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May
距離 Side 翠葉 01-02話
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私は涙を拭き取ると、誰にも会いませんように、と祈りながらテラスを歩いた。
幸い、すでに部活が始まっている時間ということもあり、誰に会うこともなく学校を出ることができた。
校門を出てから下り坂だった道は、公道に出た途端に上り坂へと変わる。その坂を上がり始めて十メートルと進まないうちに息が切れ始めた。
いつもなら、坂の中ほどまではもつのに……。
心当たりは十二分にあった。寝不足だからだ。
寝不足はダイレクトに心臓にくる。そうとわかっていても、ぐっすりと眠れない日が続いていた。
ツカサの変化に気づいてから、深く眠れなくなってしまったのだ。
睡眠導入剤を使えば寝入ることはできる。けれども数時間で目が覚めてしまい、そこから再度眠るまでには一時間二時間とかかることも珍しくはない。だから、なるべく考えないようにしよう、と思っていた。
しかし、現状を見ればそれがなんの意味をなしていただろう。考えないようにしたところでぐっすりと眠れるようにはならなかった。
きっと、この問題が片付くまではそんな日が続くのだろう。そして、この身体の限界を越えて体調を崩すのだ。
先が予測できるのなら、そんな未来は回避すべき――
「早期解決が正解ルート、かな……」
口にして思う。少し考えたらわかることなのに、どうして二週間も放置してきたのか、と。
過ぎた時間は取り戻せない。それなら、これからのことを考えなくては。でも今は――この坂を上ることに専念すべき……。
私は小さな歩幅で坂を上ることだけに専念した。
ほんの数粒涙が零れただけ――だから気づく人はいない。
そう思ってマンションのエントランスに足を踏み入れると、観葉植物のメンテナンスをしていた高崎さんに迎えられた。
「翠葉ちゃん、おかえりなさい」
「高崎さん、こんにちは」
普通の調子で話せたし、会話を続けられる自信もあった。でも、
「翠葉ちゃん、目、赤い……?」
「え……?」
「目が充血してるように見えるけど……」
高崎さんは高い身長を折り曲げて、私の顔を覗き込む。
「あのっ、なんでもないのでっ、なんでもないことにしてくださいっ」
私は意味のわからないことを口走り、エントランスを横切ってエレベーターに乗り込んだ。
かばんからコンパクトミラーを取り出し、目を見てうな垂れる。
確かに目は充血していた。けれども、「睡眠不足」という理由で十分かわせる程度の充血だった。あれでは、「何かはあったけど見なかったことにしてください」と言っているのと変わらない。
「後悔……」
しょんぼりしているうちにエレベーターは九階に着いてしまった。
ゲストルームには誰もいなかった。
帰宅後の習慣を済ませてリビングへ行くと、テーブルにメモが二枚。
一枚には唯兄の予定が書かれていた。
「午前中はホテル、午後からはマンション……」
ここにいないということは、このマンションの六階にできた職場にいるのだろう。
もう一枚はお母さんからの手紙。
どうやら、仕事で幸倉へ帰っているようだ。夕方六時までには帰宅予定だけれど、六時を過ぎる場合には先に夕飯を食べていなさい、とのこと。
キッチンへ行くと、すでに夕飯の用意が済んでいた。
お茶の用意をしてダイニングへ戻ってくると、ハープに手を伸ばし調弦を始める。ハープの次はピアノの拭き掃除。軽く埃を拭き取ると、ピアノの蓋を開け「ラ」の鍵盤を人差し指で押す。すると、人のいない空間にポーン、と空虚な音が響いた。
今、ピアノを弾いたらどんな音色になるのかはよくわかっている。
「陰湿な音ばかり奏でられたくないよね……」
この二週間、ピアノやハープを弾くことで感情のバランスを保ってきた。ピアノやハープを弾くと一時的には楽になる。でも、そろそろそれも終わりにしなくてはいけない。感情を逃がすのではなく、向き合わなくては……。
「向き合う必要があるものは、どうしていつもつらいことなのかな……」
私はもう一度「ラ」の音を鳴らした。
今日は土曜日、明日は日曜日――次にツカサと会うのは早くても月曜日だ。それなら、まだ考える時間はある。
「翠葉さん……最後にもう一度だけ逃げてもいいですか? お風呂……お風呂から出てきたらちゃんと考えるから」
ピアノにぼんやりと映る自分に話しかけ、ピアノの蓋を閉じた。
バスルームにはヘアトリートメントとミュージックプレーヤー、携帯の三つを持ち込んだ。
心ゆくまで髪の毛のメンテナンスをして、柑橘系の香りがするお湯に浸かれば携帯小説を読み始める。でも、曲を聴くのもお話を読むのも、さほど集中することはできなかったし、リラックスもできなかった。
携帯に入っている友達の写真を見ても、何をしてもツカサのこと考えてしまう。
「……気分転換の失敗」
これはもう、何もかも諦めて考えろ、ということなのだろうか。
私は観念して、お風呂に充満している香りを胸いっぱいに吸い込んでから、バスタイムを終わりにした。
自室で髪の毛を乾かしていると、キィ、と外のポーチが開く音が聞こえた。
インターホンが鳴らないところを見ると、家族の帰宅か栞さんの来訪だろう。
唯兄かな? 栞さんかな?
