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民を焚き付けるのじゃ
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ふくが目を覚ますと、気づいたヴォルフがスンスンとニオイを嗅ぎにくる。
ヴォルフがそばにいた事が嬉しいと思い、ヴォルフの頭を抱きしめる。
「ふく……怒ってない?」
「怒る理由があるものか。言いつけ通りずっとそばに居ってくれたのじゃろう。礼を言おう。」
ふくは抱きしめたまま頭を、体を撫で繰り回す。
嬉しくなったヴォルフはそのままひっくり返り、ふくは胸や腹も撫でていく。
もはや完全に犬であり、戦いの神や邪神などとは程遠い仕草であった。
いつもなら「気持ち悪い」と一喝するふくではあるのだが、今回ばかりはヴォルフがいなければ自信が大変な目に遭っていたので感謝の気持ちでいっぱいだった。
「えへへ……。そういえばふくがこの木を生やしたの?」
「ん……そうじゃ。【樹木】という魔法じゃ。流石にこの範囲の木を生やすのは疲れたの……。じゃが、まだまだやることが残っておっての……」
ふくは重たい体をゆっくりと動かし、立ち上がるとヴォルフも同じように立ち上がる。
するとネズミ達がビクリと体を震わせる。
それを見たふくはヴォルフが何かをしたのか気になっていたが、そもそもヴォルフは邪神として恐れられている事を思い出す。
歩いて進んでいくと一匹のボロボロになったネズミが目の前を立ち塞がる。
それはふくを襲おうとしたネズミであり、なぜボロボロになっているのかは不明だったが、ヴォルフに対して挑戦をしているようにも見えた。
ヴォルフは金色の瞳に細長い瞳孔で見下すとネズミは萎縮してしまうが、自らを奮い立たせてもう一度ヴォルフに挑む。
ヴォルフは「はあぁ……」と息を吐き、大気が冷えていくと、ふくがヴォルフの頭を平手で軽く叩く。
「止すのじゃ。こやつにそれほどの力は使わなくて良い。寝込みや弱っとるところしか襲えんやつじゃ。放っておくのがお前にとっても良い結果となるじゃろうて」
「でも、コイツはふくを襲おうとしたやつだぞ?ふくはオレのモノなのに」
「それでもじゃ。お前のおかげでわしは何とも無かった。これ以上、事を荒立てるでない」
ふくはヴォルフを嗜めていると、一人のネズミが歩いて来て、ふくの前に跪く。
服装を見るからにこの一族の中で一番話が通じそうな雰囲気を醸し出していた。
「寛大な処置、ありがたい。邪神を治める者よ、あなた方の目的は何か教えていただけるだろうか?」
「わしはこのぼるふが統治しておる土地を整え、再び正しき神として、国を創るのが目的じゃ。ここへ寄ったのは偶々じゃがの」
「風の吹きあふれるこの村を森を作っていただき、感謝する。しかし、食糧難はいまだに続いています。どうか、分けていただけぬだろうか?」
「その基礎を作るのじゃ。わしが飯を与えたところで、わしが居らんくなったらどうやって暮らすつもりじゃ?」
ふくは立ち上がり、木の前に立つ。
魔法に意識を集中し、手を三回振るう。
風の刃が一本の木を倒し、三つに分かれる。
ふくはネズミ族達に広い場所へと運ぶように指示をし、広場らしき場所に辿り着く。
「ふく、今から何をするの?」
「土を耕し、焼いた木を砕いて混ぜ合わせる。そしてエサとなる植物の種を植えて育てるのじゃ。いわゆる農業というもんじゃ」
「お言葉ですが……この土地は農業にむ――」
「じゃから焼いた木を砕いて混ぜると言っておろう。人の話はよく聞くのじゃ。木を焼く事で若干じゃが、土に栄養が回るようになるのじゃ。本当に肥料として使うなら、お前達の糞尿を使うと良いじゃろう。」
