中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ

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おまけ

【短編】グランフォード家の新年会7

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「はっはっは! エマのことはセイルに任せて正解だった! わしの見る目に狂いはない! その証拠に、今のエマは見たことないくらい健康じゃないか!」

 グランフォード公爵は、豪快に笑いながらセイルの肩をがっしり抱き、上機嫌で酒を煽っていた。

「あの仏頂面で何にも興味のなかったセイルが、今ではすっかり愛妻家だ! それで、いつ孫の顔を見せてくれるんだ?」

「……公爵、飲みすぎです」

 セイルは穏やかにいなしながら、適当に相づちを打つ。

 ……早くエマのもとに帰りたい。

 浮かれきった公爵に絡まれながらも、頭の片隅ではどう切り抜けるかを考えていた。

「……私も酔ったようです。少し風に当たって参ります」

 ようやく公爵の手から逃れたセイルは、頭を下げてその場を離れる。背後でまだ上機嫌に杯を掲げる公爵の声が響いていた。

 一人になり、ほっと小さく息を吐く。庭園の奥へ足を向ければ、風が頬を撫で、胸に溜まっていた熱が少しずつ和らいでいく。

 セイルはある程度、この邸の勝手を知っていた。

 グランフォード公爵邸には、これまで何度か訪れたことがある。
 公爵に呼び出されて軍の話に華を咲かせる以外にも、セイルは領地経営について教えを受けていた。ときには公爵の子どもたちの遊び相手にさせられることもあった。

 それなのに、不思議と、あの頃エマに出会ったことは一度もなかった。

 遠い日々を思い返し、セイルの胸に奇妙な悔恨が広がる。

 こんなに近くに百合子さんがいたなんて、思いもしなかった。
 興味がなかったとはいえ、少しでも関心を向けていたなら。
 もっと早くにエマを見つけていたら、何かが変わっていただろうか。
 幼いエマに、私はどう接しただろうか。

 ──もしもあの頃、彼女を見つけていたなら。

 想像の先に、セイルははっと思考を止める。

 本当に、私は我慢できただろうか。
 節操を失い、幼い彼女に手を伸ばしていたのでは。

 セイルは自分の思考にしばし固まってしまう。
 正直、我慢できたか分からない。

「……出会っていなくて良かったかもしれない」

 自分の節操のなさに、セイルは愕然とした。
 彼女を純粋なまま育ててくれた公爵家に、心から感謝する。

 そんなときだった。

 ふと視線の端に、見覚えのある小柄な影が揺れた。

「……ユーリ?」

 庭園の奥、人気のない場所で、ユーリがきょろきょろと不安げに立ち尽くしている。
 迷子になったのだろうか。
 セイルは声をかけようと歩みを速め──そして、足を止めた。

 ユーリの前に、一人の男が立っていた。

 白銀の騎士装束に、グランフォード家の紋章をあしらったマント。
 月光を思わせる銀糸の髪が、庭園の花々を照らす明かりに映える。

「……エドワード卿」

 エマの兄、エドワード・グランフォード。
 次期公爵にして、王室近衛隊長。

 エマとそっくりな穏やかで温かい微笑みをたたえながら、彼はユーリに声をかけていた。
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