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December
それぞれのクリスマス Side 翠葉 04話
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クリスマスパーティーが終わると、飛鳥ちゃんと海斗くんが中心となってカラオケへ行く人を集った。
すると、半数くらいの人が二次会へ行くことになり、あとの半数は帰宅する人と、好きな人同士で過ごす人に分かれた。
私と桃華さんは後者。飛鳥ちゃんや香乃子ちゃんは、今日はみんなで楽しく過ごし、明日のイブを好きな人とふたりきりで過ごすらしい。
みんなをエントランスまで見送る途中、
「翠葉は明日何か予定があるの? それとも、藤宮司に用事があるとか?」
「どうして?」
「だって、明日藤宮司と会えないから、今日一緒に過ごすんじゃないの?」
「あ……実は私に予定があって」
「レッスンか何か?」
「ううん。おじいちゃんと一緒に、おじいちゃんのお友達のおうちのパーティーにお呼ばれしているの」
桃華さんはひどく驚いた顔をした。
「それ、断われなかったの?」
「え……どうして?」
「だって、彼氏がいるのにイブにおじい様との予定を入れちゃったの?」
「ツカサとは今日会えるし、二十五日も元おじい様の誕生パーティーで会えるからいいかな、と思って……。だめ、だったかな?」
「だめではないけど、藤宮司のことを考えると――」
桃華さんは一拍置いて、「いい気味ね」と笑った。
そんな会話をしているところへ、私服に着替えてきた蒼兄が追いつく。
「桃華さん、蒼兄、いってらっしゃい。楽しんできてね」
「「翠葉も!」」
私はふたりが仲良く歩く姿を見送ってからエントランスをあとにした。
一度ゲストルームに戻って着替えやプレゼント、ミュージックプレーヤーを持ってツカサの家を訪ねると、タキシード姿のツカサに出迎えられた。
その姿にほっとする。
「良かった! タキシード、もう着替えてたらどうしようかと思っちゃった」
ツカサは呆れたような表情で、
「そんなにこの格好にこだわる?」
「こだわる。正装してダンスなんてそうできることじゃないもの」
「だから、翠がドレスで踊りたいって言うなら付き合うって言ってるだろ?」
「ただドレスを着るのと、イベントでドレスを着るのは違うと思うの」
「その割には会場で踊らなかったけど?」
ツカサは意地悪な笑みを浮かべていて、私は誘導されたみたいに「意地悪」と小さく零した。
ツカサに促されてリビングへ行くと、ベランダの窓が開いていた。
窓の外は日が沈む寸前で、なんとも美しい光景だ。
荷物を置いて窓際へ行くと、
「翠、コート着て」
背後からコートをかけられる。
「どうしてコート?」
「これから屋上に出るから」
ツカサは玄関へ行き靴を持って戻ってくると、「どうぞ」と足元に靴を差し出してくれた。
不思議に思いながら外へ出て、ベランダの右端にある螺旋階段を上る。と、屋上には火を灯された大小様々なキャンドルが無数にちりばめられていた。
「ツカサ、これっ――」
「ここから見る夕日はきれいだし、星もそれなりに見えるって話しただろ?」
「うんっ! わぁ……空もきれいだけど、キャンドルもきれいっ!」
見たいものがあちこちにあって、どこから見ようか迷っていると、
「まずは夕日を見たら?」
ツカサの提案に頷き、稜線に沈む寸前の夕日に視点を定めた。
「きれいね……」
「あぁ」
夕日が沈むまで五分とかからず、日が沈んだら夕闇色の空に星が瞬きだした。そして、そこら中に置いてあるキャンドルの炎が優しく揺れては存在を主張する。
「次は私たちを見て!」そんなふうに言われているように思えた。
かわいいキャンドルに視線を移すと、寒さに身が震えた。
「寒い?」
「ちょっと……でも、まだもう少しここにいたい」
「ダンス、部屋でにする?」
訊かれて瞬時に首を左右に振った。
