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第十一章 トラウマ
35話
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お風呂から出て髪の毛を乾かすと、主寝室で治療が始まった。
「昇さん、ベッドが大きい……」
「翠葉ちゃんがちっさ過ぎるんだ」
笑われたけれど、昇さんが横になったところを考えると、確かに縦の長さはそんなに大きいといえるものではなかった。
でも、横幅は半端なく広い気がする。
私サイズなら四人くらい並んで眠れそう。
端から端まで何回転がったらたどり着くだろう?
あまりにも私の身体のサイズにはそぐわない。
「あとで蒼兄とお部屋変えてもらおうかな……?」
「あっちはキングサイズじゃないにしても、やっぱりクイーンかダブルだと思うぞ?」
どっちにしても大きいということ?
「ま、横になれ」
言われてベッドの端っこに横になる。
今、この部屋には昇さんと栞さんしかいない。
「記憶のことだが、何を思い出した?」
「前にここへ来たときのことを少し。でも、いつもと思い出し方が違ったから――」
だからびっくりしたのだ。
「記憶、戻りつつあるのか?」
驚いた顔をされる。
「全部じゃないです。まだ全然足りない……。会話の一フレーズや何かの一シーンとか……。パズルのピースみたいな感じで、前後関係がわからないようなものばかり」
「いつから?」
「記憶らしきものの夢なら、夏休み中に病院で何度か見ました。意識があって行動している中で思い出すようになったのは学校へ通い始めてからだと思います」
先生たちは記憶に関することを訊いてくることはなかったから、私もあまり話すことはなかった。それに、思い出すといっても説明ができるような思い出し方ではなかったのだ。
「翠葉ちゃんはもしかしたら記憶が戻るのかもしれないな」
「……思い出せない可能性もあるんですか?」
「あるよ。思い出せるか思い出せないか、それは医者にも患者にもわからない。でも、翠葉ちゃんの場合、少しずつでも思い出しているのなら、全部を思い出せる可能性は高い」
全部――
「焦らなくていいのよ?」
栞さんがベッドの脇にしゃがみこみ、私の目線と合わせてくれる。
私が不安がらないように。
「思い出そうと躍起になると海馬が壊れるってツカサに言われました。だから、必要以上には考えないようにしようと思います。でも、気になることは……秋斗さんやツカサ、周りの人に訊いてもいいでしょうか……?」
「それはかまわないけど、自分を追い込まないようにね?」
「はい……」
治療が終わってから七時までは四十五分あった。
私は夕飯まで少しの時間をそのベッドで休ませてもらった。
ディナーはドレスコードあり。
そんな場所へ行くのは久しぶりのことで、緊張しすぎてどうにかなってしまいそうだ。
蒼兄も唯兄もスーツを着ていてネクタイもしている。
私は紺のベルベッドのワンピース。ワンピース形はAライン。パフスリーブで肩から腕のあたりはふわっとしているけれど、手首のところできゅっと細くなっている。そして、襟周りと手首、スカートの裾にはデザイン生地が使われている。
髪の毛は栞さんがハーフアップにしてくれ、今はとても豪華な髪飾りがついている。
それはエメラルドとダイヤがちりばめられた髪飾り。
秋斗さんからいただいた誕生日プレゼントなのだとか。
私はどうしてこんな高価なものを受け取ってしまったのだろう……。
いくら考えても不思議でならない。
レストランへ行くと、
「いらっしゃいませ。すでに秋斗様がお待ちでいらっしゃいます」
と、木田さんが案内してくれる。
ほかのお客様もいる中、奥の仕切られたスペースへと案内された。
秋斗さんは私たちに気づくと席を立ち、
「体調は大丈夫?」
細身で背が高いのは知っているけれど、スーツを着ると印象が変わる。非のうちどころがないくらいに格好いい。
「翠葉ちゃん?」
「は、はいっ」
「……どうかした?」
顔を覗き込まれれば頬に熱を持つ。
そんな私を見て笑いながら、
「では、お姫様はこちらへどうぞ」
と、右手を取られた。
かぶる――何と?
どこかのホテル――それはいつ?
――わからない。
「……ん、翠葉ちゃん」
「え? あ――」
少し強めに握られた手に気づくと、みんなの視線が自分に集っていた。
「ごめんなさい、なんでもないです……」
「翠葉ちゃん、ここのシェフの料理もとても美味しいのよ? 美味しいものをいただきましょう?」
ピンクベージュのシックなドレスを着た栞さんに言われる。
首には二連のパールネックレス。オフホワイトの、柔らかな光を発するようなパールは栞さんにとてもよく似合っていた。
秋斗さんにエスコートされて席に着くと、目の前には蒼兄、左隣には栞さん。右隣には唯兄。
栞さんの正面には昇さんが座り、唯兄の正面には秋斗さんが座った。
料理はどれも美味しかったと思う。でも、あまり記憶にはない。
ツカサにも栞さんにも考えすぎないように、と言われたけれど、それは存外難しかった。
考えないようにすればするほど、意識はそこへ集中してしまうのだ。
全部食べることはできたけれど、食べることには集中できなかった。
その場の会話も、受け答えも覚えていない。
上の空とはこういうことをいうのだろう。
作り手の人に対してものすごく申し訳ない時間を過ごしてしまった。
「ごちそうさま」よりも、「ごめんなさい」――
「蒼兄、このあと、少しだけステラハウスへ行ってもいい?」
「え?」
「星空が見たいの」
蒼兄は顔を引きつらせて秋斗さんの方を向いた。
「秋斗先輩、信じてますからねっ?」
「右に同じくっ」
唯兄と蒼兄が秋斗さんにじりじりと近づく。
「わかってるってば……」
秋斗さんは苦笑して答えた。
「でも、翠葉、一度部屋に戻って着替えてからにしな。その格好で森を歩くのは寒いよ」
「うん。一度お部屋に戻って着替える。そしたらいい?」
「いいよ。戻ってくるときは電話かけな。迎えに行くから」
「ありがとう」
「じゃ、俺はここで待ってるね」
秋斗さんは噴水広場の脇にあるガーデンテーブルの椅子に座った。
「……寒くないですか?」
「大丈夫だよ。……男のほうが筋肉ついてるから寒さには強いんだ」
あ――
「……翠葉ちゃん?」
「あ……えと、あの、あとでたくさん訊きたいことが……」
「うん、いいよ。話をしよう」
「リィ、先に着替え。療養に来て風邪ひいて帰ったら相馬先生に何言われるかわかったもんじゃない。湊さんだって怖いんだからさ」
「それはそうね……」
栞さんがクスリと笑った傍らで、昇さんが口を開く。
「そんな暁には、怒られるのは間違いなく俺だ」
すると、昇さんのジャケットを肩からかけてくれた。
部屋で着替えをしたときに、髪の毛も解いた。
森で髪飾りを落とすのが怖くて。
いただいた陶器の入れ物にそれを戻し、結ったあとがついてしまった髪の毛をひとつに束ね、左サイドで緩く一本の三つ編みにした。
ゴムにはツカサからもらったとんぼ玉が通してある。
気づけばとんぼ玉は私のお守りみたいな存在になっていた。
このとんぼ玉に触れて一から十までのカウントを思い出すと、気持ちを落ち着かせることができる。
「じゃ、行ってくるね」
部屋を出て秋斗さんの待つ噴水広場まで歩きながら考える。
足がかりが少しずつ増えているのは、秋斗さんが以前私に言ったことのある言葉を使ってくれているから……?
