キツネの女王

わんころ餅

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なんでもな魔法じゃ

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 二人は魔力を昂らせ、ゆっくりと落ちてくる光の玉を見つめる。
 ライラを回収したガルドは一目散にこの場から去ろうとする。
 しかし、ヴォルフに首を掴まれ、そのまま地面に押さえつけられる。

「ッガァッ!?」

「悪いな。離れず近くにいた方がいいから、止めてしまったわ」

「し、死にたいのですか……!?あれは龍族の奥義【煉獄】です……!並の防御魔法では耐えられませんよ!!」

「わしとぼるふの魔法で壁を作れば良いのじゃろう?確かにあの魔力の塊は非常に強い。じゃが、今更逃げたところで範囲から逃げられはせんじゃろう?」

 ガルドはふくの言っていることが理解できなかった。
 ヴォルフに乗ってしまえば攻撃範囲から逃げるのは容易だろうと分かっていたためである。
 それをせずに真っ向から受けて立つ姿勢に賛成はできなかった。
 しかし、もう遅い。
 逃げる時間は無くなってしまった。
 光の玉が地面に着地した瞬間、半径五十キロメートルあたりの凍土は全て吹き飛び、荒野であったはずの岩山もなくなり、海の水を一瞬で干上がらせる。

§
 
 炸裂時の閃光と爆音が響き渡り、ヴォルフの国にもその音が振動として伝わった。

「な、なんですか……!?この地響きは……」

「ヴォルフ様の行かれた方角と一致しますね……。何かやらかしているのかもしれませんな」

「ドラゴンと対峙しているなら、真っ向勝負しているのかもしれんな」

「貴方たち……本当に落ち着いていられるわね……」

「あの二人だぞ?そうそうドラゴンに負ける未来は見えないさ」

 コリーがそういうと、レオンはうんうんと頷き、セイラは肩をがっくしと落とす。
 まだまだ慣れてはいないのだが、こればかりは慣れるしかないと思う事にしたセイラであった。

 §

 荒野にあった岩場は全て吹き飛び、じりじりと大地は焼かれ、遮るもののない真っ新な土地になる。
 海水は一度干上がったものの、他の場所にある海水が流れ込み再び海を形成する。
 荒れ狂う波の音が周囲を支配している中、氷の球がポツンと真っ新な土地に置いてあった。
 氷にヒビが入り砕けると、水塊が現れ、それもバシャンと弾け飛ぶ。
 そして三枚の魔力障壁を球状にしたものが中から現れ、パリンという薄いものが割れたような音が響く。

――なんと……!我の【煉獄】を耐え切ってみせただと……!矮小な存在でた――

「誰が矮小だって?」

 ヴォルフは狼の姿になり、ドラゴンに威嚇する。
 【煉獄】により熱砂の大地と化したはずだったが、その上から再び凍土が形成される。
 空気中の水分も凍らせていき、薄暗い【太陽】の光でもキラキラと輝く。

「――ガウッ!!」

 ヴォルフが短く吠えると何もない氷の大地から氷の柱が天空に向けて伸びると、そのままドラゴンを串刺しにする。
 その速さは魔力に気付いた時には既に遅く、遠く上空に離れていたドラゴンですら避けることは叶わなかった。

「ドラゴンごときが、思い上がるなよ?」

 串刺しにした所からドラゴンは凍らされていき、串に刺されたドラゴンの氷像が出来上がる。
 ふくはそれを見てヴォルフに訊く。

「あの龍は氷を解かすと動くのかの?」

「そうだね、コア……魔石のような石が胸にある限り時間は掛かるだろうけどいずれ復活するだろうな」

「ならば、今殺すしかないの」

――パチッ!!

 指を鳴らした瞬間、衝撃波が氷像ドラゴンを襲い、氷柱ごと粉々に砕いた。
 目に見えないその力は一瞬の魔力反応だけ見せ、魔力を帯びていない力の波が音速の如き速さで襲いかかる魔法であった。
 ヴォルフはそのような魔法を今まで一度も見たことがなく、ふくの着ている服を無理矢理脱がせた。
 赤い紋様は顔にだけでなく、身体にまで及んでおり、見たことのない紋様が胸、腹部、背中に走っていた。

「この紋様……魔法だ……!」

「も、もう着ても良いのか?」

「ちょっと待って……。まだ、分からないことが――」

「ふく様の裸を見せちゃダメー!!」

「んがっ!?」

 いつの間にか目を覚ましていたライラによってヴォルフは制裁されるのであった。
 密かにガルドは手を合わせて気を失っていたのだった。



 ガルドが目を覚ますと野営が進んでおり、ちょうど肉を食べる時であった。

「ガルド君!起きた?はいコレ、ガルド君の分だよ!」

「あ、アリガト……」

 ふくとヴォルフも食事を進めており、何やら話をしていた。

「ふく様の紋様が全身に付いててね、この紋様は実は魔法を使うためのものなのじゃないかなってハナシ」

「……へぇ。ヴォルフ様には顔だけしか付いていなかった筈だよな?」

「うん。狼の姿になっても全身に紋様は走らないけれど……もしかしたら、ふく様の王族としての魔法を発現したのじゃないかな?ってコト」

 ガルドたち竜人族には王族変異をしたものが居らず、いまいちピンと来なかったがそういうものだと無理矢理理解したことにする。

「分かってないでしょ?」

「バレた?竜人はあんな模様を出したやついなかったからさ、オウゾクヘンイ?ってのがよく分からないんだ。強い奴が王、それだけだからさ」

「大丈夫、ウチたち一般の魔法しか使わないヒトには関係ないから。ふく様は『なんでも知る魔法』ヴォルフ様は『なんでも止める魔法』っていう、メチャクチャな魔法だし、国にいる紋様出してるヒトは『精霊を呼び出す魔法』、『全てを見切る魔法』、『全てを見通す魔法』っていう強い魔法持ってるヒトばかりだし」

 ライラの話を聴き、ヴォルフの国は非常に厄介な魔法使いが多いのだと理解する。
 そして、滅びた自分の国に当てはめると、そのような魔法を使っていた一族はおらず、戦いで強い者が王というものは長く続くわけがないと理解するのであった。
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