53 / 108
己の罪
しおりを挟む
ふくは無事にヴォルフの元に戻り、治療を受けていた。
身体中の骨に異常が出るほどの暴力を受け、【治癒】の魔法ですら治すのに時間がかかり、結局半年ほど身動きが取れずにいた。
その間は【命令】を受けていたとはいえ、沢山の国民を殺してしまった罪で投獄されていた。
綱彦は捕まる事なく逃げ回り、次第に国で目撃情報が減り、野狐の独裁政治は終焉した。
ヴォルフは毎日ふくが居る牢獄へ足を運んでいた。
今まで自由に話せなかったことで、毎日どころか休憩の合間にふくのそばに行き、話をする。
「――でな、今日なんか馬族にすげえ奴いたんだ!」
「……お前は、わしのこと嫌いではないのか?他の男を孕って、その子を産もうとしておるわしを……」
「???ふくはふくでしょ?オレはふくのそばに居て最期までふくのやっていくことを見ていきたいからね」
「やはり、お前には敵わんの……。じゃが、お前の願いはここで潰えるのじゃ……。わしは同族も国民も殺した大罪人じゃ。死んで詫びる他なかろうて……」
「そうはさせませんよ?」
地下牢に突如野太い声が響き渡る。
足音は二つ。
大きく、それでも静かに歩くその様は猫科の特徴であり、もう一つの足音は硬い脚と爪をカリカリと鳴らしていく鳥の特徴を持っていた。
「獅子頭と鳥の女王か」
「れおんが……?鳥の女王とは……?」
レオンとセイラが牢の前に立ち、跪く。
因みにヴォルフはふくと一緒に牢に入っており、セイラは驚き、レオンは呆れていた。
「ヴォルフ様……流石に牢に入るのはいかがなものかと……」
「あ、自ら入った感じなのですね……」
「何か用事でもあった?」
セイラは下げていた物を広げていき、首や手首足首に拘束具のような物を着けていく。
ふくは裸にされていることもあり、ヴォルフはゴクリと喉を鳴らす。
そんなヴォルフにふくは睨むと、目を逸らされる。
「この魔道具は【分析】というものが入っています。この魔法は貴女にかけられた魔法の痕跡を調べる力があり、貴女の無実を証明する物です」
「魔法を解いて結構日にちが経つが、痕跡は残る物なのか?」
「ええ、野狐族へこの魔道具の力を事前に試して結果を残してます。彼らはには【命令】の魔法が刻まれていました。ふく様に千年間魔法をかけ続けるならばより深い刻印を刻んでいるはずです。分かり次第、除去します」
「わしは……操られたとしても死ぬべきじゃと思うのじゃが……」
「それは逃げているのです。貴女は責任を感じているのであればその罪は生きて償いなさい」
レオンの指摘にふくは不服そうな顔をする。
話している間に【分析】が終わったようで、セイラは大汗をかいていた。
「非常に強い刻印が刻まれてありましたが、無事に取り除きました……!ありえないほど深く刻まれていたので、頭が少しスッキリしたように感じたと思います」
「ふく、お前はツカヒロの魔法で操られていた。この事実は国民に知らせて説明はする。ふくは少し休んで、子供を産むことに専念するといい」
「綱彦じゃ……。すまんの……彼奴との子供というのが気に食わないが、わしの子でもあって……の」
ふくは愛おしそうにお腹を摩っていく。
セイラは汗を拭うとふくの前に座る。
「そろそろ、臨月となるごろです。体調にはお気をつけてくださいね?」
「まだ、早くないかの?腹の膨らみからして、まだ半年ほどしか経っておらぬ気がするのじゃが」
「【分析】の時に一緒に診たのです。魔力の供給は絶たれ、既にお子様は魔力と魔法を構築している状態なのです。ここまでいくと、あとは産まれるだけです」
そう伝えられ、ふくの顔が引き締まる。
人間時代、子供を産んだことがあるのだが、非常に痛い目を見たことを思い出していた。
レオンはふくの不安そうな表情を見て、セイラに声をかける。
「セイラ殿、ふく様が産気づいたら頼めるだろうか?」
「えぇ、わたくしが行くべきでしょう。治癒魔法も少しは使えるので大丈夫だと思います」
どんどん出産準備が進んでいき、ふくはその早さに驚いていた。
非常に手際の良い準備で、今すぐに出産するのではないかと思う早さであった。
日も完全に落ち、周囲が闇に包まれたごろ、居城の地下から叫びが聞こえた。
ふくは陣痛が始まり、痛みのあまり叫ぶ。
「う……うぅっ……!あ……ぐぅぅっ!」
「ふく様!呼吸を整えてください!下手に力を入れると貴女も子供も傷ついてしまいます!ゆっくりです!ゆっくりと深く息をするのですよ……」
痛みに耐え、呼吸を整え、集中するが痛いものは痛い。
お産は人間の頃より早く進むようで、あっという間にピークが訪れる。
近くで声だけ聞いていたヴォルフは戦々恐々とし、廊下をウロウロ歩く。
少しするとふくの叫びはなくなり、静けさに包まれる。
セイラは走ってヴォルフの元に行くと息を切らしながら報告をする。
「生まれました……!子供は二尾の狐の女の子です!名前は既に決めており、『タマモ』と言われるみたいですよ!」
「本当か!ふくは無事なのか?」
「はい!母子共に健康で、ふく様はあと胎盤が出次第、治癒をかけ――」
「待つのじゃ……!玉藻を返すのじゃっ!」
突然ふくが声を荒げたため、二人は走ってふくの元へ行く。
そして、そこには出血もおさまらない中、這いずっているふくがいた。
何事かと周りを見るとふくの子供、玉藻は姿を消していた。
「何があった……!?」
「綱彦……じゃ……。あやつ……わしの……子を連れ……去って……」
そのまま気を失って倒れる。
セイラは急いでふくの治療を開始する。
ヴォルフはニオイを追って外へ駆け出していくのであった。
身体中の骨に異常が出るほどの暴力を受け、【治癒】の魔法ですら治すのに時間がかかり、結局半年ほど身動きが取れずにいた。
その間は【命令】を受けていたとはいえ、沢山の国民を殺してしまった罪で投獄されていた。
綱彦は捕まる事なく逃げ回り、次第に国で目撃情報が減り、野狐の独裁政治は終焉した。
ヴォルフは毎日ふくが居る牢獄へ足を運んでいた。
今まで自由に話せなかったことで、毎日どころか休憩の合間にふくのそばに行き、話をする。
「――でな、今日なんか馬族にすげえ奴いたんだ!」
「……お前は、わしのこと嫌いではないのか?他の男を孕って、その子を産もうとしておるわしを……」
「???ふくはふくでしょ?オレはふくのそばに居て最期までふくのやっていくことを見ていきたいからね」
「やはり、お前には敵わんの……。じゃが、お前の願いはここで潰えるのじゃ……。わしは同族も国民も殺した大罪人じゃ。死んで詫びる他なかろうて……」
「そうはさせませんよ?」
地下牢に突如野太い声が響き渡る。
足音は二つ。
大きく、それでも静かに歩くその様は猫科の特徴であり、もう一つの足音は硬い脚と爪をカリカリと鳴らしていく鳥の特徴を持っていた。
「獅子頭と鳥の女王か」
「れおんが……?鳥の女王とは……?」
レオンとセイラが牢の前に立ち、跪く。
因みにヴォルフはふくと一緒に牢に入っており、セイラは驚き、レオンは呆れていた。
「ヴォルフ様……流石に牢に入るのはいかがなものかと……」
「あ、自ら入った感じなのですね……」
「何か用事でもあった?」
セイラは下げていた物を広げていき、首や手首足首に拘束具のような物を着けていく。
ふくは裸にされていることもあり、ヴォルフはゴクリと喉を鳴らす。
そんなヴォルフにふくは睨むと、目を逸らされる。
「この魔道具は【分析】というものが入っています。この魔法は貴女にかけられた魔法の痕跡を調べる力があり、貴女の無実を証明する物です」
「魔法を解いて結構日にちが経つが、痕跡は残る物なのか?」
「ええ、野狐族へこの魔道具の力を事前に試して結果を残してます。彼らはには【命令】の魔法が刻まれていました。ふく様に千年間魔法をかけ続けるならばより深い刻印を刻んでいるはずです。分かり次第、除去します」
「わしは……操られたとしても死ぬべきじゃと思うのじゃが……」
「それは逃げているのです。貴女は責任を感じているのであればその罪は生きて償いなさい」
レオンの指摘にふくは不服そうな顔をする。
話している間に【分析】が終わったようで、セイラは大汗をかいていた。
「非常に強い刻印が刻まれてありましたが、無事に取り除きました……!ありえないほど深く刻まれていたので、頭が少しスッキリしたように感じたと思います」
「ふく、お前はツカヒロの魔法で操られていた。この事実は国民に知らせて説明はする。ふくは少し休んで、子供を産むことに専念するといい」
「綱彦じゃ……。すまんの……彼奴との子供というのが気に食わないが、わしの子でもあって……の」
ふくは愛おしそうにお腹を摩っていく。
セイラは汗を拭うとふくの前に座る。
「そろそろ、臨月となるごろです。体調にはお気をつけてくださいね?」
「まだ、早くないかの?腹の膨らみからして、まだ半年ほどしか経っておらぬ気がするのじゃが」
「【分析】の時に一緒に診たのです。魔力の供給は絶たれ、既にお子様は魔力と魔法を構築している状態なのです。ここまでいくと、あとは産まれるだけです」
そう伝えられ、ふくの顔が引き締まる。
人間時代、子供を産んだことがあるのだが、非常に痛い目を見たことを思い出していた。
レオンはふくの不安そうな表情を見て、セイラに声をかける。
「セイラ殿、ふく様が産気づいたら頼めるだろうか?」
「えぇ、わたくしが行くべきでしょう。治癒魔法も少しは使えるので大丈夫だと思います」
どんどん出産準備が進んでいき、ふくはその早さに驚いていた。
非常に手際の良い準備で、今すぐに出産するのではないかと思う早さであった。
日も完全に落ち、周囲が闇に包まれたごろ、居城の地下から叫びが聞こえた。
ふくは陣痛が始まり、痛みのあまり叫ぶ。
「う……うぅっ……!あ……ぐぅぅっ!」
「ふく様!呼吸を整えてください!下手に力を入れると貴女も子供も傷ついてしまいます!ゆっくりです!ゆっくりと深く息をするのですよ……」
痛みに耐え、呼吸を整え、集中するが痛いものは痛い。
お産は人間の頃より早く進むようで、あっという間にピークが訪れる。
近くで声だけ聞いていたヴォルフは戦々恐々とし、廊下をウロウロ歩く。
少しするとふくの叫びはなくなり、静けさに包まれる。
セイラは走ってヴォルフの元に行くと息を切らしながら報告をする。
「生まれました……!子供は二尾の狐の女の子です!名前は既に決めており、『タマモ』と言われるみたいですよ!」
「本当か!ふくは無事なのか?」
「はい!母子共に健康で、ふく様はあと胎盤が出次第、治癒をかけ――」
「待つのじゃ……!玉藻を返すのじゃっ!」
突然ふくが声を荒げたため、二人は走ってふくの元へ行く。
そして、そこには出血もおさまらない中、這いずっているふくがいた。
何事かと周りを見るとふくの子供、玉藻は姿を消していた。
「何があった……!?」
「綱彦……じゃ……。あやつ……わしの……子を連れ……去って……」
そのまま気を失って倒れる。
セイラは急いでふくの治療を開始する。
ヴォルフはニオイを追って外へ駆け出していくのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる