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第八章 自己との対峙
21話
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点滴をし始めて少しすると手首が痛くなってきた。
「あ……カイロ用意してない」
周りを見渡しても自分の手の届くところにカイロはない。ふとファミリコールを押そうとして、指はボタンから離れていく。
今、この家には両親がいるのだ。蒼兄と唯兄だけなら間違いなく押しただろう。でも、今は押せない。
私は少し悩んでから携帯電話を手に取った。
「……唯兄、かな」
深くは考えず、本能的に唯兄を選んだ。
通話ボタンを押す前に、「どうしてかな」となんとなく考えてみたら恐ろしくひどい答えが出た。
――血がつながっていない人だから。
なんてひどい理由だろう……。
通話ボタンを押すと、「リィ?」といつもと変わらない声が聞こえてくる。
「唯兄、あのね、手首が冷えて痛くて……」
『わかった、カイロね。すぐに行く』
そうして聞こえてきたのは足音ふたつ。
ドアに目を向けると、唯兄と心なし不機嫌そうな蒼兄が入ってきた。そして、一言も喋らず黙々とカイロを用意してくれたのは蒼兄。
「……蒼兄?」
恐る恐る声をかけてみると、
「どうして唯なんだよ……」
ムスっとした顔で言われる。
これはきっと電話のことだろう。
「なんとなく、なんだけど……」
「俺さ、今あんちゃんの部屋にいたんだ。そしたらリィから電話かかってきて、直後からこの状態」
唯兄が蒼兄を指差して笑った。その屈託のない笑顔を見れば見るほど、間違っても血がつながっていない人を選んでしまったとは言えない。
「……お礼を言いたくて」
咄嗟に出てきた言葉だったけれど、お礼を言わなくてはいけないのは事実だった。
ローテーブルに置かれたプラスチックのスプーンとフォークとマグカップ。
「……唯兄が湊先生に伝えてくれたのでしょう?」
「あぁ……ずっとおかしいと思ってたからね」
そこに、「なんのこと?」と蒼兄が怪訝そうな顔をした。
「……お父さんとお母さんには言わないでくれる?」
蒼兄は、「話による」と答えた。
「ごめん。それなら言えない」
「……翠葉、父さんと母さんだって心配なんだ。少しは気持ちを汲んでやってほしい」
それはわかる。わかるけど、私にも譲れないものがある。
「今、俺を呼ばなかったのは俺にも知られたくなかったから?」
それはきっと的を射ている。
「唯は知ってたからか?」
コクリと頷くと、
「そうやって翠葉はすぐに独りになろうとする」
蒼兄は眉をひそめ、ひどくやるせない顔をした。
「父さんと母さんに黙ってさえいれば、俺はそっち側にいけるのか?」
今後はわからない。でも、今なら「Yes」だ。
「なら、言わない……」
だから教えてくれ、とでも言うように、冷たくなっていた指先を握られた。じんわりと蒼兄の体温が伝う。
「あたたかい……」
「翠葉の手はいつも冷たいな」
蒼兄は顔を歪め、どこか寂しそうに笑った。
「あのね……私、痛みの場所が増えているの」
蒼兄の手を見ながら答えた。
この話はテスト最終日に湊先生と川岸先生にしか話していなかった。
だから、唯兄に話したのも今が初めて。
「今、なんて……?」
唯兄は目を伏せたまま聞いていて、蒼兄は対照的に目を見開いていた。
「痛みの場所が増えたの。今は胸と背中だけじゃない……」
蒼兄が唾をゴクリと飲む音が聞こえた。そして、「ほかは?」と乾いた声で訊かれる。
「鎖骨と肩、腕と手首、腰も時々……。それが左側だけじゃなくて時々右側にも出るの。筆記用具やお箸を手にしたときの重みなのか圧力なのか、それすら痛くて仕方がないの」
カミングアウトのあと、蒼兄はしばらく言葉を発しなかった。
「……だから、マンションにいたときパンばかり食べていたのか?」
「そう……。黙っててごめんね」
顔を上げると、今にも泣きそうな蒼兄の顔があって、また手元に視線を戻した。
あのとき、試験だけは全部受けたかったから。だから、こんな症状は誰にも言えなかった。
「湊さんは知ってるんだよな?」
「うん……試験最終日に気づかれちゃった」
「気づかれちゃったって、翠葉っ――」
私は湊先生にすら言うつもりがなかったのだ。
今までだってこの痛みを緩和することしかできなかったのに、痛みが広がってるなんて言ったら困るでしょう? それに、誰に話したからといって楽になれるわけでもない。それなら、言っても言わなくても同じことだと思ってしまったのだ。
重苦しい空気の部屋にお母さんの明るい声が響いた。
「そろそろお昼よ」
三人が一斉にドアの方へ視線を向ける。と、
「……何?」
お母さんは怪訝そうな顔をした。
聞かれて、ない……?
「あら、かわいいカトラリーね」
お母さんが部屋に入ってきてテーブルに置かれたものに手を伸ばす。
何を言われるだろう、と息を呑んだ瞬間に唯兄が口を開いた。
「あぁ、それね。湊さんがショップで見かけてかわいさのあまりに買っちゃったんだって。でも、よくよく考えてみたら自分が使っているところが想像できないってリィに持ってきたみたい。ね?」
何食わぬ顔で答え、言葉を次々継ぎ足していく。最後の「ね?」には有無を言わさず「頷け」という指令が含まれていた。
「……う、ん。そう言ってた……」
心の中で、「唯兄が」と付け足す。
「マグカップもお揃いなのね? かわいい~。ポップな色のものなんて翠葉は選ばないものね?」
言いながら、簡易キッチンでそれらを洗い始めるところを見ると、お母さんはなんの疑問も抱かなかったらしい。
ほっとしているのは私と蒼兄だけみたい。唯兄はというと、普通の顔をして洗い終わったらそれらを布巾で拭く手伝いをしていた。
唯兄、役者さんになれそう……。
そう思ったのは私だけじゃないと思う。
「お昼、お蕎麦かパスタにしようと思うんだけど、翠葉はどっちがいい?」
どちらにしてもあまり食べられないのだから、手間のかからないものがいい。
「お蕎麦、かな」
「わかったわ。じゃ、茹でてくるわね」
お母さんはいつものようにハキハキとした様子で部屋を出ていった。
お母さんは、まるで何事もなかったかのように接してくれる。それは、私に気遣っているというよりも、お母さんが触れられたくないように思えた。
「リィ、栞さん特製の野菜スープなら飲めるでしょ?」
カラフルなスプーンとマグカップを両手に持つ唯兄に訊かれる。
「うん……」
「じゃ、それも用意するから」
と、唯兄も部屋から出ていった。直後、蒼兄がベッドにパタリと突っ伏す。
心情は察します……。
「あんな嘘八百、どうしたら瞬時に出てくるんだか……」
「それも全然嘘っぽくないからすごいよね?」
「唯がここにいてくれて良かったな」
蒼兄が突っ伏したまま私を見上げて笑った。
「うん」
「もし、ここに唯がいなかったら、翠葉はもう独りだったんだな……」
そこをつかれるとは思っていなくて、少し居心地が悪かった。でも、この件に関しては自業自得でもある。
「翠葉が自分のことをなんでも話せる相手はいつか現れるのかな」
蒼兄はベッド側の出窓から差し込む光を見て口にする。
私が、自分のことをなんでも話せる人、か――
「どうかな……。一生現れないかもしれない」
これは少し冗談っぽく返すしかなかった。
「……秋斗先輩でも無理か?」
「……どうかな」
「今でも好き?」
「うん」
「……でも、会いたくはない?」
「それは違うかな。会うのが怖いというか、何を話したらいいのかわからなくなっちゃうの」
「……ふたりじゃなかったら大丈夫そう?」
これはどんな質問かな、と思いながら考える。
「たぶん、ふたりじゃなければ大丈夫」
「……じゃぁさ、また俺も唯も一緒のときにお茶でも飲もうな」
蒼兄が目を細めて笑った。
「蒼兄のその笑顔好き……」
すぐ近くにある蒼兄の頬を右手の人差し指でツンとつついた。
「俺も、翠葉が笑っているのがいいな……」
「……蒼兄?」
蒼兄が言おうかどうしようか迷っているときの顔。
「あのさ、翠葉にひとつ報告してないことがあるんだけど」
ひどく気まずそうに口にしたけれど、いったいなんのことだろう。
「……なぁに?」
蒼兄は携帯を取り出し、どこかに電話をかけると、電話の相手に向かって「今が言い時」と一言。
それだけで意味が伝わるのかな、と疑問に思っていると携帯を渡された。
ディスプレイには「簾条桃華」と表示されている。
「えっ!? も、桃華さんが何っ?」
慌てて携帯に出ると、
『翠葉、身体は大丈夫なの?』
「えと、それより……なんで桃華さん?」
『んー……私もこのタイミングで、しかも携帯でこの話を振られている状況がまったくわからないのだけど……』
と、悩ましい声が返ってくる。すると、目の前にいる蒼兄が、「少し前から桃華と付き合ってる」と口にした。
「え……? あ、え……本当にっ!?」
『翠葉、黙っててごめんなさいね』
「ううんううん、全然全然むしろ大歓迎というか、ありがとうございますっていうか、えっとあの、その――」
「翠葉、とりあえず落ち着こうか……」
手に持っていた携帯を取り上げられ、
「桃華、こんなタイミングで悪い。でも、とりあえず、隠し事をなしにしたかったんだ。また連絡する」
通話を切ると、ちょっと居心地悪そうに蒼兄が私に視線を戻す。
「びっくりした?」
「びっくりした……。でも、嬉しい……。蒼兄の隣に桃華さんが立つと様になりそう」
蒼兄の彼女さんが桃華さんというのは驚きはするものの、意外でもなんでもなく、むしろしっくりとくる気がした。
そんな話をしていると、
「何? なんの話?」
と、唯兄が入ってきたけれど、
「唯にはまだ内緒」
蒼兄はいじめっ子みたいな顔で答えた。
「あ……カイロ用意してない」
周りを見渡しても自分の手の届くところにカイロはない。ふとファミリコールを押そうとして、指はボタンから離れていく。
今、この家には両親がいるのだ。蒼兄と唯兄だけなら間違いなく押しただろう。でも、今は押せない。
私は少し悩んでから携帯電話を手に取った。
「……唯兄、かな」
深くは考えず、本能的に唯兄を選んだ。
通話ボタンを押す前に、「どうしてかな」となんとなく考えてみたら恐ろしくひどい答えが出た。
――血がつながっていない人だから。
なんてひどい理由だろう……。
通話ボタンを押すと、「リィ?」といつもと変わらない声が聞こえてくる。
「唯兄、あのね、手首が冷えて痛くて……」
『わかった、カイロね。すぐに行く』
そうして聞こえてきたのは足音ふたつ。
ドアに目を向けると、唯兄と心なし不機嫌そうな蒼兄が入ってきた。そして、一言も喋らず黙々とカイロを用意してくれたのは蒼兄。
「……蒼兄?」
恐る恐る声をかけてみると、
「どうして唯なんだよ……」
ムスっとした顔で言われる。
これはきっと電話のことだろう。
「なんとなく、なんだけど……」
「俺さ、今あんちゃんの部屋にいたんだ。そしたらリィから電話かかってきて、直後からこの状態」
唯兄が蒼兄を指差して笑った。その屈託のない笑顔を見れば見るほど、間違っても血がつながっていない人を選んでしまったとは言えない。
「……お礼を言いたくて」
咄嗟に出てきた言葉だったけれど、お礼を言わなくてはいけないのは事実だった。
ローテーブルに置かれたプラスチックのスプーンとフォークとマグカップ。
「……唯兄が湊先生に伝えてくれたのでしょう?」
「あぁ……ずっとおかしいと思ってたからね」
そこに、「なんのこと?」と蒼兄が怪訝そうな顔をした。
「……お父さんとお母さんには言わないでくれる?」
蒼兄は、「話による」と答えた。
「ごめん。それなら言えない」
「……翠葉、父さんと母さんだって心配なんだ。少しは気持ちを汲んでやってほしい」
それはわかる。わかるけど、私にも譲れないものがある。
「今、俺を呼ばなかったのは俺にも知られたくなかったから?」
それはきっと的を射ている。
「唯は知ってたからか?」
コクリと頷くと、
「そうやって翠葉はすぐに独りになろうとする」
