20 / 595
幼少時代。
ペランス師匠の就任。
しおりを挟む
「ペランスー、来たよー」
ドルトを伴って庭にでる。ドルトはそのまま見ていくようだ。僕はペランスの元に駆け寄る。
「よく来たな。坊ちゃん、改めて挨拶を。俺はペランス。獣人族、貂(てん)族の戦士だ。剣も得意だが格闘術の方はきちんと師匠について学んでいる。よろしく頼む」
ペランスは中肉中背で、青黒の髪に白い獣耳をしている。日に焼けた顔はなかなか整っており酒場に行けばモテるタイプだ。耳がもふもふしてる。触りたいわぁ。
「よろしくー」
「さて、坊ちゃん、格闘術を学びたいと旦那から聞いたが確かか?」
「んふー。ごしんじゅつやる」
「ごしんじゅつ?ああ護身術か。わかった。旦那の意志ではなく坊ちゃんの希望だな?」
「うん」
「そうか。それなら師匠と呼べ」
「わかった。ししょー」
ペランスの雰囲気が変わる。
「良し。お前がこれから学ぶ格闘術は、古来から伝承されている格闘術だ。名を『震極拳』という」
「しんきょくけん。強いな?」
「ああ。強い。格闘術の中でも特に実戦的だ。一撃必殺を狙う攻撃を特徴とし、素早い攻撃を繰り出す。お前は幼児だから油断させて一撃を与えられるように教えていく」
「ししょー、僕パンチ、柔らかいよ?」
「ああ、パンチはもう少し大きくなるまで封印だ。肘打ちや体当たりを主体としよう。あとは暗器の使い方を教える」
「あんき?」
「隠し武器の事だ。俺もいくつか持ってる」
師匠は懐に手を突っ込み指輪を取り出し嵌める。そして手を振ると長い針が現れた。
「おおー」
「これが暗器だ。この武器は指輪から人を刺せる針に形状が変わる。魔法武器だが、魔法に頼らぬ武器もある。旦那に話して兄弟分用意するように言ってあるから楽しみにな」
「楽しみ」
師匠は指輪を外し懐にしまい僕に向き直った。
「さて、今から俺が震極拳の基本の型、武神套路(とうろ)を行なう。これを続けていくと自然に格闘動作が身につくように設計されている。まずは見て、感じろ」
「うん」
師匠は流れるようにパンチ、肘打ち、体当たり、蹴りを繰り出し動作を繰り出す。歩き方、呼吸、身体の動かし方が特異だ。地面を蹴るように攻撃に移る。無駄な動きがなく綺麗だ。
師匠は動きを終えると呼吸を整えて僕に向き直った。
「これが武神套路だ。見たか」
「見た。難しい」
「そうだな。俺も最初は難しかった。ここまで来るのに二十年かかった」
「そんなに?」
「俺もまだまだ道の途中だ。さて、稽古に入ろう。中庭を走れ」
「うん」
僕は中庭を走り出す。最初はいつも同じ感じで走っていた。余裕だ、と思っていたが中庭を5周、10周、20周、30周…なかなか師匠から止めの声がかからない。足がもつれる。早足が早歩きに変わり足が絡まって転けた。
僕は必死に立ち上がる。身体が泣けと叫んでいるが立ち上がって走ろうとするが、足が絡まってまた転けた。
僕は全身の力を使ってなんとか起き上がり、早歩きで一周回る。半泣きになっていた。
「よし、止め。休め」
ふー、ふーと息をしながら僕は仰向けで横たわる。師匠は手を僕の身体にあて何かを流し込んだ。身体が温まるのを感じる。
「ん?ひーる?」
「いや違う。闘気を流している」
「とーき?」
「これを感じるのか?」
「うん。温かいー」
「そうか、そうか。うん。良いぞ、立ち上がれ」
「うん」
僕は起き上がった。嘘みたいに身体が軽い。
「良いか、これは一過性、つまり稽古の間しか効かない。終わったら体力回復ポーションを飲むのだ。旦那には伝えてある」
「わかったー」
「良し、次の稽古だ」
今度は反復横跳びだった。これは追い込まれる前に終わった。
「おわったー?」
「まだだ。最後に肘撃の型を教える。走り、横跳び、この型は俺がいない時でも続けるようにな」
「わかった!」
師匠は地面を蹴りながら進み、肘を下から突き上げるようにして攻撃を繰り出す。僕は見よう見まねでやっている。一見大変だが手足がこんがらがる。僕は何回も型を繰り返す。なかなか満足がいかない。
「ゆっくり一つずつ動きを確認しながらやるのだ」
「わかった」
ゆっくりと動作をはじめる。それから少しずつ速度を上げていく。集中力が上がっていく。地面を蹴り前に。地面を蹴り前に。肘を下から上に。肘を下から上に…次第に手足がそろってくる。とりあえず今できる動きはできてきた。
「よし。止め。頑張ったな。頑張ったお前には宿題を出そう」
「うん」
「体当たりの型だ。俺は明日は警備、明後日はお前の兄弟への指導だからその間に駆け足と横跳びと肘撃の練習と合わせてやっておけよ」
「わかった!」
師匠は体当たりの型をする。地面を蹴って身を低くして前に進み相手に接近して、立ち上がりざまに身体をぶつける感じだ。これもゆっくりと身体に馴染ませるように型を行う。次第にスピードを上げてなんとか動きがわかったところで師匠から声がかかった。
「よし。今日は終わりだ。体力回復ポーションを飲んでおけよ。明日がキツくなるからな」
「うん。ありがと」
「おう。じゃあまたな」
ドルトを伴って庭にでる。ドルトはそのまま見ていくようだ。僕はペランスの元に駆け寄る。
「よく来たな。坊ちゃん、改めて挨拶を。俺はペランス。獣人族、貂(てん)族の戦士だ。剣も得意だが格闘術の方はきちんと師匠について学んでいる。よろしく頼む」
