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春が訪れるのじゃ
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「にゃん。お前は知らぬと思うのじゃが、目に魔力を込めてモノを見るのは野狐族の特性の一つじゃ。如何にも猫の見た目をしておるお前が使えるというのはどういうことなのじゃろうの……?」
「それは……」
にゃんは種族の壁を乗り越えているという事を知り、返す言葉に迷った。
間違えた答えを言えば『死』が待っているのかと……。
「それは、オイラが答えてあげる」
にゃんの後ろから突然声が聞こえて一斉にその方向へ体を向けると、ポチおが城から歩いて来る。
「にゃん……セブは七番目の実験体で、超感覚の実験を受けているんだよ。ちなみにオイラは八番目の実験体ね」
「超感覚……それはどのようなものじゃ?」
「視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の感覚が異常に高い個体でね。それぞれの種族の感覚を全て超える感覚の持ち主なんだ。でも、地上の世界では魔素や魔力が安定していないせいで、暴走しがちだったから『棄てられた』んだ」
「この世界に来て安定してこの形になった……ってわけだな?」
ヴォルフがそう訊くとポチおは頷く。
セイラはそれを聴き、疑問をぶつける。
「……では、ポチおさんは何に秀でているのですか?」
「オイラ?オイラは……確か特殊な技能だったかな……?戦闘なんかに役に立つような能力は付かなかったのは聞いたことある。まあ、役に立たないから『棄てられた』んだけどね」
「うむ……。ポチおの魔法を解析する。よいかの?」
「うん!でも、【結合】の魔法だと思うんだけど?」
ポチおの答えを聴く前に【解析】を始める。
ポチおの体内にある魔法を使うことができるようになる器官に触れ、帰ってきた反応を読み取る。
そして、ふくの手はバチッと弾かれる。
にゃんと同じ隠された部分に触れたようであった。
「……確かにお前の魔法は【結合】である事は間違いないのじゃ。しかし、それとは別の魔法があるようじゃ。それはにゃんと同じことが言える……。にゃんと違うのはそんな魔法が二つあるということじゃ」
「へぇ、こんなちっこいやつに魔法が三つも備わってるのか……」
「それを言ったらウチだって三つの魔法が使えるもん!」
「あー……はいはい」
「あーっ!!そうやってウチをバカにするーっ!!」
ヴォルフが適当に相槌を打ったことにライラは怒り、ポカポカとヴォルフを殴るが、ヴォルフには何一つ効くことがなかった。
「ぼるふの言いたい事は『特異な魔法』であるかそうではないかの違いじゃろう?ライラもそう怒るでない」
「そっか……また、わかるようになったら良いな!」
「うむ。それまで精進するのじゃな」
「あ、あの……わたしはお咎めなしですか……?」
「気にならぬかと言われると、気にはなる。じゃが、そう言った過去があるのじゃったら、無理に聞くわけにもいかんじゃろう?」
ふくからそう言われ、ホッと胸を撫で下ろした。
するとポチおは走って城の中へ戻っていく。
しばらくすると、ガルドと二人で大きな金属の塊を持って来る。
それをヴォルフとふくの前に置く。
「これはなんじゃ?」
ふくが隅々まで眺めているとポチおは胸を張って答える。
「ヴォルフさんの心臓強化装置だ!」
「……ほう?」
「ダサい名前だな」
「えぇ……。そ、それよりも、この魔道具は【増幅】と【変圧】、【結合】、【活性】の魔法が組み込まれているんだ。魔素を増幅させて、それを圧力をあげて届けて、【太陽】の近くに来たら圧力を下げる。そして魔素をヴォルフさんの心臓と結合させて、この星の心臓と一緒に活性化させるって魔道具。上手くいくか分からないけど、理論上では出来るはずだよ?」
「ヴォルフ様。魔力を流して見てもらえますか?」
ヴォルフはガルドに促され魔道具に手をかざす。
すると、魔道具から光が溢れ出し、ミシミシと音を立てる。
その音はだんだんと大きくなっていき、壊れるかと思いきや、その時は来なかった。
ヴォルフが【絶対】の魔法で壊れないようにしていたからだ。
しかし、送るための魔力の量が減ってしまい、光が失われ始めた。
誰もが失敗したかと思っていた矢先、ふくがヴォルフの手の上に手を重ね、魔力を込める。
「ふ、ふく!?」
「大丈夫じゃ。わしの中にお前の魔力は沢山あるのじゃ。これなら魔道具は動くじゃろう……!」
ヴォルフは嬉しくなり、尻尾をぶんぶんと振り、ふくにキスをする。
すると、二人の魔力が混ざり合い、強い一つの魔力が生まれる。
その魔力が【太陽】に向かって突き進んでいった。
魔力は魔道具の魔法を使い、【太陽】とヴォルフの心臓へと溶け込んでいく。
ドクン……ドクン……!ドクンッ!
三度の脈動が終わった瞬間、【太陽】は突如光を増し、暑さを感じるようになった。
凍土の氷はみるみる解けていき、荒れ果てた大地が現れる。
地底世界の冬が終わった瞬間であった。
気温は高くなったが、それでも春先の気温であり非常に心地よいものであった。
暖かくなり、にゃんは大きな欠伸をして背伸びする。
「とっても気持ちいい天気……!」
「だねぇ」
「これならライラさんの魔法に頼らなくても大丈夫だ」
「やっと暖かくなって良かったね!」
それぞれ、感想を述べていくと、ふくはヴォルフを見つめると、嬉しそうな表情をし、抱きしめる。
なかなか見ることができないふくのデレた瞬間であり、ヴォルフも嬉しそうに抱きしめ返す。
「お前から鎖が見えなくなったのじゃ……。本当に良かったのじゃ……!」
「……心配かけてごめんな。もう、大丈夫だ」
草花は咲くことがないが、長い長い冬が終わり、町も賑やかになっていくのである。
そして、ふくとヴォルフは愛し合うようにお互いのニオイを嗅ぎ、キスをするのであった。
「それは……」
にゃんは種族の壁を乗り越えているという事を知り、返す言葉に迷った。
間違えた答えを言えば『死』が待っているのかと……。
「それは、オイラが答えてあげる」
にゃんの後ろから突然声が聞こえて一斉にその方向へ体を向けると、ポチおが城から歩いて来る。
「にゃん……セブは七番目の実験体で、超感覚の実験を受けているんだよ。ちなみにオイラは八番目の実験体ね」
「超感覚……それはどのようなものじゃ?」
「視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の感覚が異常に高い個体でね。それぞれの種族の感覚を全て超える感覚の持ち主なんだ。でも、地上の世界では魔素や魔力が安定していないせいで、暴走しがちだったから『棄てられた』んだ」
「この世界に来て安定してこの形になった……ってわけだな?」
ヴォルフがそう訊くとポチおは頷く。
セイラはそれを聴き、疑問をぶつける。
「……では、ポチおさんは何に秀でているのですか?」
「オイラ?オイラは……確か特殊な技能だったかな……?戦闘なんかに役に立つような能力は付かなかったのは聞いたことある。まあ、役に立たないから『棄てられた』んだけどね」
「うむ……。ポチおの魔法を解析する。よいかの?」
「うん!でも、【結合】の魔法だと思うんだけど?」
ポチおの答えを聴く前に【解析】を始める。
ポチおの体内にある魔法を使うことができるようになる器官に触れ、帰ってきた反応を読み取る。
そして、ふくの手はバチッと弾かれる。
にゃんと同じ隠された部分に触れたようであった。
「……確かにお前の魔法は【結合】である事は間違いないのじゃ。しかし、それとは別の魔法があるようじゃ。それはにゃんと同じことが言える……。にゃんと違うのはそんな魔法が二つあるということじゃ」
「へぇ、こんなちっこいやつに魔法が三つも備わってるのか……」
「それを言ったらウチだって三つの魔法が使えるもん!」
「あー……はいはい」
「あーっ!!そうやってウチをバカにするーっ!!」
ヴォルフが適当に相槌を打ったことにライラは怒り、ポカポカとヴォルフを殴るが、ヴォルフには何一つ効くことがなかった。
「ぼるふの言いたい事は『特異な魔法』であるかそうではないかの違いじゃろう?ライラもそう怒るでない」
「そっか……また、わかるようになったら良いな!」
「うむ。それまで精進するのじゃな」
「あ、あの……わたしはお咎めなしですか……?」
「気にならぬかと言われると、気にはなる。じゃが、そう言った過去があるのじゃったら、無理に聞くわけにもいかんじゃろう?」
ふくからそう言われ、ホッと胸を撫で下ろした。
するとポチおは走って城の中へ戻っていく。
しばらくすると、ガルドと二人で大きな金属の塊を持って来る。
それをヴォルフとふくの前に置く。
「これはなんじゃ?」
ふくが隅々まで眺めているとポチおは胸を張って答える。
「ヴォルフさんの心臓強化装置だ!」
「……ほう?」
「ダサい名前だな」
「えぇ……。そ、それよりも、この魔道具は【増幅】と【変圧】、【結合】、【活性】の魔法が組み込まれているんだ。魔素を増幅させて、それを圧力をあげて届けて、【太陽】の近くに来たら圧力を下げる。そして魔素をヴォルフさんの心臓と結合させて、この星の心臓と一緒に活性化させるって魔道具。上手くいくか分からないけど、理論上では出来るはずだよ?」
「ヴォルフ様。魔力を流して見てもらえますか?」
ヴォルフはガルドに促され魔道具に手をかざす。
すると、魔道具から光が溢れ出し、ミシミシと音を立てる。
その音はだんだんと大きくなっていき、壊れるかと思いきや、その時は来なかった。
ヴォルフが【絶対】の魔法で壊れないようにしていたからだ。
しかし、送るための魔力の量が減ってしまい、光が失われ始めた。
誰もが失敗したかと思っていた矢先、ふくがヴォルフの手の上に手を重ね、魔力を込める。
「ふ、ふく!?」
「大丈夫じゃ。わしの中にお前の魔力は沢山あるのじゃ。これなら魔道具は動くじゃろう……!」
ヴォルフは嬉しくなり、尻尾をぶんぶんと振り、ふくにキスをする。
すると、二人の魔力が混ざり合い、強い一つの魔力が生まれる。
その魔力が【太陽】に向かって突き進んでいった。
魔力は魔道具の魔法を使い、【太陽】とヴォルフの心臓へと溶け込んでいく。
ドクン……ドクン……!ドクンッ!
三度の脈動が終わった瞬間、【太陽】は突如光を増し、暑さを感じるようになった。
凍土の氷はみるみる解けていき、荒れ果てた大地が現れる。
地底世界の冬が終わった瞬間であった。
気温は高くなったが、それでも春先の気温であり非常に心地よいものであった。
暖かくなり、にゃんは大きな欠伸をして背伸びする。
「とっても気持ちいい天気……!」
「だねぇ」
「これならライラさんの魔法に頼らなくても大丈夫だ」
「やっと暖かくなって良かったね!」
それぞれ、感想を述べていくと、ふくはヴォルフを見つめると、嬉しそうな表情をし、抱きしめる。
なかなか見ることができないふくのデレた瞬間であり、ヴォルフも嬉しそうに抱きしめ返す。
「お前から鎖が見えなくなったのじゃ……。本当に良かったのじゃ……!」
「……心配かけてごめんな。もう、大丈夫だ」
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