ドライヤーを止めてドアを振り返ると、顔を出したのは蒼兄だった。
「おかえりなさい」
「ただいま。……こんな時間から風呂?」
「うん。……ちょっと気分転換したかったの」
結果は見事に惨敗だけれど……。
「蒼兄は? このあとまた出かけるの?」
お父さんと一緒じゃないから仕事が終わって帰ってきた、というわけではないのかもしれない。
「これからここで仕事。秋斗先輩に頼まれた資料があるから、それをまとめるために帰ってきた」
「そっか……」
「……なんかある?」
「ううん……」
「……翠葉、ティータイムに付き合って」
「え?」
「仕事に取り掛かる前に休憩したい」
すぐにわかった。これは蒼兄の気遣いだ。
私はその優しさに甘えることにした。
「……ありがとう。コーヒーを淹れるね」
コーヒーを淹れてダイニングに落ち着くと、
「何かあった?」
「ん……少しだけ、時間もらえる?」
「大丈夫だよ」
「……あのね、ツカサに距離を置かれている気がするの」
本当は「気がする」のではなく、確定事項だ。
蒼兄は何を言われたのかわからないような顔をしていた。
「ごめん、もう一度――何?」
「だからね、ツカサに距離を置かれている気がするの」
「またなんで……」
なんで――それがわかったらいいのに……。
「理由は? 心当たりないの?」
私はコクリと頷き、桃華さんとした話を蒼兄にも話した。
「いつだって普通に手をつないでくれていたの。でも今は、応じてはくれるけど、すぐに離されちゃう。手をつなぐのがだめなら、せめて近くにいたくて、でも、隣に座ると席を立たれちゃう。今までなら目を見て話してくれていたのに、最近は目も合わせてくれない」
冷静に話そうと思っていても、事実を認める言葉を口にするたびに悲しくなって、最後は泣いてしまった。
私がこんな状態では、蒼兄は話を切り上げることができない。わかっているのに、涙が止まらない。
だめだ……こんなの、甘え以外の何ものでもない。
「蒼に、ごめん――大丈夫だから、仕事、始めて」
「翠葉、時間は大丈夫。まだ話し始めて十分も経ってないよ」
蒼兄は優しく背中をさすってくれた。
背中に蒼兄のぬくもりが伝いほっとする。でも、私が欲しているぬくもりは蒼兄のものではない。今、はっきりと自覚してしまった。私が欲しいのはツカサのぬくもり。でも、それがわかったところで簡単に得られるわけでもない。
「蒼兄は桃華さんにこういうことする……?」
「……しない、かな」
「もしするとしたら、どんなことが理由にあがる?」
「んー……それは人それぞれだと思う。翠葉、少し待ってみたら?」
「待つ……?」
蒼兄はゆっくりと頷いた。
「たぶん、何もないなら司はこんな行動には出ないと思う。それに、翠葉のことを嫌いになったなら、付き合っているっていう状況は早期に解消すると思う。それをしないのは、何か思うところがあるからじゃないかな?」
蒼兄の意見は桃華さんの見解とほぼ同じだった。
「でも、もう二週間も経ってる……」
「んー……それなんだけどさ、翠葉にとっては『二週間も』かもしれない。でも、司にとっては『まだ二週間』なのかもしれないだろ? 答えに時間を要すこともあると思わない?」
時間の感じ方は難しいな……。
「でも、このままだと生徒会メンバーに迷惑かけたまま……」
「迷惑……?」