ふくがノウハウを伝えるとネズミ族は嫌そうな顔をする。
肥溜めを作り、肥料として使うのはふくの世界と時代では一般的な事であったのだが、ここの世界のニンゲンには刺さらなかった。
それもそのはず、基本的に魔法で何とかすれば良いのだから、態々そんな事をしなくてもいいと思っているからだ。
それでもふくが勧めるのはネズミ族がこの環境を作ってしまった事に気がついた為である。
同じ土地で農業をすれば土地は枯れ、作物は育たない。
それは魔法でも同じ事であり、一度枯れた土地を戻すのは困難な課題である。
ふくが森を作ったのは防風だけでなく、いつしか出来る実りたちがネズミ達を潤し、余った実りは土へと戻り、土地に栄養を与える、そんな循環を再び創るものだった。
人間時代ではこのような大規模な事はかなりの時間がかかり、誰もしない為飢饉に陥る事があった。
それを避けるためにふくは官民問わずこのような政策を行っていた。
「本当はお前達が自分の力で木を植えたりせねばならんかたったのじゃが、急を要するものじゃから今回はわしが何とかしてやるのじゃ。……それともこのまま放置して欲しかったのかの?」
ふくが訊ねるとネズミ族は一斉に首を横に振る。
満足そうな笑みを浮かべ、木に向かって手を突き出す。
「今からお前達に働いてもらうのじゃ。これは自分たちでやらねば今後、ネズミどもは衰退し、滅びる運命じゃろう。嫌ならつべこべ言わず動くのじゃ!」
ふくがネズミ族を焚き付けると一斉に動き出し、ふくの切り倒した木を運び始めた。
ヴォルフはふくの采配を見てポカンとしていた。
それは今まで何を言っても動かなかったヒトがふくの説明を聞いて動くようになり、自身の手足のように使っている様を見て驚いていたのだった。
ふくはそんなヴォルフのそばに寄り、尻をペシンと叩く。
「これが王としての努めじゃ。わしらももう一仕事するのじゃ」
そう言ってふくはヴォルフの背中に跨り、畑になる予定の広場を眺めるのだった。
ヴォルフがそばにいた事が嬉しいと思い、ヴォルフの頭を抱きしめる。
「ふく……怒ってない?」
「怒る理由があるものか。言いつけ通りずっとそばに居ってくれたのじゃろう。礼を言おう。」
ふくは抱きしめたまま頭を、体を撫で繰り回す。
嬉しくなったヴォルフはそのままひっくり返り、ふくは胸や腹も撫でていく。
もはや完全に犬であり、戦いの神や邪神などとは程遠い仕草であった。
いつもなら「気持ち悪い」と一喝するふくではあるのだが、今回ばかりはヴォルフがいなければ自信が大変な目に遭っていたので感謝の気持ちでいっぱいだった。
「えへへ……。そういえばふくがこの木を生やしたの?」
「ん……そうじゃ。【樹木】という魔法じゃ。流石にこの範囲の木を生やすのは疲れたの……。じゃが、まだまだやることが残っておっての……」
ふくは重たい体をゆっくりと動かし、立ち上がるとヴォルフも同じように立ち上がる。
するとネズミ達がビクリと体を震わせる。
それを見たふくはヴォルフが何かをしたのか気になっていたが、そもそもヴォルフは邪神として恐れられている事を思い出す。
歩いて進んでいくと一匹のボロボロになったネズミが目の前を立ち塞がる。
それはふくを襲おうとしたネズミであり、なぜボロボロになっているのかは不明だったが、ヴォルフに対して挑戦をしているようにも見えた。
ヴォルフは金色の瞳に細長い瞳孔で見下すとネズミは萎縮してしまうが、自らを奮い立たせてもう一度ヴォルフに挑む。
ヴォルフは「はあぁ……」と息を吐き、大気が冷えていくと、ふくがヴォルフの頭を平手で軽く叩く。
「止すのじゃ。こやつにそれほどの力は使わなくて良い。寝込みや弱っとるところしか襲えんやつじゃ。放っておくのがお前にとっても良い結果となるじゃろうて」
