キツネの女王

わんころ餅

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尾が増えたのじゃ

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 翌朝、ライラが目を覚ますと異様な光景が目に入る。
 雑に脱ぎ捨てられた服。
 肌を重ね合わせて眠る二人。
 そして昨日までふくの尾の数が二本だったものが七本に増えていた。
 
「え……え……!?えぇぇぇぇぇぇぇぇえっ!?」

「な、なんだ、なんだなんだ!?」

「ガルドは見ちゃダメっ!」

 ゴスッという音に頭部に踵落としをお見舞いされ、再び眠りについた。
 そんな騒ぎをしていると、さすがにふくとヴォルフは目を覚まし、大きな欠伸をする。

「何の騒ぎじゃ……?」

「ふく様!どーして裸なのですか!?早く服着てください!」

「う、うむむむ……。わ、分かったのじゃ……」

「ふぁあぁぁぁぉ……。どうしたんだ……?」

「ヴォルフ様も服を着なさいっ!!」
 
 起き上がったヴォルフも例に漏れずライラから叱責を受けるのであった。

 洞穴の外を見ると昨日と同じく、一面凍土であり、吹雪の影響で所々積雪が見られた。
 【太陽】の光が雪で乱反射し、荒野だったころに比べ世界は明るく見えるようになった。
 寒さに弱いガルドは肩に小柄なライラを乗せ、ライラはガルドが凍えてしまわないように【熱】の魔法を使い、ガルドを温め続けることで行動が可能になった。

「ふく様、尾が増えているの気づいて……って顔に赤い模様も浮かんでるっ!?」

「ふむ?本当じゃ。尾が七本になっとるの」

「リアクション薄っ!もっと『何だこりゃー!?』とか『な、な、な、な、な、何でぇ!?』とかないの?」

「驚いてもしょうがないじゃろうて。ぼるふ、わしの顔にもお前のような模様があるのか?」

 ヴォルフはふくの顔を見て頷く。
 そしてキスをする。
 突然のことで呆気に取られていたが、直ぐに取り戻し、ヴォルフのマズルを平手でパシンと叩く。

「と、突然そのようなことをするでない!この助平犬っ!!」

「だ、だって……ふくの事、好きだもん……」

「……っ!も、もうよいっ!」

 ふくはプンスカしながら先々歩いていく。
 怒っているように見えるのだが、尻尾は正直なようで、嬉しそうにパタパタと七本がそれぞれ動いていた。
 神であるはずのヴォルフを簡単に調伏している様子を見て、ガルドは開いた口が閉まらなかったが、気になる事を訊くことにした。
 
「そういえば、二人はどちらを目指しているのですか?」

「ふくの子どもを探しにいくんだ。アテは無い」

「お二人が進んでいる方角は、龍族の神【バハムート】が居られる所なのですが……」

「また、ヘンテコな名前がでおったの……」

「クソドラゴンか……ついでに挨拶に行ってやるか」

「ついでって……仮にも神様なんでしょ?怒られるんじゃない?」

「オレも神だからな」

「「「確かに」」」

 一同は納得したようだが、神である事を忘れられていたヴォルフは少しだけ、しょんぼりしていたのであった。

 ガルドは魔獣を倒し、肉を確保しつつ、ライラは貴重な植物を摘んで確保する。
 魔道具と呼ばれるガルドの槍は持ち前の水の元素魔法を纏わせる為の刻印が刻まれているようで、水圧で物を切り刻み、水流で血や脂を流し切れ味を落とさないようにしているものであった。
 その機能性にライラは目を輝かせてみていた。
 
「その槍、すごいね」

「あぁ、これを作ってくれたヤツは武具を作る事に向いていてな、竜人族の戦闘の幅を広げてくれた貢献人なんだ。生贄に出されてもういないが……」

「がるどは作れぬのか?」

「一応、知識としてはありますが、この手先で器用でないので……」

「なら、せいらと一緒に作れば良いの」

 セイラと聴き、首を傾げているとライラは耳元でその人物を教える。

「鳥人族の女王だよ。国に来て、魔道具の開発を担当しているの」

「なんと!鳥人の女王様まで来られているとは……!【異形の怪物】に国を滅ぼされたと聴いておりましたが、生きておられたとは……!」

「獣人の国はもう、種族は関係ないからな。悪いことしなけりゃ誰でも歓迎だ」

「そういう事でしたら、この度が終わり次第ヴォルフ様の国に貢献させていただきたいですな」

「おう、鳥の女王と仲良くやってくれ」

 ガルドが国に来る事になり、肉も手に入ったので少し休憩を取る事にした。
 ヴォルフは狼の姿となり、硬く凍りついた地面を掘り起こし、竪穴を作る。
 この環境では木材が手に入らない為、ふくは【樹木】の魔法で一本だけ木を生やし、風の刃で角材にしていく。
 太い物、細い物、小さい物、糸状の物と加工していくと、ガルドは興味深そうにみる。

「なんじゃ?じっと見られると気が散るのじゃが」

「い、いえ……【風刃】をそこまでコントロールされる方は見たことがなかったので……」

「そうじゃの、わしもここまで細かいものが作れるとは思っておらんかったの。尾が増えたおかげじゃろうか?」

「魔力量が増えてるからきっと制御に力を回せるようになったと見たら良いかもね。ふくは元々強い魔力持ってるけど、野狐でここまでの魔力を持ったものはいなかったような……」

「番いになったら魔力増えるんじゃないの?」

 ヴォルフは腕を組んで考えるが、どこにも思い当たる節はなく、それどころかふくだけ異常な成長をしていた為、ますます頭が混乱する。
 ふくは雑にヴォルフの前に木材を置くと、手をぱんぱんと叩き、埃を落とす仕草をする。

「ぼるふは薪の準備をするのじゃ。火はらいらに任せる。燃やし尽くさんようにの?」

「ふく様はどこにいくのですか?」

 ライラに行き先を訊かれ、ふくはイタズラっぽい笑みを浮かべ指をおでこにトントンと突く。
 
「ちょっと書庫に行ってくるのじゃ」

 そう言うとふくの目の前がグルンと回り、暗転したのであった。
 ヴォルフの「いってらっしゃい」と共に。
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