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24~28 Side 司 02話
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図書室に入ると朝陽に声をかけられた。
「司、秋斗先生がちょっと顔を出してほしいって言ってた」
「わかった」とは答えたものの、会いたくないと思う。この先の部屋に踏み込みたくない……。
そうは思っても身体は着々と部屋の出入り口へ近づくし、右手でインターホンを押し、いつもと変わりない調子で「司」と声を放つ。
すぐにドアが開き中へ入ると、秋兄はデスク前でタイピング中だった。
テクニカルキーの独特な音だけが鳴り響く部屋。数秒後、タン、とエンターキーを押したであろう小気味いい音と共に、秋兄の顔がこちらを向いた。
夜通し仕事をしていた、そんな顔をしている。
「何」
「翠葉ちゃんと仲直りした?」
「なんでそんなことを秋兄に言わなくちゃいけない?」
よりによって今一番訊かれたくないことを、一番訊かれたくない人間に訊かれるとは――
「翠葉ちゃん、泣きそうな顔してたけど?」
そんなの、言われなくても知ってる……。
「でも、泣かないって……。自分が悪いことをしたに違いないから、司は意味もなく怒る人じゃないからって」
あんなの、一方的に俺が怒ったに過ぎないのに。
怒ったというよりは、イラついただけなのに。
「あの子はさ、自分に自信がない子だから」
秋兄が目を伏せ静かに話しだす。
「だから、おまえに好かれているなんて絶対に思わないよ。絶対に、ね。実際、自分が司と一緒にいられるのは異性だと思われてないからって勘違いしてるみたいだし」
「っ……!?」
あのあと、翠は秋兄に俺との会話の内容を話したのだろう。そうでなければ、このことを秋兄が知るわけがない。
「おまえが好きって口にしない限り、気づかない。そんなこと、司だってわかってるだろ?」
わかってる、わかってた――
「だから」と思う気持ちと、「でも」と思う気持ちが交差する。
こんな話は神経を逆撫でにされるだけだ。
部屋を出ようと思い、秋兄に背を向けた。
「話ってそれだけ?」
「そう、それだけ。あぁ、あと……俺はおまえの提案に乗じて、明日、翠葉ちゃんとブライトネスパレスへ行くよ」
「……ご勝手に」
そんなの、近いうちに必ず行くことになるんだ。それが早いか遅いかなんて関係ない。
「一泊旅行だけど、同じこと言える?」
「っ――!?」
咄嗟に振り返ると、「どう?」と言わんばかりの顔をしていた。
「――翠を傷つけるようなことだけはもうするな」
「もう、心も身体も傷つけるつもりはないよ」
秋兄は視線を逸らさずに答える。
そんな過ちはもうしないとわかっている。けど、言わずにはいられなかった。
「むしろ、今彼女を傷つけてるのは司なんじゃない? 自分の気持ちが伝わらないからって八つ当たりよろしくあんな態度とって泣かせる寸前」
何も言い返せない……。
「御園生夫妻の了解も得てるから、俺は二日かけて翠葉ちゃんに好きになってもらう努力をしてくることにする。俺がどのくらい彼女を好きなのか、それを目一杯伝えてくる。話はそれだけだ」
秋兄はパソコンのディスプレイに視線を向け、すぐに仕事を再開した。
図書室に戻ると、いつもと同じようにノートパソコンを開く。
起動するまでの時間は気持ちを立て直すのにちょうどいい。
切り替えろ――頭を、気持ちを、すべてを切り替えろ。
窓際に立ちカーテンと窓の間に身体を潜ませ、深く息を吸い込み吐き出す。それを何度か繰り返すだけで良かった。
席に着き、まずは生徒会宛に来ているメールチェック。
緊急性の高いものからフォルダに割り振っていく。
リトルバンクの設置完了――
リトルバンクとは、クラス代表者や部の代表者が金を引き出したり送金することができるATMシステム。
