銃弾と攻撃魔法・無頼の少女

立川ありす

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第22章 神になりたかった男

依頼3 ~魔道具の奪還

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……斯様に予期せず襲撃者を一掃、詐欺グループの事務所を家捜しした日の翌日。

 つまり気持ちよく晴れた平日の朝。
 今日も平和な学校の、初等部から高等部の生徒がまばらに行き交う校門前で……

「……あら志門さん、おはよう。頼んでおいた件はどうかしら?」
(野郎、当然みたいな顔して声かけてきやがった)
 今朝も舞奈はムクロザキと出くわした。
 厄介事を押しつけて、急がなくて良いと言っておきながら昨日の今日でこれだ。
 相変わらず曲がった性根に、嫌みのひとつも言ってやりたいと少し思った。
 だが舞奈は代わりにニヤリと笑って、

「こいつを取り返してやったぜ。感謝しろよ!」
 懐から取り出したそれを女教師に押しつける。
 ガサ入れのどさくさに事務所から拝借した注文票だ。
 ついでに雑に束ねた札束くらいの大きさと厚さの色とりどりな紙束も。
 というか、

「何これ? ルピー?」
「外国の金らしいぜ。ポケットマネーと金庫にあった分はそれで全部だ。足りなきゃ警察か弁護士にでも頼んでくれ。まだ先方が対応できるかはしらんがな!」
「ええっ!? どういう状況なの……!?」
 流石に予想外の展開だったかムクロザキもビックリ。
 対して舞奈は昨日ムクロザキ自身にされたように、余裕しゃくしゃくに言い残しながら奴を残して歩き去る。
 背中越しに言い返してくる声も聞こえない。
 実に清々しい朝だ!

……その様にムクロザキをやりこめて気分も上々。

「あら、朝からご機嫌ね。昨日の殿下とのデートがそんなに楽しかった?」
「そりゃもう、上々の戦果だったぜ!」
 下駄箱で明日香と合流する。
 流れのまま昨日の一件を面白おかしく語りながら意気揚々と教室へ向かう。

「でさ、その時のジェイクさんの表情といったら――」
 そのように教室のドアをガラリと開けると――

「――あっ舞奈、明日香。おはよう。丁度良かった」
「おっテックか。ちーっす! どうしたよ?」
「おはよう工藤さん」
 テックに声をかけられた。
 上機嫌を隠そうともせず元気に挨拶し、

「それらしい荷物の動きがあったわ」
「何だと? さっすがテック様だぜ!」
「例の不審な大きな荷物って話?」
「ええ」
 続く言葉に驚きながらも舞奈の口元は楽しげに緩む。
 昨日の事務所での一件に続いて、こちらでも奴らの足取りがつかめたらしい。
 乗り掛かった舟がトントン拍子に進むのは気分が良い。

「これよ」
 テックは見ていたタブレットを向けて、何かの動画を再生する。
 舞奈と明日香はノイズ交じりの薄暗い画面を覗きこむ。
 防犯カメラの映像らしい。

 場所は人気のない、街灯も消えかけた倉庫の前。
 夜半にあからさまに不審なトラックが停まり、出てきた男たちが荷物を降ろす。
 タンスがそのまま入っているような大きな荷物が運びこまれたのは、普段はまともに使っているかも怪しい朽ちかけた倉庫。
 例によって作業従事者の全員が薄汚れたシャツや作業着を着こんだ浅黒い男だ。
 しかも全員がくわえ煙草の脂虫。

「昨日、近くを通ったんだが」
 舞奈は苦笑する。

 現場の情景には見覚えがある。
 統零とうれ町と讃原さんばら町の合間にある倉庫街だ。
 つまり件の事務所のあった薄汚いビルの近く。
 通りがかったついでに不審なところでも見つかれば良かったのだが、昨日はそれどころじゃなかったしレナの魔力感知にも反応はなかった。
 そんな舞奈の思惑を他所に、

「何時の話?」
「一週間くらい前」
伊或いある町のアパートの不法移民を片付けた時分ね」
「ええ」
 明日香の問いにテックが答える。
 拠点の壊滅を見越して予備でも用意したつもりだったのだろうか?

 だが、ここ数日の調査でレナやルーシア、おそらく魔術結社の連中が魔力感知で捜索したのに見つからなかった。
 つまり箱舟は、まだ起動? 活性化? していないという事になる。
 ああいった魔道具アーティファクトが起動していない場合に感知できないのは普通なのか? 
 術者でない舞奈にはわからない。
 あるいは敵に、漏れ出る魔力を抑える何らかの対策が可能な術者がいる?
 隣の術者に尋ねようと思った矢先に、

「と言う事は、何らかの手段で隠蔽されていた……?」
 当の明日香が訝しむ。

 術者からすると不可解な状況らしい。
 先ほどの二択で言えば後者に近いのだろう。
 まあ、そもそも倉庫に運びこまれた荷物を確認した訳じゃない。
 だから映っている代物が本物の箱舟であると確定した訳でもない。

 それでも扱っている人間を見れば、明らかに怪しいのも事実。
 仮にそれがプリドゥエンの箱舟じゃなくても別の悶着の種である公算は高い。
 もう一度、出向いて調べてみるべきかと舞奈が考えていると……

「……っていうか行ったの? 昨日」
「ああ。あのビル本当にあったぜ。恩に着るよ」
 逆にテックに問いかけられて、思わず笑顔になって答える。

 例のビルについて、テックは事前に調べてくれた。
 そのおかげでスムーズに詐欺師の事務所に乗りこめたのは事実だ。
 十分に警戒できたのも事前情報があったればこそとも言える。
 今度は舞奈が吉報を報告する番だ。
 明日香には先ほど少し話したし、昨日のうちに何らかのルートで報告を受けたのかもしれないが、テックはまだ知らないはずだ。
 何より気分が良いので話したい。なので、

「で、そっちもビンゴだった。襲撃されたぜ。1ダースくらいいたかな」
「何それ?」
「さっきの話より増えてない?」
「四捨五入したら嘘じゃないだろ? ……そのまんまだよ。ちょっと鍵開けしてお邪魔しようとしたら、こんなのが四方八方から跳びかかって来たんだ」
「それはまた」
 画面の中の男たちを指さしながら言ってのける。
 テックは表情の少ないまま苦笑する。
 まあ鍵開けとかいう単語は御愛嬌。
 相手の数にしても、その程度の敵が舞奈にとって危険ではないと知っているから単なる武勇伝だ。加えてレナと騎士団もいたし。

「で、部屋の中身はいちおう事務所だった」
「本当にあったのね」
「おかげさんでな。まあ御禁制のトカゲとやらはいなかったが、金はあったんでかき集めてムクロザキに返してやったぜ。その時の奴の顔といったら!」
「ええ。それでさっきからずっとこの調子なのよ」
 なので舞奈も昨日の戦闘と先ほどのムクロザキの様子を思い出して、珍しく話せる範囲で武勇伝をぶちあげる。
 側で明日香が苦笑する。

……と、そんな話をしているうちに生徒の数も増えてくる。

 園香やチャビーも登校してきて、雑談の内容も穏当なものへと変わる。
 別に襲撃者をのして金目の物を徴収しなくても、女児向け雑誌の怪盗が活躍したり子猫が可愛かったりするだけでも普通の女子小学生は笑顔になる。
 それでも舞奈は御機嫌なまま、やがて担任がやってきてホームルームが始まる。

……そのように今日の学校も滞りなく過ぎていった。

 そして放課後。
 下校した舞奈と明日香は少し早めに支部を訪れた。
 何故なら先日の暴徒どもは警察ではなく支部に引き渡した。
 そいつらが丸一日も放っておかれる事はないだろう。
 なので今日の調査兼パトロールの前に、奴らへの尋問がどうなっているのかを知りたかったのだ。
 捕まえた舞奈はもちろんの事、明日香も情報には興味がある。

「あっ舞奈ちゃん、明日香ちゃん、こんにちは。今日も見回り?」
「サチさんちーっす。まあ、そんな感じだ」
「こんにちは」
 保健所の敷地の前でサチとバッタリ出くわした。
 そのまま合流する。
 各地に点在する【機関】の支部は保健所の一部門の体裁をとっているのだ。
 サチは今日は珍しく小夜子と一緒じゃないらしいが、理由の察しはつくので、

「あら~。皆お揃いでいらっしゃ~~い」
「お姉さんもちーっす!」
「こんにちは」
「おつかれさまです」
 3人で玄関をくぐって受付嬢に挨拶しつつ中へ。
 だがエントランスではレナたちや騎士団の面々の代わりに……

「……おお舞奈ちん、明日香ちん。来ただか」
「こっちは一通り終わったわよ」
 ニュットと小夜子が出迎えた。
 糸目はともかく小夜子は一仕事終えた清々しい表情だ。

「今日はひとりにしちゃってごめんね」
「ううん。小夜子ちゃんこそ、おつかれさま」
「その調子じゃ何かつかめたのか?」
「ええ」
 サチも小夜子に微笑みかけ、舞奈もニヤリと糸目に笑いかける。

 予想通り。
 2人とも学校を休むなり早退するなりして詐欺師どもを尋問していたらしい。
 小夜子の顔はツヤツヤしている。
 珍しい種類の喫煙者を心ゆくまで『尋問』できたからだ。
 その結果、今は何匹が残っているかは知らないが。

 それに関してサチに特に思うところはなさそうだ。
 小夜子が楽しそうならそれで良いと思っているのだろう。
 いつもの事だし。

 なので、そのまま5人で会議室のある二階へ向かう廊下を歩き、警備員のおっちゃんに挨拶しつつ階段を上がりながら――

「――そうそう。あいつら、商品を取り寄せる算段を吐いたわよ」
「相変わらず仕事が早いですね」
 小夜子が尋問の内容を話し始める。
 明日香も満足げに答える。
 楽しい仕事の成果を一刻も早く誰かに話したいのは誰もが同じだ。
 成果を受け取る側も、そのほうが都合がいい。

「いちおう商売はするつもりだったのか……」
 対して舞奈はやれやれと苦笑する。
 詐欺だと思って好き放題に片づけてきたが、早計だっただろうか?
 そう考えて、だが事務所を訪問した途端に刃物まで持ち出して襲いかかってきた暴漢、そして奴らの売り物が条約違反のトカゲとやらだった事実を思い出し、

「ひょっとして、他所から転移でもさせるつもりだったのか?」
「よくわかったわね」
 ふと思いついて尋ねてみた途端、小夜子がちょっと驚いてみせる。
 今日の舞奈はラッキーなだけでなく冴えてもいるらしい。

「この近くに転移に使う予定だった魔道具アーティファクトが隠してあるらしいわ」
「おそらく奪われたプリドゥエンの箱舟の事なのだ」
「なんか話がつながって来たな……」
 続く小夜子と糸目の話を聞いて、何となく納得。

 奴らはムクロザキに売りつける予定だったトカゲを、プリドゥエンの箱舟を使って転移させる事により取り寄せる予定だったという事だろう。
 それなら税関で引き留められる事もない。
 なんとも壮大かつセコイ商売の計画だ。
 詐欺じゃなくて後ろ暗いビジネスだった訳だ。

「で、問題なのは箱舟の場所なのだが……」
「たぶん場所はわかってる。近くの空き倉庫だ」
「むむっ!? 確かなのかね?」
「直に確かめた訳じゃないが、おかしな大荷物が運びこまれてた」
 少し困った顔をしたニュットに笑顔で答えつつ、建てつけの悪いドアを開け――

