選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由

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87.幼いころの友達

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エミリオ様がいったその言葉で、私の頭の中に、ある子どもの姿が鮮明に浮かび上がってきた。

まだ母が生きていた頃、よく一緒に遊んでいた子。

“リーちゃん、大好きだよ”  “リーちゃんずっと一緒だよ”

そう言ってくれていた子。

それがどうして今思い出されるのか。

でもあの子もたまに“リーちゃん約束だよ。僕と結婚して”そう言っていた気がする。
でも確かあの子って………

私は思わずエミリオ様から身体を離し、エミリオ様の顔を覗き込みながら質問する。


「………エミ………ちゃん?」


「ナタリー!!思い出したの?そうだよ!!エミだ!
約束しただろう?結婚するって」


エミちゃん、それはまだ母が生きているとき、母の友達と一緒に遊びに来てくれていた子の名前。

よく手をつないで遊んでいた。

でも、確か……

「エミちゃんって………   女の子……  じゃなかった?   」

そう、エミちゃんはいつも艶々の髪の毛を三つ編みに可愛らしく結ばれていて、青い綺麗な瞳はくりんと私を見つめ、ひらひらのお洋服は風ではためいて、とても綺麗な大好きなお姉ちゃんだった気がする。

それが……エミリオ様?

確かにあの子も瞳は青かったし、綺麗な顔立ちだった。

私の言葉を聞いたエミリオ様は一瞬で顔を赤く染めた。


「ちがう………

あの頃は……ナタリーが生まれてからというもの……

母さんはまるで女の子かというくらいひらひらの服を僕に買うようになったんだ。特にナタリーに会いに行くときは服もひらひらで、髪の毛も編み込んでリボンで結んで………

でもそんな格好で行くとナタリーが目を輝かせて喜ぶから僕も特に何も言わなくて………」

「そうなの?
でもそれなら否定してくれればよかったのに……  」

あまりの驚きにいつの間にか涙は止まってしまっていた。

「何度も否定はしたよ!
それにあるときは”お姉ちゃんって呼んでいい?エミお姉ちゃん”なんてあまりにもキラキラした目で聞くから”うん”って言いそうになったけど、必死に拒否した。

僕はあの時から君しか見えていなかった。
それに母からも『いつか2人が結婚したらマリアとも家族になれるのに』なんて言われるから、その気になっちゃって。

だから何度も”結婚しよう”って約束しただろう。僕にとってあれは子どもの戯言なんかじゃなく、精一杯のプロポーズだったんだ。

………君は”エミお姉ちゃん大好き”なんて言ったりしてたけど……   」

なんだかこれが現実とは思えないような話。
確かにエミお姉ちゃんが大好きだった。

いつでも優しくて、いつでも私の手をつないで遊んでくれる優しいお姉ちゃん。
とっても綺麗でとっても可愛いエミお姉ちゃんは私の憧れだった。

でも女同士だから結婚はできないよなんて、笑っていた気がする。

それがまさか男の子だったなんて。

目の前にいるエミリオ様だなんて。
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