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第十三章 紅葉祭
43話
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「自分の携帯にかけるのに何緊張してるんだか」
蒼兄の言葉に背を押され、そうだよそうだよ――と自分を勇気づける。
でも、コール音が鳴り始めると脈打つ速度が一気に加速し、それだけで息が上がりそうになる。
コール音を耳に応答を待つのはいつだって緊張する。けれども、今はいつも以上の緊張に卒倒しそうだ。
右手に持った携帯をぎゅっと掴んでコールし続けること五回。六回目が鳴る前にツカサの声が沈黙を破った。
『何……』
え? 今、何って言われた?
今まで何度かツカサに電話をかけたことがあるけれど、出て早々に「何」と言われたことはない。
あまりの素っ気無さに声を発することもできなくなる。
「何」以上の何かを言われたわけではない。でも、機嫌の悪さは電波を伝ってひしひしと感じる。
『今、翠の近くにいるんですよね? なら、この携帯にかけてくる必要はないかと思いますが』
その言葉を聞いてはっとした。
『用がないなら切る』
しん、とした車内にツカサの声が響き、
「司っちー? 今電話かけてるの俺じゃないから。あまりにもキツイ口調で話すもんだから、リィが怖がって話せないことになってるけどー?」
『翠っ!?』
「あ……はい、翠葉です」
『……今まで何度も言ってきたけど、もう一度だけ言わせてほしい。これ、通信機器だから、話さないと意味を成さないアイテム』
「うん、ごめん……」
『俺の携帯なら持って帰ってもらってかまわない。もし翠がかまうっていうなら、あとで家に届ける。……ただ、今夜は家族水入らずで鍋らしいから、玄関のドアにでもぶら下げておこうか? 俺のはコンシェルジュにでも預けてくれればいい』
声の調子は幾分か柔らかくなったものの、親切そうでどこか意地悪全開な感じ。
「いい……。ツカサが困らないのなら、このままで……」
『問題ない。因みに、別に俺にかけるのに唯さんの携帯使う必要ないから。むしろ、そっちのほうが紛らわしくて迷惑』
「迷惑」という言葉に胸がチクリと痛む。
なんとか口にできた「わかった」という言葉は、震えこそしなかったけれど、手が――指先から冷えていく感じがした。
『じゃ、切るから』
プツリ、と通話が切れ、ツー、と流れる無信号を止める。
唯兄に携帯を返そうとすると、唯兄は助手席で身体を丸めて大笑いしていた。
「唯……。おまえ、あまり司のことからかうなよ?」
蒼兄が声をかけると、
「だって楽しいんだもんっ!」
豪快な一言が返ってきた。
唯兄……。唯兄は楽しそうだけど、私はちょっとつらい……。
車内の誰にも気づかれないように、視線をそっと車の外へ移した。
通話が終わってから発進した車は、いつもとは違う通用門から出てマンションへと向かった。
秋斗さんはマンションのロータリーに車を停めてくれ、借りていたジャケットを返そうとすると、
「冷えるから、家までちゃんと羽織ってて? 返すのはいつでもいいから」
その後も、「冷えるから」の一言で却下され、車を見送ることもさせてはもらえなかった。
エレベーターの中でポツリ、と零す。
「秋斗さんはすごく優しいね」
ふたりの兄はそれぞれ答えをくれる。
「そうだな」と答えたのは蒼兄で、「わかりやすい優しさ?」と訊いてきたのは唯兄だった。
さっき、図書棟で零した言葉はしっかりと拾われていたらしい。
「うん……。秋斗さんの優しさはわかりやすい。でも、ツカサの優しさはわかりづらくて、あとで気づいてすごく申し訳なくなる」
「ま、優しくするのなんてさ、誰に頼まれてしてるわけでもないんだから、基本は気づいたときに『ありがとう』でいいんだよ」
家に着くと、海鮮鍋のいい匂いがしていた。
