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第35話
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35話
入試も無事終わり、後は結果を祈るだけになった僕達はいつも通りバンクシア城での日常に戻ってきた。
カインは「休んでた間にどれだけ仕事が溜まってるかな」と帰りの列車の中で黒い笑みを浮かべていたので、暫くは忙しいのだろうと思ってたけど帰って初日の今日も庭に出てきた。
「なんだ出てきたのか、今頃仕事の山に押し潰されてるかと思ったぜ」
「いや実際仕事は山のようにあるんだが、帰ったら特訓してやるってアスカと約束していたし、ついでにお前にも特訓をつけてやろうと思ってな」
なんだそれ、初耳だぞと仁がこちらを見てくる。そう言えばあの時コイツ寝てたのか。
「ホテルで仁が勝手に寝た時に話してたんだよ、僕も早く強化魔法が使えるようにならないといけないし」
それならそれでなんでもっと早く教えないんだよと仁が文句を垂れるが、僕達を放っといて勝手に寝た奴が悪いと押し切る。
「アスカにはその時話したが、お前達がステップアップしていく上で今足りないのは実戦経験だ。だが、これは庭でチャンバラやってたって身に付かない」
「じゃあなんだ、真剣勝負でもしろって言うのか?」
「そんな所だ、と言ってもいきなりじゃ怖いだろうからな。まずは真剣を振るうことに慣れてもらう」
お前なら心配いらないだろうが取り扱いには注意しろよとカインが一振りの剣を渡してくる。
重さは合わせてあるはずなのに木剣と違いズッシリとしているような感覚。これが真剣…剣を武器にする以上避けられないとは言え、やっぱり持ってるだけで緊張してくる。
「そいつで俺が斬られればいいのか?」
「いや、流石に人を斬るのはまずいから俺が相手を用意してやる」
カインが両手を地面に付くと地面に二つの魔法陣が展開し、その中心からそれぞれ土の化け物みたいなものが出てくる。
一応人型をしているが、大きくゴツゴツしておりとても人間には見えない。二体に大きな差はないが強いて言えば片方は目が赤く、もう片方は目が青い。
「目が赤いゴーレムとアスカが、目が青いゴーレムとジンが、これから一週間真剣勝負してもらう」
「へーこれがゴーレムかぁ」
仁が恍惚の表情でゴーレムに近づき触ろうとした瞬間ゴーレムが動き、腕のような部位で仁を殴り飛ばしてしまう。
「じ、仁!?大丈夫?」
ゴーレムにぶっ飛ばされ、庭の端にある木に背中から叩きつけられて止まった仁の元に駆け寄りしゃがみ込むと、よほどの衝撃だったのか気を失っていた。
「全く、人の話も聞かずに迂闊に近づくからそうなるんだ」
カインが悪態を吐きながら治癒魔法を使うと仁はすぐに目覚めたが、目の焦点があっていない。
「あ、飛鳥か?」
「大丈夫?思いっきり背中から行ったけど」
「なんかもの凄い気怠いが大丈夫だ」
それよりしゃがみ方変えないとパンツ見えてるぞと、ありがた迷惑な注意をしてくる仁の頭を一発はつって裾を挟み込む様な姿勢に変える。
「教えてやったのになんで叩くんだよ。それになんか全身が痛いんだが、俺に何があったんだ?」
「余計な事言うからだよ。それと覚えてない?不用意にゴーレムに近づいたからぶっ飛ばされたんだけど」
そう言えばそんなことがあったような無かったようなと仁が首を傾げる。
「ジンが証明してくれたがこのゴーレム達は割と容赦無く攻撃してくる上、目が赤い方はかなり硬くなっているし、目が青い方は魔法障壁を持っている」
「それって僕達に倒せるんですか?」
僕の武器は剣だし仁の武器は魔法だ。それなのにそれぞれ対策してあるんじゃ勝ち目が無さそうなんだけど。
「勝てないかもな、ただ今回は勝つのが目的じゃなく真剣勝負に慣れることだ。それに全く勝ち目が無いわけじゃ無い」
さっきの剣ちょっと貸してみろとカインが言ってくるのでカインに貸すと、悠然と赤目のゴーレムに歩き始める。
術者にも容赦無いのかゴーレムが反応しカインを殴り飛ばそうとするも、逆に一瞬でカインに片腕を斬り落とされてしまう。
「よーく見とけよ、これが斬れるイメージだからな」
そう言いながらゴーレムが追加で殴ってきているもう片腕も斬り落とす。本当に硬いのか疑問になってくるくらい音も無く、最も簡単に斬れてしまうゴーレムの両腕。まるでバターでも斬ってるかのようだ。
「コイツらは斬られてもコアが破損しない限り何度でも自己再生するからな、遠慮なく斬っていいぞ」
その言葉の通り最初に斬られた腕は少しづつ集まり断面同士が引っ付きつつある。正直あまり気持ちのいい見た目ではない。
「なぁカイン、俺にも倒せる手本を見せてくれよ」
「構わないがそっちがコアを破損させそうで面倒なんだよな」
言いながらカインが青目のゴーレムに右手を突き出し風よと唱えると、ガラスの割れたような高い音と共に障壁が割れ、ゴーレムの四肢が切断される。
「しっかり記憶したか?それじゃ一生懸命戦ってみるんだな」
と言い残すとカインは僕に剣を返して事務仕事に帰ってしまう。
「俺たちも頑張ってみるか」
「そうだね、真剣に慣れなきゃいけないし」
仁に促され修復したゴーレムに挑む。