「ツカサが不機嫌だと、各所に被害が及ぶの……」
「あ~……それは想像できなくはないけど。でも、普段より無愛想になるとか、容赦ない感じが数割増しになる程度だろ?」
蒼兄はまったく問題がないような言い方をする。けれど、
「一年生メンバーの飛翔くんに言われちゃった。中等部のころは、こんなに気分にムラのある人じゃなかった、って。ツカサが変わったのが私の影響なら、悪影響でしかないんじゃないか、って」
「それはまた辛辣な言葉だな……。でも、二、三年メンバーは前の司より、今の司のほうが好きなんじゃない?」
「どうして……?」
「感情の起伏がない人間より、気分にムラがあって人間らしい司のほうが希少価値が高いと思うから」
「……意味がわからない」
「翠葉は、司の感情が見え隠れするのと、まったく見えないのと、どっちがいい?」
「……見えるのがいい」
「つまり、そういうこと。飛翔くんだっけ? その子にとっては違うのかもしれないけど、ほかの人が飛翔くんと同じように考えているとは限らないだろ?」
「でも、機嫌が悪いのはどうにかして、っていう空気は感じるよ?」
「それが、司を嫌っているような空気に感じる?」
私は首を振った。すると、蒼兄は「そうだろ?」と満足そうな笑顔になる。
私が少し落ち着いたこともあり、相談タイムはこれでお開きになった。
自室に戻り、蒼兄が言っていたことを思い返してみる。
目を背けてきた二週間、私にとっては長いと思える時間だった。でも、ツカサにとってはそうではないのかもしれない。
「……向き合おうと思っていたけど、まだその時じゃないのかな……」
でも、一度直視してしまったものを再度視野から外すのは、安易なことではなかった――
幸い、すでに部活が始まっている時間ということもあり、誰に会うこともなく学校を出ることができた。
校門を出てから下り坂だった道は、公道に出た途端に上り坂へと変わる。その坂を上がり始めて十メートルと進まないうちに息が切れ始めた。
いつもなら、坂の中ほどまではもつのに……。
心当たりは十二分にあった。寝不足だからだ。
寝不足はダイレクトに心臓にくる。そうとわかっていても、ぐっすりと眠れない日が続いていた。
ツカサの変化に気づいてから、深く眠れなくなってしまったのだ。
睡眠導入剤を使えば寝入ることはできる。けれども数時間で目が覚めてしまい、そこから再度眠るまでには一時間二時間とかかることも珍しくはない。だから、なるべく考えないようにしよう、と思っていた。
しかし、現状を見ればそれがなんの意味をなしていただろう。考えないようにしたところでぐっすりと眠れるようにはならなかった。
きっと、この問題が片付くまではそんな日が続くのだろう。そして、この身体の限界を越えて体調を崩すのだ。
先が予測できるのなら、そんな未来は回避すべき――
「早期解決が正解ルート、かな……」
口にして思う。少し考えたらわかることなのに、どうして二週間も放置してきたのか、と。
過ぎた時間は取り戻せない。それなら、これからのことを考えなくては。でも今は――この坂を上ることに専念すべき……。
私は小さな歩幅で坂を上ることだけに専念した。
ほんの数粒涙が零れただけ――だから気づく人はいない。
そう思ってマンションのエントランスに足を踏み入れると、観葉植物のメンテナンスをしていた高崎さんに迎えられた。
