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July
七夕祭り Side 翠葉 03話
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マンションに帰ってくると二時近かった。
ゲストルームには誰もおらず、いつものようにお母さんと唯兄の予定が書かれたメモがリビングテーブルに置かれている。
キッチンに用意されていたお昼ご飯を温めて食べると、浴衣を着る前にシャワーを浴びることにした。
お風呂から上がり髪の毛を乾かし終わると髪の毛をポニーテールにしてお団子を作る。
普段、ポニーテールにすることはあっても、そこからお団子にすることはない。
「確か……お団子を作って少し髪の毛を引っ張り出すと、ルーズな感じになるのよね……?」
苦戦しながら、去年の夏休みに宮川さんにしてもらった髪型を再現する。宮川さんがしてくれたようにはいかなかったけれど、初めてにしてはそこそこの出来栄え。
自室に戻ると、たとう紙から浴衣を取り出した。
今日着るのは、紺よりは少し明るい青地に淡いピンクの紫陽花が咲く浴衣。半幅帯は紫陽花に合わせてピンクとブルーのリバーシブル。下駄の鼻緒もピンク。
「自分で着るの、久しぶり……」
去年は茶道部で何度か着物を着たけれど、藤の会で着た振袖は園田さんに着付けてもらった。何より、自分の浴衣に袖を通すのは三年ぶりのこと。
黒地とピンクが交互に縫い合わされている巾着に必要なものを入れると、携帯で時間を確認する。
「三時半前……」
果歩さんとの待ち合わせは三時半。ちょうどいい時間といえば聞こえはいいけれど、人と待ち合わせているにはぎりぎりすぎる時間に少し肝を冷やした。
ゲストルームを出ると、果歩さんも家から出てきたところだった。
「お! 翠葉ちゃん浴衣!」
「果歩さん、こんにちは」
「かわいいかわいい、似合ってる! 私なんて妊婦スタイル。かわいくもなんともないよー」
「今、臨月ですよね?」
「そっ! 二十七日が予定日だけどどうかな。早まるか遅れるか」
にこにこと話す果歩さんは、シャープでスレンダーな印象から少し離れ、角がないまぁるい印象になっていた。
「外、結構暑いですけど……本当に徒歩で大丈夫なんですか?」
「うん。妊婦は必要以上に休んでちゃだめなのよ。歩けるなら歩かないとね」
そんな話をしながら一階へ下りると、
「果歩様、お車をご用意いたします」
崎本さんがカウンターから車のキーを取り出す。しかし、
「崎本さん、歩いていくからいいわ」
「ですが、楓様からお出かけの際は送迎するように言われておりますので……」
「うん、それ却下でお願いします。翠葉ちゃんも一緒だし、警護班の人たちも近くにいるから大丈夫です」
崎本さんはまだ何か言おうとしていたけれど、果歩さんは気にせずエントランスを出てしまった。
「しっかし、何この太陽。容赦なさすぎでしょ。妊婦を労わりなさいって話よね?」
果歩さんは言いながらもずんずん歩きだす。そして、学園私道に入った途端、
「妊婦にこの坂はきっついわ……」
日傘を差した果歩さんは額に汗をかき、呼吸が少し上がっていた。
「……大丈夫ですか?」
「大丈夫。でも、ちょっとゆっくり目でお願い」
「あ、はい」
自分もハイペースで歩けはしない。
果歩さんは「つらい」と言いながらも喋ることをやめようとはしなかった。
「司とはどう? うまくいってる?」
「どうでしょう……? 両思いになってからのほうがうまくいっていないというか、何もないはずなのにすれ違ったり、小さな問題がちょこちょこ起こります」
「たとえば?」と訊く果歩さんに、付き合い始めてからのあれこれを話すと、声を立ててケタケタと笑われた。
「果歩さん、ひどいです……」
「ごめんごめん! あまりにもかわいいすれ違いしてるもんだから」
「かわいいすれ違い、ですか……? 私はいつも必死です……」
「ま、そうだよね。当の本人たちは笑えないよね」
言いながらも、果歩さんはクスクスと笑う。
そんな果歩さんを見て思う。
果歩さんになら話せるかな……。
性行為云々の話をお母さんにするのは気が引ける。かといって、同性ではない唯兄と蒼兄に相談するのも難しくて、同級生にはひどく恥ずかしくて話せない。玉紀先生に相談したいなと思ったら、予約は一ヶ月半待ちという状態だった。
「でもさ、すれ違っても何しても、翠葉ちゃんは司に大切にされてるよ」
「え……?」
「実はさ、先月の終わりに司がうちに来たの」
「何をしに……?」
「そうねぇ……相談っていうか、疑問を解消しにきたのかな?」
「疑問……?」
それはどんな疑問だろう。
「んーーー……ぶっちゃけて話すと、司にえっちしたいって言われてるでしょ?」
私は絶句した。すると、
「あ、えっちイコールセックスね? セックスイコール性行為、わかる?」
果歩さんが口を開くたびに顔の温度が上昇する。さらには返事を求められていたので、私はぎこちなくコクコクと首を縦に振った。
「うんうん、その初々しい反応がまたかわいいよね」
笑いながらも果歩さんは話し続ける。
「司に訊かれたのは、妊娠して得たものと失ったもの」
「……え?」
「妊娠して何を得たのか、何を失ったのかを訊きにきたよ。私は大学を卒業する年にできちゃった結婚したけど、翠葉ちゃんはまだ十八歳。たった数年の差だけど、やっぱりそこは大きな壁があると思うんだよね。そういう話をした」
「……どうして?」
「翠葉ちゃんは司とそういう関係になることを拒んだでしょう? 子どもができたら中絶はしたくない。でも、今はまだ高校生でいたい、って。その言葉を受けて、司なりに理解しようとした結果じゃないかな。性別が違うだけで相手の考えを理解できないことがある。でも、司は翠葉ちゃんのことを理解しようとしてるよ。そういう部分、司って優しいよね」
果歩さんはにこりと笑った。
「果歩さんは何を失って、何を得たんですか……?」
口にしていいのか戸惑う内容だった。でも、司が訊いたのなら私も訊いていいだろうか――
そんな甘えとも取れる気持ちで口にした。
「そんな申し訳なさそうな顔しなくていいってば。話を振ったのは私なんだからさ」
果歩さんは冗談ぽく私のこめかみの辺りを小突く。
「失ったと思ったものは、あると思っていた未来。得たものは子ども。それから、楓さんとの未来」
少し気になる物言いだった。
「失ったと思った、というのは……?」
「私、ウィステリアホテルに務める人たちの子どもを預かるキッズルームに就職が決まっていたの。だから、子どもができなければ新社会人として働いていたわけよ。その未来がなくなったと思った。でも、実際は少し先送りになっただけだった」
少し先送り……?
「翠葉ちゃん、私、何も失ってないよ。勉強はいつだってできるし、就職だってそう。この子が生まれて少ししたら就職する。そういう意味では、得たものはあっても失ったものはないの。少し回り道をしているだけ」
プラス方面への発想の転換が果歩さんらしいと思った。
「それから、私が言っても真実味が薄いんだけど、避妊法として推奨されているくらいにはゴムでの避妊って有効なわけ。数にしたら九十五パーセントだよ。だから、そんなに子どもができたときのことばかり考えなくて大丈夫」
確率を提示されて、すっかりそんな数字を忘れていたことに気づく。
私が考えていたのは保証されていない五パーセントの部分だった。
私、逃げているのかな……。本当は、ただ五パーセントの可能性に乗じているだけで、ツカサとの関係を進めたくないのかな。子どもができるかもしれないから、と悩んでいるように見せて、ただ単に、そういった関係になる覚悟が持てないだけなのだろうか。
「翠葉ちゃん」
不意に声をかけられビク、と身体が震えた。すると、果歩さんに肩をポンポンと叩かれる。
「何も考えずに前に進むより、思い悩んで進むほうが私はいいと思う。悩みたいだけ悩みな。きっと司は無理強いせず待ってくれるよ。でも、待っていたところで誰かが答えをくれる問題じゃない。だから、答えは自分で出すってことだけは肝に銘じておこうね。それから、石橋は叩きすぎると渡る前に壊れるよ。気をつけなね」
「……はい」
ツカサに提示した気持ちから五パーセントの部分を差し引くと、キスと抱きしめられることに慣れたら、ということになる。