「こんなにすてきなところで踊れるなら、ここで踊りたい!」
ツカサはクスリと笑って、
「ミュージックプレーヤーは?」
「あ、バッグの中」
「これ?」
気づけば、部屋に置いてきたバッグをツカサが手に持っていた。
バッグの中からミュージックプレヤーを取り出すも、屋上にオーディオセットがあるはずもなく……。
「やっぱり、ダンスは部屋に戻ってからかな?」
ツカサを見ると、ポケットから取り出したイヤホンを見せられた。
「片耳ずつだけど」
「十分っ!」
私たちは片耳にイヤホンをセットして、どちからともなく身を寄せた。
イヤホンからは大好きな曲、「美女と野獣」が流れてくる。
優しいメロディに負けないくらい柔らかな体温が、じんわりと伝ってくる。
あったかい……。
頬に伝うぬくもりが、ひどく愛おしい。
寒い場所だから余計にそう思うのだろうか。
少し考えて違うかな、と思う。
ここが暖房のきいた屋内だろうが、灼熱の太陽が照りつける真夏だろうが、ツカサの体温をわずらわしく思うことはないだろう。
もっとぴったりくっつきたくて、胸に添えていた手をツカサの背に回す。と、
「寒い?」
「少しだけ……」
すると、ツカサは自身のコートに私をしまうように抱きしめなおしてくれた。
その仕草に、去年の後夜祭を思い出す。
あのときも今もドキドキしていることに変わりはないけど、今のほうが幾分か穏やかなドキドキだ。
大好きな曲はあっという間に終わってしまう。けれど、リピート設定していたため、曲は振り出しに戻った。
「……何回踊るつもり?」
ツカサの指摘に思わず吹き出す。
「一回で十分。この曲大好きで、いつも寝る前にリピート再生しているの」
ツカサはなるほど、といった顔でミュージックプレーヤーを止めた。
「長居すると風邪を引く」
「でも……もう少し星を見ていたいな」
「それなら、一度部屋へ戻ろう。着替えて、温まってからまた来ればいい」
「じゃ、そうする」
「翠は先に戻ってて」
「ツカサは?」
「火を消してから戻る」
「それなら私も――」
足を踏み出そうとした途端、ツカサに肩を掴まれストップを命じられる。
「ドレスの裾に火がついたらどうするつもり?」
「あ……」
ドレスの裾を見れば、風に誘われるようにしてひらひらと波打っていた。
「翠は先に戻って着替えてて。主寝室を使っていいから」
「わかった。リビングの隣の部屋、借りるね」
リビングに戻ると、入ったことのない部屋を前に少し緊張する。
この部屋は、湊先生に譲られてから一度も使っていないと聞いている。
ドアをそっと開け、入り口脇のスイッチを点ける。と、緊張したのがおかしくなるくらいシンプルな部屋だった。
十畳ほどの室内に、ダブルサイズのベッドと姿見だけが置かれている。
私はベッドの足元に紙袋を置くと、中からワンピースを取り出した。
普段なら絶対に選ばない、膝上十センチ丈。
でも、袖や襟ぐり、スカートの裾にファーがついていてとてもかわいいのだ。
それは唯兄と蒼兄とショッピングへ出かけたときに見つけたワンピースで、ふたりからクリスマスプレゼントに、と買ってもらったワンピース。
ふたりには文句なしにかわいい、と言ってもらえたけれど、ツカサにもかわいいと思ってもらえるだろうか。
わずかな期待に胸を膨らませ、袖を通す。
そして、結い上げていた髪の毛からバレッタを外すと、左サイドで緩く三つ編みにして、ツカサからもらったトンボ玉を通したゴムで結んだ。
姿見で全身チェックを済ませてリビングへ戻ると、ちょうどツカサが屋上から戻ってきたところだった。
今日はずっと一緒にいたから、少し離れた場所から見るのは新鮮に思える。
やっぱり格好いいな……。
そんな思いで眺めていたけれど、ツカサの様子がどうにもおかしい。
私を見たまま硬直しているように見える。
「ツカサ……?」
近づこうとしたら、
「俺も着替えてくる」
と、リビングを横切って廊下へと見えなくなった。
「……なんだったんだろう?」
……もしかして、ワンピース、似合ってない……?
