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July
七夕祭り Side 真白 01話
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「真白さん、堀江さんがいらっしゃいましたよ」
涼さんに声をかけられお庭へ出る。と、実家の庭師、堀江さんがお弟子さんと笹を携えて立っていた。
「真白お嬢様、どちらへ立てましょうか」
にこやかに尋ねられ、庭の一角に立ててもらえるようお願いした。
今日は七夕。いつもなら涼さんとお出かけをしてご飯を食べて帰ってくる日だけど、今年は少しわがままを言ってみた。
湊も楓も結婚して家族が増えたから、自宅でささやかながらも七夕祭りをしたい、と。
涼さんはすぐに賛同してくれ、果歩ちゃんと翠葉ちゃんに声をかけたところ、ふたりともふたつ返事で了承してくれた。幸い、楓のシフトも夜勤ではなく、こういったイベントごとには興味を示さない司も翠葉ちゃんが来るなら、といった具合に参加することに。湊は静くんとパーティーへ行かなくてはいけなくなるかもしれない、とのことで返事は保留。みんなが揃ったら嬉しいけれど、今日は湊と静くんがいなくても賑やかな集まりになりそう。
「立派な笹をありがとうございます」
「いえいえ。こんなことでよろしければいつでもおっしゃってください」
堀江さんは七福神の恵比寿さんのような笑顔でお庭を出ていった。
改めて笹を見上げる。涼さんと比べると、五十センチちょっと高い気がする。つまり二メートルを越える高さがあるということ。
「飾りは作ってあるのですか? よろしければ飾りつけまでお手伝いしますが」
申し出てくれた涼さんに対し、私は苦笑を返した。
「それが、短冊作りに夢中になってしまって、飾りのほうはほとんど手をつけてないんです」
「では、私も手伝いましょう」
「えっ? 涼さんが折り紙……ですか?」
「……意外、ですか? 施設では小さい子の面倒を見ていたので、七夕の飾りくらいなら作れますよ」
ありがたい申し出だったけれど、私は遠慮することにした。
「実は、強力な助っ人が四時過ぎくらいに来てくれるんです」
「助っ人、ですか?」
「はい。果歩ちゃんと翠葉ちゃんにお手伝いをお願いしました。ですので、三人で作っても間に合いそうになかったら、そのときこそお願いしますね」
「かしこまりました。では、私は書斎にいます」
「はい。あとでコーヒーをお持ちします」
「そのくらいは自分でやりますよ」
「でも……」
「これからバーベキューの準備をなさるのでしょう?」
キッチンにずらりと並ぶお野菜を指差して言われる。
「はい……」
「真白さんも飲まれますか? よろしければふたり分淹れますが」
「では、お願いします」
涼さんはダイニングテーブルでコーヒーを淹れ始め、私はコーヒーのいい香りをかぎながらお野菜のカットを楽しんだ。
四時を回ったところでインターホンが鳴る。そして、私が出る前にハナが玄関へ向かって吼え始めた。
「こら、ハナ吼えないの」
ハナを抱えて玄関を開けると、
「こんにちは」
元気よく挨拶をしてくれたのは果歩ちゃんで、小さく会釈したのは浴衣を着た翠葉ちゃんだった。
「果歩ちゃん、体調はどう?」
「全然問題ないです!」
「そう、良かった。翠葉ちゃんもいらっしゃい。浴衣、とってもかわいいわ」
「ありがとうございます」
「浴衣を着ているのを見てしまうと着たくなるわね」
「えー! 着ればいいじゃないですか!」
「時間があったらそうさせてもらうわね」
ふたりに飲み物を用意してからリビングに腰を落ち着けたものの、ハナが吼えっぱなしでまったく会話にならない。
果歩ちゃんはそんなハナを手懐けようと、ハナの大好物のジャーキーをチラつかせる。しかし、ハナはまったく見向きもしない。挙句、翠葉ちゃんの膝に乗って吼え始める。
ハナの声は甲高く、これが続くと頭痛がしてくるのだ。それだけは避けたくもあり、
「ハナ……果歩ちゃんは家族よ? 何度もうちに来ているでしょう? そろそろ覚えない? ほら、いつもジャーキーをくれる人でしょう?」
ハナはかわいい顔をゆがめてウーウー唸り、キャンキャンと全身を使って吼え立てる。
「ハナぁ……少しおとなしくしてて? これじゃ飾り作りもできないわ」
諦めて涼さんにお願いしようかと思ったところへ涼さんがクスクスと笑いながらやってきた。
「ハナは私が見ていましょう。ハナ、おいで」
涼さんに抱え上げられたハナは、涼さんの口元をペロリと舐めて果歩ちゃんに視線を戻す。涼さんは、再度ハナが吼え始める前にリビングをあとにした。