「翠葉ちゃん、おかえりなさい」
「高崎さん、こんにちは」
普通の調子で話せたし、会話を続けられる自信もあった。でも、
「翠葉ちゃん、目、赤い……?」
「え……?」
「目が充血してるように見えるけど……」
高崎さんは高い身長を折り曲げて、私の顔を覗き込む。
「あのっ、なんでもないのでっ、なんでもないことにしてくださいっ」
私は意味のわからないことを口走り、エントランスを横切ってエレベーターに乗り込んだ。
かばんからコンパクトミラーを取り出し、目を見てうな垂れる。
確かに目は充血していた。けれども、「睡眠不足」という理由で十分かわせる程度の充血だった。あれでは、「何かはあったけど見なかったことにしてください」と言っているのと変わらない。
「後悔……」
しょんぼりしているうちにエレベーターは九階に着いてしまった。
ゲストルームには誰もいなかった。
帰宅後の習慣を済ませてリビングへ行くと、テーブルにメモが二枚。
一枚には唯兄の予定が書かれていた。
「午前中はホテル、午後からはマンション……」
ここにいないということは、このマンションの六階にできた職場にいるのだろう。
もう一枚はお母さんからの手紙。
どうやら、仕事で幸倉へ帰っているようだ。夕方六時までには帰宅予定だけれど、六時を過ぎる場合には先に夕飯を食べていなさい、とのこと。
キッチンへ行くと、すでに夕飯の用意が済んでいた。
お茶の用意をしてダイニングへ戻ってくると、ハープに手を伸ばし調弦を始める。ハープの次はピアノの拭き掃除。軽く埃を拭き取ると、ピアノの蓋を開け「ラ」の鍵盤を人差し指で押す。すると、人のいない空間にポーン、と空虚な音が響いた。
今、ピアノを弾いたらどんな音色になるのかはよくわかっている。
「陰湿な音ばかり奏でられたくないよね……」
この二週間、ピアノやハープを弾くことで感情のバランスを保ってきた。ピアノやハープを弾くと一時的には楽になる。でも、そろそろそれも終わりにしなくてはいけない。感情を逃がすのではなく、向き合わなくては……。
「向き合う必要があるものは、どうしていつもつらいことなのかな……」
私はもう一度「ラ」の音を鳴らした。
今日は土曜日、明日は日曜日――次にツカサと会うのは早くても月曜日だ。それなら、まだ考える時間はある。
「翠葉さん……最後にもう一度だけ逃げてもいいですか? お風呂……お風呂から出てきたらちゃんと考えるから」
ピアノにぼんやりと映る自分に話しかけ、ピアノの蓋を閉じた。
バスルームにはヘアトリートメントとミュージックプレーヤー、携帯の三つを持ち込んだ。
心ゆくまで髪の毛のメンテナンスをして、柑橘系の香りがするお湯に浸かれば携帯小説を読み始める。でも、曲を聴くのもお話を読むのも、さほど集中することはできなかったし、リラックスもできなかった。
携帯に入っている友達の写真を見ても、何をしてもツカサのこと考えてしまう。
「……気分転換の失敗」
これはもう、何もかも諦めて考えろ、ということなのだろうか。
私は観念して、お風呂に充満している香りを胸いっぱいに吸い込んでから、バスタイムを終わりにした。
自室で髪の毛を乾かしていると、キィ、と外のポーチが開く音が聞こえた。
インターホンが鳴らないところを見ると、家族の帰宅か栞さんの来訪だろう。
唯兄かな? 栞さんかな?
