キツネの女王

わんころ餅

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町が静かなのじゃ

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 翌朝、ふくが目を覚ますと知らない家であり、困惑するが、側にヴォルフがいた事で安心する。
 そして、遠くから大きな音が立て続けに鳴り響くため、建物の外へ出ると一面が緑であり、草の上を歩いていく。
 そして、大きな音を立てているものを確認しに浮き島の端にいくと【聖泉】の水が大穴に向けて落ちていた。
 それが大きな音の正体であり、そして、大穴は完全に水で埋まり、川を形成していた。
 今まで居城にしていたところの近くにも川が伸びており、今後生活するのに便利になる事間違いなしであった。
 背伸びして、風景を楽しみながら歩いているとヴォルフがやってくる。
 狼の姿ではなく、獣人の姿になっていた。

「おはよう」

「ぼるふ、おはようなのじゃ。なぜヒトの姿をしておるのじゃ?」

「なんとなく……かな?これからは狼の姿よりこの姿の方がみんなを纏めるには都合が良いと思ってね」

「そうか。わしは……この世界にいても良いのじゃろうか……」

「もちろんだよ。ふくがここに来たのは運命なのだろうし、何よりオレがふくと一緒にいたいから、いてほしい」

「……ふん。仕方ないのぅ……。お前のために頑張るとするかの……。ところで、下の世界はやけに静かではないか?ちょっと降りてみるのじゃ」

 ヴォルフの背中にしがみつき、浮き島から飛び降りた。
 氷の足場を作り、駆け降りていく。
 地面に着地した瞬間、猛スピードで走る。
 ヴォルフが狼の姿をしている時は神速が使えるが、獣人の姿の時は神速が使えない。
 それでも、この世界でヴォルフに追いつけるヒトはいない。
 一分も経たず町へ到着すると、ふくの知らない町の光景が広がる。
 そして、ヒトっこ一人も居なかった。
 ヴォルフから降り、店の扉の前に置かれている魔道具に魔力を込める。

[ヨウコソ!キョウハリンジキュウギョウヲシテオリマス!マタノキカイヲオマチシテオリマス!]

 機械的な音声が流れ、ふくは魔道具に込められた魔法を考える。
 そして、答えは直ぐに返ってくる。
 
「これは【蓄音】の魔道具じゃな。どこもかしこも家が閉まっておる……。それにこの風景はなんじゃ?わしが寝ておる間とはいえ早くないかの?」

「ふくは三ヶ月くらい眠ってたんだよ?あの【万物殷富】はかなりの魔力の消費で回復もかなり遅い。連発は出来ないね」

「な……三ヶ月じゃと!?わしはそんなに寝ておったのか!?」

「そうだよ?でも、その間はオレが国を見てきたから安心して?」

「それが安心できんのじゃ」

 国づくりを一度失敗しているヴォルフに信用が無く、ふくは指摘した。
 悄気ているヴォルフは放っておいて、他の店や住宅を見るも、どこも不在であった。
 不安になっているふくにヴォルフは一言告げる。

「みんな、出産が重なっているんだよ」

「な……!?なぜじゃ!?子は出来にくいのではないのか!?」

「【万物殷富】の新たな生命の誕生っていう効果だよ。ふくが言ってたじゃん?」

 自身の魔法にそのような効果があったことに驚きを隠せずに頭を抱える。

「わしはてっきり、作物などの事かと思っておったが……解釈違いじゃったのか……」

「だから、この国、子供がすごく多くなってきたんだ。このままいったら食糧難になってしまうかもしれない」

「……ならば、魔獣を狩る他ないの」

「そうだね!んじゃ、背中に乗ってよ」

 ヴォルフは狼の姿になり、ふくを背中に載せる。
 そして、国外へと走っていった。


 見渡す限り草原が広がっており、荒野だった時とは大違いであった。
 ヴォルフが索敵している間はふくが外の空気を吸い込み、それを味わう。
 ヴォルフの耳と鼻がピクッと動き、ふくは魔法を準備する。
 ヴォルフが捕えたのはいつもの大型の草食魔獣であり、ふくは魔法を素早く組み上げる。
 
「『彼の者を切り裂け』」

 指を縦、横に薙ぐと魔獣の首が落ち、腹が裂かれて内臓がボドボドと落ちていく。
 ヴォルフは目を見開いていた。

「どうじゃ?わしの【斬撃】は」

「風の元素魔法じゃなかった……!この世界に来た頃より、やっぱり強くなっているね!」

「当たり前じゃ!毎日魔法を使い続ければ魔法の解釈も大体わかってくるのじゃ」

「ふくは凄いよ!全ての魔法を使えるなら、たくさん生まれた子供たちに教えられるんじゃないの?」

「どうじゃろうの。わし一人では捌ききれぬじゃろう。賛同してくれる者がおれば良いのじゃが……」

 まだまだふくの中で自身が国民に認められた女王ではないと認識しており、腕を組んで難しい顔をしていた。
 学園を作り、子どものための魔法の勉強や成人してからのやるべき事を伝えようと考えるが、やはり人が集まらなければ達成することは不可能である。
 大量の肉を抱え、二人は城を目指した。
 相変わらずの速さであったが、最初の頃よりふくは格段に慣れているため、あっという間に到着する。
 ふくはヴォルフから降り、ヴォルフは獣人の姿になり、城門を開ける。

「「「「「ふく様!おはようございます!」」」」」

「!!?」

 突然、沢山の人に挨拶され、思考が停止する。

「ふく様!おはよう!朝のお努めありがとうございます!」

 ライラがレプレとガルドを引き連れて深々と頭を下げる。
 続いてポチおとにゃんが現れる。

「おはよう。学園の話、聴いたよ。ヴォルフ様の提案で、ここを学園にするんだ。まだまだ、中身はできてないけど、にゃんさんがカリキュラム……じゃなくて、授業の方針を決めてくれているよ」

「おはようございます。私……人間だった頃、教師を目指していたので、拙いですがこのような方針で進めて見るのはどうでしょうか?」

 ふくに一冊の本を渡す。
 この国には紙の作り方が存在せず、文字もなかった。
 しかし、ポチおとにゃんは元地上民だったので辛うじて作り方を知っていた。
 ページを捲り、中身を確認して閉じる。

「……うむ。方針の中に入れておくのじゃ」

 その言葉ににゃんはパアッと明るくなり嬉しそうな顔をする。
 ふくは城の中にいる国民たちの方に向き、一瞬言葉を躊躇う。
 ヴォルフが側に来て頷き、口を開く。

「お前たち……わしを……認めてくれておったのか……?」

「もちろんですよ!」

「肉いっぱい持ってきてくれたの知ってますよ!」

「学校作ってくれるなんて、もっと早く言ってくださいよ!」

 国民がそれぞれ声を上げる中、ウルが前に出る。

「ふく様。より良い世界を作ろうとしてくれている、その心と行動は、国民がしっかりと見ておりました。私たちはふく様を正式に女王として受け入れます!」

 ウルがそう告げた瞬間、ワァッと歓声が上がる。
 圧倒的な声量にふくはびっくりして、後ずさる。

 未だに収まらない歓声に声をかけるも打ち消されてしまう。
 段々と眉間に皺が寄り、拳を握りしめる。

「静かにするのじゃー!」

 この後、国民全員が説教を受けることとなるが、それでもふくの事を国民は女王として認め、彼女についていく事を決めたのだった。
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