抱えるのは、同じ生徒会委員なのだ。
学園長は是非ともよく考えてほしい。

「明日なんとか言ってみるわ」
「よろしくな。お前だけが頼みだ」

メンバーと熱い握手をかわし、キノロンは任せろと力強く言った。
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