ドライヤーを止めてドアを振り返ると、顔を出したのは蒼兄だった。
「おかえりなさい」
「ただいま。……こんな時間から風呂?」
「うん。……ちょっと気分転換したかったの」
結果は見事に惨敗だけれど……。
「蒼兄は? このあとまた出かけるの?」
お父さんと一緒じゃないから仕事が終わって帰ってきた、というわけではないのかもしれない。
「これからここで仕事。秋斗先輩に頼まれた資料があるから、それをまとめるために帰ってきた」
「そっか……」
「……なんかある?」
「ううん……」
「……翠葉、ティータイムに付き合って」
「え?」
「仕事に取り掛かる前に休憩したい」
すぐにわかった。これは蒼兄の気遣いだ。
私はその優しさに甘えることにした。
「……ありがとう。コーヒーを淹れるね」
コーヒーを淹れてダイニングに落ち着くと、
「何かあった?」
「ん……少しだけ、時間もらえる?」
「大丈夫だよ」
「……あのね、ツカサに距離を置かれている気がするの」
本当は「気がする」のではなく、確定事項だ。
蒼兄は何を言われたのかわからないような顔をしていた。
「ごめん、もう一度――何?」
「だからね、ツカサに距離を置かれている気がするの」
「またなんで……」
なんで――それがわかったらいいのに……。
「理由は? 心当たりないの?」
私はコクリと頷き、桃華さんとした話を蒼兄にも話した。
「いつだって普通に手をつないでくれていたの。でも今は、応じてはくれるけど、すぐに離されちゃう。手をつなぐのがだめなら、せめて近くにいたくて、でも、隣に座ると席を立たれちゃう。今までなら目を見て話してくれていたのに、最近は目も合わせてくれない」
冷静に話そうと思っていても、事実を認める言葉を口にするたびに悲しくなって、最後は泣いてしまった。
私がこんな状態では、蒼兄は話を切り上げることができない。わかっているのに、涙が止まらない。
だめだ……こんなの、甘え以外の何ものでもない。
「蒼に、ごめん――大丈夫だから、仕事、始めて」
「翠葉、時間は大丈夫。まだ話し始めて十分も経ってないよ」
蒼兄は優しく背中をさすってくれた。
背中に蒼兄のぬくもりが伝いほっとする。でも、私が欲しているぬくもりは蒼兄のものではない。今、はっきりと自覚してしまった。私が欲しいのはツカサのぬくもり。でも、それがわかったところで簡単に得られるわけでもない。
「蒼兄は桃華さんにこういうことする……?」
「……しない、かな」
「もしするとしたら、どんなことが理由にあがる?」
「んー……それは人それぞれだと思う。翠葉、少し待ってみたら?」
「待つ……?」
蒼兄はゆっくりと頷いた。
「たぶん、何もないなら司はこんな行動には出ないと思う。それに、翠葉のことを嫌いになったなら、付き合っているっていう状況は早期に解消すると思う。それをしないのは、何か思うところがあるからじゃないかな?」
蒼兄の意見は桃華さんの見解とほぼ同じだった。
「でも、もう二週間も経ってる……」
「んー……それなんだけどさ、翠葉にとっては『二週間も』かもしれない。でも、司にとっては『まだ二週間』なのかもしれないだろ? 答えに時間を要すこともあると思わない?」
時間の感じ方は難しいな……。
「でも、このままだと生徒会メンバーに迷惑かけたまま……」
「迷惑……?」
「ツカサが不機嫌だと、各所に被害が及ぶの……」
「あ~……それは想像できなくはないけど。でも、普段より無愛想になるとか、容赦ない感じが数割増しになる程度だろ?」
蒼兄はまったく問題がないような言い方をする。けれど、
「一年生メンバーの飛翔くんに言われちゃった。中等部のころは、こんなに気分にムラのある人じゃなかった、って。ツカサが変わったのが私の影響なら、悪影響でしかないんじゃないか、って」
「それはまた辛辣な言葉だな……。でも、二、三年メンバーは前の司より、今の司のほうが好きなんじゃない?」
「どうして……?」
「感情の起伏がない人間より、気分にムラがあって人間らしい司のほうが希少価値が高いと思うから」
「……意味がわからない」
「翠葉は、司の感情が見え隠れするのと、まったく見えないのと、どっちがいい?」
「……見えるのがいい」
「つまり、そういうこと。飛翔くんだっけ? その子にとっては違うのかもしれないけど、ほかの人が飛翔くんと同じように考えているとは限らないだろ?」
「でも、機嫌が悪いのはどうにかして、っていう空気は感じるよ?」
「それが、司を嫌っているような空気に感じる?」
私は首を振った。すると、蒼兄は「そうだろ?」と満足そうな笑顔になる。
私が少し落ち着いたこともあり、相談タイムはこれでお開きになった。
自室に戻り、蒼兄が言っていたことを思い返してみる。
目を背けてきた二週間、私にとっては長いと思える時間だった。でも、ツカサにとってはそうではないのかもしれない。
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