選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由

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20.ルドの帰館

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少しだけ騒がしくなった家の中でみんなでお茶をした。その間に色々と教えてくれた。

この屋敷は伯爵家の敷地内の離れの建物で、本邸は向こうにあるという。

そして本邸に伯父様たち家族がすんでいるそうだ。

伯父様達には2人の息子さんがおり、数日前に2番目の息子さんの初めての子どもが嫁ぎ先で生まれたのでそちらに行っていたそう。

だけど私がきたことを知り、すぐに戻ってきてくれたそう。

そんな大事な時に…………申し訳ないと思い、謝罪を口にすると「どうして謝るの?子どもには会えたし、ちゃんとお祝いも出来たんだから問題ないわ。それに、これからいくらでも会えるもの。だから先にナタリーちゃんに会いたいと思っただけ。謝る必要なんてないわ」そう言ってくれる。

本当にこの家の方は素敵な方ばかり。

母はこんな中で暮らしていたんだ。


…………なんだか少し羨ましい。


そんな小さな妬みをもういない母に抱いていると、扉がノックされた。

「失礼いたします。大旦那様遅くなりました」

そう言って姿を現したのは調べてくれと言われ出て行ったルドさんだった。

「ルド、おかえり。急にすまなかったね。とりあえずお茶でも飲んでくれ」

「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて」

そういって立ったまま、置かれてあった冷たい飲み物はごくごくごくと一気に飲み終わり、静かにグラスを机に置いた。

「ルド…そんなに急いで飲まなくても…」

ルーカス伯父様が呆れたように、心配そうにそう言うも、ルドさんは首を横に振る。

「いえ、急いで報告しなければならないことが山ほどありましたので。

大旦那様、調べたことを今からご報告いたしますか。

内容的には少しも楽しくなく、少しイライラするかと思いますので、腹が煮えくり返る覚悟をして頂くのが宜しいかと。

よろしければ先に食事をすることをお勧めいたします。

それでよければ、その間に諸々の書類を私は集めて参ります」


「ほお、腹が煮えくり返るほどの内容だと。


そうだな、ならば先に食事から済ませることにしよう。せっかくナタリーが少しずつでも食事を食べれるようになったのだ。食事は楽しい雰囲気ですることにしよう」

「かしこまりました。
では普段より少し時間が早いですが食事の準備を始めるように伝えて参ります」

そう言ってルドさんは部屋を出て行った。

私たちは普段より1時間早く食事の席につき食事を始めた。

ルーカスおじさまはとてもお話が上手で終始笑いの絶えない食事になった。

母が亡くなって食事を誰かと共にするなんて数えるほどしかなかった。

義理の母と義理の姉が来た当初は、義理の姉がこの家に慣れるまでは少しだけ我慢して、少しだけ1人で食事をしてちょうだいと1人の部屋で食事をすることとなった。

しばらくすると食事もマナー教育の1つだからとマナー講師が横に付き、見られながら、一人部屋で食事をとることとなった。

それからはなにかと理由をつけられ、私は常に部屋で1人で食事をすることになった。

だけど婚約者ができ、婚約者が会いに来てくれた時は共に食事をすることがあった。

その数回だけ。

今考えればなんて異常だったんだろう。あの家にいた時はそんなこと気づかなかった。いいえ、目を背けたかったのだと思う。自分が置かれている環境は異常だと認めてしまえばきっと耐えられなかった。だからずっと目を背けて異常はないと思いたかったんだ。

でもこの家に来て、この家を知ってしまった後はもう目を背けられない。
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