選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由

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54.愛する人に助けを求められたら

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「そんな生活を続けていたある日、、、、
突然子爵家に呼ばれました。そこには当主とヨランダ様がいて……女性が一人ベッドに横たわっていました…………

みると彼女の顔には白い斑点が浮かんでいました。その症状は何度も見たことがあるものだったのですぐに分かりました。

平民街ではお茶を買うのにも困る人たちが多くいました。そんな人たちは草を煮だして飲むことがあるのです。そして知識がない人はアルジラを煮出して飲んでしまう。そして、気付くのが遅れれば最悪死に至る。

だから彼女を見た時、すぐにアルジラの毒を口にしてしまったのだと分かりました。そしてその症状から末期だと。

でも分からないことがあった。それはヨランダ様がここにいてなぜこんな事が起こってしまったのかという事。
私は以前ヨランダ様にお伝えしました。アルジラの毒について、その症状について。それなのになぜと。

でもヨランダ様がいったのです。奥様が自分で薬の研究をするために、草を煮出してのんでしまい、倒れてしまったと。このままでは子爵が疑われてしまう。そうなれば自分の子どももどうなるかわからない。助けてと懇願されてしまいました。

本当はこの時に私はどうしたって断るべきだったのです。

でも目の前で愛する人が私に涙を流しながら助けを求めている。
何をおいても彼女を助けたいと思ってしまった。

ベッドに横たわる女性には治療を施す事もできない。きっと明日の朝を越すことはできない。それならば私に出来る事は………死因をごまかす事だ。そう思ってしまったんです」

そう言って医師は涙を流した。

愛する人に助けてと言われたら自分ならどうするだろう。誰かの死だって隠ぺいする?
分からない。結局その時、その場面に直面しなければきっと自分がどう判断するかさえ分からない。

もしこれが他人のことなら医師を可哀想と思って、その気持ちだってわからなくないと共感したかもしれない。

でもこれは私の母の話。誰が誰を愛していたって関係ない。
私は母を助けて欲しかった。

もしそれが適わなかったとしても本当の死因を教えてくれていたのなら、彼女たちを子爵家に迎え入れることはなかった。母を殺した人たちと今までのうのうと一つ屋根の下で暮らしていたなんて、怒りに震えてしまいそうになる。

そうしなかったのは彼の判断でしかないのだ。
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