不意に不安が襲う。
でも、蒼兄と唯兄は似合ってると言ってくれたし、お母さんも桃華さんもかわいいと言ってくれた。
……どうしてだろう。どれだけかわいいと言ってくれた人の名前を並べても、まったく不安がなくならない。
「あ……基本、私に甘い人たちの意見だからかな」
だからといってほかに着替えられるものはないし、ドレスに戻るのもおかしいし……。
私はいやなドキドキを感じながら、気持ちを紛らわせるためにお茶の準備をすることにした。
すると、半数くらいの人が二次会へ行くことになり、あとの半数は帰宅する人と、好きな人同士で過ごす人に分かれた。
私と桃華さんは後者。飛鳥ちゃんや香乃子ちゃんは、今日はみんなで楽しく過ごし、明日のイブを好きな人とふたりきりで過ごすらしい。
みんなをエントランスまで見送る途中、
「翠葉は明日何か予定があるの? それとも、藤宮司に用事があるとか?」
「どうして?」
「だって、明日藤宮司と会えないから、今日一緒に過ごすんじゃないの?」
「あ……実は私に予定があって」
「レッスンか何か?」
「ううん。おじいちゃんと一緒に、おじいちゃんのお友達のおうちのパーティーにお呼ばれしているの」
桃華さんはひどく驚いた顔をした。
「それ、断われなかったの?」
「え……どうして?」
「だって、彼氏がいるのにイブにおじい様との予定を入れちゃったの?」
「ツカサとは今日会えるし、二十五日も元おじい様の誕生パーティーで会えるからいいかな、と思って……。だめ、だったかな?」
「だめではないけど、藤宮司のことを考えると――」
桃華さんは一拍置いて、「いい気味ね」と笑った。
そんな会話をしているところへ、私服に着替えてきた蒼兄が追いつく。
「桃華さん、蒼兄、いってらっしゃい。楽しんできてね」
「「翠葉も!」」
私はふたりが仲良く歩く姿を見送ってからエントランスをあとにした。
一度ゲストルームに戻って着替えやプレゼント、ミュージックプレーヤーを持ってツカサの家を訪ねると、タキシード姿のツカサに出迎えられた。
その姿にほっとする。
「良かった! タキシード、もう着替えてたらどうしようかと思っちゃった」
ツカサは呆れたような表情で、
「そんなにこの格好にこだわる?」
「こだわる。正装してダンスなんてそうできることじゃないもの」
「だから、翠がドレスで踊りたいって言うなら付き合うって言ってるだろ?」
「ただドレスを着るのと、イベントでドレスを着るのは違うと思うの」
「その割には会場で踊らなかったけど?」
ツカサは意地悪な笑みを浮かべていて、私は誘導されたみたいに「意地悪」と小さく零した。
ツカサに促されてリビングへ行くと、ベランダの窓が開いていた。
窓の外は日が沈む寸前で、なんとも美しい光景だ。
荷物を置いて窓際へ行くと、
「翠、コート着て」
背後からコートをかけられる。
「どうしてコート?」
「これから屋上に出るから」
ツカサは玄関へ行き靴を持って戻ってくると、「どうぞ」と足元に靴を差し出してくれた。
不思議に思いながら外へ出て、ベランダの右端にある螺旋階段を上る。と、屋上には火を灯された大小様々なキャンドルが無数にちりばめられていた。
「ツカサ、これっ――」
「ここから見る夕日はきれいだし、星もそれなりに見えるって話しただろ?」
「うんっ! わぁ……空もきれいだけど、キャンドルもきれいっ!」
見たいものがあちこちにあって、どこから見ようか迷っていると、
「まずは夕日を見たら?」
ツカサの提案に頷き、稜線に沈む寸前の夕日に視点を定めた。
「きれいね……」
「あぁ」
夕日が沈むまで五分とかからず、日が沈んだら夕闇色の空に星が瞬きだした。そして、そこら中に置いてあるキャンドルの炎が優しく揺れては存在を主張する。
「次は私たちを見て!」そんなふうに言われているように思えた。
かわいいキャンドルに視線を移すと、寒さに身が震えた。
「寒い?」
「ちょっと……でも、まだもう少しここにいたい」
「ダンス、部屋でにする?」
訊かれて瞬時に首を左右に振った。
「こんなにすてきなところで踊れるなら、ここで踊りたい!」
ツカサはクスリと笑って、
「ミュージックプレーヤーは?」
「あ、バッグの中」
「これ?」
気づけば、部屋に置いてきたバッグをツカサが手に持っていた。
