6 / 108
ヒトがおったのじゃ
しおりを挟む
ふくが目を覚ますとヴォルフに顔をペロっと舐められる。
もちろんそのお返しにヴォルフの鼻に爪を立てて反撃する。
「痛い痛い痛い痛い!な……なんでそんなに怒るんだよぅ……。」
「おなごの顔を舐めるとは良い度胸じゃの。失礼にもほどがあるわ!」
「失礼って……。狼は親愛の証で舐めたりすることあるんだよ?」
「それは……本当に貴様たちの作法なのかの……?」
ヴォルフは自信満々で頷く。
こういう時のヴォルフは噓をつくことはない。
段々とふくはヴォルフの扱いが分かってきたようで、腰に手を当ててため息をつく。
「は!?肉はどうなったのじゃ!?」
「大丈夫。壊れないくらいには冷やしたから、まだ食べられるよ!すごいでしょ!」
褒めてもらいたい、そんな表情をしたヴォルフを見て、一瞬胸が高まるがふくは勘違いだと思うことにして、次の課題に目を向ける。
「……しかし、どう調理しようかの……。わしは料理を作ったことがないのじゃ。いつも付き人に作らせておったから……。」
「集落に持って行って、聞いてみたらいいんじゃないの?」
「わし以外にも人間がおるのか!?」
「うん。数は少ないけど。」
「なら早く言わんか!早く肉を持ってそこに行くのじゃ!」
ふくは跳び起きて魔力を使って肉を集める。
三度の魔法の行使により、使い勝手が分かり、大雑把ではあるが重量物を持ち上げるまで可能になった。
いそいそと準備をするふくを見てヴォルフは耳を畳み、眉が下がっていた。
そのようなことを気にも留めず、ヴォルフの背中に肉を乗せるとふくもヴォルフの背中に跨る。
「さあ、行くのじゃ!」
「わ、わかったよ……。」
いつものように元気のない声で返事をすると、渋々歩き始める。
先住民の居るとされている集落まで歩みを進めるのであった。
§
お腹を空かせて、腹の虫を鳴らしながら進んでいくと、石造りの建物が見え始めた。
ふくはその光景を目にすると、目を輝かせてヴォルフの上から眺める。
そして、遠く離れて小さいが、ヒトの姿も確認でき、ますますテンションが上がっていった。
「ぼるふ!人じゃ!人がおる!やっとわしと同じような人に出会えるとはの……。」
「うん……そうだね……。」
「なんじゃ、いつものような活気がないの。疲れたのか?」
「そういうんじゃないけど……。」
ヴォルフの元気がない事に違和感を感じたが、同じ人間と話せるという事の好奇心が勝り、放っておく事にした。
そのまま街道のようなものを進んでいくと簡素な塀に囲まれた集落に到着する。
門の前には二人のヒトが立っており、虎の見た目をした者と犬の見た目をした者が立っていた。
ふくとヴォルフの姿を確認すると槍を構える。
「そこの者!止まれ!ここは許可なく入られる所ではない!」
「わしはふくと言うものじゃ。先日この洞窟に堕ちたのじゃが、知恵を貸してもらいたい。できるかの?」
「地上から堕ちた者か……!貴様がこの村に害なす者ではないと証明できるか?」
「知恵を貸してくれるのであれば、 このケダモノの肉を分けてやろう。」
そう言って目の前に三メートル四方の肉塊をドシンと置く。
その量に門番の二人は思わずジュルリと口を鳴らす。
「こ、これを貰えるのか……!?」
「勿論じゃ。わしは嘘をつかん。」
腕を組んでフンっと鼻を鳴らすと、門番の二人は向き合って話す。
「どうする……?魔獣の肉をあれだけ持って来れるヒトって殆どいないよな……。」
「実力があるなら村にいて欲しいよね……。乳大きいし、美人さんだしね……。」
「確かに……でも、なんで裸なんだ――って、下にいるのは氷狼族……!しかも、邪神ヴォルフじゃないか!?」