材料調達に実店舗まで行くこともあれば、時間削減のためにネットでオーダーすることもある。
その際の金のやりとりは生徒会に与えられている口座のひとつを介しておこなわれるわけだが、それをいちいち生徒会の人間が代行していたらほかの仕事に手が回らなくなる。
それをクリアするために口座を二段構えにするシステムが作られた。
表向き、実際のショップに送金される際に使用されるのは親である生徒会口座番号。
その口座の下には各クラス、各部活に枝分かれした子ども口座が設置されている。
その子ども口座から送金された金額を生徒会口座から送金する。
それを可能するために作られたシステムがリトルバンクだ。
紅葉祭実行委員の会計部隊は、生徒会が排出するリトルバンクでの収支リスト一覧と各クラス、各部から上がってきた書面の収支報告書を照らし合わせ問題がないかの確認をする。
問題があった場合は生徒会会計に報告し、ただちに原因解明を急ぐ。
大きなイベントがあるとき、実行委員における会計と生徒会における会計は一組織として独立する。
それだけ大きな金額を動かすことになるからだ。
「朝陽、リトルバンクの動作確認行って」
「あ、設置済んだんだ? だとしたら……会長、クラス委員と実行委員の打ち合わせに遅れます」
カウンター内で作業している会長に声をかける。と、
「わかった。こっちは俺と茜と桃ちゃんがいるし大丈夫。ただ、リトルバンクの説明は朝陽しかできないから、それは一番最後に回しておく」
「了解です」
斜め前から視線を感じて顔を上げると、嵐がブスッとした顔で俺を見ていた。
「司、早く機嫌直してよね? あと数日もしたら放送委員だって図書室での作業が出てくるんだから。今のままだとそこかしこから図書室の雰囲気悪くて近寄れないとか苦情がきそう」
「機嫌が悪かろうが良かろうが仕事はしている。俺の存在に問題があるなら俺が場所を移せばいいだけのこと」
意識を仕事に集中させようとすると、誰かしらから茶々が入る。はっきりいって迷惑だ。
「嵐、手芸部の収支報告が滞っている。とっとと回収してこい」
邪魔な人間は図書室から出すに限る。
「行ってくるわよっ! 言われなくてもっ」
まるで猫が毛を逆立てるかのごとく、図書室から出ていった。
「相変わらず容赦ないなぁ……」
優太が苦笑しながら自動ドアが閉まるのを見ていた。
「優太はこれ」
「あぁ、やらねばならんと思ってましたよ。文化部から上がってきてる支給金申請書とその他もろもろの調整ね」
会計が当面追われるのは、文化部から上がってくる材料費などの支給金申請書と文化部へ支給する金額調整。
過去資料から文化部に割く金額やその他、校内展示やステージにかける金額の比率を参考にしてはいるものの、実際に数字を出していくとなれば、比率はあくまでも比率であって、数字のひとつひとつはそれぞれはじき出していかなくてはならない。
今までの紅葉祭はクラス展示や文化部の展示に重点を置き、ステージは文化部の発表の場、その程度だった。
未だかつて一日目の午後を丸々ライブステージに費やすなどという事例はなく、ステージというものに対し、ここまで人員を割いたケースもない。
一時間ほどすると、
「司、ちょっとたんまっ。俺、集中力がもたないっ」
優太はファイル片手に席を立ち、「ちょい打ち合わせ行ってくるっ」と図書室を逃げ出した。
これだけの金額を調整するとなると、さすがに休憩は必要だろう。
支給金の調整に関しては必ずふたり以上の人間でやるようにしている。誤差を出さないための対策として。
優太がいなければ、必然的に作業は止まる。
仕方ない、ほかの業者から上がってきている見積もりのチェックを済ませるか。
優太と入れ替わりで戻ってきたのは茜先輩。
ノートパソコンのスタンバイモードを解除すると同時、茜先輩に話しかけられた。
「司、今日は私に付き合って?」
「は?」
茜先輩が自分のかばんと俺のかばんを持って図書室から出る準備をする。
「茜先輩、あと二十分もしたら打ち合わせの時間ですよ」
俺の勘違いでなければ、茜先輩はクラス委員と実行委員の打ち合わせのためにここへ戻ってきたはずなんだが……。
「久、ごめん! 私重大な用事ができちゃった」
重大な用事と言いつつ俺を指差す。
重大な用事って何……? ボイトレ? いや、ボイトレってそんなに重大じゃないだろ。
「うーん……それは重大だね。仕方ない、いいよ。こっちは俺と桃ちゃんでなんとかする。でも、それは?」
今度は会長がこのテーブルに積まれているものを指差した。
「ん? これ? これはぁ……優太と誰かにがんばってもらう!」
「誰かって……今日は翠も休みだし、俺が抜けると誰も――」
「それでもっ! 今は私と歌のレッスン! ほら行くよっ!」
なんで重大な用事が歌のレッスンなんだか……。
俺は目の前にあるこの山をとっとと片付けたいわけで、それ以外にもやらなくてはいけないことは山ほどある。
「司? 司がいたらすごく助かることもたくさんあるけどね、司が一日抜けたからといって全部が滞るわけじゃないの。会計の仕事は会計の人がやるのがベストだけど、たとえばほかの人間が文系だろうが計算くらいはできるのよ」
ドクリ、と心臓が脈打つ。
俺がショックを受けたわけじゃない。これはきっと、翠に自分を重ねただけ。
「……そうですね。俺ひとりがいなかったとして、とくに何がどうなることもないでしょう」
そう言って席を立った。
おかしい……。
今までの俺なら、人にあれこれ指示を飛ばすだけ飛ばして、自分はその経過や管理をするだけの人間だったはず。何がどうしてこんなにのめりこんでる……?
たかだか紅葉祭。もっと淡白に切り抜けてきたはずなのに。
耳にこだまするのは茜先輩の言葉。
――「司が一日抜けたからといって全部が滞るわけじゃないの」。
もっともだ。それを否定したくなるのは――
――「私がいなくても困らないよね」。
翠の言葉と重なったから。
俺がいなかったら翠は――困る? それとも、困らない?
つまり、翠がいつも怯えているのはこういうことなのか――?
「司、秋斗先生がちょっと顔を出してほしいって言ってた」
「わかった」とは答えたものの、会いたくないと思う。この先の部屋に踏み込みたくない……。
そうは思っても身体は着々と部屋の出入り口へ近づくし、右手でインターホンを押し、いつもと変わりない調子で「司」と声を放つ。
すぐにドアが開き中へ入ると、秋兄はデスク前でタイピング中だった。
テクニカルキーの独特な音だけが鳴り響く部屋。数秒後、タン、とエンターキーを押したであろう小気味いい音と共に、秋兄の顔がこちらを向いた。
夜通し仕事をしていた、そんな顔をしている。
「何」
「翠葉ちゃんと仲直りした?」
「なんでそんなことを秋兄に言わなくちゃいけない?」
よりによって今一番訊かれたくないことを、一番訊かれたくない人間に訊かれるとは――
「翠葉ちゃん、泣きそうな顔してたけど?」
そんなの、言われなくても知ってる……。
「でも、泣かないって……。自分が悪いことをしたに違いないから、司は意味もなく怒る人じゃないからって」
あんなの、一方的に俺が怒ったに過ぎないのに。
怒ったというよりは、イラついただけなのに。
「あの子はさ、自分に自信がない子だから」
秋兄が目を伏せ静かに話しだす。
「だから、おまえに好かれているなんて絶対に思わないよ。絶対に、ね。実際、自分が司と一緒にいられるのは異性だと思われてないからって勘違いしてるみたいだし」
「っ……!?」
あのあと、翠は秋兄に俺との会話の内容を話したのだろう。そうでなければ、このことを秋兄が知るわけがない。
「おまえが好きって口にしない限り、気づかない。そんなこと、司だってわかってるだろ?」
わかってる、わかってた――
「だから」と思う気持ちと、「でも」と思う気持ちが交差する。
こんな話は神経を逆撫でにされるだけだ。
部屋を出ようと思い、秋兄に背を向けた。
