主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい

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7話

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かわって翌日。次の時間が移動のため2年生の教室の近くを通りかかった僕ですが。急に目の前に現れた偉そうな人物に鷹揚に呼び止められた。
「お前、見た目に似合わず案外策士だな」
「は?なに言ってるんですか?」
出会い頭になに言ってんだ、この人??の思いで叩きつけるように答えると、昨日僕たちを見送った時と似たような目つきで、こっちを見下ろしてた会長の口の端が嫌な感じに持ち上がった。
「あいつ、変なところで執着心と対抗意識が強いから。無意識にでも自分の近くにいるもんだと思ってた奴が、勝手にどっか他所へ行こうとしてるんだ。それを大人しく飲めるようなタマでもねぇだろ」
「……ん??」
え、どういうこと??ていうか、それ僕に関係ある話なのかな……。正直『ん?』とでも返してやった僕はかなり偉いと思うよ。だって、一方的にすぎる話に付き合ってあげてるんだから。
呆れを浮かべて聞くうちに、今度はなぜか相手が盛大に顔を顰めてみせた。
「だからって、オレをダシに使うな。めんどくせぇ」
突然なぜか身に覚えのない文句を言われるハメになり、戸惑いを覚えると同時に今現在の自分の状況も思い出す。
「や。ほんとになに言ってんです??まったく意味がわからないんですけど。あと、すみませんが時間ないんですよ。次の授業に遅れる」
「……今まで散々あいつにまとわりついてたくせに、急に興味無くしたように振る舞えばいけると思ったのか?」
なのに、話を聞いてくれませんか??と思うまでにしつこく会話を続けられ、そこでようやく誰のことについて言ってるのかわかった。
「あいつって……」
「まあ、オレに言って聞かせる義理なんてないだろうけどな」
多分、ハルカ先輩について言ってるよな。って思うよりも早く。さらに言葉を被せられ、それでもようやく終わりそうな気配にホッと息を吐き出す。威嚇だか警戒だか知らないけど、この人普段から圧がヤバいな。
「最近、香純に対する態度を変えたのも作戦のうちか?よく考えたな。『もう張り合う必要もないんで』って宣言してるようなもんだろ」
……張り合うもなにも。元々張り合う気もない僕に、今さらそんなことを言われても。
大っぴらに宣言まではしないけど、邪魔する気がないのはほんとだし。
ここら辺の説明のしようがないため言い淀んでる僕に対し、冷笑を向けてきた相手がこっちの眉間に嫌味なほどに長い指を突きつけてきた。
「念のため、もう一回言うぞ。オレを体よく使おうとするんじゃねぇ。そんなにヤキモチ妬いて欲しけりゃ他あたれ」
「……はあ??」
ここまでわけのわからない話を半ば捲し立てるように続けられると、しまいには『はあ??』しか言えなくなるってことだけは学んだ……。どうやってもいらないし役に立たない知識だろうけど。
さっき予鈴を耳にしたはずなので、十中八九本鈴であるものが廊下に反響するのを聞きながら……本っ気でなにを言ってるのか。まったく理解できない話を振って寄越した会長の姿が教室内へと消えるのを、その場に立ち尽くしたまま見つめてた。