どうやら食材はコンシェルジュに用意してもらい、家に帰ってきたらすぐにお鍋ができる状態で出かけたらしい。
「翠葉は先にお風呂?」
お母さんに訊かれてコクリと頷く。
相馬先生にも秋斗さんにも冷やさないように言われた。だから、ひとまずあたたまろう。
ルームウェアに着替え、秋斗さんのジャケットをハンガーにかけようとしたとき、大好きな香りがふわっと香った。
この香りは秋斗さんがあの香水をつけたときに香る香り。
思わず顔をうずめてその香りを吸い込む。
「リィ……なんだかすごく変態っぽい」
「っ……!?」
唯兄が部屋の入り口から顔を覗かせていた。
「お風呂にお湯入ったよって言いに来たんだけど……」
私は、「変態っぽい」という言葉と自分の行為を少し考え、言われても仕方のないことをしていたかも、と思えばなんともいえない気分になる。
「嘘だよ、嘘うそ。その香り、すごいこだわってたもんね?」
唯兄は部屋に入ってきてはベッドに腰掛ける。
「うん……」
「きっとそうそういないよ? 香りが気になって人につけさせてまでラストノートを確認する子」
「……そう、かな?」
「俺は未だかつてリィしか見たことないね」
自信満々に言われてしまう。
「ま、気になるものっていうのは人それぞれだからいいと思うけど」
唯兄の言葉には、さっきから含みを感じていた。
含みは感じてもさらっと流されているようにも思えて、少し困惑していた。
「唯、何ミイラになってるんだよ」
蒼兄が入ってきて、早くお風呂に入るように言われた。
「翠葉が上がってこないと夕飯にならないんだから、長湯は勘弁な」
「はい」
バスタブに浸かりながら、今日一日の出来事を思い出していた。
午前中は警備のことあれこれで頭がいっぱいだったし、午後は午後で――
思い出すだけでも心と頭の中が大変なことになりそうだ。
整理なんてできそうにない。
ただ、ツカサのことを好きだと思った。
ほかのことはあまり考えたくない。事、ツカサの好きな人に関しては……。
相手がどんな人なのか知りたくて、知りたくない。
自分勝手な感情に自分自身が呆れてしまう。
香乃子ちゃんが言う「自分勝手」と私の「自分勝手」。内容は同じことのはずなのに、自分のことだと思うとこんなにも重く感じる。
「香乃子ちゃんのことを軽く考えているわけじゃないんだけどな……」
そう呟いては、今日知った初めての感情を口にしてみる。
「好き――」
できる限り小さく発したつもりなのに、バスルームに反響した声が意外にも大きく聞こえて、慌てて水面に顔をつけた。
パシャン――音と共に、顔に少しの衝撃がある。
口から吐き出す息が、大小様々な気泡となって水面に上がっていくのを肌で感じる。
ポコポコポコ、と顔の周りでする音がとても大きく聞こえ、その音に身を委ねていた。
ローズマリーの香りを感じつつの入浴だったこともあり、香りつながりで秋斗さんを思い出す。
秋斗さん、私、好きな人ができました……。でも、その人は秋斗さんじゃなかった。
……秋斗さんも私がほかの人を好きだと知ったら、今日の私みたいに傷つくのだろうか。
少し考えるだけでも、心臓をぎゅっ、と掴まれたみたいに苦しく感じる。
そして、なんだか呼吸も苦しい気がしてきた。
あ――ザバッ、と顔を上げて思う。
息をしていなかったら苦しくなって当たり前……。
お風呂から出るときには息が少し切れていた。
バスルームを出ると、唯兄がドライヤーを持って待機していた。
「化粧水つけたらリビングね」
言われてコクリと頷く。
自室のドレッサーの前に立ち化粧水をつけながら、そのテーブルに置いてあるものに目を留める。
秋斗さんからいただいた髪留めとツカサからもらった柘植櫛。それから、ツカサからもらったとんぼ玉に秋斗さんからいただいた香水。
あと、今は手元にないけれど、携帯のストラップも秋斗さんからいただいたもの。
どれも大切なものだと思う。
記憶をなくしたばかりのころは、今ほどの気持ちを抱きはしなかった。
今も記憶はないけれど、新しく重ねた時間がある。