ふと、そんなことを思う。
「さっきのワンピースもかわいかったけど、そのワンピースもかわいいね」
話しかけられて、噴水広場にたどり着いていたことに気づく。
「歩きながら考えごとは危ないよ?」
席を立った秋斗さんはクスクスと笑っていた。
その背後、ガーデンテーブルにはティーカップが置かれていて少しほっとする。
やっぱり、ここは人を待つのには寒すぎる。
「木田さんがハーブティーを持ってきてくれたんだ。だから、寒くはなかったよ。さ、行こうか」
手を差し出され、その手をじっと見てから手を乗せた。
「どうかした?」
「いえ……ただ、何か思い出せそうな気がするから――ひとつひとつが見過ごせなくて……」
「とりあえず、今からは足元だけに注意を払ってね?」
「はい」
昼間はなかったソーラーライトがそこかしこに置かれていた。
さすがに森の中にキャンドルは置けないのだろう。
それらはフットライトのようにぼんやりと足元だけを照らしてくれる。
そのほかは、秋斗さんが片手に懐中電灯を持っていた。
お昼のときよりも若干強めに握られているのは、あまりにも私の足元が覚束ないせいだろう。
夜道を歩くのには慣れていないし、こんな山中を歩くのにも慣れていはいない。
途中までは石畳が敷かれているけれど、森に入ってからは木の根を傷めないためか、雑草の処理がしてある程度で、そこかしこに木の根が盛り上がっている。
「きゃっ――」
木の根に躓き、ポスン、と秋斗さんに抱きとめられた。
「危機一髪……」
言いながら秋斗さんはくつくつと笑う。
「すみません……ちゃんと足元見て歩いてるんですけど……」
「もう少しゆっくり歩こうか」
秋斗さんは少しペースを落としてくれた。
別にそれまでがとても速かったわけではない。どちらかというなら、ゆっくり歩いてくれていたと思う。それでも私が躓いてしまっただけで……。
森を抜けると、ステラハウスの中からホテルの従業員が出てきた。
「ごゆっくりお過ごしください」
とその人は腰を折り、音を立てないようにドアを閉めた。
室内には三つのストーブがついていて、キャンドルもオイルランプもすべてが灯っていた。
「うわぁ…………」
「人工の明かりじゃないのがいいよね?」
「はい、すごく優しい光――」
「ま、あたたかくなるのに時間はかかるし、火を使う以上、無人っていうわけにはいかないけど、この光の演出は好きかな」
「私もです……」
「じゃ、俺は向こうで着替えてくるね」
「はい」
「昇さん、ベッドが大きい……」
「翠葉ちゃんがちっさ過ぎるんだ」
笑われたけれど、昇さんが横になったところを考えると、確かに縦の長さはそんなに大きいといえるものではなかった。
でも、横幅は半端なく広い気がする。
私サイズなら四人くらい並んで眠れそう。
端から端まで何回転がったらたどり着くだろう?
あまりにも私の身体のサイズにはそぐわない。
「あとで蒼兄とお部屋変えてもらおうかな……?」
「あっちはキングサイズじゃないにしても、やっぱりクイーンかダブルだと思うぞ?」
どっちにしても大きいということ?
「ま、横になれ」
言われてベッドの端っこに横になる。
今、この部屋には昇さんと栞さんしかいない。
「記憶のことだが、何を思い出した?」
「前にここへ来たときのことを少し。でも、いつもと思い出し方が違ったから――」
だからびっくりしたのだ。
「記憶、戻りつつあるのか?」
驚いた顔をされる。
「全部じゃないです。まだ全然足りない……。会話の一フレーズや何かの一シーンとか……。パズルのピースみたいな感じで、前後関係がわからないようなものばかり」
「いつから?」
「記憶らしきものの夢なら、夏休み中に病院で何度か見ました。意識があって行動している中で思い出すようになったのは学校へ通い始めてからだと思います」
先生たちは記憶に関することを訊いてくることはなかったから、私もあまり話すことはなかった。それに、思い出すといっても説明ができるような思い出し方ではなかったのだ。
「翠葉ちゃんはもしかしたら記憶が戻るのかもしれないな」
「……思い出せない可能性もあるんですか?」
「あるよ。思い出せるか思い出せないか、それは医者にも患者にもわからない。でも、翠葉ちゃんの場合、少しずつでも思い出しているのなら、全部を思い出せる可能性は高い」
全部――
「焦らなくていいのよ?」
栞さんがベッドの脇にしゃがみこみ、私の目線と合わせてくれる。
私が不安がらないように。
「思い出そうと躍起になると海馬が壊れるってツカサに言われました。だから、必要以上には考えないようにしようと思います。でも、気になることは……秋斗さんやツカサ、周りの人に訊いてもいいでしょうか……?」
「それはかまわないけど、自分を追い込まないようにね?」
「はい……」
治療が終わってから七時までは四十五分あった。
私は夕飯まで少しの時間をそのベッドで休ませてもらった。
ディナーはドレスコードあり。
そんな場所へ行くのは久しぶりのことで、緊張しすぎてどうにかなってしまいそうだ。
蒼兄も唯兄もスーツを着ていてネクタイもしている。
私は紺のベルベッドのワンピース。ワンピース形はAライン。パフスリーブで肩から腕のあたりはふわっとしているけれど、手首のところできゅっと細くなっている。そして、襟周りと手首、スカートの裾にはデザイン生地が使われている。
髪の毛は栞さんがハーフアップにしてくれ、今はとても豪華な髪飾りがついている。
それはエメラルドとダイヤがちりばめられた髪飾り。
秋斗さんからいただいた誕生日プレゼントなのだとか。
私はどうしてこんな高価なものを受け取ってしまったのだろう……。
いくら考えても不思議でならない。
レストランへ行くと、
「いらっしゃいませ。すでに秋斗様がお待ちでいらっしゃいます」
と、木田さんが案内してくれる。
ほかのお客様もいる中、奥の仕切られたスペースへと案内された。
秋斗さんは私たちに気づくと席を立ち、
「体調は大丈夫?」
細身で背が高いのは知っているけれど、スーツを着ると印象が変わる。非のうちどころがないくらいに格好いい。
「翠葉ちゃん?」
「は、はいっ」
「……どうかした?」
顔を覗き込まれれば頬に熱を持つ。
そんな私を見て笑いながら、
「では、お姫様はこちらへどうぞ」
と、右手を取られた。
かぶる――何と?
どこかのホテル――それはいつ?
――わからない。
「……ん、翠葉ちゃん」
「え? あ――」
少し強めに握られた手に気づくと、みんなの視線が自分に集っていた。
「ごめんなさい、なんでもないです……」
「翠葉ちゃん、ここのシェフの料理もとても美味しいのよ? 美味しいものをいただきましょう?」
ピンクベージュのシックなドレスを着た栞さんに言われる。
首には二連のパールネックレス。オフホワイトの、柔らかな光を発するようなパールは栞さんにとてもよく似合っていた。
秋斗さんにエスコートされて席に着くと、目の前には蒼兄、左隣には栞さん。右隣には唯兄。
栞さんの正面には昇さんが座り、唯兄の正面には秋斗さんが座った。
料理はどれも美味しかったと思う。でも、あまり記憶にはない。
ツカサにも栞さんにも考えすぎないように、と言われたけれど、それは存外難しかった。
考えないようにすればするほど、意識はそこへ集中してしまうのだ。
全部食べることはできたけれど、食べることには集中できなかった。
その場の会話も、受け答えも覚えていない。
上の空とはこういうことをいうのだろう。
作り手の人に対してものすごく申し訳ない時間を過ごしてしまった。
「ごちそうさま」よりも、「ごめんなさい」――
「蒼兄、このあと、少しだけステラハウスへ行ってもいい?」
「え?」
「星空が見たいの」
蒼兄は顔を引きつらせて秋斗さんの方を向いた。
「秋斗先輩、信じてますからねっ?」
「右に同じくっ」
唯兄と蒼兄が秋斗さんにじりじりと近づく。
「わかってるってば……」
秋斗さんは苦笑して答えた。
「でも、翠葉、一度部屋に戻って着替えてからにしな。その格好で森を歩くのは寒いよ」
「うん。一度お部屋に戻って着替える。そしたらいい?」