 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢

「……で!その時すかさず駆け寄って『大変そうなんでお手伝いします』ってサラッと言っちゃえるところが、香純くんなんですよね~。そう思いません?」
「……あー……??そうかもな……」
「でしょ?!やっぱり優しいし良い子だしカッコいいし可愛いし、しかも声までいいとか……すごいなぁ……良いとこしかない……」
推しのことを思い浮かべてホケーっとしてた僕の目に、少し先の渡り廊下をいくカスミンの姿が映り込む。
「あ、」
嬉しくて思わず声を上げると、それが耳に届いたのかちょっとだけキョロキョロ辺りを見回してた彼が、中庭にいた僕を見つけて柔らかく微笑んだ。
すぐさま両手をブンブン振り返してやりたい衝動を堪えて『僕』らしく……なるべく可愛く映るように胸の前で小さく手をフリフリする。それにまた笑みを深めたカスミンが控えめに上げた手をヒラヒラと舞わせた。
「……えへっ、」
瞬間、今までの人生でリアルに出したことのないような気持ち悪い笑い声が口をつき、ずっと隣にいた相手からの冷たい視線が突き刺さった気がする。その上、図々しいことに僕に向かって振られてる手にもかかわらず、さも自分宛のような顔をして鷹揚に二、三度手を振り返した隣の攻略キャラをジトッと睨み上げた。
「……会長。香純くんは僕に手を振ってくれてるんですけど」
「やかましい」
「例え僕相手だとしても、そういう態度は良くないと思うなぁー……」
「ウルセェ」
「多分そういうとこですよ、会長。ほんと」
「お前に言われたくねぇ」
互いに笑顔を浮かべて天使の微笑みを堪能しながらも小声でやりあう。
かわいそうにカスミンも、急に会長が参入してきたせいで一瞬畏まって軽く会釈を寄越したけど。
「また放課後、待ってるね!」
まわりに響きすぎないように小っちゃく叫ぶと、目元を緩めた嬉しそうな顔で一度頷き、返事代わりなのかまたわずかに手を上げてから図書館のある実習棟校舎へと移動していった。
カスミンの姿がある間だけ光量と解像度が増したように思えた渡り廊下から視線を外し、ゆっくり横を向く。
「……最後の笑顔。めちゃめちゃ可愛いかったですね!」
見ました?!なんて、やや食い気味に迫ると……ものすごく鬱陶しげに見下ろされた。
「……なあ。確認いいか?」
目を眇めた見るからに不機嫌な顔で問われて『ん??』とはなった。なったけど、理不尽に怒鳴られそうな雰囲気でもなかったし、会長の方を向いて小首を傾げるにとどめる。
「はい。なんでもどうぞ」
答えると、一旦間を挟み相手が小さく息を吐いた。
「オレがここでなにしてたか、わかるか?」
「なんで自分がここにいたかを忘れちゃったんですか?だいぶお疲れなんですね。僕が来るまで昼寝してましたよ。こんな目立つところで。こんな目立つ人が。それはもうぐっすりとおやすみでした」
「……だよなぁ」
ハハ……みたいな平坦な笑いが相手の口からこぼれ落ち、なぜか遠くを見るような目になってた。
「はい」
「……あと、前に言ったよな?オレを利用しようとすんなって。ちゃんと言ったよな?」
少しだけ距離を詰めてきた会長が念を押すようにド低音で繰り返す。それにちょっと気圧され、顎を引きつつ頷いた。
「似たようなことは言われた気がします。イマイチ意味がわからないんだけど。利用っていうか、香純くんの可愛さを自分一人で抱えてるのはあまりにももったいないんで、だから感動を共有できる人を探してました」
これまでの時間、テキトーさは伝わってきてたものの時折『そうだな』なんて言葉を返してくれてた人だけに、この際正直に言っちゃっても無碍にはされないか??って可能性にかけて全部吐露してみたところ。
今度は相手が額を押さえて深く項垂れてしまった。
「……なるほど。よくわからねぇけど、わかった。だからか」
「だから。……って」
そんな勝手に納得されましても……。と考えてる端から、会長の口調に勢いが増していく。
「寝てるオレをわざわざ起こしてまでなにを言うかと思えば。陽加の手伝いをしてる香純の様子が最高に可愛かったとか……聞いてもいねぇことをダラッダラダラッダラと」
「あ、怒ってます?」
なんか今さらその尖った空気を感じ取った。
「ハッキリ言われないとわかんねぇか??わかんねぇんだな??……聞いてて面白いはずないだろーがっ」
「え。香純くんの可愛さ伝わりませんでした?」
「そういう問題じゃねぇよ……」
「まあ、わからなくもないですけど」
「なら、もうちっと気を使え」
普段から無駄にエラそうなこんな人でも、好きな子が絡むとそういう小さいことさえ気になるんだなぁ。なんて意外に思えて、その顔をマジマジと見つめる。
「……ンだよ」
「……あの。……いえ、なんでも」
画面越しでは、ただカッコいいだけの人だと思ってたけど。そこにあるのはちょっとレアすぎる子供っぽい拗ね顔で。
場違いにも身悶えのたうち回りそうになるほど可愛く見えてしまって……。
視界を占めるその衝撃の光景を目の当たりにして、危うくベンチから転がり落ちるところだった。
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