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僕のはじまり。
創造神様の処置
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「今はこれくらいの事ぐらいしか君にしてあげられない。許してくれ」
といって創造神は足を外す。ルーラはそのまま頭を下げ続ける。
「これからの話をしたいが、その前にこの邪魔なものはこうしておこう」
創造神が指を鳴らすとルーラが唸り出し、身体がミチミチと音を立てている。しばらくすると発光し、目が開けていられなくなった。視力が戻ると檻に入った黒猫が一匹ちょこんと座っていた。
「よし、これで幾らか話しやすくなった。鈴本君、これからの話は良く聞いてもらいたい。良いか?」
「はい」
「鈴本君、先程の話は理解できたかね?特に並行世界うんぬんの話なのだが」
「並行世界うんぬんの話ですか?なんとか概論はわかります。俺が成功した世界や、結婚した世界、誰かに会った世界、会わなかった世界、何かを成した世界、成さなかった世界って感じで世界が色々と分かれてしまっているって感じですか?」
「そうだ。よく知ってるな。なになに?らのべとか言う小説の影響か。よし、今度読んでみよう。あ、話が逸れたな。そしてその並行世界を調整し、整合させて一つの世界にしていくのが管理神やその部下の仕事なのだ…が君の場合長らく放置されたせいで君が死んだ瞬間から膨大な並行世界が出来上がってしまっていてな。何人も担当神をつけねば処理できないほどに」
「なるほど。それは大変ですね」
「うむ。それさえ処理しきれるかわからない状況なのだ。そこで君には悪いがある決定をしなければならない。君には酷な話だがな」
「なんでしょう?」
「君は二十代前半で死んだ事になる。今すぐに決められなかったらもう少し…」
「良いですよ」
「そうか。やっぱり考えてしまうよな。私だったらなかなか答えられない話だからなあ。それこそ…」
「だから、良いですよー」
「創造神様、鈴本さんはオッケーだと言っています」
「何、良いのか!?」
「はい。大丈夫です。あんまり良い思い出が無いので」
「そうか、そうか。辛い目にあったのだったな。本当に良いんだな?」
「はい」
「では、遠慮なくやらせてもらう。リーリシア、地球に向かったものに伝えてくれ。条件は呑んでもらったと」
「かしこまりました」
そう言ってリーリシアさんは一瞬に消えていった。
「ではいくぞ」
そう言って創造神様は俺の頭の上に手を置く。
「ふっ」
と創造神様は気合いを入れると俺の意識は遠くなっていった。
次に目を覚ますと布団に包まれて寝ていた。味噌汁の良い匂いとトントントンという包丁で刻む音がする。寝ぼけ眼を擦り起きて、匂いと音を辿り向かうと見知らぬ台所だった。
そこにはリーリシアさんがいて、料理をしていた。
「あらっ。起きたのですね。座って下さい。今ごはんにしますんで」
「ありがとうございます。何か手伝いましょうか?」
「大丈夫です。もうほとんどできてるので」
「じゃあ待たせてもらいますね」
待っていると味噌汁、白菜の浅漬け、焼き魚、ポテトサラダが出てきた。
「ご飯どれくらい食べますか?」
「普通サイズでお願いします」
「はいどうぞ。味噌汁とポテトサラダは地球に研修に来た時に日本で食べたものを再現してみました。美味しくなかったらごめんなさい」
「いえいえ、美味しそうです。いただきます」
食べると優しい味がする。美味い。
俺は久しぶりのまともな食事にほっこりし、泣きたくなった。いや、泣いた。泣きながら夢中で食べ進めるとリーリシアさんがニコニコしていた。
「ぐすっ。あ。ごめんなさい。あんまり美味しくて」
「嬉しいです。なかなか人に料理を振る舞う事がなくて少し緊張してたんです。美味しそうに食べてもらえて良かった」
「ホントに美味しいです。ありがとうございます」
「こういう時お粗末さまです、って言うんでしたっけ?」
「そうですね。俺がご馳走様です、って言った後に言うんです。でもこれは粗末ではなく、美味しい料理ですよ」
「ありがとう。嬉しいです」
それからはゆっくりと話をしながら食べた。魂だけで食べた気になるかな、と思っていたがここでは仮初の肉体がある事を教えてもらい、満足するまで食べさせてもらった。
といって創造神は足を外す。ルーラはそのまま頭を下げ続ける。
「これからの話をしたいが、その前にこの邪魔なものはこうしておこう」
創造神が指を鳴らすとルーラが唸り出し、身体がミチミチと音を立てている。しばらくすると発光し、目が開けていられなくなった。視力が戻ると檻に入った黒猫が一匹ちょこんと座っていた。
「よし、これで幾らか話しやすくなった。鈴本君、これからの話は良く聞いてもらいたい。良いか?」
「はい」
「鈴本君、先程の話は理解できたかね?特に並行世界うんぬんの話なのだが」
「並行世界うんぬんの話ですか?なんとか概論はわかります。俺が成功した世界や、結婚した世界、誰かに会った世界、会わなかった世界、何かを成した世界、成さなかった世界って感じで世界が色々と分かれてしまっているって感じですか?」
「そうだ。よく知ってるな。なになに?らのべとか言う小説の影響か。よし、今度読んでみよう。あ、話が逸れたな。そしてその並行世界を調整し、整合させて一つの世界にしていくのが管理神やその部下の仕事なのだ…が君の場合長らく放置されたせいで君が死んだ瞬間から膨大な並行世界が出来上がってしまっていてな。何人も担当神をつけねば処理できないほどに」
「なるほど。それは大変ですね」
「うむ。それさえ処理しきれるかわからない状況なのだ。そこで君には悪いがある決定をしなければならない。君には酷な話だがな」
「なんでしょう?」
「君は二十代前半で死んだ事になる。今すぐに決められなかったらもう少し…」
「良いですよ」
「そうか。やっぱり考えてしまうよな。私だったらなかなか答えられない話だからなあ。それこそ…」
「だから、良いですよー」
「創造神様、鈴本さんはオッケーだと言っています」
「何、良いのか!?」
「はい。大丈夫です。あんまり良い思い出が無いので」
「そうか、そうか。辛い目にあったのだったな。本当に良いんだな?」
「はい」
「では、遠慮なくやらせてもらう。リーリシア、地球に向かったものに伝えてくれ。条件は呑んでもらったと」
「かしこまりました」
そう言ってリーリシアさんは一瞬に消えていった。
「ではいくぞ」
そう言って創造神様は俺の頭の上に手を置く。
「ふっ」
と創造神様は気合いを入れると俺の意識は遠くなっていった。
次に目を覚ますと布団に包まれて寝ていた。味噌汁の良い匂いとトントントンという包丁で刻む音がする。寝ぼけ眼を擦り起きて、匂いと音を辿り向かうと見知らぬ台所だった。
そこにはリーリシアさんがいて、料理をしていた。
「あらっ。起きたのですね。座って下さい。今ごはんにしますんで」
「ありがとうございます。何か手伝いましょうか?」
「大丈夫です。もうほとんどできてるので」
「じゃあ待たせてもらいますね」
待っていると味噌汁、白菜の浅漬け、焼き魚、ポテトサラダが出てきた。
「ご飯どれくらい食べますか?」
「普通サイズでお願いします」
「はいどうぞ。味噌汁とポテトサラダは地球に研修に来た時に日本で食べたものを再現してみました。美味しくなかったらごめんなさい」
「いえいえ、美味しそうです。いただきます」
食べると優しい味がする。美味い。
俺は久しぶりのまともな食事にほっこりし、泣きたくなった。いや、泣いた。泣きながら夢中で食べ進めるとリーリシアさんがニコニコしていた。
「ぐすっ。あ。ごめんなさい。あんまり美味しくて」
「嬉しいです。なかなか人に料理を振る舞う事がなくて少し緊張してたんです。美味しそうに食べてもらえて良かった」
「ホントに美味しいです。ありがとうございます」
「こういう時お粗末さまです、って言うんでしたっけ?」
「そうですね。俺がご馳走様です、って言った後に言うんです。でもこれは粗末ではなく、美味しい料理ですよ」
「ありがとう。嬉しいです」
それからはゆっくりと話をしながら食べた。魂だけで食べた気になるかな、と思っていたがここでは仮初の肉体がある事を教えてもらい、満足するまで食べさせてもらった。
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