キツネの女王

わんころ餅

文字の大きさ
105 / 108

【万物殷富】なのじゃ

しおりを挟む
 ふくのデタラメな魔法には誰も触れず、その景色を見る。
 先ほどの浮き島よりも数十倍高い位置にあるこの場所は太陽が少しだけ近くに感じた。

「【太陽】が熱く感じるの」

「近くなったから……じゃないかな?」

「ガルド君ならこの高さ飛び降りれる?」

「無理無理……!死んでしまう!」

「こんだけ高けりゃ誰も来れないでしょ?」

「そうですね、鳥人族も龍族もここまでの高度を飛ぶことがないので……」

 ふくは眠たそうにあくびをするとヴォルフの毛に埋まって眠り始めた。

「【瞬転】は魔力をかなり消費するみたいだね……。まあ、高等魔法だし、そうなるよね」

「ええ!?じゃ、じゃあどうやっておりるの!?」

「ふくが目を覚ませば降りられるんじゃね?」

「……こんな高いところで起きるの待たなきゃいけないの……」

 ライラはレプレを抱き上げ、誤って落ちないようにする。
 ポチおは【太陽】の魔道具の様子を見て安心していた。

「その魔道具は壊れてなかったのか?」

「うん、寧ろ【太陽】に近付いたことでバリアの機能が付いてきてるみたいだ……。この【太陽】は生きてるの?」

「そりゃあオレの心臓だし」

「そっか」

「ふぁああぁ……。わしは寝とったのか?」

 ふくが眠りから覚め、背伸びをするとヴォルフから頬にキスされる。

「なんじゃ……そんなに交わりたいのかの?」

「オレはいつでも大丈夫だよ!」

「そーんーなーこーとーよーりーっ!!早く下ろしてちょうだい!」

 ふくは周りを見ると一番高い浮き島にいることに気がついた。
 ムクリと起き上がり、髪の毛を手櫛で整えると真剣な顔をしてライラたちを見る。

「今からわしとぼるふ、そして皆でこの国を豊満な土地にする魔法を放つ。協力してくれるかの?」

「そんな事できるの?」

 ライラはそんな魔法の事を知らず、ふくに訊ねると、勿論といった表情で頷く。

「【万物殷富】といった魔法じゃ。全ての元素魔法を使ったもので、わしとぼるふの魔力でないと使えぬ。じゃが、この地に草花や木々、そして新たな命を生み出すことができると言われとる」

「毎回思うんだけど、ふくさんってどんな魔法使うの?」

「わしの魔法は【森羅万象】と言っての、簡単に言うと何でも知ることができて、それを再現することができる魔法じゃ。あとは衝撃波の魔法じゃな」

「なんでも魔法だ……!」

「じゃの。わしは神と同じじゃからの、当然じゃ」

 ふくが得意そうに笑っているとライラが足をダンッ、ダンッと鳴らしていた。
 その姿を見て、ふくは真面目な顔に戻り、全員を見る。

「これから【万物殷富】始める。お前たちには魔力を少しばかり貰いたい。わしとぼるふの周りで好きに舞ってくれぬか?」

「まって……?」

「踊りのことだよ。オイラたちのいた世界で『舞い』というのがあって、それは神様や大きな自然に対して敬意を表す事なんだ」

 ライラは納得したようでレプレを抱えながら準備運動する。
 他のヒトも各々背伸びしたり、軽く体操をして準備する。
 ふくはヴォルフを見つめて口を開く。

「……この魔法、わしらの魔力を完全に持っていくかも知れぬが……良いか?」

「大穴も封印できたし、暫くは魔物の心配もないだろう?魔力はまた回復できるからできる事はやってしまおう」

「そうじゃの。後のことは全て彼奴らに任せるとしよう」

 ふくはヴォルフと口を重ねる。
 それはとても濃厚なもので、お互い舌を絡ませあうほどに。
 いきなりその様なものを見せつけられたライラたちは恥ずかしそうにしていたが、ライラとガルドは軽くキスをする。
 パートナーや番のいないポチお、にゃん、ウルは三人で困った様に笑っていたが、ふくとヴォルフの姿を見ていた。



 ――では儀式を始める。皆はわしの周りを囲む様にしておくれ。ぼるふはわしと魔法を発動するのじゃ。詠唱はわしがする。

 ――わかったよ。でも、詠唱は一緒にしよう。魔力が一緒になれば、詠唱もわかるから。

 ふくはヴォルフの言った事を理解し、ふふんと笑う。
 深呼吸をし、ヴォルフを見つめる。
 ヴォルフはふくを見つめ返す。
 お互いがニコリと笑うと二人の莫大な魔力が解放される。
 今まで魔力を解放してきていたが、比にならない魔力量であり、国土を包み込むほどの量だった。
 その光景を見たライラは驚く。

「い、今までのは手を抜いていた……ってコト……!?」

 そう思う程の魔力であり、この魔力に敵意を込められると確実に失神する程の威圧感であった。
 ふくとヴォルフはそんなことお構いなしに詠唱を始めていく。
 それは詩を唄うように綺麗な声であり、自然と体が動く。
 各々が独自の舞いを行いつつ、魔力を高めていく。
 
『生命をもたらす水、命を育てる母なる大地、すべてに成長の変化を与える風、命を消し新たなる姿を与える火、未来を明るく照らす光よ、すべてに安らぎを与える闇よ、わが願いを聞き入れ、我らが愛する子供たちに繫栄と安寧を齎さん。』

 詠唱を完了させ、解放された魔力を二人が作った手の器の上に凝縮させる。
 お互いが見つめ合い、口付けをする。
 すると二人の魔力は完全に溶け合って一つの強力な魔力の塊となる。
 ゆっくりと【太陽】に向けて掲げるとその場にいたライラとガルド、ポチおとにゃん、そしてウルとレプレとガブの魔力を少しずつ吸収していった。
 ふくの毛は白金へと変わり、ヴォルフの毛は白銀に変わる。
 そして、二人の赤い紋様は繋がり、一つの紋様となった。
 ふくとヴォルフはニコリと笑うと鼻をコツンと当てるとその魔力が解放され、国土という名のヴォルフの縄張り全てに魔力の波動が伝わると【太陽】がより一層輝いた。
 ふくたちのいる島から草花が生え始め、ライラが外を見ると大穴を中心にして荒野が緑溢れる大地へと変わっていく。
 その力は非常に強力で、岩山ですら草花を咲かせ、山と思われる部分には草花だけでなく、木々も次々と生え、伸びていく。
 荒れ果てていた大地は緑一色となり、新たな時代の幕開けとなったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...