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最終章 恋のあとさき
51話
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「何? 翠葉、ストーカー被害にあってるの?」
こちらの会話にすぐ反応を示したのは湊先生だった。
髪型とメイクは式のときと変わらず、着ているものだけが異なる。黒いロングコートの裾から赤いドレスがちらりと覗いていた。
「ちょっと秋斗っ、翠葉の警備どうなってんのよっ」
湊先生は勢いよく秋斗さんに突っかかる。
「ストーカー? そんな報告は上がってきてないけど……」
口にしてから、「あ……」という顔をして、
「もしかして俺のこと?」
自分を指差し、引きつり笑いで尋ねられる。
「ほかに誰がいるんですか」
唯兄がぞんざいに答えると、
「司とか……?」
秋斗さんは躊躇せず、自分に向けていた指をツカサへ向ける。
「俺はストーカーになった覚えはない」
感情の起伏を感じさせない声音。けれど表情は、「迷惑だ」と雄弁に語っていた。
「いや、傍から見たらストーカーとなんとかは紙一重って言うからさ」
秋斗さんの自虐的とも思える台詞にその場が沸く。
さっきと同様、私はその笑いに混ざることはできなくて……。けれど、笑っていない人はもうひとりいた。
テーブルセットに秋斗さんと向かい合わせで座っているツカサは、無表情だ。
すぐには気づけなかったけれど、湊先生とは違い、ツカサの髪型はいつものストレートに戻っていた。
「とりあえず、翠葉ちゃんは座ったらどうかな?」
「あ、はい……」
隣の楓先生に視線を移した次の瞬間、数メートル先に座っていたはずの秋斗さんが目の前に立っていた。
「どうぞこちらに、お姫様」
いつの間に取られたのだろう。身体の脇に下ろしていたはずの右手は、秋斗さんに握られている。
秋斗さんは顔の高さまで手を持ち上げると、自分の頬に寄せた。
「冷たい手だね」
私がびっくりしていると、
「はーい、秋兄ストーップ。我らが姫君、翠葉姫はこっちで預かりましょー?」
いつかのように、海斗くんに回収される。
背中は海斗くんにピタリとくっつき両肩には大きな手が乗っている。けれど、それが海斗くんのものとわかると安心こそすれ、不安に思ったり逃げたいという感情は生まれない。
「ふーん……。これはちょっと面白くないかな。けど、静さんに強制退場を宣告されるのはもっと面白くないからね。今は引く」
言いながら手を放し、秋斗さんは不敵に笑った。
右手前方には大きなツリー。そこから三メートルほど離れたところに敷物が敷かれており、その上に室内用のソファーが三つとローテーブルが置かれている。
それらを囲うように複数のストーブが用意されていた。その脇には、常に中庭に置いてあると思われるテーブルセット。
そこにツカサと秋斗さんが座っていた。
ところどころに見える白い煙の正体は、カップに入っているであろう飲み物の湯気。
栞さんと昇さん、湊先生と静さんがソファに座っていて、私はまるまる空いていたひとつのソファーへ案内される。
腰を下ろすと、
「唯くんは翠葉の隣に座っててね? そこ、埋まってないと司か秋兄が移動しかねないから」
「りょうかーい!」
ふたりはハイタッチを交わした。
用意されていた膝掛けをかけると、すぐにウェイターがやってきた。
テーブル置かれたカップに手を伸ばすと、カモミールの優しい香りのほかに、ほのかにハチミツの香りも感じる。
「ミルクカモミールティー……?」
「はい。翠葉お嬢様にはミルクカモミールティーを、唯芹様にはコーヒーをご用意させていただきました」
「ありがとうございます」
お礼を言ったのは私。唯兄はソーサーに置かれた角砂糖の数を見て、「これ、誰がオーダーしてくれたの?」と尋ねる。