二人はヴォルフの姿を認識すると槍を再び構える。
「ふくさん!その狼から離れるのです!食べられてしまいます!」
「直ぐに追い払って匿いますので安心してください!」
「ま、待て。待つのじゃ!ぼるふはわしを助けてくれたのじゃ!悪い狼じゃないのじゃ!」
「心を操られているかもしれない!直ぐに助けに行くぞ!」
門番の二人は槍を構えてヴォルフに向かって走る。
ふくは状況が読めなかったが、放心状態のヴォルフの尻を叩き一喝する。
「ぼるふ!肉は置いて逃げるのじゃ!文句は言わんから先ほどの速さで駆けるのじゃ!」
「あ……う、うん……。」
ヴォルフはふくの言う通り目にも止まらない速さでその場を離れた。
集落から離れ、追手が来ない場所まで走るとふくに止められる。
ふくはヴォルフから降りるとヨロヨロと歩き出す。
その後ろをヴォルフはついていかなかった。
一歩も歩かないヴォルフを見て腰に手を当ててヴォルフの目の前に立つ。
「いつまで悄気ておる!お前らしくないっ!」
「だ、だって……オレのせいで肉は食べられないし、ニンゲンと話せなくなったし……。」
「そんなものどうでも良いのじゃ。わしはお前に助けられた身じゃ。それだけでなく、知恵も貸してもらっとる。あやつらがお前と敵対するなら、わしはお前の味方じゃ。」
「ふく……。ありがとう……。」
「しかしのぅ……流石に腹が減ったのじゃ……。もう、動けぬ……。」
お腹を抱えて丸くなって倒れるふくを見て、ヴォルフは一瞬姿を消したと思うと、小型の魔獣をふくの目の前に置く。
先ほどまで生きていたであろう新鮮な肉である。
それを自慢の牙で引きちぎり、口に頬張り、ふくの口にねじ込む。
最初のうちは拒んでいたが、背に腹は変えられなくなったのか、しっかりと咀嚼する。
ゴクンと飲み込むと、ふくは一言告げる。
「やはり生は美味しくないの……。」
もちろんそのお返しにヴォルフの鼻に爪を立てて反撃する。
「痛い痛い痛い痛い!な……なんでそんなに怒るんだよぅ……。」
「おなごの顔を舐めるとは良い度胸じゃの。失礼にもほどがあるわ!」
「失礼って……。狼は親愛の証で舐めたりすることあるんだよ?」
「それは……本当に貴様たちの作法なのかの……?」
ヴォルフは自信満々で頷く。
こういう時のヴォルフは噓をつくことはない。
段々とふくはヴォルフの扱いが分かってきたようで、腰に手を当ててため息をつく。
「は!?肉はどうなったのじゃ!?」
「大丈夫。壊れないくらいには冷やしたから、まだ食べられるよ!すごいでしょ!」
褒めてもらいたい、そんな表情をしたヴォルフを見て、一瞬胸が高まるがふくは勘違いだと思うことにして、次の課題に目を向ける。
「……しかし、どう調理しようかの……。わしは料理を作ったことがないのじゃ。いつも付き人に作らせておったから……。」
「集落に持って行って、聞いてみたらいいんじゃないの?」
「わし以外にも人間がおるのか!?」
「うん。数は少ないけど。」
「なら早く言わんか!早く肉を持ってそこに行くのじゃ!」
ふくは跳び起きて魔力を使って肉を集める。
三度の魔法の行使により、使い勝手が分かり、大雑把ではあるが重量物を持ち上げるまで可能になった。
いそいそと準備をするふくを見てヴォルフは耳を畳み、眉が下がっていた。
そのようなことを気にも留めず、ヴォルフの背中に肉を乗せるとふくもヴォルフの背中に跨る。
「さあ、行くのじゃ!」
「わ、わかったよ……。」
いつものように元気のない声で返事をすると、渋々歩き始める。
先住民の居るとされている集落まで歩みを進めるのであった。
§
お腹を空かせて、腹の虫を鳴らしながら進んでいくと、石造りの建物が見え始めた。