「さっすがお義父さんだわ……」
果歩ちゃんの言葉に、「本当にね」と答えると、
「今日、涼先生もいらっしゃるんですね?」
翠葉ちゃんが不思議そうに首を傾げていた。
「毎年、七夕はお休みしてくれるんです」
「お義母さんとお義父さん、七夕に出逢ったんだって」
「わぁ、すてき……」
その言葉が素直に嬉しくて、私はにこりと笑んで席を立った。あらかじめ作っていた短冊を取りに行くと、後ろからこんな会話が聞こえてくる。
「翠葉ちゃんと司は? やっぱり学校で出逢ったの?」
「はい。高校の入学式の日に会ったんですけど、あとで知ったら、その日はツカサの誕生日でした」
「それもまたすごいね?」
ようやく笹の飾り作りが始まったものの、こんな話題があがっては手がお留守になってしまいそうだ。私が短冊を入れた箱を持って戻ると、
「わっ! かわいい! 私、このピンクの短冊いただいてもいいですか?」
すぐに手を伸ばしたのは果歩ちゃんだった。
「きれいな短冊……。和紙を重ねて作られたんですね」
翠葉ちゃんは、ほぉ、とため息をつくほどに目をキラキラと輝かせている。
湊がこの場にいたとしても、これほどの反応は見せてくれなかっただろう。そう思うと、女の子らしい家族が増えたことがとても嬉しく思えた。とはいえ、翠葉ちゃんはまだ家族ではないけれど、翠葉ちゃんが家族に加わる未来を夢見てしまう。
「短冊、作りだしたら止まらなくて、こんなにたくさんあるの。だから、願いごと、たくさん書いちゃいましょうね」
枚数にしたら参加人数の三倍くらいはあるだろう。司に見せたら呆れられてしまいそうだけれど、きっとこの子たちならたくさんの願いごとを書いてくれるだろう。
ふたりは笑顔で「はい」と数枚の短冊を手に取った。
五時半を回ったところでようやく飾り作りが終わり涼さんを呼びに行くと、ハナは涼さんの膝の上で丸くなって眠っていた。
「起きたらまた吼えるでしょうか」
小さな声で尋ねると、ハナがギンと目を開き辺りをうかがう。
「……浴衣は断念して、ハナを抱っこしていなくちゃだめそうですね」
ハナを抱っこしようとしたそのとき、
「飾り付けの間だけハナをお願いしても?」
「え?」
「飾り付けさえ終われば、ハナは私が引き受けます。真白さんは浴衣を着られてはいかがですか?」
「……でも」
「大丈夫です。疲れたら司に変わってもらいますから」
涼さんににこりと笑われ、私は飾りつけが終わると浴衣を着に寝室へ向かった。
涼さんに声をかけられお庭へ出る。と、実家の庭師、堀江さんがお弟子さんと笹を携えて立っていた。
「真白お嬢様、どちらへ立てましょうか」
にこやかに尋ねられ、庭の一角に立ててもらえるようお願いした。
今日は七夕。いつもなら涼さんとお出かけをしてご飯を食べて帰ってくる日だけど、今年は少しわがままを言ってみた。
湊も楓も結婚して家族が増えたから、自宅でささやかながらも七夕祭りをしたい、と。
涼さんはすぐに賛同してくれ、果歩ちゃんと翠葉ちゃんに声をかけたところ、ふたりともふたつ返事で了承してくれた。幸い、楓のシフトも夜勤ではなく、こういったイベントごとには興味を示さない司も翠葉ちゃんが来るなら、といった具合に参加することに。湊は静くんとパーティーへ行かなくてはいけなくなるかもしれない、とのことで返事は保留。みんなが揃ったら嬉しいけれど、今日は湊と静くんがいなくても賑やかな集まりになりそう。
「立派な笹をありがとうございます」
「いえいえ。こんなことでよろしければいつでもおっしゃってください」
堀江さんは七福神の恵比寿さんのような笑顔でお庭を出ていった。
改めて笹を見上げる。涼さんと比べると、五十センチちょっと高い気がする。つまり二メートルを越える高さがあるということ。
「飾りは作ってあるのですか? よろしければ飾りつけまでお手伝いしますが」
申し出てくれた涼さんに対し、私は苦笑を返した。
「それが、短冊作りに夢中になってしまって、飾りのほうはほとんど手をつけてないんです」
「では、私も手伝いましょう」
「えっ? 涼さんが折り紙……ですか?」
「……意外、ですか? 施設では小さい子の面倒を見ていたので、七夕の飾りくらいなら作れますよ」
ありがたい申し出だったけれど、私は遠慮することにした。
「実は、強力な助っ人が四時過ぎくらいに来てくれるんです」
「助っ人、ですか?」
「はい。果歩ちゃんと翠葉ちゃんにお手伝いをお願いしました。ですので、三人で作っても間に合いそうになかったら、そのときこそお願いしますね」
「かしこまりました。では、私は書斎にいます」