「――ちーっす。おっ、みんなお揃いだな」
「こんにちは」
「来たわね!」
「皆様、ご機嫌よう」
「舞奈ちゃんたちが来たんだナ」
 会議室に入った途端、レナやルーシア、騎士団の面々が会議机から顔を上げる。
 今日はパトロールの前にミーティングらしい。
 まあ昨日の戦果を考えれば当然と言えば当然か。

「舞奈君も先日はご苦労だった。皆も今日は御足労すまない」
「昨日は楽しかったですね」
 フィクサーもいる。その都合で重要な話でもあるのだろう。
 ついでにマーサもいる。
 長丁場になりそうだった調査が、ずいぶん急に進んだものだ。

……ひょっとして、ムクロザキに押しつけられた仕事のおかげか?

 ふと、そんな考えが脳裏をよぎる。
 だが慌てて頭をブンブン振って、おかしな考えを振り払う。
 ムクロザキのおかげ、などという概念を決して認める訳にはいかない。
 そんな事があっていいはずがない。
 という舞奈の様子を何人かが訝しみ、だが深くはツッコまず――

「――小夜子ちんたちはお疲れ様なのだよ」
「お役に立てて何よりよ」
「何か食べて帰りましょう」
「ええ、そうしましょう。それでは失礼します」
 小夜子とサチは皆に一礼して退席する。

 彼女らの仕事はここまでらしい。
 サチは小夜子を迎えに来ただけだ。
 まあ彼女らは先日も任務でもないのに魔獣との戦闘につき合ってくれたし、今回は休んでいてもバチは当たらないだろう。
 正直なところスカイフォールの面々を数に入れれば戦力には余裕がある。

 なので残された舞奈と明日香はニュットと一緒に会議机に向かいがてら――

「――そういやあ、あいつらの身元はわかったのか?」
「ええ。パキスタンからの密入国者よ。違法だけど非魔法の手段で入国して、あの場所に集まったみたいね」
「それじゃあ魔力感知じゃ見つからんわなあ……」
 問いかける。
 レナとルーシアが答え、

「指示した者が誰かはわかりますか?」
「そこまでは流石に。尋問じゃわからなかったの?」
「こっちでもそこは不明なのだよ」
 続く明日香の問いにはニュットと揃って首を横に振る。

 スカイフォール組は表の情報から奴らの身元を洗ってくれたらしい。
 肝心の部分はわからないが、それはこちらの尋問でも同じだ。
 他の誰かが盗んできた魔道具アーティファクトのおこぼれでつまらないビジネスを企んでいた雑魚なんかより、おそらく何者かが計画している大きな陰謀の核心に近い立場の人間から話を聞いたほうが建設的だと思う。なので……

「……で、詐欺師どもが商品の取り寄せに使う算段だった箱舟の場所がわかった」
「そういう話だったのだな」
「本当なの!?」
「いや、まあ、たぶんな……」
 舞奈も自分が持ってきた情報を晒す。
 食い気味なレナにたじろぎつつも、舞奈も明日香も会議机の前の椅子に座る。
 ニュットも続く。先ほどの話の続きだ。

 舞奈がレナの前の小皿に盛ってあった茶菓子をつまんで睨まれて、ニュットが茶を注いだ湯飲みと茶菓子の小皿を舞奈と明日香に給する側――

「――こちらです。一週間ほど前の防犯カメラの映像だそうですが」
 明日香が鞄から取り出した、何枚かのそれを机に広げる。
 例の防犯カメラに映っていたトラックの写真だ。
 昼間に視聴覚室でテックにプリントアウトしてもらったのだ。

 一同は食い入るように写真を覗きこんで吟味し……

「……大きさは箱舟と一致するのだな」
「ええ」
「その様ですね」
 ニュットはうなずき、レナもルーシアも同意する。
 糸目もプリドゥエンの箱舟について色々と知っているらしい。
 まあ、これでも支部の機材や魔道具アーティファクトの管理を一任された技術担当官マイスターだ。
 当然と言えば当然か。