「話ってそれだけ?」
「そう、それだけ。あぁ、あと……俺はおまえの提案に乗じて、明日、翠葉ちゃんとブライトネスパレスへ行くよ」
「……ご勝手に」
そんなの、近いうちに必ず行くことになるんだ。それが早いか遅いかなんて関係ない。
「一泊旅行だけど、同じこと言える?」
「っ――!?」
咄嗟に振り返ると、「どう?」と言わんばかりの顔をしていた。
「――翠を傷つけるようなことだけはもうするな」
「もう、心も身体も傷つけるつもりはないよ」
秋兄は視線を逸らさずに答える。
そんな過ちはもうしないとわかっている。けど、言わずにはいられなかった。
「むしろ、今彼女を傷つけてるのは司なんじゃない? 自分の気持ちが伝わらないからって八つ当たりよろしくあんな態度とって泣かせる寸前」
何も言い返せない……。
「御園生夫妻の了解も得てるから、俺は二日かけて翠葉ちゃんに好きになってもらう努力をしてくることにする。俺がどのくらい彼女を好きなのか、それを目一杯伝えてくる。話はそれだけだ」
秋兄はパソコンのディスプレイに視線を向け、すぐに仕事を再開した。
図書室に戻ると、いつもと同じようにノートパソコンを開く。
起動するまでの時間は気持ちを立て直すのにちょうどいい。
切り替えろ――頭を、気持ちを、すべてを切り替えろ。
窓際に立ちカーテンと窓の間に身体を潜ませ、深く息を吸い込み吐き出す。それを何度か繰り返すだけで良かった。
席に着き、まずは生徒会宛に来ているメールチェック。
緊急性の高いものからフォルダに割り振っていく。
リトルバンクの設置完了――
リトルバンクとは、クラス代表者や部の代表者が金を引き出したり送金することができるATMシステム。
材料調達に実店舗まで行くこともあれば、時間削減のためにネットでオーダーすることもある。
その際の金のやりとりは生徒会に与えられている口座のひとつを介しておこなわれるわけだが、それをいちいち生徒会の人間が代行していたらほかの仕事に手が回らなくなる。
それをクリアするために口座を二段構えにするシステムが作られた。
表向き、実際のショップに送金される際に使用されるのは親である生徒会口座番号。
その口座の下には各クラス、各部活に枝分かれした子ども口座が設置されている。
その子ども口座から送金された金額を生徒会口座から送金する。
それを可能するために作られたシステムがリトルバンクだ。
紅葉祭実行委員の会計部隊は、生徒会が排出するリトルバンクでの収支リスト一覧と各クラス、各部から上がってきた書面の収支報告書を照らし合わせ問題がないかの確認をする。
問題があった場合は生徒会会計に報告し、ただちに原因解明を急ぐ。
大きなイベントがあるとき、実行委員における会計と生徒会における会計は一組織として独立する。
それだけ大きな金額を動かすことになるからだ。
「朝陽、リトルバンクの動作確認行って」
「あ、設置済んだんだ? だとしたら……会長、クラス委員と実行委員の打ち合わせに遅れます」
カウンター内で作業している会長に声をかける。と、
「わかった。こっちは俺と茜と桃ちゃんがいるし大丈夫。ただ、リトルバンクの説明は朝陽しかできないから、それは一番最後に回しておく」
「了解です」
斜め前から視線を感じて顔を上げると、嵐がブスッとした顔で俺を見ていた。
「司、早く機嫌直してよね? あと数日もしたら放送委員だって図書室での作業が出てくるんだから。今のままだとそこかしこから図書室の雰囲気悪くて近寄れないとか苦情がきそう」
「機嫌が悪かろうが良かろうが仕事はしている。俺の存在に問題があるなら俺が場所を移せばいいだけのこと」
意識を仕事に集中させようとすると、誰かしらから茶々が入る。はっきりいって迷惑だ。
「嵐、手芸部の収支報告が滞っている。とっとと回収してこい」
邪魔な人間は図書室から出すに限る。
「行ってくるわよっ! 言われなくてもっ」
まるで猫が毛を逆立てるかのごとく、図書室から出ていった。
「相変わらず容赦ないなぁ……」
優太が苦笑しながら自動ドアが閉まるのを見ていた。
「優太はこれ」
「あぁ、やらねばならんと思ってましたよ。文化部から上がってきてる支給金申請書とその他もろもろの調整ね」
会計が当面追われるのは、文化部から上がってくる材料費などの支給金申請書と文化部へ支給する金額調整。
過去資料から文化部に割く金額やその他、校内展示やステージにかける金額の比率を参考にしてはいるものの、実際に数字を出していくとなれば、比率はあくまでも比率であって、数字のひとつひとつはそれぞれはじき出していかなくてはならない。
今までの紅葉祭はクラス展示や文化部の展示に重点を置き、ステージは文化部の発表の場、その程度だった。
未だかつて一日目の午後を丸々ライブステージに費やすなどという事例はなく、ステージというものに対し、ここまで人員を割いたケースもない。
一時間ほどすると、
「司、ちょっとたんまっ。俺、集中力がもたないっ」
優太はファイル片手に席を立ち、「ちょい打ち合わせ行ってくるっ」と図書室を逃げ出した。
これだけの金額を調整するとなると、さすがに休憩は必要だろう。
支給金の調整に関しては必ずふたり以上の人間でやるようにしている。誤差を出さないための対策として。
優太がいなければ、必然的に作業は止まる。
仕方ない、ほかの業者から上がってきている見積もりのチェックを済ませるか。
優太と入れ替わりで戻ってきたのは茜先輩。
ノートパソコンのスタンバイモードを解除すると同時、茜先輩に話しかけられた。
「司、今日は私に付き合って?」
「は?」
茜先輩が自分のかばんと俺のかばんを持って図書室から出る準備をする。
「茜先輩、あと二十分もしたら打ち合わせの時間ですよ」
俺の勘違いでなければ、茜先輩はクラス委員と実行委員の打ち合わせのためにここへ戻ってきたはずなんだが……。
「久、ごめん! 私重大な用事ができちゃった」
重大な用事と言いつつ俺を指差す。
重大な用事って何……? ボイトレ? いや、ボイトレってそんなに重大じゃないだろ。
「うーん……それは重大だね。仕方ない、いいよ。こっちは俺と桃ちゃんでなんとかする。でも、それは?」
今度は会長がこのテーブルに積まれているものを指差した。
「ん? これ? これはぁ……優太と誰かにがんばってもらう!」
「誰かって……今日は翠も休みだし、俺が抜けると誰も――」
「それでもっ! 今は私と歌のレッスン! ほら行くよっ!」
なんで重大な用事が歌のレッスンなんだか……。
俺は目の前にあるこの山をとっとと片付けたいわけで、それ以外にもやらなくてはいけないことは山ほどある。
「司? 司がいたらすごく助かることもたくさんあるけどね、司が一日抜けたからといって全部が滞るわけじゃないの。会計の仕事は会計の人がやるのがベストだけど、たとえばほかの人間が文系だろうが計算くらいはできるのよ」
ドクリ、と心臓が脈打つ。
俺がショックを受けたわけじゃない。これはきっと、翠に自分を重ねただけ。
「……そうですね。俺ひとりがいなかったとして、とくに何がどうなることもないでしょう」
そう言って席を立った。
おかしい……。
今までの俺なら、人にあれこれ指示を飛ばすだけ飛ばして、自分はその経過や管理をするだけの人間だったはず。何がどうしてこんなにのめりこんでる……?
たかだか紅葉祭。もっと淡白に切り抜けてきたはずなのに。
耳にこだまするのは茜先輩の言葉。
――「司が一日抜けたからといって全部が滞るわけじゃないの」。
もっともだ。それを否定したくなるのは――
――「私がいなくても困らないよね」。
翠の言葉と重なったから。
俺がいなかったら翠は――困る? それとも、困らない?
つまり、翠がいつも怯えているのはこういうことなのか――?
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