結局、今日は全く斬れずに二度気絶しワーナーに怒られて終わるのだった。
入試も無事終わり、後は結果を祈るだけになった僕達はいつも通りバンクシア城での日常に戻ってきた。
カインは「休んでた間にどれだけ仕事が溜まってるかな」と帰りの列車の中で黒い笑みを浮かべていたので、暫くは忙しいのだろうと思ってたけど帰って初日の今日も庭に出てきた。
「なんだ出てきたのか、今頃仕事の山に押し潰されてるかと思ったぜ」
「いや実際仕事は山のようにあるんだが、帰ったら特訓してやるってアスカと約束していたし、ついでにお前にも特訓をつけてやろうと思ってな」
なんだそれ、初耳だぞと仁がこちらを見てくる。そう言えばあの時コイツ寝てたのか。
「ホテルで仁が勝手に寝た時に話してたんだよ、僕も早く強化魔法が使えるようにならないといけないし」
それならそれでなんでもっと早く教えないんだよと仁が文句を垂れるが、僕達を放っといて勝手に寝た奴が悪いと押し切る。
「アスカにはその時話したが、お前達がステップアップしていく上で今足りないのは実戦経験だ。だが、これは庭でチャンバラやってたって身に付かない」
「じゃあなんだ、真剣勝負でもしろって言うのか?」
「そんな所だ、と言ってもいきなりじゃ怖いだろうからな。まずは真剣を振るうことに慣れてもらう」
お前なら心配いらないだろうが取り扱いには注意しろよとカインが一振りの剣を渡してくる。
重さは合わせてあるはずなのに木剣と違いズッシリとしているような感覚。これが真剣…剣を武器にする以上避けられないとは言え、やっぱり持ってるだけで緊張してくる。
「そいつで俺が斬られればいいのか?」
「いや、流石に人を斬るのはまずいから俺が相手を用意してやる」
カインが両手を地面に付くと地面に二つの魔法陣が展開し、その中心からそれぞれ土の化け物みたいなものが出てくる。
一応人型をしているが、大きくゴツゴツしておりとても人間には見えない。二体に大きな差はないが強いて言えば片方は目が赤く、もう片方は目が青い。
「目が赤いゴーレムとアスカが、目が青いゴーレムとジンが、これから一週間真剣勝負してもらう」
「へーこれがゴーレムかぁ」
仁が恍惚の表情でゴーレムに近づき触ろうとした瞬間ゴーレムが動き、腕のような部位で仁を殴り飛ばしてしまう。
「じ、仁!?大丈夫?」
ゴーレムにぶっ飛ばされ、庭の端にある木に背中から叩きつけられて止まった仁の元に駆け寄りしゃがみ込むと、よほどの衝撃だったのか気を失っていた。
「全く、人の話も聞かずに迂闊に近づくからそうなるんだ」
カインが悪態を吐きながら治癒魔法を使うと仁はすぐに目覚めたが、目の焦点があっていない。
「あ、飛鳥か?」
「大丈夫?思いっきり背中から行ったけど」
「なんかもの凄い気怠いが大丈夫だ」
それよりしゃがみ方変えないとパンツ見えてるぞと、ありがた迷惑な注意をしてくる仁の頭を一発はつって裾を挟み込む様な姿勢に変える。
「教えてやったのになんで叩くんだよ。それになんか全身が痛いんだが、俺に何があったんだ?」
「余計な事言うからだよ。それと覚えてない?不用意にゴーレムに近づいたからぶっ飛ばされたんだけど」
そう言えばそんなことがあったような無かったようなと仁が首を傾げる。
「ジンが証明してくれたがこのゴーレム達は割と容赦無く攻撃してくる上、目が赤い方はかなり硬くなっているし、目が青い方は魔法障壁を持っている」
「それって僕達に倒せるんですか?」
僕の武器は剣だし仁の武器は魔法だ。それなのにそれぞれ対策してあるんじゃ勝ち目が無さそうなんだけど。
「勝てないかもな、ただ今回は勝つのが目的じゃなく真剣勝負に慣れることだ。それに全く勝ち目が無いわけじゃ無い」
さっきの剣ちょっと貸してみろとカインが言ってくるのでカインに貸すと、悠然と赤目のゴーレムに歩き始める。
術者にも容赦無いのかゴーレムが反応しカインを殴り飛ばそうとするも、逆に一瞬でカインに片腕を斬り落とされてしまう。
「よーく見とけよ、これが斬れるイメージだからな」
そう言いながらゴーレムが追加で殴ってきているもう片腕も斬り落とす。本当に硬いのか疑問になってくるくらい音も無く、最も簡単に斬れてしまうゴーレムの両腕。まるでバターでも斬ってるかのようだ。
「コイツらは斬られてもコアが破損しない限り何度でも自己再生するからな、遠慮なく斬っていいぞ」
その言葉の通り最初に斬られた腕は少しづつ集まり断面同士が引っ付きつつある。正直あまり気持ちのいい見た目ではない。
「なぁカイン、俺にも倒せる手本を見せてくれよ」
「構わないがそっちがコアを破損させそうで面倒なんだよな」
言いながらカインが青目のゴーレムに右手を突き出し風よと唱えると、ガラスの割れたような高い音と共に障壁が割れ、ゴーレムの四肢が切断される。
「しっかり記憶したか?それじゃ一生懸命戦ってみるんだな」
と言い残すとカインは僕に剣を返して事務仕事に帰ってしまう。
「俺たちも頑張ってみるか」
「そうだね、真剣に慣れなきゃいけないし」
仁に促され修復したゴーレムに挑む。
結局、今日は全く斬れずに二度気絶しワーナーに怒られて終わるのだった。
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