 ともあれ、反応からするとビンゴそうだ。
 識者が揃って件の荷物が箱舟である可能性が高いと言っている。
 少なくとも調べてみる価値はありそうだ。なので、

「その後に運び出された形跡は?」
「カメラでは確認できなかったとの事です」
「逆に、それ以外の魔法的な手段で運ぼうとすれば痕跡が残るはずよ」
「ええ」
「そういう事情なら好都合だ」
 フィクサーは念には念を入れて確認し、そしてニヤリと笑う。
 彼女に冷たい印象を与えているサングラスが険呑に光る。

「保健所から委託された調査という名目で、問題の倉庫に合法的に立ち入る事は可能だ。諜報部の返答次第ではあるが明日には実施できるだろう」
「お心遣いに感謝いたします」
 続く言葉にルーシアが一礼する。

「早くもひとつ目の箱舟を奪還できるのか」
「幸先が良いな」
「腕が鳴るんだナ」
 騎士たちも思い思いに喜びをあらわにする。
 イワン氏も側に積み上げた小皿の分は気張るつもりらしい。

「そして舞奈君。明日香君」
 次いでフィクサーは2人を見やり、

「スカイフォール騎士団及び両王女と共に倉庫の調査、及び必要であればプリドゥエンの箱舟の奪還に協力してほしい。これは【機関】からの正式な依頼だ」
「言われるまでもないぜ」
「無論です」
 告げる。
 もちろん2人は二つ返事で引き受ける。

 その様にして舞奈たちの明日の仕事は、プリドゥエンの箱舟が運びこまれたとおぼしき倉庫の調査と……おそらくは箱舟の奪還に決まった。

 その後、今日のパトロールは中止にして一向は解散した。
 明日のガサ入れに向けて英気を養うためだ。

 なので舞奈はスミスの店にやってきた。
 ネオンが消えかけた『画廊・ケリー』の看板の下をくぐった途端、

「あっ舞奈さん」
「しもんだ!」
 あくび交じりの眼鏡とバードテールの幼女が出迎える。
 奈良坂とリコだ。

「ようリコ。奈良坂さんも、この前はお疲れさん」
「いえいえー。舞奈さんこそ、また何か仕事を引き受けてるみたいで」
「まあな……」
 奈良坂は例によって学校帰りにリコの面倒を見ていてくれたのだろう。
 丁度良いので挨拶がてら前回の協力を労う。

 彼女は前回の不法移民のアパート強襲の際、戦術結界でサポートしてくれた。
 街中での大規模な戦闘には大魔法インヴォケーションによる結界が不可欠だ。

 だがまあ彼女を今回のガサ入れに引っ張り出す必要はない。
 今回の面子なら結界の創造が可能な術者も大勢いるし、奈良坂も前回は仕事でもないのに手伝ってくれたのだ。
 あくび交じりにリコを見ていてくれるなら、そのほうが安全でいい。
 なので――

「――志門ちゃん、いらっしゃい」
「ようスミス! 長物を用立ててもらいに来た。スマンが使うの明日なんだが」
「あら、志門ちゃんは働き者ね」
「まあな。それでな……」
 奥からあらわれたスミスを相手に得物の算段を始める。

 小夜子たちや奈良坂に頼らないと言う事は、それ以外の面子で仕事を完遂するという事だ。まあ当然だ。
 もちろん面子の中には舞奈も含まれる。

 そして例の倉庫にあるのは奪われたプリドゥエンの箱舟である公算が高い。
 保健所の委託業務という表向きの理由こそあれど、それで何のトラブルもなく倉庫を調べて箱舟を見つけて持って帰れる事はないだろう。
 見当違いだったのなら御愛嬌。そうでないなら十中八九、戦闘になる。
 そのための準備は普段と同じように念入りにしなくてはいけない。
 なので舞奈は――

「――今回は何で行くの?」
「そうだな――」
 転移用の魔道具アーティファクトを隠しきれなくなった人型怪異どもが逆ギレして襲いかかってくる状況を念頭に、考えられる敵に対応できる得物を慎重に選んでオーダーした。
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