「司様より承りました」
ウェイターはにこりと笑ってその場を去る。
「俺の好みを覚えててくれるなんて光栄だねぃ」
唯兄が皮肉のようなお礼をツカサに向けると、ツカサは素っ気無く「別に」と答えた。そして、
「海斗も兄さんも使えない。ついでに、御園生さんと唯さんも……」
言うなり椅子を引いて立ち上がり、こっちへ向かって歩きだす。
「おいっ、司っ!?」
海斗くんが引き止めるような声を発したけれど、ツカサは止まらない。
正面に来られるのかと思ったら、私たちのソファの後ろに立った。
ポテ、と音を立て膝掛けの上に落とされたのは黒い手袋。そして、柔らかなものが頬に触れた。それはツカサが首に巻いていたマフラーだった。
「外に出るのにどうして手袋もマフラーもしてないんだ」
責めるような声が降ってくる。
振り返ることはできなくて、「ごめんなさい」と小さく謝ると、
「……別に謝られたいわけじゃない。それに……困らせたいわけでもないから」
背後の気配がなくなり振り返る。と、ツカサは屋内へ通じるドアへ向かって歩き始めていた。
「え……?」
「どうする?」
隣のソファに座っていた静さんに尋ねられる。
「引き止めたいなら私がその役を引き受けよう?」
「……あのっ――」
言葉に詰まってしまい、「お願いします」の意味をこめて頭を下げる。と、静さんはすぐ行動に移してくれた。
「司、退席を許した覚えはない」
たった一言発しただけ。けれど、遠ざかっていく靴音はピタリと止む。
「それは静さんの一存? それとも……」
「お姫様のご要望だ」
あとに続く会話はなく、こちらに近づいてくる足音のみが聞こえた。
そして、先ほどと同じ距離から、
「選んだのは翠だから。俺に困るとか言わないように」
「……はい」
ツカサはもといた席へ戻った。
正直、リラックスには程遠いティータイムだったけれど、こうしてみんなが揃うのは久しぶりで、目の前の大きなツリーはきれいだし、今日は湊先生たちの結婚式でおめでたくて、さらにはクリスマスイブで空にはキラキラ星が瞬いているし、何がなんだかよくわからないけれど、今日はこれでいいのかも、と思えた。
心の中でぐるぐる回っているもの全部、今だけは休憩していいことにしようと思った。
そうして三十分ほど過ごすとティータイムはお開きになり、私たちはそれぞれのゲストルームへと戻った。
ゲストルームに戻ると蒼兄はいの一番にお風呂に入り、十分ちょっとで上がってくると私にお風呂に入るよう勧め、私もバスタブには浸からずシャワーのみで上がった。
「髪の毛乾いたら薬飲んですぐ寝なよ?」
「うん」
「唯、俺が乾かすから、唯は風呂入ってきたら?」
「いんや、このポジションだけは譲らねぇぜ」
ドライヤーを片手に変な決めポーズを取ると、
「ほら、ちゃちゃっと乾かすよ!」
すぐに温風の音が頭の上で鳴りだした。
髪が乾くと、
「俺のことは待たずに寝ること。いいね?」
「はい。唯兄、ありがとう。おやすみなさい」
「おやすみ!」
唯兄がバスルームに入ったのを確認してから薬を飲んでロフトへ上がった。
蒼兄もすぐ上がってきて、久しぶりにふたりきりになる。
ふたりゴロンとベッドに横になると、ティータイムのことを訊かれた。
「久しぶりにみんな揃ったけど……どうだった?」
どう――
これはイルミネーションの感想を求められているわけでも、ミルクカモミールティーが美味しかったとかそういうことを訊かれているのではない。人が集まったこと、そのことに対して質問されている。
感情を表す様々な言葉が頭をめぐり、その中のひとつを選んで口にした。
「緊張、した……」
「……それだけ?」
「……ううん。……みんな普通で、いつもと同じで――……安心、した」
緊張したのに安心したなんておかしいかな。
逡巡しつつ蒼兄の顔に視線を戻す。と、蒼兄はポツリと零した。
「……なら成功、かな?」
「……何が成功、なの?」
蒼兄は私側に身体を向け直し、
「さっきのティータイム、セッティングしたのは栞さんと湊さんなんだ」
「どういう意味……?」
「記憶が戻ったとき、翠葉、気にしてただろ? あのメンバーが秋斗先輩のことをどう思っているのか、関係がギクシャクしてないか」
私は絶句する。
「試験前の会食は携帯事件の直後だったし、まともな集まりってそれ以降はなかったから、ギクシャクしてないところを見せて安心させたいって言ってくれたんだ」
さっきの集まりにそんな意味があったなんて知らなくて、じわりと涙が目に浮かぶ。
「海斗くんの声に遮られたのも、楓先輩にだめ押しされたのも本当なんだけど、何よりも栞さんの言葉に負けたっていうか……」
言いながらこちらを向いていた身体をうつ伏せに変える。
「でもさ、それを行く前の翠葉に言うわけにはいかなくて、唯に突っ込まれたとき何も返せないでいたら楓先輩がフォローしてくれた……」
「そうだったのね……」
きっと、あの場にいたみんながそのことを知っていたのだろう。そのうえで、ツカサは席を外そうとした。
静さんは全部わかっていた気がする。ティータイムの話が出て、それに蒼兄がどう反応するのか、誰がどうフォローするのか。そして――私が来るのか来ないのか、ツカサがどう動くのか。何もかもわかっていた気がする。
ツカサは……ある程度私の反応を予測して動いていたのだろう。私が動揺するのも、静さんが退席を許さないこともわかっていて、それでも私に選ぶ自由を残すために席を立った。
どこまでもわかりづらい優しさを持つ人……。
「みんなにお礼を言いたいのに、みんなに言うのは難しいね」
「確かに……。だから、首謀者のふたりに伝えられたらいいんじゃないかな?」
蒼兄に言われて、声には出さずに頷いた。たぶん、声に出したら涙声だったと思う。
「さ、ティータイムの種明かしもしたことだし、翠葉はもう寝な」
「ありがとう……。おやすみなさい」
朗元さんと話さなくてはいけないという課題は残っているものの、とても穏やかな気持ちで眠りにつくことができた。
こちらの会話にすぐ反応を示したのは湊先生だった。
髪型とメイクは式のときと変わらず、着ているものだけが異なる。黒いロングコートの裾から赤いドレスがちらりと覗いていた。
「ちょっと秋斗っ、翠葉の警備どうなってんのよっ」
湊先生は勢いよく秋斗さんに突っかかる。
「ストーカー? そんな報告は上がってきてないけど……」
口にしてから、「あ……」という顔をして、
「もしかして俺のこと?」
自分を指差し、引きつり笑いで尋ねられる。
「ほかに誰がいるんですか」
唯兄がぞんざいに答えると、
「司とか……?」
秋斗さんは躊躇せず、自分に向けていた指をツカサへ向ける。
「俺はストーカーになった覚えはない」
感情の起伏を感じさせない声音。けれど表情は、「迷惑だ」と雄弁に語っていた。
「いや、傍から見たらストーカーとなんとかは紙一重って言うからさ」
秋斗さんの自虐的とも思える台詞にその場が沸く。
さっきと同様、私はその笑いに混ざることはできなくて……。けれど、笑っていない人はもうひとりいた。
テーブルセットに秋斗さんと向かい合わせで座っているツカサは、無表情だ。
すぐには気づけなかったけれど、湊先生とは違い、ツカサの髪型はいつものストレートに戻っていた。
「とりあえず、翠葉ちゃんは座ったらどうかな?」
「あ、はい……」
隣の楓先生に視線を移した次の瞬間、数メートル先に座っていたはずの秋斗さんが目の前に立っていた。
「どうぞこちらに、お姫様」
いつの間に取られたのだろう。身体の脇に下ろしていたはずの右手は、秋斗さんに握られている。
秋斗さんは顔の高さまで手を持ち上げると、自分の頬に寄せた。
「冷たい手だね」
私がびっくりしていると、
「はーい、秋兄ストーップ。我らが姫君、翠葉姫はこっちで預かりましょー?」
