選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由

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12.美味しそうな食事

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祖母に連れて行かれるまま足を進めると、貴族の食事をする間としては少し狭い部屋についた。そこにはすでに祖父が座っていて、リッタさんも座っていた。

6人掛けのテーブルは私と祖母が座っても狭くなく、広すぎることもない。

「ねぇねぇ、ルド、さっきナタリーが笑ったのよ。笑顔は子どもの頃のまんま。とっても可愛らしい笑顔だったわ」

その言葉に私は顔が熱くなる。

でもいつ私は笑ったのだろう。

そんなことを考えていると目の前に食事が並べられていく。
私の前には具だくさんスープと温かそうな小ぶりのパンとフルーツが並んでいる。

とっても美味しそう。それにこのスープ、リッタさんがつくってくれたスープのにおいがする。

でもこんなに具があるのは食べていない。もしも吐いてしまったら………

私は思わずリッタさんを見ると目が合った。

「このぐらいはきっと大丈夫さ。食べたいと思える分食べな。無理そうな残していいんだ」

そう言ってくれた。

目の前の食事に目を移すと確かに美味しそうで食べてみたいと思う。
そういえば家での食事は美味しそうとも思えなかった。
部屋に一人用で用意される食事。一人でただ黙々と食べる食事。

美味しそうだなんて、食べたいだなんて思わなくなってどれくらいたったのだろう。
美味しそうに見えるこの食事なら食べてもいいのかな………

そう思い私はスプーンでスープと大きめにカットされた玉ねぎを掬い、口の中に入れる。
やわらかい玉ねぎはあまり食感があるわけではないけれど、優しい味が口の中を満たしてくれる。

次にじゃがいもを口に含んでみる。
かたくはないがほくほくとした食感。それでもしっかりと噛んでいる感触になんだか嬉しさが胸の中を広がっていく。

しっかりと噛んで、飲み込んでも気持ち悪くない。吐き気が襲ってこない。

それだけで嬉しいだなんて。

それに味を占めて、パンにも手を伸ばしてみる。

口に入れると柔らかくて、甘い香りがする。

私が黙ってもぐもぐと口を動かしていたからか、祖母が私の顔を覗き込んで頬に手を伸ばしてきた。

そこで分かった。いつのまにか涙が頬を濡らしていたことを。

「あっ、ごめんなさい……美味しくて………嬉しくて………行儀悪くてごめんなさい……」

せっかく祖父母との食事の時間なのに、泣くだなんてマナーが悪いって呆れられてるかしら…

祖母は私の頬をハンカチでぬぐいながら「謝る必要なんてないわ」と言ってくれる。

「美味しい物を食べると感動するわよね。

でも涙を流したって謝る必要なんかないわ。もちろん社交の場では相応しいとはいえない。

でもここにいるのはあなたの家族だもの。そんなこと気にする必要はないわ」

そう言ってくれる。

私はそのあとも涙を流しながらゆっくりと食事を進め、出されたものをすべて食べ終える事ができた。
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