キツネの女王

わんころ餅

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我が子を探すのじゃ

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 ヴォルフの魔法はすさまじいもので、季節が冬のまま変わらずにいた。
 ふくはキツネであるため、もともと冬や寒さに強い。
 ライラも雪の中、白兎は保護色となる環境であるためこの気候は得意であった。
 ヴォルフは勿論、氷狼と呼ばれる神であり、この気候になった張本人であるため全然気にもしていなかった。
 トカゲやドラゴン等の寒さに弱い種族はヴォルフたちの国には攻め入ることができなかった。
 攻め入れば寒波だけで返り討ちにされるほどの寒さである。
 そのため二人は安心して国を離れられた。

「ねえ、どこまで歩くのさ!」

「ん?へばったなら帰るか?」

「帰らないわよ!……ちょっと気になっただけだもん……」

「わしの娘を探しておるのじゃ」

 ふくからそう言われるときょとんと首をかしげる。

「この先は国外だし、集落もあるかわからないわよ?」

「それでもじゃ。生きておればよいが、死んでおったら弔わねばならん……この旅はそういうものなのじゃ」

 生きているかもしれないという部分はライラも分かったのだが、弔う必要があるのかと疑問に思う。
 もちろん、死んだものを弔うのは当然のことなのだが、わざわざ国外に出向いてまで弔う必要があるのかと思っていた。
 
「死んだヒトを放置すると魔獣より面倒な冥骸獣になるんだ」

「メイガイジュウ?」

 聞きなれない単語を聴きライラは難しそうな顔をして首を傾げる。
 
「魂は肉体に結びついているんだが、死後時間が経つと大地と融合するんだ。そうなると精霊や魔獣の怨念が色々ぐちゃぐちゃになって、世界を壊しに来る存在となる。そうなっているとドラゴンと同じく基本的にオレか【浄化】が使えるふくしか対処ができない。」

「ネズミ族や鳥人族を襲ったやつ?」

 ヴォルフとふくは揃って首を横に振る。

「【それ】は本当によくわからない、得体の知れないもの。冥骸獣は昔からいる。国に【それ】が現れなければいいのだが……」

「どの道わしらしか対処できぬ。らいらは魔獣を狩る練習をするのじゃ。それだけできれば十分な強さを持てるじゃろう」

「【それ】と冥骸獣が出たらお前はオレ達から絶対に離れろ。触れただけで死ぬ攻撃ばかりだからな」

 それを聞きライラはゾッとする。
 ヴォルフもふくも心音から嘘はついていないことがわかり、頷く他なかった。
 そして、ライラの耳はもう一つの心音を察知する。
 聞き耳を立てて周りを見始めたライラに何事かと思うが、敵襲だと困るので魔法の準備はした。
 ライラは凍土の中走り、窪みの中に聞き耳を立てる。
 よりよく聞こえる弱弱しい心音に、ライラはスタンピングをして二人に知らせる。
 
「誰かここにいるよ!すごく弱っている!」

 ヴォルフとふくは走ってライラの示す窪みに向かう。
 窪みはそれほど深いものではないのだが、三人が入ってもまだまだ余裕のありそうな洞穴であった。
 薄暗い洞穴の中奥へ進んでいくと、ライラは走って倒れている人影のところに行く。
 その姿を見たライラはその場にへたり込んでアワアワと口をパクパクとする。

「玉藻じゃったのか!?」

「あ、あ、あの……竜……人……」

 玉藻ではなく竜人だと聞き、ふくは落胆する。
 そして腹いせに倒れている竜人に向かって蹴りを入れるが、竜人の体は硬いので足を抑えて悶絶する。
 ヴォルフは竜人を見て少し考えると、首をつかんで持ち上げる。
 そして、雑に投げ捨てた。
 ゴロゴロと転がり、衝撃で目を覚ますものの、この寒さのためゆっくりと身を起こす。
 羽毛のような体毛に包まれた竜人で、翼こそ持ってはいないのだが、強靭な太いしっぽ、側頭部から後方に伸びる黒い角、そして手足は鱗に包まれたものだった。

「ウサギちゃん。焚き火くらいの火を上げてくれるか?」

「そ、そんなことしたらコイツが食べに来るかもしれないじゃない!」

「そん時はオレが殺せばいいんだから気にするなよ」

 ヴォルフの魔法の発動が異常に速いことは知っている為、口をとがらせて渋々地面に文様を描いていく。
 書き終わり、詠唱を始める。

「『わが魔力を持って、この空間の温度を上げよ』」

 火の魔法ではなく、この洞穴内だけ温度を上げる魔法のようだった。
 ふくは自分の発明した素養のない魔法を使う方法がライラに伝わっていたことを知り、驚いていた。
【命令】で思考を歪められていたので外部の情報を知らずにいたので当然の反応ともいえる。
 春の陽気より少し暑い程度の気温であり、竜人はようやく動くことができたようであった。

「……そろそろ、何でここで寝ていたのか教えてくれないか?」

 ヴォルフがそう尋ねると、竜人は驚いた顔をする。
 
「狼族は滅んだのじゃ……なかったのか……!?」

「オレは氷狼ヴォルフだ。質問に答えろ」

「!?……は、はい。私は竜人のガルド。『毛あり』の部隊に所属。ここにいたのはドラゴンに翼を食いちぎられ、命からがら逃げだしているところ、寒波に襲われ、動けなくなっていました」

 ガルドがそう告げるとふくとライラはヴォルフを睨む。
 動けなくなったのは完全にヴォルフのせいであるからだ。

「な、何しにここに来たんだ?治療なら竜人族の村に行ったほうが流石に良くないか?」

「ドラゴンの復活により、竜人族の多くは生贄に出されました。そして復活をし、召喚主ですら食われてしまい、王も民もほとんど絶滅しました」

「鳥の国といい、お前らの国といい何で滅ぶのかねぇ……」

 ヴォルフは正直な感想を呟くと、ふくにおしりを抓られるのだった。
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