いつかのように、海斗くんに回収される。
背中は海斗くんにピタリとくっつき両肩には大きな手が乗っている。けれど、それが海斗くんのものとわかると安心こそすれ、不安に思ったり逃げたいという感情は生まれない。
「ふーん……。これはちょっと面白くないかな。けど、静さんに強制退場を宣告されるのはもっと面白くないからね。今は引く」
言いながら手を放し、秋斗さんは不敵に笑った。
右手前方には大きなツリー。そこから三メートルほど離れたところに敷物が敷かれており、その上に室内用のソファーが三つとローテーブルが置かれている。
それらを囲うように複数のストーブが用意されていた。その脇には、常に中庭に置いてあると思われるテーブルセット。
そこにツカサと秋斗さんが座っていた。
ところどころに見える白い煙の正体は、カップに入っているであろう飲み物の湯気。
栞さんと昇さん、湊先生と静さんがソファに座っていて、私はまるまる空いていたひとつのソファーへ案内される。
腰を下ろすと、
「唯くんは翠葉の隣に座っててね? そこ、埋まってないと司か秋兄が移動しかねないから」
「りょうかーい!」
ふたりはハイタッチを交わした。
用意されていた膝掛けをかけると、すぐにウェイターがやってきた。
テーブル置かれたカップに手を伸ばすと、カモミールの優しい香りのほかに、ほのかにハチミツの香りも感じる。
「ミルクカモミールティー……?」
「はい。翠葉お嬢様にはミルクカモミールティーを、唯芹様にはコーヒーをご用意させていただきました」
「ありがとうございます」
お礼を言ったのは私。唯兄はソーサーに置かれた角砂糖の数を見て、「これ、誰がオーダーしてくれたの?」と尋ねる。
「司様より承りました」
ウェイターはにこりと笑ってその場を去る。
「俺の好みを覚えててくれるなんて光栄だねぃ」
唯兄が皮肉のようなお礼をツカサに向けると、ツカサは素っ気無く「別に」と答えた。そして、
「海斗も兄さんも使えない。ついでに、御園生さんと唯さんも……」
言うなり椅子を引いて立ち上がり、こっちへ向かって歩きだす。
「おいっ、司っ!?」
海斗くんが引き止めるような声を発したけれど、ツカサは止まらない。
正面に来られるのかと思ったら、私たちのソファの後ろに立った。
ポテ、と音を立て膝掛けの上に落とされたのは黒い手袋。そして、柔らかなものが頬に触れた。それはツカサが首に巻いていたマフラーだった。
「外に出るのにどうして手袋もマフラーもしてないんだ」
責めるような声が降ってくる。
振り返ることはできなくて、「ごめんなさい」と小さく謝ると、
「……別に謝られたいわけじゃない。それに……困らせたいわけでもないから」
背後の気配がなくなり振り返る。と、ツカサは屋内へ通じるドアへ向かって歩き始めていた。
「え……?」
「どうする?」
隣のソファに座っていた静さんに尋ねられる。
「引き止めたいなら私がその役を引き受けよう?」
「……あのっ――」
言葉に詰まってしまい、「お願いします」の意味をこめて頭を下げる。と、静さんはすぐ行動に移してくれた。
「司、退席を許した覚えはない」
たった一言発しただけ。けれど、遠ざかっていく靴音はピタリと止む。
「それは静さんの一存? それとも……」
「お姫様のご要望だ」
あとに続く会話はなく、こちらに近づいてくる足音のみが聞こえた。
そして、先ほどと同じ距離から、
「選んだのは翠だから。俺に困るとか言わないように」
「……はい」
ツカサはもといた席へ戻った。
正直、リラックスには程遠いティータイムだったけれど、こうしてみんなが揃うのは久しぶりで、目の前の大きなツリーはきれいだし、今日は湊先生たちの結婚式でおめでたくて、さらにはクリスマスイブで空にはキラキラ星が瞬いているし、何がなんだかよくわからないけれど、今日はこれでいいのかも、と思えた。
心の中でぐるぐる回っているもの全部、今だけは休憩していいことにしようと思った。
そうして三十分ほど過ごすとティータイムはお開きになり、私たちはそれぞれのゲストルームへと戻った。
ゲストルームに戻ると蒼兄はいの一番にお風呂に入り、十分ちょっとで上がってくると私にお風呂に入るよう勧め、私もバスタブには浸からずシャワーのみで上がった。
「髪の毛乾いたら薬飲んですぐ寝なよ?」
「うん」
「唯、俺が乾かすから、唯は風呂入ってきたら?」
「いんや、このポジションだけは譲らねぇぜ」
ドライヤーを片手に変な決めポーズを取ると、
「ほら、ちゃちゃっと乾かすよ!」
すぐに温風の音が頭の上で鳴りだした。
髪が乾くと、
「俺のことは待たずに寝ること。いいね?」
「はい。唯兄、ありがとう。おやすみなさい」
「おやすみ!」
唯兄がバスルームに入ったのを確認してから薬を飲んでロフトへ上がった。
蒼兄もすぐ上がってきて、久しぶりにふたりきりになる。
ふたりゴロンとベッドに横になると、ティータイムのことを訊かれた。
「久しぶりにみんな揃ったけど……どうだった?」
どう――
これはイルミネーションの感想を求められているわけでも、ミルクカモミールティーが美味しかったとかそういうことを訊かれているのではない。人が集まったこと、そのことに対して質問されている。
感情を表す様々な言葉が頭をめぐり、その中のひとつを選んで口にした。
「緊張、した……」
「……それだけ?」
「……ううん。……みんな普通で、いつもと同じで――……安心、した」
緊張したのに安心したなんておかしいかな。
逡巡しつつ蒼兄の顔に視線を戻す。と、蒼兄はポツリと零した。
「……なら成功、かな?」
「……何が成功、なの?」
蒼兄は私側に身体を向け直し、
「さっきのティータイム、セッティングしたのは栞さんと湊さんなんだ」
「どういう意味……?」
「記憶が戻ったとき、翠葉、気にしてただろ? あのメンバーが秋斗先輩のことをどう思っているのか、関係がギクシャクしてないか」
私は絶句する。
「試験前の会食は携帯事件の直後だったし、まともな集まりってそれ以降はなかったから、ギクシャクしてないところを見せて安心させたいって言ってくれたんだ」
さっきの集まりにそんな意味があったなんて知らなくて、じわりと涙が目に浮かぶ。
「海斗くんの声に遮られたのも、楓先輩にだめ押しされたのも本当なんだけど、何よりも栞さんの言葉に負けたっていうか……」
言いながらこちらを向いていた身体をうつ伏せに変える。
「でもさ、それを行く前の翠葉に言うわけにはいかなくて、唯に突っ込まれたとき何も返せないでいたら楓先輩がフォローしてくれた……」
「そうだったのね……」
きっと、あの場にいたみんながそのことを知っていたのだろう。そのうえで、ツカサは席を外そうとした。
静さんは全部わかっていた気がする。ティータイムの話が出て、それに蒼兄がどう反応するのか、誰がどうフォローするのか。そして――私が来るのか来ないのか、ツカサがどう動くのか。何もかもわかっていた気がする。
ツカサは……ある程度私の反応を予測して動いていたのだろう。私が動揺するのも、静さんが退席を許さないこともわかっていて、それでも私に選ぶ自由を残すために席を立った。
どこまでもわかりづらい優しさを持つ人……。
「みんなにお礼を言いたいのに、みんなに言うのは難しいね」
「確かに……。だから、首謀者のふたりに伝えられたらいいんじゃないかな?」
蒼兄に言われて、声には出さずに頷いた。たぶん、声に出したら涙声だったと思う。
「さ、ティータイムの種明かしもしたことだし、翠葉はもう寝な」
「ありがとう……。おやすみなさい」
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