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November
陽だまりの音 Side 翠葉 02話
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病院からマンションへ帰ってくると、高崎さんに案内され、コミュニティタワーに新しく用意されたミュージックルームへ向かった。
ガラス戸の向こうにはグランドピアノとハープが運び込まれており、先生が仕上がりを確認するようにピアノを弾いていた。
ドアを開ける音に気づいた先生が顔を上げ、「お帰りなさい」と声をかけられる。
「ただいま戻りました」
「足はまだ治らないようですね」
「はい。あと一ヶ月ちょっとは松葉杖生活です」
「そうですか……。くれぐれもお大事になさってくださいね」
「ありがとうございます」
「さて、帰ってきて早々ですが、ピアノの感触を確かめてみませんか?」
「はいっ!」
そのままピアノへ向かおうとしたら、
「その前に手洗いうがい」
ツカサに首根っこ掴まれ、部屋の隅にある洗面台へと追いやられた。
そこにはハンドソープとうがい薬、カップが用意されていて、コンシェルジュの気遣いがうかがえる。
感謝しながらうがいを始めると、背後では先生とツカサの自己紹介が始まっていた。
「御園生さんにピアノを教えている仙波と申します」
「藤宮司です」
「藤宮というと……秋斗さんやホテルオーナーの血縁者ですか?」
「はい。秋斗は母方の従兄になります。ホテルオーナーは義兄にあたります」
「そうでしたか。では、今日は御園生さんと一緒にピアノの音色を確認なさっていってくださいね」
私がふたりのもとへ行くと、ツカサはソファに座り、先生はピアノ前のポジションを譲ってくれた。
馴染みあるピアノはピカピカに磨かれていた。
ちょっとした緊張を纏いながら、ピアノに向かう。
ピアノさん、こんにちは――
今日はいつもと違うコンディションだけど、気分はどう?
今から少し、音を聴かせてくださいね……。
心の中で話しかけ、ゆっくりと鍵盤を沈める。と、指先に伝う感覚に頬が緩んだ。
軽くて弾きやすい。腕や手、指に無駄な力を入れることなく音を奏でられる。
指先から力が伝って、きちんと音に変換される感じ。それは「打てば鳴る」――そんな感覚。
いつも難しいと感じていたパッセージも難なく弾くことができ、指の稼働率が上がったとすら感じる。
それに、音が優しい。明るく透き通っていて、まるで森に注がれる陽の光のようなあたたかさだ。
一通り弾き終えると、ピアノ脇に立っていた先生を見上げる。
「先生、とっても弾きやすいしあたたかな音色です。大好き!」
「そうおっしゃっていただけて何よりです。御園生さんのオーダーから木漏れ日や陽だまりのような音を目指してみました」
「それっ! まるで森に注がれる陽の光みたいに思いました」
「なら、成功でしょうか」
先生は満足そうに笑みを浮かべ、ツカサの方へ向き直る。
「司くんはどうでしたか?」
「自分は翠ほど音楽に詳しくはありませんから。……でも、翠がこれほど喜んでいるのなら、問題ないと思います」
先生は笑顔で頷き、「それにしても……」と部屋をぐるりと見回した。
「御園生さんは練習環境に恵まれているんですねぇ……。音大を目指す子には珍しくないのですが、ここまで広い防音室で練習できる子はそうそういませんよ」
先生がそう言うのも無理はない。
一言で「ミュージックルーム」とは言うけれど、ただピアノとハープが置いてあるだけの部屋ではない。
壁際には高そうなオーディオセットが並び、部屋の中央には間に合わせで用意されたとは思えないコの字型のソファセットが置かれている。
それでも部屋が狭く感じることはない。それどころかまだスペースには余裕がある。
おそらく二十畳から三十畳ほどの広さがあるのではないだろうか。
ちょっとした発表会ができてしまいそうな広さだ。
「昨日お母様からご連絡をいただいて、ピアノを別棟に移動させたいと言われたときには何事かと思いましたけど、自宅からこちらの棟への移動だったんですね」
「はい……実は、この部屋も今日の午前中に急ぎ作られたものなんです」
「え……?」
「ここ、もともとは多目的ホールのひとつだったのですが、このピアノの持ち主、静さんが芸大を目指すなら家族を気にせず練習できる部屋があったほうがいいだろう、って用意してくださったんです」
「そうでしたか……。なんというか、さすがはホテルオーナーというだけあって、太っ腹な方ですね」
「私もそう思います」
そんな会話をしていると、高崎さんが三人分の飲み物を持ってきてくれた。
ツカサにはコーヒー、先生にはアールグレイ、私にはカモミールティー。
それぞれが飲み物を口にして一息つくと、
「先ほどお母様におうかがいしたのですが、レッスンは月曜日が都合いいそうですね」
「あ、そうなんです……。火曜日と木曜日は病院で、水曜日はハープのレッスン、金曜日は週に一度の部活動の日で……」
「毎日忙しそうですね」
先生はクスクスと笑う。
「先生は月曜日でも大丈夫ですか……? レッスンの時間が六時半以降でもよろしければ、火曜日と木曜日でも大丈夫なんですけど……」
「月曜日で大丈夫ですよ。むしろ好都合です。ライブやコンサートは金曜日土曜日に入ることが多いので。……では、時間は何時にしましょうか」
月曜日は七限授業の日だから五時前後には帰宅できる。
「五時半以降でしたら何時でも。むしろ、先生は何時からがいいでしょう?」
「そうですねぇ……お互い、レッスン前には多少腹ごしらえしたほうがいい気もしますので……それでは六時からにしましょうか。先にピアノのレッスンを二時間。十分の休憩を挟んでソルフェージュを一時間。よろしいですか?」
「はいっ! よろしくお願いします」
先生はスケジュール帳に予定を書き込むと
「では、今日はこれで失礼しますね」
「え? 先生、調律のお支払いは……?」
「先ほどお母様とお話をした際にいただきました。あとは御園生さんの試弾のみだったんです」
「っ……お待たせしてすみませんでした」
「いえ、調律が終わったのは五時過ぎでしたし、お母様とも一時間近くお話しさせていただきましたから、そんなに待ったわけではないんですよ」
そんなふうに話しながら席を立つ。
先生の見送りにエントランスへ行くと、フロントに立っていた高崎さんに声をかけられた。
「ミュージックルームの鍵なんだけど、明日の午後から指紋認証キーが使えるようになる。だから、自宅の鍵と同様の操作をしてね」
「ありがとうございます!」
「それ、俺の指紋も登録しておいてください」
「へ? 司様の……?」
高崎さんは一瞬不思議そうな顔をしたけれど、すぐに表情を改め「承ります」と答えた。
ツカサもこのまま帰るのかと思いきや、私のかばんを持ったままエレベーターホールへ引き返す。
「え? ツカサ、帰らないの?」
「家の前まで送る」
「っ……――」
思わず声をあげそうになって思いとどまる。
たぶん、「ここでいい」と言っても聞くつもりはないのだろう。
昨日もそうだったのだ。
エントランスまででいいと話しても、玄関の前までしっかり送り届けられた。
これは足の怪我が治るまで、ツカサの好意に甘えることにしよう。
エレベーターに乗ると、ほんのちょっと甘える要領でツカサにくっつく。すると、気持ちを察してくれたのか、ツカサが背後からすっぽりと抱きしめてくれた。
嬉しい……。
「ぎゅってして?」と言えばしてくれるだろう。でも、言わなくてもしてもらえるの、すっごく嬉しい。
頬がにまにまと緩みきっているところ、
「ピアノがホームレッスンに切り替わったの、聞いてなかったんだけど……」
頭上で囁かれた言葉に心臓がピョンと飛び跳ねる。
「……え?」
「だから、ピアノのレッスンがホームレッスンになったの、聞いてないんだけど」
そう言われてみれば話してなかったかも……?
