転生少女は元に戻りたい

余暇善伽

文字の大きさ
25 / 56

第24話

しおりを挟む
 秋の収穫祭から季節は更に巡り冬になった。この地域の冬は寒いのは寒いが氷点下にはならないし、雪も降らないそうだ。
 「今日も冷えるね」
 「そうだね、手がジンジンするよ」
 ただ寒いものは寒いので、当然打ち合いをしていれば手も痺れて痛くなってくる。
 「止まってる間は体を冷やさないように着込んどけよ」
 カインに言われてアウターを着込むが、肝心の足が寒い。どうして女児服ってこの時期でも下の丈が短いのだろう。
 向こうでは仁が手のひらの上の小さな竜巻と睨めっこしている。別に遊んでいる訳ではなく、竜巻を肥大化させず消滅もさせず維持し続ける魔法制御の訓練らしい。
 仁はこの二ヶ月程で竜巻を起こせる程度には魔法が上達した。と言っても家なんかを吹き飛ばせるような大きなものではなく、精々人を若干持ち上げる程度の物だし起こしてもすぐに霧散してしまう。
 それでもカインが言うには5級魔法使いまでもう少しらしい。
 魔法使いにも冒険者と同じように、5級から1級までランクがあるそうだ。ちなみにカインは独学の為どれも持ってない無資格魔法使いだと自称していた。
 一方僕はと言うと、未だに魔力の流れを把握することくらいしかできない。一応若干の制御には成功しているのだが、魔法らしい魔法の発動なんてまだまだ遠い。カインが言うには「魔法はイメージできなきゃ発動しない」そうなのだが、その辺、長年魔法を探して妄想していた仁と僕には大きな隔たりがあるのだろう。
 「それにしてもアスカは飲み込み早いよね、剣の才能があるよ」
 「そうかな?カインやロバートの教え方が上手いだけだよ」
 剣の方はと言うと、なんとロバートから一本取ることに成功している。と言っても勝率で出せばまだ1%くらいなのだが、それでも取れるようにはなった。
 ロバートもライバルだなんだと言いながらどこが悪いかは教えてくれる。大体右足の使い方について言われるのだが、この癖はもう仕方ない。
 「ライバルが頑張ってるんだもん、僕も負けてられないよ」
 そう言ってロバートが気合を入れている。なんだかんだ言っても敵に塩を送ってくれるし、そう言う関係の相手が欲しかっただけだったのかも知れない。
 その後、修行を終えいつも通り部屋に戻ろうとすると廊下で忙しそうなメイドさん達とすれ違う。
 「最近メイドさん達忙しそうだよね、何かあるのかな」
 「年末だからじゃないか?ロバートも冬休みでロンデルが帰ってきたとか言ってただろ」
 そう言えば一昨日の夜くらいにそんなこと言ってた気がする。相変わらず魔導教本を読みながらの癖して耳聡い奴だ。
 「メイドさん達って年末どうしてるんだろうね?家に帰るのかな?」
 「いやそういう訳にはいかないだろ、交代で休みを取るんじゃないか?」
 そんな為にならない話をしながら部屋に戻る。
 「僕達は年末どうしてればいいんだろうね」
 「いつも通りしてればいいんじゃないか?それともカインとでも過ごすか?」
 恐らくカインは年末でも仕事しているだろう、そんな中に入って行っては申し訳ない。
 「邪魔になりそうだから止めとくよ、でも仁と年越しとなると何年振りかなって思って」
 「覚えてねぇな、中学の時が最後か?」
 「仁がおみくじで大凶引いた時だっけ?」
 ウルセェ余計なことだけ覚えてやがってと仁が悪態を吐きながら着替えの準備を始める。
 「ほら、風呂行くぞ。準備しろよ」
 「あ、待ってよ、せっかちだな」
 言われて僕も着替えの準備をして仁の後に続く。
 この体になって約10ヶ月、100回以上お風呂に入る機会があったせいで流石になれる…と言うことはなかった。
 いつまで経っても申し訳ないものは申し訳ないし、恥ずかしいものは恥ずかしい。
 ただ、冬になるとしっかり温まってからお風呂を出ないと今度は湯冷めしてしまうので、どうしても長時間お風呂に入る必要が出てくる。結局は諦めて周りを見ないように入り続けるしかない。
 体の方も変化があり、最近は胸が張るようになった。年齢的に胸が発達し始めているのだろうか?恥ずかしいがこの体での生活が続く限り体の発達は避けられないし、仕方ない。
 前に下着屋で押しに負けて買った下着が、今はあってよかったと感謝している。
 「はぁ、僕、どうなっちゃうんだろ…」
 ただでさえ憂鬱なのに先のことなんて考え出したらキリがない。一呼吸おいてまずは目の前の問題から対処しよう。
 お風呂場に入ると既に僕の定位置と化した場所で髪と体を洗い始める。
 エルゼやシアンなどお風呂のタイミングが一緒になると話しかけて来る人もいるが、今日はそう言う人とはタイミングが被らなかったようだ。おかげで静かに髪と体を洗い、落ち着いて周りと離れたところで湯船に浸かれる。
 髪を拭くのにも時間がかかる為、それなりに温もってから上がらないといけないしどうしても入浴時間が長くなる。そのせいでお風呂から上がって部屋に戻ると大体先に上がった仁が戻っているし、早い時はロバートも遊びに来ている。
 「おかえりアスカ、お邪魔してるよ」
 今日もそのパターンで部屋に戻るとロバートと仁が談笑していた。と言っても仁は教本を読みながらだが。
 「ただいま、なんの話をしてたの?」
 「魔法を使う時の感覚についてだよ」
 「魔法が使えないから知りたいんだと」
 「あ、それは僕も知りたい」
 僕もまだ魔法が使えないし後学のためになるだろう。
 「そう言われてもなぁ、説明し難いんだこれが。いいか手のこの辺に集中するだろ?」
 その後仁が身振り手振りを加えて説明してくれるが、やっぱり僕らにはよく分からないし、真似したところで何も起きなかった。
 「まっ、魔力が無いロバートはともかく飛鳥はそのうち分かるさ」
 そう言うと仁が説明を打ち切る。こいつ面倒になりやがったな。
 その後も他愛も無い話をしながら夜が更けていくのだった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...