ふくはその光景を目にすると、目を輝かせてヴォルフの上から眺める。
そして、遠く離れて小さいが、ヒトの姿も確認でき、ますますテンションが上がっていった。
「ぼるふ!人じゃ!人がおる!やっとわしと同じような人に出会えるとはの……。」
「うん……そうだね……。」
「なんじゃ、いつものような活気がないの。疲れたのか?」
「そういうんじゃないけど……。」
ヴォルフの元気がない事に違和感を感じたが、同じ人間と話せるという事の好奇心が勝り、放っておく事にした。
そのまま街道のようなものを進んでいくと簡素な塀に囲まれた集落に到着する。
門の前には二人のヒトが立っており、虎の見た目をした者と犬の見た目をした者が立っていた。
ふくとヴォルフの姿を確認すると槍を構える。
「そこの者!止まれ!ここは許可なく入られる所ではない!」
「わしはふくと言うものじゃ。先日この洞窟に堕ちたのじゃが、知恵を貸してもらいたい。できるかの?」
「地上から堕ちた者か……!貴様がこの村に害なす者ではないと証明できるか?」
「知恵を貸してくれるのであれば、 このケダモノの肉を分けてやろう。」
そう言って目の前に三メートル四方の肉塊をドシンと置く。
その量に門番の二人は思わずジュルリと口を鳴らす。
「こ、これを貰えるのか……!?」
「勿論じゃ。わしは嘘をつかん。」
腕を組んでフンっと鼻を鳴らすと、門番の二人は向き合って話す。
「どうする……?魔獣の肉をあれだけ持って来れるヒトって殆どいないよな……。」
「実力があるなら村にいて欲しいよね……。乳大きいし、美人さんだしね……。」
「確かに……でも、なんで裸なんだ――って、下にいるのは氷狼族……!しかも、邪神ヴォルフじゃないか!?」
二人はヴォルフの姿を認識すると槍を再び構える。
「ふくさん!その狼から離れるのです!食べられてしまいます!」
「直ぐに追い払って匿いますので安心してください!」
「ま、待て。待つのじゃ!ぼるふはわしを助けてくれたのじゃ!悪い狼じゃないのじゃ!」
「心を操られているかもしれない!直ぐに助けに行くぞ!」
門番の二人は槍を構えてヴォルフに向かって走る。
ふくは状況が読めなかったが、放心状態のヴォルフの尻を叩き一喝する。
「ぼるふ!肉は置いて逃げるのじゃ!文句は言わんから先ほどの速さで駆けるのじゃ!」
「あ……う、うん……。」
ヴォルフはふくの言う通り目にも止まらない速さでその場を離れた。
集落から離れ、追手が来ない場所まで走るとふくに止められる。
ふくはヴォルフから降りるとヨロヨロと歩き出す。
その後ろをヴォルフはついていかなかった。
一歩も歩かないヴォルフを見て腰に手を当ててヴォルフの目の前に立つ。
「いつまで悄気ておる!お前らしくないっ!」
「だ、だって……オレのせいで肉は食べられないし、ニンゲンと話せなくなったし……。」
「そんなものどうでも良いのじゃ。わしはお前に助けられた身じゃ。それだけでなく、知恵も貸してもらっとる。あやつらがお前と敵対するなら、わしはお前の味方じゃ。」
「ふく……。ありがとう……。」
「しかしのぅ……流石に腹が減ったのじゃ……。もう、動けぬ……。」
お腹を抱えて丸くなって倒れるふくを見て、ヴォルフは一瞬姿を消したと思うと、小型の魔獣をふくの目の前に置く。
先ほどまで生きていたであろう新鮮な肉である。
それを自慢の牙で引きちぎり、口に頬張り、ふくの口にねじ込む。
最初のうちは拒んでいたが、背に腹は変えられなくなったのか、しっかりと咀嚼する。
ゴクンと飲み込むと、ふくは一言告げる。
「やはり生は美味しくないの……。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる