伊号式潜水艦。

ゆみすけ

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あれは、クジラかしら?

まさか、クジラに乗るとは・・・

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 エルベ河の河口は広大だ。
ハンブルクへ出入りする船の往来も多い。
 それで、河口は広大で北海へ広がっている。
フランスのボルドー軍港からは、かなりの距離だ。
 潜水艇の燃料では往復は無理である。
それで、途中で給油しなければならない。
 そのために、フランス海軍の給油艦と警備の駆逐艦までが派遣されていたのだ。
その話を聞いても・・・エリザベート嬢は、別に変には思わなかったのだが・・・
 海軍に少しは詳しいと、なんでそこまで軍事費をつぎ込むのだ、と不思議に思うだろう。
単に、オーギュスタン少尉とエリザベート嬢の恋心だけとは、思えないのである。
 それほどに、マジノ要塞のフランス軍の期待は大きかったのだ。
つまり、エリザベート嬢のもたらす情報は価値があるとフランス軍は踏んだのである。

 エルベ河はチエコではじまり、全長が1000キロを越える。 
そして、700キロあまりがドイツ領内で北海へそそぐのだが、河口は広大で宇宙からでも見えるほどだ。
 潜水艇は給油を終えて・・・万全の体制で河口へ望んだ。
潜水艇の艇長のシトロエンは、今回の作戦が成功すれば・・・爵位も夢ではないのだ。
 ルノ―司令官より、裏話があったのだ。
それで、かなり無理をしてでも作戦を成功させようと必死であったのだ。
 すべてが、エリザベート嬢の情報如何であるのだ。
それで、慎重にも慎重を重ねて、位置や時間には配意していたのだった。
 なぜなら、相手はランチ(小舟)だ。
河口は広大だ。
 大西洋でイカダを探すようなものだ。
そこで、彼なりに考えたのである。
ならば、こちらからランチを発見すればいいのである。
 それで、ランチには色違いのランプを複数、点灯してもらうのだ。
それを、潜望鏡で発見すればOKである。
 時間は誤差を含んで、約1時間みてある。
時間が過ぎて発見できなければ・・・残念だが、作戦は失敗だ。
 ドイツ海軍に発見されれば・・・速度が遅い潜水艇である。
キール軍港では、運がよかったのか・・・うまく逃げられたのだが・・・何度も、逃げられるとは思えないのだ。

 北海の公海上で給油艦よりジーゼル燃料である軽油を満タンに・・・エルベ河の河口までジーゼル推進で充電は満タンにしておくのである。
 「機関員。」「ハイ、艇長。」「蓄電池の比重は管理を頼むぞ。」「ダッコール。」
蓄電池の溶液である希硫酸の比重を計ると充電の量が判明するのだ。
 それで、河口で潜航してランチ(小舟)を捜索しなければならない。
満充電しておくのである。
 「換気をしておけよ。」「ダッコー。」
充電中は水素ガスが蓄電池から出るからだ。
 水素ガスは人体には有毒なのだ。
「エリザベート様、ご気分は?」と、侍従の家族が聞く。
 「え、え、だいじょうぶですわ。」と、そこはガマンだ。
あまり、フネには慣れていないエリザベート嬢である。
 つまり、今が初体験なのである。
なんせ、エリザベート嬢は金づちなのだから・・・
 当時は、まだ浮袋なんて無い、救命胴衣はあったが・・・ビニールやナイロンが発明されていないのだ。
ゴム製の浮き輪はあるが・・・真っ黒で女性が使えるものではないのだ。
 陸軍の将軍の娘である、泳ぐ必要はないのである。
そして、エリザベート嬢は板子1枚下は地獄を味わっていたのである。
 オーギュスタン少尉へ逢うためだ・・・でなければ、誰がこんなことをするものかだ。
恋は盲目なのである。
 夜間であるから、ランチは船舷灯を点灯して、15ノット程度の速度で河口を目指した。
河口まで、約5時間だ。
 約5時間のガマンである。
それで、かなり疲労したエリザベート嬢なのである。

 「航海士、場所は。」「そうですね、そろそろ河口ですね。」と、ハッチから6分儀で星を計測する。
「よし、潜航だ。」「ハッチ確認。」「ベント開け。」「ジーゼル停止。」
 「蓄電池は。」「満タンです。」「よし、深度20まで。」「ヨ~ソロ。」
潜航すれば、6分儀で星は計測できない。
 それで、精密な方位磁石と距離計、そしてパッシブソナーでの航行となるのだ。
エルベ河口は出入りする船も多いからだ。
 他のフネの船底へぶつかると、いくら潜水艇といえども沈没しかねないからだ。
「よし、潜望鏡深度。」「深度5です。」「うむ。」
 潜望鏡が上がる。
すばやく、周りを警戒する。
 「よし、潜望鏡下げ。」「深度、戻せ。」
こうして、位置を確認しながら河口を目指す・・・潜水艇である。
 



 

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