「でも、コイツはふくを襲おうとしたやつだぞ?ふくはオレのモノなのに」
「それでもじゃ。お前のおかげでわしは何とも無かった。これ以上、事を荒立てるでない」
ふくはヴォルフを嗜めていると、一人のネズミが歩いて来て、ふくの前に跪く。
服装を見るからにこの一族の中で一番話が通じそうな雰囲気を醸し出していた。
「寛大な処置、ありがたい。邪神を治める者よ、あなた方の目的は何か教えていただけるだろうか?」
「わしはこのぼるふが統治しておる土地を整え、再び正しき神として、国を創るのが目的じゃ。ここへ寄ったのは偶々じゃがの」
「風の吹きあふれるこの村を森を作っていただき、感謝する。しかし、食糧難はいまだに続いています。どうか、分けていただけぬだろうか?」
「その基礎を作るのじゃ。わしが飯を与えたところで、わしが居らんくなったらどうやって暮らすつもりじゃ?」
ふくは立ち上がり、木の前に立つ。
魔法に意識を集中し、手を三回振るう。
風の刃が一本の木を倒し、三つに分かれる。
ふくはネズミ族達に広い場所へと運ぶように指示をし、広場らしき場所に辿り着く。
「ふく、今から何をするの?」
「土を耕し、焼いた木を砕いて混ぜ合わせる。そしてエサとなる植物の種を植えて育てるのじゃ。いわゆる農業というもんじゃ」
「お言葉ですが……この土地は農業にむ――」
「じゃから焼いた木を砕いて混ぜると言っておろう。人の話はよく聞くのじゃ。木を焼く事で若干じゃが、土に栄養が回るようになるのじゃ。本当に肥料として使うなら、お前達の糞尿を使うと良いじゃろう。」
ふくがノウハウを伝えるとネズミ族は嫌そうな顔をする。
肥溜めを作り、肥料として使うのはふくの世界と時代では一般的な事であったのだが、ここの世界のニンゲンには刺さらなかった。
それもそのはず、基本的に魔法で何とかすれば良いのだから、態々そんな事をしなくてもいいと思っているからだ。
それでもふくが勧めるのはネズミ族がこの環境を作ってしまった事に気がついた為である。
同じ土地で農業をすれば土地は枯れ、作物は育たない。
それは魔法でも同じ事であり、一度枯れた土地を戻すのは困難な課題である。
ふくが森を作ったのは防風だけでなく、いつしか出来る実りたちがネズミ達を潤し、余った実りは土へと戻り、土地に栄養を与える、そんな循環を再び創るものだった。
人間時代ではこのような大規模な事はかなりの時間がかかり、誰もしない為飢饉に陥る事があった。
それを避けるためにふくは官民問わずこのような政策を行っていた。
「本当はお前達が自分の力で木を植えたりせねばならんかたったのじゃが、急を要するものじゃから今回はわしが何とかしてやるのじゃ。……それともこのまま放置して欲しかったのかの?」
ふくが訊ねるとネズミ族は一斉に首を横に振る。
満足そうな笑みを浮かべ、木に向かって手を突き出す。
「今からお前達に働いてもらうのじゃ。これは自分たちでやらねば今後、ネズミどもは衰退し、滅びる運命じゃろう。嫌ならつべこべ言わず動くのじゃ!」
ふくがネズミ族を焚き付けると一斉に動き出し、ふくの切り倒した木を運び始めた。
ヴォルフはふくの采配を見てポカンとしていた。
それは今まで何を言っても動かなかったヒトがふくの説明を聞いて動くようになり、自身の手足のように使っている様を見て驚いていたのだった。
ふくはそんなヴォルフのそばに寄り、尻をペシンと叩く。
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そう言ってふくはヴォルフの背中に跨り、畑になる予定の広場を眺めるのだった。
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