キツネの女王

わんころ餅

文字の大きさ
74 / 108

弾かれ者じゃ

しおりを挟む
 国に戻った一行はまっすぐ城(仮)に向かっていた。
 ヴォルフの姿を見た国民は歓喜して手を振るが、その上に乗っているふくを見て歓喜は怒号へ変わる。

「なんで神のヴォルフ様に乗っているんだ!早く降りろ!!」

「忌々しい野狐族の綱彦の妻め!お前は国から出ていけ!」

「ヴォルフ様!女王を早く追放してーっ!!」

 石を投げようとするが、投げられる前にヴォルフが石の動きを停止させていく。
 ふくに対して当たりが強いでは済まない怒号にポチおは疑問を抱く。
 ふくはうつむいて、奥歯を嚙み締め耐えていた。

 そんな中歩みを進めていくと大きな石造りの建物が見えた。
 大きさからして到底城と呼べるものではなく、ちょっと大きな石の家といった感じだった。
 門には二人の犬族が門番として立っており、脇には木製の小屋が建っており、そこには控えの門番が休憩しているようだった。

「帰ったぞ。開けるんだ」

「ヴォルフ様!おかえりなさいませ!……ふく様もお戻りになってなによりです……」

 ヴォルフには歓迎ムードだが、やはりふくに対してはどこかよそよそしいものだった。
 門が開くと鳥人族が走ってくる。

「ヴォルフ様!ふく様も!おかえりなさいませ!ライラとガルドもよく戻りました!……そのお二方は?」

 ふくはヴォルフから降りてセイラのところへ歩いていく。
 すれ違い際に小声でこっそりと伝える。
 
「あの二人は訳ありじゃ。この場で話すのは止したい」

「……ふく様」

 ふくはそのまま自室があると思われる方向へと歩いて行った。
 セイラにとってその後ろ姿は非常に寂しさを感じるものであり、心配そうな顔をする。
 
「ふくはオレに任せろ。とりあえず、便宜上このわんことにゃんこを牢に入れておいてくれ」

「は、はい!衛兵よ!この二人を牢に入れるのです!」

「「はっ!!」」

 衛兵と呼ばれた二人は簡素な鎧を着ており、クマ族の獣人でポチおとにゃんの腕力では振りほどくのは難しかった。
 反発する理由もないため、おとなしく連れていかれることにした。
 残されたセイラとライラとガルドはほっと一息つく。

「大変だったのではないですか?大穴は……」

「うん!とても大変だった!横穴が小さいからふく様とウチの魔法は撃つことができなくて苦戦したんだよ」

「ヴォルフ様も謎の現象に襲われて戦闘できなくなたから余計に大変だった……」

「……無策で突入するのは、いくらあのヒトたちでも無謀だったということでしょうか……。あ、二人とも、個室を作ったから自由に使って?」

「わーい!ガルド君!お部屋に行こうよ!」

「その前にご飯だ。ご飯食べないと何もできないぞ?」

 二人のやり取りを見てセイラはクスリと笑うのであった。

 

 昼食を摂り終え、広間の地べたに円を描いて座る。
 真ん中にはポチおとにゃんを座らせ、話を進めていく。

「このお二方は大穴から来たニンゲン……ということですか?」

 セイラは信じることができなかった。
 依然覗いた時におびただしい数の魔物しか確認できなかったため、獣人がいることは想定していなかったからだ。
 そして、ふく以外に外から来たニンゲンは綱彦くらいしかいなかった。
 おとなしすぎる二人に対して逆に恐怖する。
 ふくはポチおから聞いた情報をすべて話をする。
 セイラは頭を抱える。

「魔物の中に入っていた石ですが、あれは魔法を封じ込めるものです。わたくしたちの国でも使ってはいました。使いにくくて廃れてしまったのですが……」

「それじゃあ、オイラ達の世界はまだまだ進歩する可能性があるってことか……その石って呪文を唱えたら発動するんでしょ?そんなに使いにくいの?」

 気軽に話しかけてくるポチおに嫌な顔をするが、それでは話が進まないと感じ、話を続けることにした。
 
「……わたくしたちの国では魔力を込めるだけで魔法が使えるような魔道具を作ろうと計画していました。それは詠唱をすることで魔法使いの戦闘の幅が狭くなってしまうことに危機感を覚えたのが理由になります。あとは、詠唱の文言が難しくて使いにくいという問題が上がっていました。」

「オイラからしたら魔法が使えるなら何でもうれしいけどな」

「そう単純ではないのです。今それは置いておいて、あの黒い靄の謎を調べた結果、あれは魔法の力そのものであり、負の魔力がどの魔法とも結びつかず溜まりこんだものだったのです」

「じゃから、元素魔法を吸収する特性があったのじゃな……」

 セイラは頷き、ふくは「はあぁぁ」と大きく長いため息をつく。
 それはドラゴンの中から現れる石と魔物から出る石、特別な魔法を持った獣人が残す石、そしてポチおの言った動力源となる結晶はすべて同じもので、ふくの中で話が繋がった。

「その石には魔法の素が眠っておるのじゃろう?わしのような紋様が」

 セイラは再び頷く。
 そして疑問を一つぶつける。

「なぜ、元素魔法なのじゃ?他の魔法では駄目なのかの?」

「ふく様やヴォルフ様、そしてわたくしやコリー、レオンの魔法はその石に魔法を封じ込められないのです。とても複雑で、命と繋がっており、無理やり封じても勝手に壊れるのです。それと、事象魔法や付与魔法は封じ込めらても魔力と結びつきが成立しないことが多いといわれてます。元素の魔法なら魔力に応じて威力を底上げできるので、負の魔力と結びついて被害を出さずに魔道具になり、オーバーフローして壊れるのかと思います。」

「おーばーふろう?」

「容れ物が詰まりすぎてあふれる現象です」

 ふくは腕を組んで難しい顔をするが、とにかく納得するしかないと思うことにした。
 ライラとガルドは自分の役目を再確認し、心の帯を締め直す。
 一方、ヴォルフは退屈だと感じたのか、寝息を立てており、ふくから鼻に爪を立てられるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...