大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

螺旋階段と鍵

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「で…それ…やめといた方が…いいよぉ…?」
頭を大きく前後に揺らしながら、ふらつく足取りで俺の前を先導するように進むルーシェがそう言う。
「ほーん。理由は?つか、どこ向かってんだ?」
どうしたのかとルーシェに聞かれたので事情を話したら、ついて来いと言われたので後ろを歩いている訳だが…おい、そっち地下への階段だぞ。
「ん~…?はいこれぇ…」
ひょいと投げ渡されたのは輝く小さい何か。咄嗟にキャッチすると、冷たく硬い。
手を開いてみると少し古めの鍵。物理的なロックを解除するだけでなく魔法的なロックも解除するタイプの少しレアな鍵だと一目見て分かった。
「………どこのだ?これ?」
「下の…二年が使う…訓練所の鍵ぃ…だね」
「えっ」
何でこいつが持ってんだ。つか、これを俺に寄越してどうするつもりだ。
そう聞く前に、ルーシェがくるりとこちらを向いて楽しそうに笑う。
「わたしにはぁ…もういらないから…それ、レイくんに…あげちゃう…」
「もう要らないって…いや、そもそも訓練所の鍵なんてどうやって手に入れたんだよ。俺だって借りるだけだったのに」
しかしルーシェはそれに答えず、ただ「んふふ~」と楽しそうに笑うだけ。
「でぇ…なんでやめといたほうがぁ…いいのかってぇ…?」
くるりと前に向き直し、再び先導し始めるルーシェ。
地下へとつづく螺旋階段をどんどん降り、地下一階の三年訓練所を通り越し、二年訓練所を──通り越した。
「…おい、本当にどこへ行く気なんだ」
「ひぃみぃ…つぅ」
そう言ったっきり、俺が何と言っても答えてくれなくなってしまう。
……そういや、学校の地下二階までは来たことあったけど、それより下は初めてだな。
『階段があるからには三階以降もあるんだろうが…どこまで降りるんだ?』
シャルがそう言うほど地下二階とその下…地下三階は離れていた。
やがてルーシェの足が止まった。階段の続きもない。ここが行き止まりのようだ。
と、その行き止まりの壁を、ルーシェがコンコンコン、と三度素早く叩く。
しかし何も変化は起きない。
「むぅ…誰も…いないのかなぁ…?」
「いい加減、ここがどこか教えて貰ってもいいか?」
「ん~…地下四階、名付けるならぁ…えっと…確か…………研究室」
「研究室?」
何かを思い出そうとしたが、思い出せなかった。そんな感じで答えられた場所は意外といえば意外だった。
「何の研究室だ?」
「魔獣とか…魔族とか…その他色々だねぇ…」
もう一度ルーシェがノックを素早く三回叩くが返事はやはり無い。
「いないかぁ…いつもならいるんだけどなぁ…レイ君、かえろっかぁ…」
「えっ、戻んの?」
一人でさっさと帰ろうとするルーシェに困惑しつつ、突き当たりの壁を一度じっと見つめる。
「ほらぁ…行くよぉ…」
「…わかったよ。で、参加しない方がいい理由って」
「ん~?ん~…あっ…ほらぁ…鍵あげたから…出る必要ないでしょ…?」
「そりゃまぁ…そうだが」
取ってつけたような言い方。確かに間違ってはいないが、理由は他にあったんだろう。そう思える。
「んふふ~…だからねぇ?出ない方が…いいよぉ…?」
何故ルーシェがそんなに出ないよう言うのか分からない。引っかかることが多すぎる。モヤモヤを抱えながら、俺は壁から目を離し、無言で階段を登り始めた。
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