ペランスは中肉中背で、青黒の髪に白い獣耳をしている。日に焼けた顔はなかなか整っており酒場に行けばモテるタイプだ。耳がもふもふしてる。触りたいわぁ。
「よろしくー」
「さて、坊ちゃん、格闘術を学びたいと旦那から聞いたが確かか?」
「んふー。ごしんじゅつやる」
「ごしんじゅつ?ああ護身術か。わかった。旦那の意志ではなく坊ちゃんの希望だな?」
「うん」
「そうか。それなら師匠と呼べ」
「わかった。ししょー」
ペランスの雰囲気が変わる。
「良し。お前がこれから学ぶ格闘術は、古来から伝承されている格闘術だ。名を『震極拳』という」
「しんきょくけん。強いな?」
「ああ。強い。格闘術の中でも特に実戦的だ。一撃必殺を狙う攻撃を特徴とし、素早い攻撃を繰り出す。お前は幼児だから油断させて一撃を与えられるように教えていく」
「ししょー、僕パンチ、柔らかいよ?」
「ああ、パンチはもう少し大きくなるまで封印だ。肘打ちや体当たりを主体としよう。あとは暗器の使い方を教える」
「あんき?」
「隠し武器の事だ。俺もいくつか持ってる」
師匠は懐に手を突っ込み指輪を取り出し嵌める。そして手を振ると長い針が現れた。
「おおー」
「これが暗器だ。この武器は指輪から人を刺せる針に形状が変わる。魔法武器だが、魔法に頼らぬ武器もある。旦那に話して兄弟分用意するように言ってあるから楽しみにな」
「楽しみ」
師匠は指輪を外し懐にしまい僕に向き直った。
「さて、今から俺が震極拳の基本の型、武神套路(とうろ)を行なう。これを続けていくと自然に格闘動作が身につくように設計されている。まずは見て、感じろ」
「うん」
師匠は流れるようにパンチ、肘打ち、体当たり、蹴りを繰り出し動作を繰り出す。歩き方、呼吸、身体の動かし方が特異だ。地面を蹴るように攻撃に移る。無駄な動きがなく綺麗だ。
師匠は動きを終えると呼吸を整えて僕に向き直った。
「これが武神套路だ。見たか」
「見た。難しい」
「そうだな。俺も最初は難しかった。ここまで来るのに二十年かかった」
「そんなに?」
「俺もまだまだ道の途中だ。さて、稽古に入ろう。中庭を走れ」
「うん」
僕は中庭を走り出す。最初はいつも同じ感じで走っていた。余裕だ、と思っていたが中庭を5周、10周、20周、30周…なかなか師匠から止めの声がかからない。足がもつれる。早足が早歩きに変わり足が絡まって転けた。
僕は必死に立ち上がる。身体が泣けと叫んでいるが立ち上がって走ろうとするが、足が絡まってまた転けた。
僕は全身の力を使ってなんとか起き上がり、早歩きで一周回る。半泣きになっていた。
「よし、止め。休め」
ふー、ふーと息をしながら僕は仰向けで横たわる。師匠は手を僕の身体にあて何かを流し込んだ。身体が温まるのを感じる。
「ん?ひーる?」
「いや違う。闘気を流している」
「とーき?」
「これを感じるのか?」
「うん。温かいー」
「そうか、そうか。うん。良いぞ、立ち上がれ」
「うん」
僕は起き上がった。嘘みたいに身体が軽い。
「良いか、これは一過性、つまり稽古の間しか効かない。終わったら体力回復ポーションを飲むのだ。旦那には伝えてある」
「わかったー」
「良し、次の稽古だ」
今度は反復横跳びだった。これは追い込まれる前に終わった。
「おわったー?」
「まだだ。最後に肘撃の型を教える。走り、横跳び、この型は俺がいない時でも続けるようにな」
「わかった!」
師匠は地面を蹴りながら進み、肘を下から突き上げるようにして攻撃を繰り出す。僕は見よう見まねでやっている。一見大変だが手足がこんがらがる。僕は何回も型を繰り返す。なかなか満足がいかない。
「ゆっくり一つずつ動きを確認しながらやるのだ」
「わかった」
ゆっくりと動作をはじめる。それから少しずつ速度を上げていく。集中力が上がっていく。地面を蹴り前に。地面を蹴り前に。肘を下から上に。肘を下から上に…次第に手足がそろってくる。とりあえず今できる動きはできてきた。
「よし。止め。頑張ったな。頑張ったお前には宿題を出そう」
「うん」
「体当たりの型だ。俺は明日は警備、明後日はお前の兄弟への指導だからその間に駆け足と横跳びと肘撃の練習と合わせてやっておけよ」
「わかった!」
師匠は体当たりの型をする。地面を蹴って身を低くして前に進み相手に接近して、立ち上がりざまに身体をぶつける感じだ。これもゆっくりと身体に馴染ませるように型を行う。次第にスピードを上げてなんとか動きがわかったところで師匠から声がかかった。
「よし。今日は終わりだ。体力回復ポーションを飲んでおけよ。明日がキツくなるからな」
「うん。ありがと」
「おう。じゃあまたな」
342
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
Gランク冒険者のレベル無双〜好き勝手に生きていたら各方面から敵認定されました〜
2nd kanta
ファンタジー
愛する可愛い奥様達の為、俺は理不尽と戦います。
人違いで刺された俺は死ぬ間際に、得体の知れない何者かに異世界に飛ばされた。
そこは、テンプレの勇者召喚の場だった。
しかし召喚された俺の腹にはドスが刺さったままだった。
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる