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第九章 化学反応
30話
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昇さんと藤原さんに相手をしてもらいながら、病室でお昼ご飯を食べていた。
「食欲ないのか?」
「……痛みが出てくるとどうしても。……でも、食べられるところまでは食べます」
「いい子だな」
「いい子ね」
口を揃えるふたりに少しむくれる。
「あのですね、いい子になろうとしてやってるわけでも言ってるわけでもないですからねっ!?」
「……これが素だからすごいよな?」
昇さんが藤原さんに視線を投げると、「本当ね」と言われてしまう。
なんだかとても居心地が悪い。
そこに、ひょっこりと唯兄が顔を出した。
「お昼中?」
「唯兄っ!」
「元気そうで何より」
笑いながら病室に入ってきて、昇さんと藤原さんに挨拶をした。
「妹がいつもお世話になっています。兄の唯芹です」
もしかして、と思った次の瞬間。「じゃーん!」と戸籍謄本を見せられた。
「正式に兄になったよ。見て見て、できたてホヤホヤ」
テーブルに乗せられた戸籍謄本を確認し、
「ちゃんと唯兄だね」
「そう、ちゃんとあんちゃんになりました」
そんな私たちを見て、藤原さんと昇さんは病室を出ていった。
昇さんが座っていたスツールに唯兄が腰を下ろす。
「今日は役所に行く用もあったから、どっちにしろお見舞いには来ようと思ってたんだ」
「それなら昨日教えてくれれば良かったのに」
「こういうのはびっくりさせるから楽しいんじゃん」
「そうだけど……。唯兄、お母さん、看病疲れしてない……?」
今日は姿を見ないお母さんのことを訊くと、
「今日は家で仕事してる。現地の動画を見ながらリアルタイムで指示出してる感じ」
お母さんらしいな、とは思うものの、もうそんなに元気なのだろうか、と不安にも思う。
「そんなに心配しなくても大丈夫。リィに会ってからずいぶん落ち着いたし、食欲ももとに戻ったよ」
「本当?」
「本当。誰に嘘ついてもリィには嘘つかないから安心しな。っていうかさ、リィはこれしか食べないの?」
「あ……少しずつだけど痛みが出てきているの」
「そっか……。それに食欲は比例するわけね」
「ん……」
でも、食べなくちゃね……。
フォークでブロッコリーを刺して口へ運ぶと、
「がんばってるね」
コクリと頷き、咀嚼し終えて飲み込んでから、
「がんばらなくちゃだめだから」
「……この場合、がんばれともがんばるなとも言えないのがつらいよ」
唯兄は戸籍謄本をショルダーバッグにしまうと、それをベッドの足元に置き、
「俺はさ、あんまりがんばりすぎて神経張り詰めているリィも見たくないし、すべてを放棄してるリィも見たくはないんだよね。もっと普通でいられたらいいのにね」
普通、か――
「そうだね……。私も『普通』がいいな。……でも、その『普通』がどこにあって、どんなものなのかが私にはわからないの」
「普通」からかけ離れているのが「自分」だった。
「少しずつ探そうよ。リィの『普通』をさ。そういうのは手伝うよ」
そう言うと、額を軽くはじかれた。
ご飯を少し残し、デザートのメロンを口にしたとき、
「昨日の電話の話しだけどさ……」
言われて少し咽る。
「大丈夫?」
「大丈夫」
どうしてか、ツカサの話を出されるだけでも顔が熱くなる。
「真っ赤だね?」
笑う唯兄が恨めしい。
「これ、次にツカサが来るときまでにどうにかしたくて……」
「んー……無理なんじゃん?」
「どうして?」
「そういうものだから」
それじゃ困るんだけどな……。
「でも、今しか感じることのできないものかもしれないから、今はそれを堪能するくらいでいいんじゃないかな?」
何がどう、とは言わずにそう言われる。
「……ピーターパンみたいなもの?」
「え?」
「ピーターパンは子どもにしか見えないし、あの世界には子どもしか行けないんだよ」
「……微妙にずれてるけど、でも強ち外れてもいない……かもしれない」
どういうことかもう少し詳しく知りたかったのだけど、唯兄が頭を抱えてしまったので、それ以上は訊かないことにした。
「リィはさ、初恋いつ?」
顔を上げた唯兄に唐突に訊かれる。
「……笑わない?」
「笑わない」
「……まだ、なの」
私の言葉に唯兄は驚いた顔をして、「そうですか」とうな垂れた。
笑われはしなかったけれど、妙な納得され具合にちょっと不服。
「……恋って、こういうことを言うの?」
「それはリィが感じて決めること、かな」
唯兄は首を傾げた。
「私が、決めること……?」
「気持ちって掴みどころがなかったりするでしょ?」
「うん」
「その気持ちを捕まえて、気持ちに名前をつけてあげるのはリィの役目だよ」
難しいな……。
「化学みたいに、これはなんとかって物質ですってあらかじめ名前がついていたらいいのにね?」
「……本当にリィは変なたとえが得意だなぁ」
唯兄にまじまじと顔を見られた。
唯兄は二時には病院を出た。
やっぱりお仕事が相当忙しいみたいで、その合間を縫って市役所へ行ったみたい。
社会人は大変だなぁ、というのが一学生の私の感想。
……私も、いつかは社会人になれるのだろうか。
間違いなく月日が経てば唯兄と同じ年になるだろう。けれども、社会人になれる日が来るのだろうか、と不安に思う。年をとっても社会人になれるかは別問題な気がするから。
唯兄がいるときにパソコンを立ち上げ、CDをミュージックプレーヤーに取り込んだ。
これで、桃華さんたちが誕生日プレゼントにくれた音楽が聴ける。
ミュージックプレーヤーを操作しながら、ふと手が止まる。
誰だっただろう――恋愛小説よりも歌のほうがよっぽど恋愛についてよくわかる、というようなことを言っていたのは。
誰に言われたのかは覚えていないけれど、そんなようなことを言われたのは覚えている。でも、そのときの私はなんでそんなことを言われたのかな。
目の前にあるCDはクラスメイトからのプレゼントだ。
私が初恋もまだ、ということをみんなが知っていたから、なのかな……。それとも、今みたいに恋する気持ちがどんなものか、と悩んでいたのだろうか。
だとしたら、それは誰に対して抱いていた気持ちなのだろう。
「……ツカサ?」
思い当たる人はツカサしかいないのに、パズルがぴたりとはまる感じは得られない。
ツカサ以外といっても、私の周りにはそんなにたくさんの男子はいないはず……。
そんなことを考え始めると、曲を再生するのが少し怖くなった。
記憶を取り戻したいと思うのに、怖いと感じるこの気持ちはなんなのだろう。
記憶がないことを気持ち悪いと思うのに、記憶が戻ることに不安や戸惑いを感じるこの感覚はどこからくるのだろう。
藤原さんが、「ストレスから記憶をなくした恐れがある」と言っていた。
私にとって、記憶をなくすほどのストレスとはどんなものだったのだろう。
「本当にストレスで記憶をなくしたのかな」
そういうのは自己防衛というのだろう。
私は自己防衛で記憶をなくした――だとしたら、どうしてその対象がツカサであり、藤宮秋斗さん、蔵元森さんだったのだろう。
わからない――
どうしてこの三人だったのかな……。
ツカサは一学年上の先輩で、藤宮秋斗さんはその従兄。蔵元森さんは藤宮秋斗さんの秘書。
ツカサと藤宮秋斗さんが仲がいいのは別におかしなことではないだろう。でも、蔵元森さんは部下にあたる人だし、私とはなんのつながりもないように思う。それとも、藤宮秋斗さんに関わる人だから忘れちゃったのかな。
「考えてもわからない……」
「何が?」
零したひとり言を拾われて我に返る。
誰かと顔を上げると、栞さんがスツールに腰掛けていた。
「相変わらず、考えごとしてるときって回りが見えてないのね」
「あ、えと、ごめんなさいっ」
「謝ることじゃないわ」
クスクスと笑って、タッパーを取り出した。
「桃のシャーベット。三時のおやつにどうかと思って」
テーブルに差し出されて思わず顔が綻ぶ。
「嬉しい……」
「食欲が落ちたら十時と三時のおやつを増やすのがいいのよ」
笑いながらスプーンを手渡された。
ベッドを起こしてテーブルに着くと、テーブルの端に置いてあったCDが目についた。
「それなぁに?」
クラスメイトにプレゼントされたものであることや、中に入っている曲の説明をした。
「それで、聴くの躊躇っちゃったの?」
「はい……」
少し躊躇したものの、栞さんに訊いてみることにした。
「栞さん、私……記憶をなくす前に好きな人がいたのかな……。恋、してたのかな」
「……どうして?」
「手帳にふたりの写真が入っていたんです」
その写真を見せると、
「秋斗くんが二枚、司くんも二枚。両者引分けか……」
写真から視線を逸らし、お布団を見つめては頭の中でぐるぐると同じことを考えそうになる。
「翠葉ちゃん、運命って信じる?」
「え……?」
「私はね、あったらすてきだなって思うの」
栞さんは屈託なく笑った。
「もし、私が昇の記憶をなくしたとして――それでも、私はまた昇と出逢って恋をして結婚したいな」
もし、記憶をなくしたとしても――?
「だから、それを信じてみたらどう? 記憶をなくしても、好きになった人がこのふたりのどちらかならば、また好きになるって」
また、同じ人を好きになる……?
思いもよらない言葉に心臓がぎゅ、となった。
「ほらほら、シャーベットが溶けちゃうわ」
周りから少し溶けだして食べやすくなったシャーベットをスプーンに掬い口へ入れる。と、口の中でシュワ、と一瞬にして溶けては果肉が残る。
凍っている部分が自分の記憶だとしたら、溶けたときに残る果肉は想いだろうか……。
一度固まってしまったものでも、溶けたら何か残るのかな。
そんなことを考えながら桃のシャーベットを食べていたからか、それが須藤さんの作ってくれた桃のシャーベットと同じものとは気づかずに食べ尽くした。
「食欲ないのか?」
「……痛みが出てくるとどうしても。……でも、食べられるところまでは食べます」
「いい子だな」
「いい子ね」
口を揃えるふたりに少しむくれる。
「あのですね、いい子になろうとしてやってるわけでも言ってるわけでもないですからねっ!?」
「……これが素だからすごいよな?」
昇さんが藤原さんに視線を投げると、「本当ね」と言われてしまう。
なんだかとても居心地が悪い。
そこに、ひょっこりと唯兄が顔を出した。
「お昼中?」
「唯兄っ!」
「元気そうで何より」
笑いながら病室に入ってきて、昇さんと藤原さんに挨拶をした。
「妹がいつもお世話になっています。兄の唯芹です」
もしかして、と思った次の瞬間。「じゃーん!」と戸籍謄本を見せられた。
「正式に兄になったよ。見て見て、できたてホヤホヤ」
テーブルに乗せられた戸籍謄本を確認し、
「ちゃんと唯兄だね」
「そう、ちゃんとあんちゃんになりました」
そんな私たちを見て、藤原さんと昇さんは病室を出ていった。
昇さんが座っていたスツールに唯兄が腰を下ろす。
「今日は役所に行く用もあったから、どっちにしろお見舞いには来ようと思ってたんだ」
「それなら昨日教えてくれれば良かったのに」
「こういうのはびっくりさせるから楽しいんじゃん」
「そうだけど……。唯兄、お母さん、看病疲れしてない……?」
今日は姿を見ないお母さんのことを訊くと、
「今日は家で仕事してる。現地の動画を見ながらリアルタイムで指示出してる感じ」
お母さんらしいな、とは思うものの、もうそんなに元気なのだろうか、と不安にも思う。
「そんなに心配しなくても大丈夫。リィに会ってからずいぶん落ち着いたし、食欲ももとに戻ったよ」
「本当?」
「本当。誰に嘘ついてもリィには嘘つかないから安心しな。っていうかさ、リィはこれしか食べないの?」
「あ……少しずつだけど痛みが出てきているの」
「そっか……。それに食欲は比例するわけね」
「ん……」
でも、食べなくちゃね……。
フォークでブロッコリーを刺して口へ運ぶと、
「がんばってるね」
コクリと頷き、咀嚼し終えて飲み込んでから、
「がんばらなくちゃだめだから」
「……この場合、がんばれともがんばるなとも言えないのがつらいよ」
唯兄は戸籍謄本をショルダーバッグにしまうと、それをベッドの足元に置き、
「俺はさ、あんまりがんばりすぎて神経張り詰めているリィも見たくないし、すべてを放棄してるリィも見たくはないんだよね。もっと普通でいられたらいいのにね」
普通、か――
「そうだね……。私も『普通』がいいな。……でも、その『普通』がどこにあって、どんなものなのかが私にはわからないの」
「普通」からかけ離れているのが「自分」だった。
「少しずつ探そうよ。リィの『普通』をさ。そういうのは手伝うよ」
そう言うと、額を軽くはじかれた。
ご飯を少し残し、デザートのメロンを口にしたとき、
「昨日の電話の話しだけどさ……」
言われて少し咽る。
「大丈夫?」
「大丈夫」
どうしてか、ツカサの話を出されるだけでも顔が熱くなる。
「真っ赤だね?」
笑う唯兄が恨めしい。
「これ、次にツカサが来るときまでにどうにかしたくて……」
「んー……無理なんじゃん?」
「どうして?」
「そういうものだから」
それじゃ困るんだけどな……。
「でも、今しか感じることのできないものかもしれないから、今はそれを堪能するくらいでいいんじゃないかな?」
何がどう、とは言わずにそう言われる。
「……ピーターパンみたいなもの?」
「え?」
「ピーターパンは子どもにしか見えないし、あの世界には子どもしか行けないんだよ」
「……微妙にずれてるけど、でも強ち外れてもいない……かもしれない」
どういうことかもう少し詳しく知りたかったのだけど、唯兄が頭を抱えてしまったので、それ以上は訊かないことにした。
「リィはさ、初恋いつ?」
顔を上げた唯兄に唐突に訊かれる。
「……笑わない?」
「笑わない」
「……まだ、なの」
私の言葉に唯兄は驚いた顔をして、「そうですか」とうな垂れた。
笑われはしなかったけれど、妙な納得され具合にちょっと不服。
「……恋って、こういうことを言うの?」
「それはリィが感じて決めること、かな」
唯兄は首を傾げた。
「私が、決めること……?」
「気持ちって掴みどころがなかったりするでしょ?」
「うん」
「その気持ちを捕まえて、気持ちに名前をつけてあげるのはリィの役目だよ」
難しいな……。
「化学みたいに、これはなんとかって物質ですってあらかじめ名前がついていたらいいのにね?」
「……本当にリィは変なたとえが得意だなぁ」
唯兄にまじまじと顔を見られた。
唯兄は二時には病院を出た。
やっぱりお仕事が相当忙しいみたいで、その合間を縫って市役所へ行ったみたい。
社会人は大変だなぁ、というのが一学生の私の感想。
……私も、いつかは社会人になれるのだろうか。
間違いなく月日が経てば唯兄と同じ年になるだろう。けれども、社会人になれる日が来るのだろうか、と不安に思う。年をとっても社会人になれるかは別問題な気がするから。
唯兄がいるときにパソコンを立ち上げ、CDをミュージックプレーヤーに取り込んだ。
これで、桃華さんたちが誕生日プレゼントにくれた音楽が聴ける。
ミュージックプレーヤーを操作しながら、ふと手が止まる。
誰だっただろう――恋愛小説よりも歌のほうがよっぽど恋愛についてよくわかる、というようなことを言っていたのは。
誰に言われたのかは覚えていないけれど、そんなようなことを言われたのは覚えている。でも、そのときの私はなんでそんなことを言われたのかな。
目の前にあるCDはクラスメイトからのプレゼントだ。
私が初恋もまだ、ということをみんなが知っていたから、なのかな……。それとも、今みたいに恋する気持ちがどんなものか、と悩んでいたのだろうか。
だとしたら、それは誰に対して抱いていた気持ちなのだろう。
「……ツカサ?」
思い当たる人はツカサしかいないのに、パズルがぴたりとはまる感じは得られない。
ツカサ以外といっても、私の周りにはそんなにたくさんの男子はいないはず……。
そんなことを考え始めると、曲を再生するのが少し怖くなった。
記憶を取り戻したいと思うのに、怖いと感じるこの気持ちはなんなのだろう。
記憶がないことを気持ち悪いと思うのに、記憶が戻ることに不安や戸惑いを感じるこの感覚はどこからくるのだろう。
藤原さんが、「ストレスから記憶をなくした恐れがある」と言っていた。
私にとって、記憶をなくすほどのストレスとはどんなものだったのだろう。
「本当にストレスで記憶をなくしたのかな」
そういうのは自己防衛というのだろう。
私は自己防衛で記憶をなくした――だとしたら、どうしてその対象がツカサであり、藤宮秋斗さん、蔵元森さんだったのだろう。
わからない――
どうしてこの三人だったのかな……。
ツカサは一学年上の先輩で、藤宮秋斗さんはその従兄。蔵元森さんは藤宮秋斗さんの秘書。
ツカサと藤宮秋斗さんが仲がいいのは別におかしなことではないだろう。でも、蔵元森さんは部下にあたる人だし、私とはなんのつながりもないように思う。それとも、藤宮秋斗さんに関わる人だから忘れちゃったのかな。
「考えてもわからない……」
「何が?」
零したひとり言を拾われて我に返る。
誰かと顔を上げると、栞さんがスツールに腰掛けていた。
「相変わらず、考えごとしてるときって回りが見えてないのね」
「あ、えと、ごめんなさいっ」
「謝ることじゃないわ」
クスクスと笑って、タッパーを取り出した。
「桃のシャーベット。三時のおやつにどうかと思って」
テーブルに差し出されて思わず顔が綻ぶ。
「嬉しい……」
「食欲が落ちたら十時と三時のおやつを増やすのがいいのよ」
笑いながらスプーンを手渡された。
ベッドを起こしてテーブルに着くと、テーブルの端に置いてあったCDが目についた。
「それなぁに?」
クラスメイトにプレゼントされたものであることや、中に入っている曲の説明をした。
「それで、聴くの躊躇っちゃったの?」
「はい……」
少し躊躇したものの、栞さんに訊いてみることにした。
「栞さん、私……記憶をなくす前に好きな人がいたのかな……。恋、してたのかな」
「……どうして?」
「手帳にふたりの写真が入っていたんです」
その写真を見せると、
「秋斗くんが二枚、司くんも二枚。両者引分けか……」
写真から視線を逸らし、お布団を見つめては頭の中でぐるぐると同じことを考えそうになる。
「翠葉ちゃん、運命って信じる?」
「え……?」
「私はね、あったらすてきだなって思うの」
栞さんは屈託なく笑った。
「もし、私が昇の記憶をなくしたとして――それでも、私はまた昇と出逢って恋をして結婚したいな」
もし、記憶をなくしたとしても――?
「だから、それを信じてみたらどう? 記憶をなくしても、好きになった人がこのふたりのどちらかならば、また好きになるって」
また、同じ人を好きになる……?
思いもよらない言葉に心臓がぎゅ、となった。
「ほらほら、シャーベットが溶けちゃうわ」
周りから少し溶けだして食べやすくなったシャーベットをスプーンに掬い口へ入れる。と、口の中でシュワ、と一瞬にして溶けては果肉が残る。
凍っている部分が自分の記憶だとしたら、溶けたときに残る果肉は想いだろうか……。
一度固まってしまったものでも、溶けたら何か残るのかな。
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