光のもとで1

葉野りるは

文字の大きさ
920 / 1,060
Side View Story 14

40~45 Side 唯 03話

しおりを挟む
 結果的に俺が司っちにできたことはほとんどない。

 ――「準備が間に合わないっていうのもあるけど、これはリィにとって特別なものだから。すり替えは無理だと思う」。

 言えたのはここまで。
 事の真意を話さず、裏があると匂わさずに話すのはこれが精一杯だった。
 言えることは言ったけど、伝えられたかというなら否。
 曖昧すぎるヒントは、情報と捉えられることなく終わった。
 でも、気づいてほしかったな。「依存物質」以上の意味に――
 リィは確かに携帯を物として大切にしているし依存しているとも思う。
 でも、それだけじゃない。
 リィが本当に大切にしているものは「物」じゃなくて「人」なんだ。
 それに気づいてほしかった。
 どうしたら司っちはそのことに気づけただろう?
 考えて考えて考えて――リィに何かプレゼントをされたことがあったなら気づけたのかもしれない、と思った。
 今回は間に合わなかったけど、きっと終わってからでも遅くはない。
 リィ、司っちと秋斗さんに何かプレゼントするといいと思う。
 歌やお菓子みたいにそのとき限りでなくなるものじゃなく、形あるものを。
 さらなる注文をつけるなら、何かの衝撃で壊れちゃうような……そうだな、ガラス細工とか?
 ちょっとした衝撃で壊れちゃうガラス細工なんて、これ以上にないほどぴったりなアイテムじゃん。
 それを手にしたら、ふたりとも物に固執する意味を知るんじゃないかな。
 同じ姿形のものがあっても同一じゃない。
 替えはきかない。物に人を投影する。
 リィ、教えてあげなよ。
 そういうの、リィならふたりに教えられると思う。
 むしろ、リィじゃないと無理。

 会長がリィに期待しているのはそういう部分。
 これはクリアできてた。
 でも、さすがに全部はクリアできなかったな。
 蔵元さんから教えられて初めて知ることもあったから。
 秋斗さんは俺に司っちサイドにいてほしかったんだって。
 俺、そこまで汲み取ることはできなかった。
 でも、及第点がもらえる程度の働きはしたと思う。
 なんていうのかな……。
 もし、秋斗さんの思惑を一〇〇パーセント理解していたとしても、あれ以上のことができたとは思えない。
 そんなに簡単に教えられるものじゃないよね。
「気持ち」って、言葉で教えられるものじゃないから。
 人と関わることって、言葉で教えられるものじゃないから。
 結果的には人とぶつからない限り得ることはできないんだ。
 普通そういうのは学校やクラブ、会社、人の集まるところで学ぶもの。
 でも、君も秋斗さんも違ったんだね。
 そういう場所にいても学べない弊害ってものがあったんだ。
 リィは身体に問題があってそういう場所にきちんと通えなかった子。
 状況は違うけど、対人スキル的には三人とも大して差はないのかもしれない。
 俺にはセリっていう似たような子が側にいたから、対人スキルに問題がある人たちと接してもあまり違和感がないんだよね。
「個人差」って言葉は優秀。
 どんな状況にも使えるから。
 何かひとつの事象が起きても捉え方受け止め方は三者三様。
 立場が違えばなおのこと。
 同じ出来事を目の当たりにしてもみんながみんな違うものを感じただろう。
 傷のつき方も、深さも、範囲も、何もかもが異なる。
 司っち、今苦しいと思う。すごく痛いと思う。
 でも、そこから這い上がってきてよ。
 秋斗さんがしたようにさ。
 ……できれば、あまり時間をかけずに戻ってきてほしい。
 いつもの君で、早くここに戻ってきて。
 で、またリィのことサルベージしてよ。
 こんなに落ち込んでいるリィをどうやったら引き上げられるのか、俺ちょっと検討もつかないんだ。
 何せ、自分を追い詰めるのが上手すぎる子だからね。
 色々手段を講じてみるつもりではいるけれど、現況、手段の「し」の字も浮かばない状態なわけで……。
 だから、助けに来てよ。スーパーマンみたいにさ。
 あぁ、司っちほどスーパーマンが似合わない人はいないかも?
 冗談はさておき――「たったひとつなんでもお願いを聞いちゃう券」を特別に一枚だけ発行してもいいよ?
 今回の裏事情はリィに話さないように手を打つから。
 だから、早く戻っておいで。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

光のもとで2

葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、 新たな気持ちで新学期を迎える。 好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。 少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。 それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。 この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。 何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい―― (10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん
青春
「ほんと胸がニセモノで良かったな。貧乳バンザイ!」 「離して洋子! じゃなきゃあのバカの頭をかち割れないっ!」 「お、落ちついてメイちゃんっ!? そんなバットで殴ったら死んじゃう!? オオカミくんが死んじゃうよ!?」 県立森実高校には2人の美の「女神」がいる。 頭脳明晰、容姿端麗、誰に対しても優しい聖女のような性格に、誰もが憧れる生徒会長と、天は二物を与えずという言葉に真正面から喧嘩を売って完膚なきまでに完勝している完全無敵の双子姉妹。 その名も『古羊姉妹』 本来であれば彼女の視界にすら入らないはずの少年Bである大神士狼のようなロマンティックゲス野郎とは、縁もゆかりもない女の子のはずだった。 ――士狼が彼女たちを不審者から助ける、その日までは。 そして『その日』は突然やってきた。 ある日、夜遊びで帰りが遅くなった士狼が急いで家へ帰ろうとすると、古羊姉妹がナイフを持った不審者に襲われている場面に遭遇したのだ。 助け出そうと駆け出すも、古羊姉妹の妹君である『古羊洋子』は助けることに成功したが、姉君であり『古羊芽衣』は不審者に胸元をザックリ斬りつけられてしまう。 何とか不審者を撃退し、急いで応急処置をしようと士狼は芽衣の身体を抱き上げた……その時だった! ――彼女の胸元から冗談みたいにバカデカい胸パッドが転げ落ちたのは。 そう、彼女は嘘で塗り固められた虚乳(きょにゅう)の持ち主だったのだ! 意識を取り戻した芽衣(Aカップ)は【乙女の秘密】を知られたことに発狂し、士狼を亡き者にするべく、その場で士狼に襲い掛かる。 士狼は洋子の協力もあり、何とか逃げることには成功するが翌日、芽衣の策略にハマり生徒会に強制入部させられる事に。 こうして古羊芽衣の無理難題を解決する大神士狼の受難の日々が始まった。 が、この時の古羊姉妹はまだ知らなかったのだ。 彼の蜂蜜のように甘い優しさが自分たち姉妹をどんどん狂わせていくことに。 ※【カクヨム】にて編掲載中。【ネオページ】にて序盤のみお試し掲載中。【Nolaノベル】【Tales】にて完全版を公開中。 イラスト担当:さんさん

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...