でもそれは、言わなくていいやとかそういうことではなくて、慧くんの話をしても先生の話をしても、ツカサの機嫌が悪くなってしまうからで――
……でもこれは、報告を怠ったことになるだろうか……。
「ホームレッスンに切り替えるって決めたのは先週の日曜日。ライブのあった日なのだけど、ツカサ、機嫌悪かったでしょう? それでなんとなく言いそびれてしまっただけ。他意はないのよ?」
そっと顔を見上げると、ツカサは決まり悪そうに顔を背けていた。
それ以上追求してこないところを見ると、自分の分が悪いと思っているのだろうか。
ツカサの出方をうかがっていると、
「レッスンのとき、俺もその場にいていい?」
「え?」
「だめなの?」
「えーと……」
あの部屋にツカサがいたとして、ツカサがレッスンの邪魔をすることは絶対にないだろう。それに、ピアノの前に座った状態だと、ソファに座る人間が視界に入るでもない。
そこからすると、私の集中が途切れることもないわけで……。
「問題ない、かな? でも、六時からレッスンが始まって九時過ぎまでだよ? 真白さんや涼先生、心配しないかな?」
「所在は明らかにしておくし、帰りは警護班に送ってもらうから問題ない」
「……そう。でも、どうして?」
「レッスンでも、翠を男とふたりにしておきたくない。仙波さんがどういう人間なのか、俺は知らないから」
ツカサの心配を笑ってはいけない。そうは思うけど、思わず笑みが漏れてしまう。
「仙波先生は紳士だよ」
「それを言うなら、秋兄だって見た目も触りも紳士だろ? でも、中身はあんなだ」
それはそれでちょっとひどい……。
起こった笑いがしだいに大きくなってしまう。
「ツカサはちょっと心配しすぎ。仙波先生、レッスンのときはとっても厳しいのよ? でも、それも目の当たりにしたらわかるよね。うん、良ければ月曜日のレッスン、見に来てね」
そう言ってエレベーターを降りると、
「翠」
「ん?」
振り返った瞬間にキスをされた。
「もう……また外で……」
「エレベーターの中だとコンシェルジュに見られる可能性があるけど?」
そういう問題じゃない……とは思いつつも、やっぱりキスは嬉しい。
願わくば、少し心構えをさせてほしかったけれど……。
ゲストルーム前まで来るとかばんを渡され、「また明日」と言われた。
私は少しだけ名残惜しさを感じながら、「また明日」と同じ言葉を返した。
ガラス戸の向こうにはグランドピアノとハープが運び込まれており、先生が仕上がりを確認するようにピアノを弾いていた。
ドアを開ける音に気づいた先生が顔を上げ、「お帰りなさい」と声をかけられる。
「ただいま戻りました」
「足はまだ治らないようですね」
「はい。あと一ヶ月ちょっとは松葉杖生活です」
「そうですか……。くれぐれもお大事になさってくださいね」
「ありがとうございます」
「さて、帰ってきて早々ですが、ピアノの感触を確かめてみませんか?」
「はいっ!」
そのままピアノへ向かおうとしたら、
「その前に手洗いうがい」
ツカサに首根っこ掴まれ、部屋の隅にある洗面台へと追いやられた。
そこにはハンドソープとうがい薬、カップが用意されていて、コンシェルジュの気遣いがうかがえる。
感謝しながらうがいを始めると、背後では先生とツカサの自己紹介が始まっていた。
「御園生さんにピアノを教えている仙波と申します」
「藤宮司です」
「藤宮というと……秋斗さんやホテルオーナーの血縁者ですか?」
「はい。秋斗は母方の従兄になります。ホテルオーナーは義兄にあたります」
「そうでしたか。では、今日は御園生さんと一緒にピアノの音色を確認なさっていってくださいね」
私がふたりのもとへ行くと、ツカサはソファに座り、先生はピアノ前のポジションを譲ってくれた。
馴染みあるピアノはピカピカに磨かれていた。
ちょっとした緊張を纏いながら、ピアノに向かう。
ピアノさん、こんにちは――
今日はいつもと違うコンディションだけど、気分はどう?
