キツネの女王

わんころ餅

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優秀なウサギちゃん

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「ちょ、ちょっと!離して!は~な~し~てっ!!」

「おい、獅子頭。このウサギちゃん、元素魔法の強い魔法使ってくるぜ!」

「本当ですか……?でも、ちょっと優しくしてあげれませんかね?」

 ジタバタと暴れるウサギ族の女の子は、ヴォルフの脛をガシガシと蹴り飛ばすが、ちっとも効いていないのか無視される。
 だんだん気にもされず腹が立ったのか、

 ――ダンッ!ダンッ!

 とスタンピングし怒りを露わにする。

「怒ってんの?」

「……離してくださいっ!」

「やだよ。逃げるじゃん」

「どうせ、持って帰ってお家でいっぱいエッチなことして最後は食べるんでしょっ!!」

「え……?」

「……え?」

 場の空気が凍り付き、三つ巴の戦いは一時休戦となり、休憩を取ることにした。
 コリーは忙しなくウサギ族の女の子に葉物野菜や根菜を準備し、提供していく。
 戦いができ、家庭的なスキルを持つ彼は非常にモテるであろう。
 機嫌が悪そうにヴォルフを睨みつけたまま、葉っぱを食べていく。

(なぁんでこんなに怒ってんの?)

「では、ウサギ族の彼女。貴女は名前を持っておりますか?」

 レオンがそう訊ねると、咥えている葉っぱをしっかりとモシャモシャ噛み砕き、飲み込む。
 そして立ち上がって自己紹介をする。

「……ウチはウサギ族……白兎で、名前はまだ無いわ。魔法は【火】と【収束】と【圧縮】を使えるわ」

「すごくね?」

「すごいですね」

「驚いた……!」

 男三人がウサギ族の女の子を褒めると、照れたような仕草をする。
 褒められると嬉しいのは種族関係ないようだ。

「ですが、名前がないのは不便ですね」

「そうか?ウサギちゃんでいいじゃん?」

「ダメです!名前は大切なんですよ?貴女が唯一覚えているふく様だって名前の力がなければあそこまで強くはならないでしょうから……」

「それだからウルに逃げられるんじゃないのかね?」

「あ、え、なんかごめんて……」
 
 レオンとコリーに責め立てられしどろもどろになってしまうヴォルフ。
 側近に責められる王を見て、クスッと女の子は笑う。

「ヴォルフ様、名付けを」

「あ、オレ?うーん……ライラ……?」

「いい名前ですね!由来は?」

 そう聞かれ少し言いにくそうにする。
 レオンは何かを察して頭を抱える。
 ヴォルフは難しい顔をしながら頭の中で理由を言うことにした。

(イライラしてるからって理由なんて言えないや)

(絶対にそんな事は仰ってはダメですよ!)

(片眼の犬!?お前心に話しかけられるのか!?)

(絶対ですよ!また聞かれたら嘘でもいいのでそれっぽい理由で話してくださいね!)

 二人のやりとりはそこで終わり、ヴォルフはライラを見つめる。

「な、なんですか……!」

「思いつきだ。オレは名前を覚えられないからウサギちゃんて呼ぶから」

「別に構いませんが……でも、名前をつけてくれてありがとうございます……!」

「……ライラさんは、部隊長クラスですかね?我々の魔法に引けを取らない威力がありますし」

 ヴォルフは難しい顔をしながら首を横に振る。

「そんな簡単には決まらないさ。武器を持てば強い奴だっているはずだし、まだ魔獣との戦いを経験していないだろう?今の戦い方は獣人同士の争いレベルのものだし、ウサギちゃんだけ高火力をぶつけると言うことができた。それだけだろう」

「辛口なのね」

「お前は肉食べないもんな。魔獣を倒す必要はない……が逃げるために使う魔法だろ?」

「そ、それは……」

「なら、純粋な戦闘経験とは言えないな。だが、これから経験を積めばウサギちゃんはもっと強くなれる。それは保証する」

 頭をポンポンと撫で、再び三つ巴の戦闘をすることにした。
 ヴォルフは戦い方の指摘をし、獣人同士のレベルでは魔獣に対抗できないことを伝え、武器を持ち、魔法の使い方を少しずつ教えていく。
 国民の適正な魔法はそれぞれ違うものだが、ほとんどが付与魔法と呼ばれるカテゴリに属したものが多かった。
 これはヴォルフにとって非常に助かるモノであった。
 付与魔法は身体の強化・減衰や速度の加減、武器に斬撃や打撃を付けるなどわかりやすいものが多いからである。
 ヴォルフやレオンのようにカテゴリ不明な魔法は教える事はできない。
 こればかりは本人だけの魔法である可能性が高いレアモノなので自身で開拓する必要がある。
 元素魔法の素養があるものはレオンが担当し、切断や圧縮などといった事象を操る魔法はコリーが担当する。
 夜になるまで訓練は続き、一日で魔法を自由に使うレベルのものがほとんどであった。
 そして、一つ悩みが出た。
 それは武具がない事だ。
 鉄を使った武具は誰も作る事が出来ない。
 理由は二つ。
 それは技術を持った者がいないこと、鉄の精錬の仕方がわからないことである
 困ったヴォルフは服の胸ポケットから石を二つ取り出す。

「どーしたらいいのかねぇ……」

「何か悩んでるの?」

 ライラがヴォルフに声をかけると、石を仕舞い、ライラの方へ身体を向ける。

「なあ、この国に武具を作れるヒトっているのか?」

「いないわ」

 ヴォルフの問いにスパッと切り上げる。
 相変わらずの塩対応に苦笑いを浮かべるしかなかった。
 
「だよなぁ……。武器があればもっと強くなれそうな奴いるのに……」

「鳥人に頼めばいいんじゃないの?あそこは魔道具文化あるから」

「そうか……そんなものがあるのか……。ありがとう、明日行ってみる」

「あ、明日!?今から寝ずに向かっても一週間はかかるわよ!?」

「え……?あそこは全力で走れば三十分で着くよ?」

「……やっぱり規格外の強さね……。」

 ライラは両手を上げてやれやれとため息をつきながらヴォルフから離れていく。
 その後ろ姿に向かって、ヴォルフはぼそっと呟く。

「サンキューな」

 その声はライラに届いており嬉しそうな顔をしていたのであった。
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