まだ、慣れる気はまったくしない。でも、慣れたときにはツカサを受け入れることができるのだろうか。
予想すらできない。そのときには自分の中で答えが出ていると思いたいけど……。
「か、果歩さんっ」
「お? どうした?」
「あのっ――あのっ」
「うん? もうこの際だからなんでも訊いてよ」
「あのっ――果歩さん、初めてのとき、怖かったですかっ?」
「あー……それね。でも、私の初体験って翠葉ちゃんに話すにはあまり相応しくないんだよねぇ……」
「え……?」
果歩さんは今日一番の苦笑を浮かべた。
「実はさ、友達の話に出てくるラブホに興味があったの。でも、そんなところにひとりじゃ行けないでしょ? で、行ってみたいって話をしたら、楓さんが連れていってくれたの」
「えっ……?」
今、何を聞いただろうか、と逡巡するも、果歩さんの話はまだ終わってはいなかった。
「するとかしないとか、あまり考えてなかったんだ。でも、男の人はそこまで行ったらするものだと思ってるわけで……。成り行きでしちゃいました。そしたら、その一回で妊娠。とことん軽はずみな行動で、とことん行き当たりばったりな人生。後悔はしてないけど子どもにはちょっと話せないなぁ……」
それは話せないだろう……。
思わず愛想笑いを返してしまう。
「怖いというよりも、どんなものだろう、って感じだった。恥ずかしい思いもしたし、痛いとも思ったんだけど、最後には相手が楓さんで良かったって思ったよ」
果歩さんは穏やかに笑っている。
「あのね、そんなに怖いものじゃない。それだけは言える。相手を信頼しているのなら、怖いものじゃないよ」
果歩さんは言ったあとに首を傾げ、
「今ので翠葉ちゃんが欲しい答えになってた?」
「はい。立ち入ったことをおうかがいしてすみませんでした……」
「いーよいーよ。私と翠葉ちゃんの仲じゃない。困ったことがあったらいつでもおいで。家も隣だしね」
にこりと笑われて少し緊張が解れた。
ゲストルームには誰もおらず、いつものようにお母さんと唯兄の予定が書かれたメモがリビングテーブルに置かれている。
キッチンに用意されていたお昼ご飯を温めて食べると、浴衣を着る前にシャワーを浴びることにした。
お風呂から上がり髪の毛を乾かし終わると髪の毛をポニーテールにしてお団子を作る。
普段、ポニーテールにすることはあっても、そこからお団子にすることはない。
「確か……お団子を作って少し髪の毛を引っ張り出すと、ルーズな感じになるのよね……?」
苦戦しながら、去年の夏休みに宮川さんにしてもらった髪型を再現する。宮川さんがしてくれたようにはいかなかったけれど、初めてにしてはそこそこの出来栄え。
自室に戻ると、たとう紙から浴衣を取り出した。
今日着るのは、紺よりは少し明るい青地に淡いピンクの紫陽花が咲く浴衣。半幅帯は紫陽花に合わせてピンクとブルーのリバーシブル。下駄の鼻緒もピンク。
「自分で着るの、久しぶり……」
去年は茶道部で何度か着物を着たけれど、藤の会で着た振袖は園田さんに着付けてもらった。何より、自分の浴衣に袖を通すのは三年ぶりのこと。
黒地とピンクが交互に縫い合わされている巾着に必要なものを入れると、携帯で時間を確認する。
「三時半前……」
果歩さんとの待ち合わせは三時半。ちょうどいい時間といえば聞こえはいいけれど、人と待ち合わせているにはぎりぎりすぎる時間に少し肝を冷やした。
ゲストルームを出ると、果歩さんも家から出てきたところだった。
「お! 翠葉ちゃん浴衣!」
「果歩さん、こんにちは」
「かわいいかわいい、似合ってる! 私なんて妊婦スタイル。かわいくもなんともないよー」
「今、臨月ですよね?」
「そっ! 二十七日が予定日だけどどうかな。早まるか遅れるか」
にこにこと話す果歩さんは、シャープでスレンダーな印象から少し離れ、角がないまぁるい印象になっていた。
「外、結構暑いですけど……本当に徒歩で大丈夫なんですか?」
「うん。妊婦は必要以上に休んでちゃだめなのよ。歩けるなら歩かないとね」
そんな話をしながら一階へ下りると、
「果歩様、お車をご用意いたします」
崎本さんがカウンターから車のキーを取り出す。しかし、
「崎本さん、歩いていくからいいわ」
「ですが、楓様からお出かけの際は送迎するように言われておりますので……」
「うん、それ却下でお願いします。翠葉ちゃんも一緒だし、警護班の人たちも近くにいるから大丈夫です」
崎本さんはまだ何か言おうとしていたけれど、果歩さんは気にせずエントランスを出てしまった。
「しっかし、何この太陽。容赦なさすぎでしょ。妊婦を労わりなさいって話よね?」
果歩さんは言いながらもずんずん歩きだす。そして、学園私道に入った途端、
「妊婦にこの坂はきっついわ……」
日傘を差した果歩さんは額に汗をかき、呼吸が少し上がっていた。
「……大丈夫ですか?」
「大丈夫。でも、ちょっとゆっくり目でお願い」
「あ、はい」
自分もハイペースで歩けはしない。
果歩さんは「つらい」と言いながらも喋ることをやめようとはしなかった。
「司とはどう? うまくいってる?」
「どうでしょう……? 両思いになってからのほうがうまくいっていないというか、何もないはずなのにすれ違ったり、小さな問題がちょこちょこ起こります」
「たとえば?」と訊く果歩さんに、付き合い始めてからのあれこれを話すと、声を立ててケタケタと笑われた。
「果歩さん、ひどいです……」
「ごめんごめん! あまりにもかわいいすれ違いしてるもんだから」
「かわいいすれ違い、ですか……? 私はいつも必死です……」
「ま、そうだよね。当の本人たちは笑えないよね」
言いながらも、果歩さんはクスクスと笑う。
そんな果歩さんを見て思う。
果歩さんになら話せるかな……。
性行為云々の話をお母さんにするのは気が引ける。かといって、同性ではない唯兄と蒼兄に相談するのも難しくて、同級生にはひどく恥ずかしくて話せない。玉紀先生に相談したいなと思ったら、予約は一ヶ月半待ちという状態だった。
「でもさ、すれ違っても何しても、翠葉ちゃんは司に大切にされてるよ」
「え……?」
「実はさ、先月の終わりに司がうちに来たの」
「何をしに……?」
「そうねぇ……相談っていうか、疑問を解消しにきたのかな?」
「疑問……?」
それはどんな疑問だろう。
「んーーー……ぶっちゃけて話すと、司にえっちしたいって言われてるでしょ?」
私は絶句した。すると、
「あ、えっちイコールセックスね? セックスイコール性行為、わかる?」
果歩さんが口を開くたびに顔の温度が上昇する。さらには返事を求められていたので、私はぎこちなくコクコクと首を縦に振った。
「うんうん、その初々しい反応がまたかわいいよね」
笑いながらも果歩さんは話し続ける。
「司に訊かれたのは、妊娠して得たものと失ったもの」
「……え?」
「妊娠して何を得たのか、何を失ったのかを訊きにきたよ。私は大学を卒業する年にできちゃった結婚したけど、翠葉ちゃんはまだ十八歳。たった数年の差だけど、やっぱりそこは大きな壁があると思うんだよね。そういう話をした」
「……どうして?」
「翠葉ちゃんは司とそういう関係になることを拒んだでしょう? 子どもができたら中絶はしたくない。でも、今はまだ高校生でいたい、って。その言葉を受けて、司なりに理解しようとした結果じゃないかな。性別が違うだけで相手の考えを理解できないことがある。でも、司は翠葉ちゃんのことを理解しようとしてるよ。そういう部分、司って優しいよね」
果歩さんはにこりと笑った。
「果歩さんは何を失って、何を得たんですか……?」
口にしていいのか戸惑う内容だった。でも、司が訊いたのなら私も訊いていいだろうか――
そんな甘えとも取れる気持ちで口にした。
「そんな申し訳なさそうな顔しなくていいってば。話を振ったのは私なんだからさ」
果歩さんは冗談ぽく私のこめかみの辺りを小突く。
「失ったと思ったものは、あると思っていた未来。得たものは子ども。それから、楓さんとの未来」
少し気になる物言いだった。
「失ったと思った、というのは……?」
「私、ウィステリアホテルに務める人たちの子どもを預かるキッズルームに就職が決まっていたの。だから、子どもができなければ新社会人として働いていたわけよ。その未来がなくなったと思った。でも、実際は少し先送りになっただけだった」
少し先送り……?
「翠葉ちゃん、私、何も失ってないよ。勉強はいつだってできるし、就職だってそう。この子が生まれて少ししたら就職する。そういう意味では、得たものはあっても失ったものはないの。少し回り道をしているだけ」
プラス方面への発想の転換が果歩さんらしいと思った。
「それから、私が言っても真実味が薄いんだけど、避妊法として推奨されているくらいにはゴムでの避妊って有効なわけ。数にしたら九十五パーセントだよ。だから、そんなに子どもができたときのことばかり考えなくて大丈夫」
確率を提示されて、すっかりそんな数字を忘れていたことに気づく。
私が考えていたのは保証されていない五パーセントの部分だった。
私、逃げているのかな……。本当は、ただ五パーセントの可能性に乗じているだけで、ツカサとの関係を進めたくないのかな。子どもができるかもしれないから、と悩んでいるように見せて、ただ単に、そういった関係になる覚悟が持てないだけなのだろうか。
「翠葉ちゃん」
不意に声をかけられビク、と身体が震えた。すると、果歩さんに肩をポンポンと叩かれる。
「何も考えずに前に進むより、思い悩んで進むほうが私はいいと思う。悩みたいだけ悩みな。きっと司は無理強いせず待ってくれるよ。でも、待っていたところで誰かが答えをくれる問題じゃない。だから、答えは自分で出すってことだけは肝に銘じておこうね。それから、石橋は叩きすぎると渡る前に壊れるよ。気をつけなね」
「……はい」
ツカサに提示した気持ちから五パーセントの部分を差し引くと、キスと抱きしめられることに慣れたら、ということになる。
まだ、慣れる気はまったくしない。でも、慣れたときにはツカサを受け入れることができるのだろうか。
予想すらできない。そのときには自分の中で答えが出ていると思いたいけど……。
「か、果歩さんっ」
「お? どうした?」
「あのっ――あのっ」
「うん? もうこの際だからなんでも訊いてよ」
「あのっ――果歩さん、初めてのとき、怖かったですかっ?」
「あー……それね。でも、私の初体験って翠葉ちゃんに話すにはあまり相応しくないんだよねぇ……」
「え……?」
果歩さんは今日一番の苦笑を浮かべた。
「実はさ、友達の話に出てくるラブホに興味があったの。でも、そんなところにひとりじゃ行けないでしょ? で、行ってみたいって話をしたら、楓さんが連れていってくれたの」
「えっ……?」
今、何を聞いただろうか、と逡巡するも、果歩さんの話はまだ終わってはいなかった。
「するとかしないとか、あまり考えてなかったんだ。でも、男の人はそこまで行ったらするものだと思ってるわけで……。成り行きでしちゃいました。そしたら、その一回で妊娠。とことん軽はずみな行動で、とことん行き当たりばったりな人生。後悔はしてないけど子どもにはちょっと話せないなぁ……」
それは話せないだろう……。
思わず愛想笑いを返してしまう。
「怖いというよりも、どんなものだろう、って感じだった。恥ずかしい思いもしたし、痛いとも思ったんだけど、最後には相手が楓さんで良かったって思ったよ」
果歩さんは穏やかに笑っている。
「あのね、そんなに怖いものじゃない。それだけは言える。相手を信頼しているのなら、怖いものじゃないよ」
果歩さんは言ったあとに首を傾げ、
「今ので翠葉ちゃんが欲しい答えになってた?」
「はい。立ち入ったことをおうかがいしてすみませんでした……」
「いーよいーよ。私と翠葉ちゃんの仲じゃない。困ったことがあったらいつでもおいで。家も隣だしね」
にこりと笑われて少し緊張が解れた。
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