なくした記憶よりもはるかに短い時間だけど、それでもとても大切なものだと思える。
もし記憶が戻ったら――
今以上に大切なものになるのだろうか。それとも、「今」が崩れてしまうのだろうか――
リビングへ行くと、「遅い」と四人に声を揃えて言われた。
唯兄とお父さんの手にドライヤーが握られている。
唯兄の手にあるものはこのゲストルームにあるドライヤー。お父さんの手にあるものはいったいどこから調達してきたのだろう……。
「ほら、座って!」
唯兄に急かされいつものようにラグへ腰を下ろすと、お父さんと唯兄の二方向から髪の毛を乾かされた。
ドライヤーの騒音がいつもより五割り増し。お風呂に入ってきたのに汗かいちゃいそう……。
「んー! ハーブの香りがいい香りっ!」
「唯兄だって同じものを使っているでしょう?」
「香りの強さは髪の長さに比例します」
私たちの会話を聞いていた蒼兄とお母さんが怪訝な顔をする。
「蒼樹、ハーブの香りとはいえ、シャンプーの香りと海鮮鍋の匂いよ?」
「あぁ、母さんに一票。ふたつが混ざって美味しそうな匂いには思えない」
「えっ、ふたりともそっちっ!? いや、俺は純粋にハーブの香りをだねっ!?」
私とお父さんは、慌てる唯兄をクスクスと笑って見ていた。
そんな家族の団らんに心が和む。
とくにお父さんがいるのは久しぶりのことで、お父さんのにこにこと笑う顔がとても新鮮に思えた。
家族といる空気は心底ほっとできる。
何も考えず、自分をニュートラルな状態に保てる感じ。
そんな夕飯が済むとお父さんに声をかけられた。
「翠葉、外に出ようか」
「外……?」
「うん、ベランダの北側に広いスペースがあるの知ってるか?」
「知らない……」
「今日はいい天気だから、星がよく見えるよ」
「翠葉、あたたかい格好をしていらっしゃい。蒼樹が外にホットマットを出してくれてるわ。それから、毛布も用意してあるみたいよ」
夕飯の片付けをしていたお母さんに言われ、キッチンから顔を出した唯兄には、「あとでホットココア届けるよ」と言われた。
蒼兄の言葉に背を押され、そうだよそうだよ――と自分を勇気づける。
でも、コール音が鳴り始めると脈打つ速度が一気に加速し、それだけで息が上がりそうになる。
コール音を耳に応答を待つのはいつだって緊張する。けれども、今はいつも以上の緊張に卒倒しそうだ。
右手に持った携帯をぎゅっと掴んでコールし続けること五回。六回目が鳴る前にツカサの声が沈黙を破った。
『何……』
え? 今、何って言われた?
今まで何度かツカサに電話をかけたことがあるけれど、出て早々に「何」と言われたことはない。
あまりの素っ気無さに声を発することもできなくなる。
「何」以上の何かを言われたわけではない。でも、機嫌の悪さは電波を伝ってひしひしと感じる。
『今、翠の近くにいるんですよね? なら、この携帯にかけてくる必要はないかと思いますが』
その言葉を聞いてはっとした。
『用がないなら切る』
しん、とした車内にツカサの声が響き、
「司っちー? 今電話かけてるの俺じゃないから。あまりにもキツイ口調で話すもんだから、リィが怖がって話せないことになってるけどー?」
『翠っ!?』
「あ……はい、翠葉です」
『……今まで何度も言ってきたけど、もう一度だけ言わせてほしい。これ、通信機器だから、話さないと意味を成さないアイテム』
「うん、ごめん……」
『俺の携帯なら持って帰ってもらってかまわない。もし翠がかまうっていうなら、あとで家に届ける。……ただ、今夜は家族水入らずで鍋らしいから、玄関のドアにでもぶら下げておこうか? 俺のはコンシェルジュにでも預けてくれればいい』
声の調子は幾分か柔らかくなったものの、親切そうでどこか意地悪全開な感じ。
「いい……。ツカサが困らないのなら、このままで……」
『問題ない。因みに、別に俺にかけるのに唯さんの携帯使う必要ないから。むしろ、そっちのほうが紛らわしくて迷惑』