今から少し、音を聴かせてくださいね……。
心の中で話しかけ、ゆっくりと鍵盤を沈める。と、指先に伝う感覚に頬が緩んだ。
軽くて弾きやすい。腕や手、指に無駄な力を入れることなく音を奏でられる。
指先から力が伝って、きちんと音に変換される感じ。それは「打てば鳴る」――そんな感覚。
いつも難しいと感じていたパッセージも難なく弾くことができ、指の稼働率が上がったとすら感じる。
それに、音が優しい。明るく透き通っていて、まるで森に注がれる陽の光のようなあたたかさだ。
一通り弾き終えると、ピアノ脇に立っていた先生を見上げる。
「先生、とっても弾きやすいしあたたかな音色です。大好き!」
「そうおっしゃっていただけて何よりです。御園生さんのオーダーから木漏れ日や陽だまりのような音を目指してみました」
「それっ! まるで森に注がれる陽の光みたいに思いました」
「なら、成功でしょうか」
先生は満足そうに笑みを浮かべ、ツカサの方へ向き直る。
「司くんはどうでしたか?」
「自分は翠ほど音楽に詳しくはありませんから。……でも、翠がこれほど喜んでいるのなら、問題ないと思います」
先生は笑顔で頷き、「それにしても……」と部屋をぐるりと見回した。
「御園生さんは練習環境に恵まれているんですねぇ……。音大を目指す子には珍しくないのですが、ここまで広い防音室で練習できる子はそうそういませんよ」
先生がそう言うのも無理はない。
一言で「ミュージックルーム」とは言うけれど、ただピアノとハープが置いてあるだけの部屋ではない。
壁際には高そうなオーディオセットが並び、部屋の中央には間に合わせで用意されたとは思えないコの字型のソファセットが置かれている。
それでも部屋が狭く感じることはない。それどころかまだスペースには余裕がある。
おそらく二十畳から三十畳ほどの広さがあるのではないだろうか。
ちょっとした発表会ができてしまいそうな広さだ。
「昨日お母様からご連絡をいただいて、ピアノを別棟に移動させたいと言われたときには何事かと思いましたけど、自宅からこちらの棟への移動だったんですね」
「はい……実は、この部屋も今日の午前中に急ぎ作られたものなんです」
「え……?」
「ここ、もともとは多目的ホールのひとつだったのですが、このピアノの持ち主、静さんが芸大を目指すなら家族を気にせず練習できる部屋があったほうがいいだろう、って用意してくださったんです」
「そうでしたか……。なんというか、さすがはホテルオーナーというだけあって、太っ腹な方ですね」
「私もそう思います」
そんな会話をしていると、高崎さんが三人分の飲み物を持ってきてくれた。
ツカサにはコーヒー、先生にはアールグレイ、私にはカモミールティー。
それぞれが飲み物を口にして一息つくと、
「先ほどお母様におうかがいしたのですが、レッスンは月曜日が都合いいそうですね」
「あ、そうなんです……。火曜日と木曜日は病院で、水曜日はハープのレッスン、金曜日は週に一度の部活動の日で……」
「毎日忙しそうですね」
先生はクスクスと笑う。
「先生は月曜日でも大丈夫ですか……? レッスンの時間が六時半以降でもよろしければ、火曜日と木曜日でも大丈夫なんですけど……」
「月曜日で大丈夫ですよ。むしろ好都合です。ライブやコンサートは金曜日土曜日に入ることが多いので。……では、時間は何時にしましょうか」
月曜日は七限授業の日だから五時前後には帰宅できる。
「五時半以降でしたら何時でも。むしろ、先生は何時からがいいでしょう?」
「そうですねぇ……お互い、レッスン前には多少腹ごしらえしたほうがいい気もしますので……それでは六時からにしましょうか。先にピアノのレッスンを二時間。十分の休憩を挟んでソルフェージュを一時間。よろしいですか?」
「はいっ! よろしくお願いします」
先生はスケジュール帳に予定を書き込むと
「では、今日はこれで失礼しますね」
「え? 先生、調律のお支払いは……?」
「先ほどお母様とお話をした際にいただきました。あとは御園生さんの試弾のみだったんです」
「っ……お待たせしてすみませんでした」
「いえ、調律が終わったのは五時過ぎでしたし、お母様とも一時間近くお話しさせていただきましたから、そんなに待ったわけではないんですよ」
