転生少女は元に戻りたい

余暇善伽

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第51話

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 十二時半になり午前中の授業が終わると二時まで一時間半の間お昼休憩が始まる。みんなそれぞれのお昼休みを始め、静かだった教室に活気が戻る。
 「やっとお昼だー」
 長かった睡魔との戦いから解き放たれた解放感で大きな伸びが一つ。
 「昼飯どうすっかね」
 「さぁ、何も考えてないよ」
 「ねぇお二人さん、ちょっと良い?」
 伸びをしていたらいつの間にか集まっていたペロとクローディアとカンナの三人が会話に入って来る。
 「どうした三人とも?」
 「ジン君にもカンナを紹介しようと思って」
 「カンナってスミスさんのことか、ペロの相部屋の子なんだっけ」
 「そうじゃ、お主がジンじゃな。色々罪作りな男だと聞いておるよ」
 はぁ?っとジンがこちらを睨みつけてくるが、僕は悪く無いのでそっぽを向く。僕は悪くない、ちゃんと勘違いを是正するため頑張ったもん。
 「なんか変な誤解をされてそうだから一応言っておくが、俺は何もしてないからな?」
 「いや何、お主が悪いとは聞いとらんよ。ただ罪作りな男だと言っとるのじゃ」
 仁の顔に?が浮かんでいるが、この話題が続くのはマズイしとりあえずここは話題を変えて誤魔化そう。
 「そんなことより三人はお昼どうするの?」
 「私たちはまだ決まってないよ」
 「ワシはできれば近くがいいのう、この広い学校を歩き回るのはしんどいわい」
 「冒険者になったら歩き回らないといけないんだからこのくらいでへばってる訳にもいかないでしょ」
 ゲシッと、クローディアの指摘にカンナが物理的なツッコミを入れる。でも車も無い世界なんだし、クローディアの言う通り体力はつけないと後々辛いと思う。
 「カンナが近くが良いって言ってるんだし近くにしようよ、どうせ何も決まってないんだし」
 「聞いた話じゃこの辺に食事できる店は二つあるらしいぞ。一つは質より量の店、もう一つは量より質の店らしい」
 仁がどこで仕入れてきたのかそんなことを言うが、一体いつそんな話を仕入れてきているのだろうか?
 「量か質かね、どっちが良いとか希望ある人いる?」
 「僕は量が多いと食べきれないかも」
 「メニューや値段見ないとどっちか決めにくいかなぁ」
 「ワシは近くならどこでも良いぞ」
 女性陣がそれぞれ事情を話すが、どれもイマイチ決め手に欠ける回答が並ぶ。
 結局とりあえず近くから見てみようぜと言う仁の提案に乗り、教室を後にして飲食店へと向かう。
 この学校の敷地内には多くの飲食店が営業されているが、その多くは貴族科の校舎の近くに集中している。要は貴族科の生徒達が食べたい時に食べたい物を食べたり、集会を開くために営業している店がほとんどなのだ。
 つまり貴族科の校舎が無い区画にはあまり飲食店は出店されていない、その結果起きるのは簡単なことだ。
 「……すっごい混んでるね」
 「ああ、こりゃ俺たちの人数じゃ座れねぇな」
 まず近くにある質より量と言われた赤い屋根のちょっと古そうなお店に来てみると、そこそこ広い店内から更に溢れんばかりの人の行列が出来ていた。
 冒険者学科がある区画は騎士科など育ち盛りの男子が多い区画と言うこともその原因かもしれない。
 「もう一箇所も混んでるかもしれないが、一応見てみるか」
 再び仁の提案に従い校舎から少し校外方向に向けて歩くと、さっきのお店より小綺麗な青い屋根のお店が見えてくる。こちらも人が多そうだが、幸いさっきのお店ほどは人がいなさそうだ。
 「こっちの方が空いてそうだしこっちにするか、並ぶのも面倒だ」
 「僕はそれで良いけど、三人は大丈夫?」
 三人から特に反対も出なかったので五人でお店に入ると、案外すんなり席へと案内される。
 校舎の内側から来たので見えなかったが、校舎の外向きにテラスの席もあるらしくそちらで食事している生徒達も見える。
 男女比は同じくらいだが、そもそも区画の男女比から考えると女子に人気なのだろう。
 入った時に渡された黒い装丁の二冊のメニュー表にみんなで目を通すと、当然そこにはメニューと値段が書いてある。
 「このお店、ちょっと値段が高目なんだね」
 「えっ、そうなの?あまり飲食店来たことないから分からないや」
 メニュー表を見てコソコソとペロが耳打ちしてくるが、そもそもお城の中ばかりだった僕らにはイマイチ相場が分からない。
 「ウチ村で暮らしてたから相場が良く分からないんだけど、こんな物なの?」
 「俺もよく分からん、ただパン一個の値段から考えれば少し高いかもしれん」
 パン一個の値段は大体十コルらしいと言うのはボルドーに習ったので分かる。対してメニュー表には百コルに届かない程度の値段が並んでいる。十コルを百円程度と考えれば千円に満たない程度なので、そんなもんと言われたらそんなもんなのかもしれない。
 とりあえず全員スープやパスタ、パイなどそれぞれ食べたい物を注文する。
 前々から気になっていたが、この国の食文化はまるで西洋で一括りにしたかのようになっている。
 国が大きく歴史があり、交易の中心地でもあるらしいから諸外国から食文化が流れ込んでいるのかもしれない。
 「ねぇねぇジン君、ちょっと質問していい?」
 「なんだ、別に質問くらい構わないぞ」
 注文が終わるとクローディアがイタズラっぽく切り出す。今度は何を思い付いたのだろうか?
 「ジン君から見てアスカって実際どうなの?」
 クローディアのあまりにストレートな質問に吹き出してしまう。まさかそんな直球な質問をするとは、年頃の少女って恐ろしい。
 「どうも何もただの幼馴染だよ、腐れ縁のな」
 「そうじゃなくて、見た目とか中身の意見が聞きたいなぁ」
 「ちょちょっとクローディア、あまり変なこと聞かないでよ」
 流石にこっちが恥ずかしくなってきたのでクローディアを止めるが、こんなことで年頃の少女の好奇心は止まらないらしい。
 「見た目はいいんじゃね?中身は最悪だけど」
 「仁、それはどう言う意味かな?」
 僕からしたら事実上何も褒められてない感想なのだが、クローディアとペロはキャーキャー言っている。
 「良かったじゃんアスカ、後は中身だね!」
 「だから僕と仁はただの幼馴染だって」
 「でも見た目褒められて悪い気はしなかったでしょう?」
 そんな事は無いと否定しようとしたが言葉が詰まる。仁にどうこうという訳ではなく、元の世界で見た目を褒められたことは一度もなかった。そんな僕が(一応)異性に見た目が良いと褒められて嬉しいやら悲しいやら感情が渋滞してしまったのだ。
 「ほら、素直になりなって」
 「だから僕と仁はそう言う関係じゃないって!」
 「お主達、ここが店内だと言うことを忘れてはおらぬか?」
 カンナに言われて我に帰ると、店内の注目を一身に受けていた。顔が一気に熱くなってくるのが分かる、自分の顔は見えないが恐らく真っ赤になっていることだろう。良い歳こいて恥ずかしい、穴があったら入りたい。
 クローディアのせいで針の筵の中での食事になるのだった。
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