バッグの中からミュージックプレヤーを取り出すも、屋上にオーディオセットがあるはずもなく……。
「やっぱり、ダンスは部屋に戻ってからかな?」
ツカサを見ると、ポケットから取り出したイヤホンを見せられた。
「片耳ずつだけど」
「十分っ!」
私たちは片耳にイヤホンをセットして、どちからともなく身を寄せた。
イヤホンからは大好きな曲、「美女と野獣」が流れてくる。
優しいメロディに負けないくらい柔らかな体温が、じんわりと伝ってくる。
あったかい……。
頬に伝うぬくもりが、ひどく愛おしい。
寒い場所だから余計にそう思うのだろうか。
少し考えて違うかな、と思う。
ここが暖房のきいた屋内だろうが、灼熱の太陽が照りつける真夏だろうが、ツカサの体温をわずらわしく思うことはないだろう。
もっとぴったりくっつきたくて、胸に添えていた手をツカサの背に回す。と、
「寒い?」
「少しだけ……」
すると、ツカサは自身のコートに私をしまうように抱きしめなおしてくれた。
その仕草に、去年の後夜祭を思い出す。
あのときも今もドキドキしていることに変わりはないけど、今のほうが幾分か穏やかなドキドキだ。
大好きな曲はあっという間に終わってしまう。けれど、リピート設定していたため、曲は振り出しに戻った。
「……何回踊るつもり?」
ツカサの指摘に思わず吹き出す。
「一回で十分。この曲大好きで、いつも寝る前にリピート再生しているの」
ツカサはなるほど、といった顔でミュージックプレーヤーを止めた。
「長居すると風邪を引く」
「でも……もう少し星を見ていたいな」
「それなら、一度部屋へ戻ろう。着替えて、温まってからまた来ればいい」
「じゃ、そうする」
「翠は先に戻ってて」
「ツカサは?」
「火を消してから戻る」
「それなら私も――」
足を踏み出そうとした途端、ツカサに肩を掴まれストップを命じられる。
「ドレスの裾に火がついたらどうするつもり?」
「あ……」
ドレスの裾を見れば、風に誘われるようにしてひらひらと波打っていた。
「翠は先に戻って着替えてて。主寝室を使っていいから」
「わかった。リビングの隣の部屋、借りるね」
リビングに戻ると、入ったことのない部屋を前に少し緊張する。
この部屋は、湊先生に譲られてから一度も使っていないと聞いている。
ドアをそっと開け、入り口脇のスイッチを点ける。と、緊張したのがおかしくなるくらいシンプルな部屋だった。
十畳ほどの室内に、ダブルサイズのベッドと姿見だけが置かれている。
私はベッドの足元に紙袋を置くと、中からワンピースを取り出した。
普段なら絶対に選ばない、膝上十センチ丈。
でも、袖や襟ぐり、スカートの裾にファーがついていてとてもかわいいのだ。
それは唯兄と蒼兄とショッピングへ出かけたときに見つけたワンピースで、ふたりからクリスマスプレゼントに、と買ってもらったワンピース。
ふたりには文句なしにかわいい、と言ってもらえたけれど、ツカサにもかわいいと思ってもらえるだろうか。
わずかな期待に胸を膨らませ、袖を通す。
そして、結い上げていた髪の毛からバレッタを外すと、左サイドで緩く三つ編みにして、ツカサからもらったトンボ玉を通したゴムで結んだ。
姿見で全身チェックを済ませてリビングへ戻ると、ちょうどツカサが屋上から戻ってきたところだった。
今日はずっと一緒にいたから、少し離れた場所から見るのは新鮮に思える。
やっぱり格好いいな……。
そんな思いで眺めていたけれど、ツカサの様子がどうにもおかしい。
私を見たまま硬直しているように見える。
「ツカサ……?」
近づこうとしたら、
「俺も着替えてくる」
と、リビングを横切って廊下へと見えなくなった。
「……なんだったんだろう?」
……もしかして、ワンピース、似合ってない……?
不意に不安が襲う。
でも、蒼兄と唯兄は似合ってると言ってくれたし、お母さんも桃華さんもかわいいと言ってくれた。
……どうしてだろう。どれだけかわいいと言ってくれた人の名前を並べても、まったく不安がなくならない。
「あ……基本、私に甘い人たちの意見だからかな」
だからといってほかに着替えられるものはないし、ドレスに戻るのもおかしいし……。
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