そんなふうに話しながら席を立つ。
先生の見送りにエントランスへ行くと、フロントに立っていた高崎さんに声をかけられた。
「ミュージックルームの鍵なんだけど、明日の午後から指紋認証キーが使えるようになる。だから、自宅の鍵と同様の操作をしてね」
「ありがとうございます!」
「それ、俺の指紋も登録しておいてください」
「へ? 司様の……?」
高崎さんは一瞬不思議そうな顔をしたけれど、すぐに表情を改め「承ります」と答えた。
ツカサもこのまま帰るのかと思いきや、私のかばんを持ったままエレベーターホールへ引き返す。
「え? ツカサ、帰らないの?」
「家の前まで送る」
「っ……――」
思わず声をあげそうになって思いとどまる。
たぶん、「ここでいい」と言っても聞くつもりはないのだろう。
昨日もそうだったのだ。
エントランスまででいいと話しても、玄関の前までしっかり送り届けられた。
これは足の怪我が治るまで、ツカサの好意に甘えることにしよう。
エレベーターに乗ると、ほんのちょっと甘える要領でツカサにくっつく。すると、気持ちを察してくれたのか、ツカサが背後からすっぽりと抱きしめてくれた。
嬉しい……。
「ぎゅってして?」と言えばしてくれるだろう。でも、言わなくてもしてもらえるの、すっごく嬉しい。
頬がにまにまと緩みきっているところ、
「ピアノがホームレッスンに切り替わったの、聞いてなかったんだけど……」
頭上で囁かれた言葉に心臓がピョンと飛び跳ねる。
「……え?」
「だから、ピアノのレッスンがホームレッスンになったの、聞いてないんだけど」
そう言われてみれば話してなかったかも……?
でもそれは、言わなくていいやとかそういうことではなくて、慧くんの話をしても先生の話をしても、ツカサの機嫌が悪くなってしまうからで――
……でもこれは、報告を怠ったことになるだろうか……。
「ホームレッスンに切り替えるって決めたのは先週の日曜日。ライブのあった日なのだけど、ツカサ、機嫌悪かったでしょう? それでなんとなく言いそびれてしまっただけ。他意はないのよ?」
そっと顔を見上げると、ツカサは決まり悪そうに顔を背けていた。
それ以上追求してこないところを見ると、自分の分が悪いと思っているのだろうか。
ツカサの出方をうかがっていると、
「レッスンのとき、俺もその場にいていい?」
「え?」
「だめなの?」
「えーと……」
あの部屋にツカサがいたとして、ツカサがレッスンの邪魔をすることは絶対にないだろう。それに、ピアノの前に座った状態だと、ソファに座る人間が視界に入るでもない。
そこからすると、私の集中が途切れることもないわけで……。
「問題ない、かな? でも、六時からレッスンが始まって九時過ぎまでだよ? 真白さんや涼先生、心配しないかな?」
「所在は明らかにしておくし、帰りは警護班に送ってもらうから問題ない」
「……そう。でも、どうして?」
「レッスンでも、翠を男とふたりにしておきたくない。仙波さんがどういう人間なのか、俺は知らないから」
ツカサの心配を笑ってはいけない。そうは思うけど、思わず笑みが漏れてしまう。
「仙波先生は紳士だよ」
「それを言うなら、秋兄だって見た目も触りも紳士だろ? でも、中身はあんなだ」
それはそれでちょっとひどい……。
起こった笑いがしだいに大きくなってしまう。
「ツカサはちょっと心配しすぎ。仙波先生、レッスンのときはとっても厳しいのよ? でも、それも目の当たりにしたらわかるよね。うん、良ければ月曜日のレッスン、見に来てね」
そう言ってエレベーターを降りると、
「翠」
「ん?」
振り返った瞬間にキスをされた。
「もう……また外で……」
「エレベーターの中だとコンシェルジュに見られる可能性があるけど?」
そういう問題じゃない……とは思いつつも、やっぱりキスは嬉しい。
願わくば、少し心構えをさせてほしかったけれど……。
ゲストルーム前まで来るとかばんを渡され、「また明日」と言われた。
私は少しだけ名残惜しさを感じながら、「また明日」と同じ言葉を返した。
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