「はい。あとでコーヒーをお持ちします」
「そのくらいは自分でやりますよ」
「でも……」
「これからバーベキューの準備をなさるのでしょう?」
キッチンにずらりと並ぶお野菜を指差して言われる。
「はい……」
「真白さんも飲まれますか? よろしければふたり分淹れますが」
「では、お願いします」
涼さんはダイニングテーブルでコーヒーを淹れ始め、私はコーヒーのいい香りをかぎながらお野菜のカットを楽しんだ。
四時を回ったところでインターホンが鳴る。そして、私が出る前にハナが玄関へ向かって吼え始めた。
「こら、ハナ吼えないの」
ハナを抱えて玄関を開けると、
「こんにちは」
元気よく挨拶をしてくれたのは果歩ちゃんで、小さく会釈したのは浴衣を着た翠葉ちゃんだった。
「果歩ちゃん、体調はどう?」
「全然問題ないです!」
「そう、良かった。翠葉ちゃんもいらっしゃい。浴衣、とってもかわいいわ」
「ありがとうございます」
「浴衣を着ているのを見てしまうと着たくなるわね」
「えー! 着ればいいじゃないですか!」
「時間があったらそうさせてもらうわね」
ふたりに飲み物を用意してからリビングに腰を落ち着けたものの、ハナが吼えっぱなしでまったく会話にならない。
果歩ちゃんはそんなハナを手懐けようと、ハナの大好物のジャーキーをチラつかせる。しかし、ハナはまったく見向きもしない。挙句、翠葉ちゃんの膝に乗って吼え始める。
ハナの声は甲高く、これが続くと頭痛がしてくるのだ。それだけは避けたくもあり、
「ハナ……果歩ちゃんは家族よ? 何度もうちに来ているでしょう? そろそろ覚えない? ほら、いつもジャーキーをくれる人でしょう?」
ハナはかわいい顔をゆがめてウーウー唸り、キャンキャンと全身を使って吼え立てる。
「ハナぁ……少しおとなしくしてて? これじゃ飾り作りもできないわ」
諦めて涼さんにお願いしようかと思ったところへ涼さんがクスクスと笑いながらやってきた。
「ハナは私が見ていましょう。ハナ、おいで」
涼さんに抱え上げられたハナは、涼さんの口元をペロリと舐めて果歩ちゃんに視線を戻す。涼さんは、再度ハナが吼え始める前にリビングをあとにした。
「さっすがお義父さんだわ……」
果歩ちゃんの言葉に、「本当にね」と答えると、
「今日、涼先生もいらっしゃるんですね?」
翠葉ちゃんが不思議そうに首を傾げていた。
「毎年、七夕はお休みしてくれるんです」
「お義母さんとお義父さん、七夕に出逢ったんだって」
「わぁ、すてき……」
その言葉が素直に嬉しくて、私はにこりと笑んで席を立った。あらかじめ作っていた短冊を取りに行くと、後ろからこんな会話が聞こえてくる。
「翠葉ちゃんと司は? やっぱり学校で出逢ったの?」
「はい。高校の入学式の日に会ったんですけど、あとで知ったら、その日はツカサの誕生日でした」
「それもまたすごいね?」
ようやく笹の飾り作りが始まったものの、こんな話題があがっては手がお留守になってしまいそうだ。私が短冊を入れた箱を持って戻ると、
「わっ! かわいい! 私、このピンクの短冊いただいてもいいですか?」
すぐに手を伸ばしたのは果歩ちゃんだった。
「きれいな短冊……。和紙を重ねて作られたんですね」
翠葉ちゃんは、ほぉ、とため息をつくほどに目をキラキラと輝かせている。
湊がこの場にいたとしても、これほどの反応は見せてくれなかっただろう。そう思うと、女の子らしい家族が増えたことがとても嬉しく思えた。とはいえ、翠葉ちゃんはまだ家族ではないけれど、翠葉ちゃんが家族に加わる未来を夢見てしまう。
「短冊、作りだしたら止まらなくて、こんなにたくさんあるの。だから、願いごと、たくさん書いちゃいましょうね」
枚数にしたら参加人数の三倍くらいはあるだろう。司に見せたら呆れられてしまいそうだけれど、きっとこの子たちならたくさんの願いごとを書いてくれるだろう。
ふたりは笑顔で「はい」と数枚の短冊を手に取った。
五時半を回ったところでようやく飾り作りが終わり涼さんを呼びに行くと、ハナは涼さんの膝の上で丸くなって眠っていた。
「起きたらまた吼えるでしょうか」
小さな声で尋ねると、ハナがギンと目を開き辺りをうかがう。
「……浴衣は断念して、ハナを抱っこしていなくちゃだめそうですね」
ハナを抱っこしようとしたそのとき、
「飾り付けの間だけハナをお願いしても?」
「え?」
「飾り付けさえ終われば、ハナは私が引き受けます。真白さんは浴衣を着られてはいかがですか?」
「……でも」
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