蒼兄は眉をひそめ、ひどくやるせない顔をした。
「父さんと母さんに黙ってさえいれば、俺はそっち側にいけるのか?」
今後はわからない。でも、今なら「Yes」だ。
「なら、言わない……」
だから教えてくれ、とでも言うように、冷たくなっていた指先を握られた。じんわりと蒼兄の体温が伝う。
「あたたかい……」
「翠葉の手はいつも冷たいな」
蒼兄は顔を歪め、どこか寂しそうに笑った。
「あのね……私、痛みの場所が増えているの」
蒼兄の手を見ながら答えた。
この話はテスト最終日に湊先生と川岸先生にしか話していなかった。
だから、唯兄に話したのも今が初めて。
「今、なんて……?」
唯兄は目を伏せたまま聞いていて、蒼兄は対照的に目を見開いていた。
「痛みの場所が増えたの。今は胸と背中だけじゃない……」
蒼兄が唾をゴクリと飲む音が聞こえた。そして、「ほかは?」と乾いた声で訊かれる。
「鎖骨と肩、腕と手首、腰も時々……。それが左側だけじゃなくて時々右側にも出るの。筆記用具やお箸を手にしたときの重みなのか圧力なのか、それすら痛くて仕方がないの」
カミングアウトのあと、蒼兄はしばらく言葉を発しなかった。
「……だから、マンションにいたときパンばかり食べていたのか?」
「そう……。黙っててごめんね」
顔を上げると、今にも泣きそうな蒼兄の顔があって、また手元に視線を戻した。
あのとき、試験だけは全部受けたかったから。だから、こんな症状は誰にも言えなかった。
「湊さんは知ってるんだよな?」
「うん……試験最終日に気づかれちゃった」
「気づかれちゃったって、翠葉っ――」
私は湊先生にすら言うつもりがなかったのだ。
今までだってこの痛みを緩和することしかできなかったのに、痛みが広がってるなんて言ったら困るでしょう? それに、誰に話したからといって楽になれるわけでもない。それなら、言っても言わなくても同じことだと思ってしまったのだ。
重苦しい空気の部屋にお母さんの明るい声が響いた。
「そろそろお昼よ」
三人が一斉にドアの方へ視線を向ける。と、
「……何?」
お母さんは怪訝そうな顔をした。
聞かれて、ない……?
「あら、かわいいカトラリーね」
お母さんが部屋に入ってきてテーブルに置かれたものに手を伸ばす。
何を言われるだろう、と息を呑んだ瞬間に唯兄が口を開いた。
「あぁ、それね。湊さんがショップで見かけてかわいさのあまりに買っちゃったんだって。でも、よくよく考えてみたら自分が使っているところが想像できないってリィに持ってきたみたい。ね?」
何食わぬ顔で答え、言葉を次々継ぎ足していく。最後の「ね?」には有無を言わさず「頷け」という指令が含まれていた。
「……う、ん。そう言ってた……」
心の中で、「唯兄が」と付け足す。
「マグカップもお揃いなのね? かわいい~。ポップな色のものなんて翠葉は選ばないものね?」
言いながら、簡易キッチンでそれらを洗い始めるところを見ると、お母さんはなんの疑問も抱かなかったらしい。
ほっとしているのは私と蒼兄だけみたい。唯兄はというと、普通の顔をして洗い終わったらそれらを布巾で拭く手伝いをしていた。
唯兄、役者さんになれそう……。
そう思ったのは私だけじゃないと思う。
「お昼、お蕎麦かパスタにしようと思うんだけど、翠葉はどっちがいい?」
どちらにしてもあまり食べられないのだから、手間のかからないものがいい。
「お蕎麦、かな」
「わかったわ。じゃ、茹でてくるわね」
お母さんはいつものようにハキハキとした様子で部屋を出ていった。
お母さんは、まるで何事もなかったかのように接してくれる。それは、私に気遣っているというよりも、お母さんが触れられたくないように思えた。
「リィ、栞さん特製の野菜スープなら飲めるでしょ?」
カラフルなスプーンとマグカップを両手に持つ唯兄に訊かれる。
「うん……」
「じゃ、それも用意するから」
と、唯兄も部屋から出ていった。直後、蒼兄がベッドにパタリと突っ伏す。
心情は察します……。
「あんな嘘八百、どうしたら瞬時に出てくるんだか……」
「それも全然嘘っぽくないからすごいよね?」
「唯がここにいてくれて良かったな」
蒼兄が突っ伏したまま私を見上げて笑った。
「うん」
「もし、ここに唯がいなかったら、翠葉はもう独りだったんだな……」
そこをつかれるとは思っていなくて、少し居心地が悪かった。でも、この件に関しては自業自得でもある。
「翠葉が自分のことをなんでも話せる相手はいつか現れるのかな」
蒼兄はベッド側の出窓から差し込む光を見て口にする。
私が、自分のことをなんでも話せる人、か――
「どうかな……。一生現れないかもしれない」
これは少し冗談っぽく返すしかなかった。
「……秋斗先輩でも無理か?」
「……どうかな」
「今でも好き?」
「うん」
「……でも、会いたくはない?」
「それは違うかな。会うのが怖いというか、何を話したらいいのかわからなくなっちゃうの」
「……ふたりじゃなかったら大丈夫そう?」
これはどんな質問かな、と思いながら考える。
「たぶん、ふたりじゃなければ大丈夫」
「……じゃぁさ、また俺も唯も一緒のときにお茶でも飲もうな」
蒼兄が目を細めて笑った。
「蒼兄のその笑顔好き……」
すぐ近くにある蒼兄の頬を右手の人差し指でツンとつついた。
「俺も、翠葉が笑っているのがいいな……」
「……蒼兄?」
蒼兄が言おうかどうしようか迷っているときの顔。
「あのさ、翠葉にひとつ報告してないことがあるんだけど」
ひどく気まずそうに口にしたけれど、いったいなんのことだろう。
「……なぁに?」
蒼兄は携帯を取り出し、どこかに電話をかけると、電話の相手に向かって「今が言い時」と一言。
それだけで意味が伝わるのかな、と疑問に思っていると携帯を渡された。
ディスプレイには「簾条桃華」と表示されている。
「えっ!? も、桃華さんが何っ?」
慌てて携帯に出ると、
『翠葉、身体は大丈夫なの?』
「えと、それより……なんで桃華さん?」
『んー……私もこのタイミングで、しかも携帯でこの話を振られている状況がまったくわからないのだけど……』
と、悩ましい声が返ってくる。すると、目の前にいる蒼兄が、「少し前から桃華と付き合ってる」と口にした。
「え……? あ、え……本当にっ!?」
『翠葉、黙っててごめんなさいね』
「ううんううん、全然全然むしろ大歓迎というか、ありがとうございますっていうか、えっとあの、その――」
「翠葉、とりあえず落ち着こうか……」
手に持っていた携帯を取り上げられ、
「桃華、こんなタイミングで悪い。でも、とりあえず、隠し事をなしにしたかったんだ。また連絡する」
通話を切ると、ちょっと居心地悪そうに蒼兄が私に視線を戻す。
「びっくりした?」
「びっくりした……。でも、嬉しい……。蒼兄の隣に桃華さんが立つと様になりそう」
蒼兄の彼女さんが桃華さんというのは驚きはするものの、意外でもなんでもなく、むしろしっくりとくる気がした。
そんな話をしていると、
「何? なんの話?」
と、唯兄が入ってきたけれど、
「唯にはまだ内緒」
蒼兄はいじめっ子みたいな顔で答えた。
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