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おまけ
【短編】グランフォード家の新年会1
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本編終了後まもなくのお話。
エマの執務室。夕暮れのとき。
窓から差し込む橙色の光に、机上の書類が淡く照らされていた。
セイルは仕事を終えると、そっと扉を開けて中を覗いた。机に向かう妻の姿が目に入り、思わず口元がほころぶ。
「手伝いましょうか?」
「……大丈夫です、もう少しで終わりますから」
エマは眼鏡の位置を指先で直し、穏やかに微笑んだ。真剣な横顔に、眼鏡越しに映るエメラルドグリーンの瞳。彼女の仕事姿を見るのが、セイルは好きだった。
やがてペンを置いた彼女は、ほっと息を吐き、椅子から立ち上がる。伸びをひとつした後、セイルの隣のソファへ腰を下ろし、そのまま自然に彼の肩へと身を預けてきた。
「……百合子さん」
彼の囁きに、エマは空気が甘く変わったのを感じた。
「清一さん……」
「このまま少しだけ……良いですか?」
「こんなところで……」
「誰も来ません。少しだけ」
耳元に落とされる声は、普段よりも低く、艶を含んでいた。エマの心臓が跳ね上がる。
セイルの指が髪を梳き、頬に触れ、やがて唇へ。自然と二人は惹かれ合い、唇を重ねてしまう。ゆったりと、時間が溶けていく。
エマはこぼれる吐息を感じながら、セイルの首にそっと腕を回した。
──その瞬間。
「──おじいちゃま! おばあちゃま! 」
勢いよく扉が開き、明るい声が響く。
「!?」
二人は慌てて飛び退き、セイルは机に肘をぶつけて苦悶した。エマは顔を赤くしたままうつむいた。
駆け込んできたユーリは目を真ん丸にして、数秒固まった。
そして、なにかを悟った年頃の彼女は、真剣な眼差しを向けてきた。
「……ねぇ。おじいちゃまとおばあちゃまは、運命の相手なの?」
あまりの直球に、エマは咳き込んだ。慌てたセイルが背中をさすり、ようやく落ち着きを取り戻した。
「ユーリ……突然どうしたの?」
「だってこんなに愛し合っているんだもん。二人は運命の赤い糸で結ばれて結婚したんでしょ?」
その純粋なまなざしに、エマはどう返していいか分からず目を泳がせる。
と、セイルがすっと微笑んだ。
「ユーリ……エマは私にとって人生そのもの。いや、命の根源だよ」
「セイル様! 何を言っているの!?」
真剣なセイルに、エマは顔を真っ赤にして慌てる。
ユーリは「なるほど……」と妙に納得していた。
「もう、ところ構わずイチャつくのやめてよね」
不意に背後から聞こえた冷静な声。振り向くと、入り口に雪が腕を組んで立っていた。孫だけでなく娘にまで見られてしまい、二人は思わず顔を見合わせて深く反省する。
「ほらこれ。私と、ユーリにまで招待状が届いたんだけど。お母さんの実家からだよね?」
雪が差し出した封筒には、美しい装飾とともに、グランフォード公爵家の紋章が印されている。
「まぁ! グランフォード家の新年会の招待状ね!」
エマは一気に顔を明るくして駆け寄った。
「毎年グランフォード家で新年を祝うパーティーが催されるの。今年は皆で行けるわね。」
「公爵家の立派なパーティーなんでしょ? 私たちまでいいの?」
「もちろん。私の大切な家族なんだから」
にこやかに笑うエマ。
「ユーリにとっては、はじめての社交界ね」
その言葉に、ユーリはみるみる瞳を輝かせた。
「憧れの、社交界……!」
「ふふ、楽しみね」
頬を染めて夢見るように呟くユーリを見て、大人たち三人はそろって微笑み合った。
夕暮れの執務室には、幸せな空気が満ちていた。
エマの執務室。夕暮れのとき。
窓から差し込む橙色の光に、机上の書類が淡く照らされていた。
セイルは仕事を終えると、そっと扉を開けて中を覗いた。机に向かう妻の姿が目に入り、思わず口元がほころぶ。
「手伝いましょうか?」
「……大丈夫です、もう少しで終わりますから」
エマは眼鏡の位置を指先で直し、穏やかに微笑んだ。真剣な横顔に、眼鏡越しに映るエメラルドグリーンの瞳。彼女の仕事姿を見るのが、セイルは好きだった。
やがてペンを置いた彼女は、ほっと息を吐き、椅子から立ち上がる。伸びをひとつした後、セイルの隣のソファへ腰を下ろし、そのまま自然に彼の肩へと身を預けてきた。
「……百合子さん」
彼の囁きに、エマは空気が甘く変わったのを感じた。
「清一さん……」
「このまま少しだけ……良いですか?」
「こんなところで……」
「誰も来ません。少しだけ」
耳元に落とされる声は、普段よりも低く、艶を含んでいた。エマの心臓が跳ね上がる。
セイルの指が髪を梳き、頬に触れ、やがて唇へ。自然と二人は惹かれ合い、唇を重ねてしまう。ゆったりと、時間が溶けていく。
エマはこぼれる吐息を感じながら、セイルの首にそっと腕を回した。
──その瞬間。
「──おじいちゃま! おばあちゃま! 」
勢いよく扉が開き、明るい声が響く。
「!?」
二人は慌てて飛び退き、セイルは机に肘をぶつけて苦悶した。エマは顔を赤くしたままうつむいた。
駆け込んできたユーリは目を真ん丸にして、数秒固まった。
そして、なにかを悟った年頃の彼女は、真剣な眼差しを向けてきた。
「……ねぇ。おじいちゃまとおばあちゃまは、運命の相手なの?」
あまりの直球に、エマは咳き込んだ。慌てたセイルが背中をさすり、ようやく落ち着きを取り戻した。
「ユーリ……突然どうしたの?」
「だってこんなに愛し合っているんだもん。二人は運命の赤い糸で結ばれて結婚したんでしょ?」
その純粋なまなざしに、エマはどう返していいか分からず目を泳がせる。
と、セイルがすっと微笑んだ。
「ユーリ……エマは私にとって人生そのもの。いや、命の根源だよ」
「セイル様! 何を言っているの!?」
真剣なセイルに、エマは顔を真っ赤にして慌てる。
ユーリは「なるほど……」と妙に納得していた。
「もう、ところ構わずイチャつくのやめてよね」
不意に背後から聞こえた冷静な声。振り向くと、入り口に雪が腕を組んで立っていた。孫だけでなく娘にまで見られてしまい、二人は思わず顔を見合わせて深く反省する。
「ほらこれ。私と、ユーリにまで招待状が届いたんだけど。お母さんの実家からだよね?」
雪が差し出した封筒には、美しい装飾とともに、グランフォード公爵家の紋章が印されている。
「まぁ! グランフォード家の新年会の招待状ね!」
エマは一気に顔を明るくして駆け寄った。
「毎年グランフォード家で新年を祝うパーティーが催されるの。今年は皆で行けるわね。」
「公爵家の立派なパーティーなんでしょ? 私たちまでいいの?」
「もちろん。私の大切な家族なんだから」
にこやかに笑うエマ。
「ユーリにとっては、はじめての社交界ね」
その言葉に、ユーリはみるみる瞳を輝かせた。
「憧れの、社交界……!」
「ふふ、楽しみね」
頬を染めて夢見るように呟くユーリを見て、大人たち三人はそろって微笑み合った。
夕暮れの執務室には、幸せな空気が満ちていた。
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