「迷惑」という言葉に胸がチクリと痛む。
なんとか口にできた「わかった」という言葉は、震えこそしなかったけれど、手が――指先から冷えていく感じがした。
『じゃ、切るから』
プツリ、と通話が切れ、ツー、と流れる無信号を止める。
唯兄に携帯を返そうとすると、唯兄は助手席で身体を丸めて大笑いしていた。
「唯……。おまえ、あまり司のことからかうなよ?」
蒼兄が声をかけると、
「だって楽しいんだもんっ!」
豪快な一言が返ってきた。
唯兄……。唯兄は楽しそうだけど、私はちょっとつらい……。
車内の誰にも気づかれないように、視線をそっと車の外へ移した。
通話が終わってから発進した車は、いつもとは違う通用門から出てマンションへと向かった。
秋斗さんはマンションのロータリーに車を停めてくれ、借りていたジャケットを返そうとすると、
「冷えるから、家までちゃんと羽織ってて? 返すのはいつでもいいから」
その後も、「冷えるから」の一言で却下され、車を見送ることもさせてはもらえなかった。
エレベーターの中でポツリ、と零す。
「秋斗さんはすごく優しいね」
ふたりの兄はそれぞれ答えをくれる。
「そうだな」と答えたのは蒼兄で、「わかりやすい優しさ?」と訊いてきたのは唯兄だった。
さっき、図書棟で零した言葉はしっかりと拾われていたらしい。
「うん……。秋斗さんの優しさはわかりやすい。でも、ツカサの優しさはわかりづらくて、あとで気づいてすごく申し訳なくなる」
「ま、優しくするのなんてさ、誰に頼まれてしてるわけでもないんだから、基本は気づいたときに『ありがとう』でいいんだよ」
家に着くと、海鮮鍋のいい匂いがしていた。
どうやら食材はコンシェルジュに用意してもらい、家に帰ってきたらすぐにお鍋ができる状態で出かけたらしい。
「翠葉は先にお風呂?」
お母さんに訊かれてコクリと頷く。
相馬先生にも秋斗さんにも冷やさないように言われた。だから、ひとまずあたたまろう。
ルームウェアに着替え、秋斗さんのジャケットをハンガーにかけようとしたとき、大好きな香りがふわっと香った。
この香りは秋斗さんがあの香水をつけたときに香る香り。
思わず顔をうずめてその香りを吸い込む。
「リィ……なんだかすごく変態っぽい」
「っ……!?」
唯兄が部屋の入り口から顔を覗かせていた。
「お風呂にお湯入ったよって言いに来たんだけど……」
私は、「変態っぽい」という言葉と自分の行為を少し考え、言われても仕方のないことをしていたかも、と思えばなんともいえない気分になる。
「嘘だよ、嘘うそ。その香り、すごいこだわってたもんね?」
唯兄は部屋に入ってきてはベッドに腰掛ける。
「うん……」
「きっとそうそういないよ? 香りが気になって人につけさせてまでラストノートを確認する子」
「……そう、かな?」
「俺は未だかつてリィしか見たことないね」
自信満々に言われてしまう。
「ま、気になるものっていうのは人それぞれだからいいと思うけど」
唯兄の言葉には、さっきから含みを感じていた。
含みは感じてもさらっと流されているようにも思えて、少し困惑していた。
「唯、何ミイラになってるんだよ」
蒼兄が入ってきて、早くお風呂に入るように言われた。
「翠葉が上がってこないと夕飯にならないんだから、長湯は勘弁な」
「はい」
バスタブに浸かりながら、今日一日の出来事を思い出していた。
午前中は警備のことあれこれで頭がいっぱいだったし、午後は午後で――
思い出すだけでも心と頭の中が大変なことになりそうだ。
整理なんてできそうにない。
ただ、ツカサのことを好きだと思った。
ほかのことはあまり考えたくない。事、ツカサの好きな人に関しては……。
相手がどんな人なのか知りたくて、知りたくない。
自分勝手な感情に自分自身が呆れてしまう。
香乃子ちゃんが言う「自分勝手」と私の「自分勝手」。内容は同じことのはずなのに、自分のことだと思うとこんなにも重く感じる。
「香乃子ちゃんのことを軽く考えているわけじゃないんだけどな……」
そう呟いては、今日知った初めての感情を口にしてみる。
「好き――」
できる限り小さく発したつもりなのに、バスルームに反響した声が意外にも大きく聞こえて、慌てて水面に顔をつけた。
パシャン――音と共に、顔に少しの衝撃がある。
口から吐き出す息が、大小様々な気泡となって水面に上がっていくのを肌で感じる。
ポコポコポコ、と顔の周りでする音がとても大きく聞こえ、その音に身を委ねていた。
ローズマリーの香りを感じつつの入浴だったこともあり、香りつながりで秋斗さんを思い出す。
秋斗さん、私、好きな人ができました……。でも、その人は秋斗さんじゃなかった。
……秋斗さんも私がほかの人を好きだと知ったら、今日の私みたいに傷つくのだろうか。
少し考えるだけでも、心臓をぎゅっ、と掴まれたみたいに苦しく感じる。
そして、なんだか呼吸も苦しい気がしてきた。
あ――ザバッ、と顔を上げて思う。
息をしていなかったら苦しくなって当たり前……。
お風呂から出るときには息が少し切れていた。
バスルームを出ると、唯兄がドライヤーを持って待機していた。
「化粧水つけたらリビングね」
言われてコクリと頷く。
自室のドレッサーの前に立ち化粧水をつけながら、そのテーブルに置いてあるものに目を留める。
秋斗さんからいただいた髪留めとツカサからもらった柘植櫛。それから、ツカサからもらったとんぼ玉に秋斗さんからいただいた香水。
あと、今は手元にないけれど、携帯のストラップも秋斗さんからいただいたもの。
どれも大切なものだと思う。
記憶をなくしたばかりのころは、今ほどの気持ちを抱きはしなかった。
今も記憶はないけれど、新しく重ねた時間がある。
なくした記憶よりもはるかに短い時間だけど、それでもとても大切なものだと思える。
もし記憶が戻ったら――
今以上に大切なものになるのだろうか。それとも、「今」が崩れてしまうのだろうか――
リビングへ行くと、「遅い」と四人に声を揃えて言われた。
唯兄とお父さんの手にドライヤーが握られている。
唯兄の手にあるものはこのゲストルームにあるドライヤー。お父さんの手にあるものはいったいどこから調達してきたのだろう……。
「ほら、座って!」
唯兄に急かされいつものようにラグへ腰を下ろすと、お父さんと唯兄の二方向から髪の毛を乾かされた。
ドライヤーの騒音がいつもより五割り増し。お風呂に入ってきたのに汗かいちゃいそう……。
「んー! ハーブの香りがいい香りっ!」
「唯兄だって同じものを使っているでしょう?」
「香りの強さは髪の長さに比例します」
私たちの会話を聞いていた蒼兄とお母さんが怪訝な顔をする。
「蒼樹、ハーブの香りとはいえ、シャンプーの香りと海鮮鍋の匂いよ?」
「あぁ、母さんに一票。ふたつが混ざって美味しそうな匂いには思えない」
「えっ、ふたりともそっちっ!? いや、俺は純粋にハーブの香りをだねっ!?」
私とお父さんは、慌てる唯兄をクスクスと笑って見ていた。
そんな家族の団らんに心が和む。
とくにお父さんがいるのは久しぶりのことで、お父さんのにこにこと笑う顔がとても新鮮に思えた。
家族といる空気は心底ほっとできる。
何も考えず、自分をニュートラルな状態に保てる感じ。
そんな夕飯が済むとお父さんに声をかけられた。
「翠葉、外に出ようか」
「外……?」
「うん、ベランダの北側に広いスペースがあるの知ってるか?」
「知らない……」
「今日はいい天気だから、星がよく見えるよ」
「翠葉、あたたかい格好をしていらっしゃい。蒼樹が外にホットマットを出してくれてるわ。それから、毛布も用意してあるみたいよ」
夕飯の片付けをしていたお母さんに言われ、キッチンから顔を出した唯兄には、「あとでホットココア届けるよ」と言われた。
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