「いいよ。戻ってくるときは電話かけな。迎えに行くから」
「ありがとう」
「じゃ、俺はここで待ってるね」
秋斗さんは噴水広場の脇にあるガーデンテーブルの椅子に座った。
「……寒くないですか?」
「大丈夫だよ。……男のほうが筋肉ついてるから寒さには強いんだ」
あ――
「……翠葉ちゃん?」
「あ……えと、あの、あとでたくさん訊きたいことが……」
「うん、いいよ。話をしよう」
「リィ、先に着替え。療養に来て風邪ひいて帰ったら相馬先生に何言われるかわかったもんじゃない。湊さんだって怖いんだからさ」
「それはそうね……」
栞さんがクスリと笑った傍らで、昇さんが口を開く。
「そんな暁には、怒られるのは間違いなく俺だ」
すると、昇さんのジャケットを肩からかけてくれた。
部屋で着替えをしたときに、髪の毛も解いた。
森で髪飾りを落とすのが怖くて。
いただいた陶器の入れ物にそれを戻し、結ったあとがついてしまった髪の毛をひとつに束ね、左サイドで緩く一本の三つ編みにした。
ゴムにはツカサからもらったとんぼ玉が通してある。
気づけばとんぼ玉は私のお守りみたいな存在になっていた。
このとんぼ玉に触れて一から十までのカウントを思い出すと、気持ちを落ち着かせることができる。
「じゃ、行ってくるね」
部屋を出て秋斗さんの待つ噴水広場まで歩きながら考える。
足がかりが少しずつ増えているのは、秋斗さんが以前私に言ったことのある言葉を使ってくれているから……?
ふと、そんなことを思う。
「さっきのワンピースもかわいかったけど、そのワンピースもかわいいね」
話しかけられて、噴水広場にたどり着いていたことに気づく。
「歩きながら考えごとは危ないよ?」
席を立った秋斗さんはクスクスと笑っていた。
その背後、ガーデンテーブルにはティーカップが置かれていて少しほっとする。
やっぱり、ここは人を待つのには寒すぎる。
「木田さんがハーブティーを持ってきてくれたんだ。だから、寒くはなかったよ。さ、行こうか」
手を差し出され、その手をじっと見てから手を乗せた。
「どうかした?」
「いえ……ただ、何か思い出せそうな気がするから――ひとつひとつが見過ごせなくて……」
「とりあえず、今からは足元だけに注意を払ってね?」
「はい」
昼間はなかったソーラーライトがそこかしこに置かれていた。
さすがに森の中にキャンドルは置けないのだろう。
それらはフットライトのようにぼんやりと足元だけを照らしてくれる。
そのほかは、秋斗さんが片手に懐中電灯を持っていた。
お昼のときよりも若干強めに握られているのは、あまりにも私の足元が覚束ないせいだろう。
夜道を歩くのには慣れていないし、こんな山中を歩くのにも慣れていはいない。
途中までは石畳が敷かれているけれど、森に入ってからは木の根を傷めないためか、雑草の処理がしてある程度で、そこかしこに木の根が盛り上がっている。
「きゃっ――」
木の根に躓き、ポスン、と秋斗さんに抱きとめられた。
「危機一髪……」
言いながら秋斗さんはくつくつと笑う。
「すみません……ちゃんと足元見て歩いてるんですけど……」
「もう少しゆっくり歩こうか」
秋斗さんは少しペースを落としてくれた。
別にそれまでがとても速かったわけではない。どちらかというなら、ゆっくり歩いてくれていたと思う。それでも私が躓いてしまっただけで……。
森を抜けると、ステラハウスの中からホテルの従業員が出てきた。
「ごゆっくりお過ごしください」
とその人は腰を折り、音を立てないようにドアを閉めた。
室内には三つのストーブがついていて、キャンドルもオイルランプもすべてが灯っていた。
「うわぁ…………」
「人工の明かりじゃないのがいいよね?」
「はい、すごく優しい光――」
「ま、あたたかくなるのに時間はかかるし、火を使う以上、無人っていうわけにはいかないけど、この光の演出は好きかな」
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