200 / 2,040
本編
日没と英雄
しおりを挟む
暗い闇の中、しかし一切の不信感を与えるどころか、むしろ安息すら感じる、そんな不思議な闇色の泥。
その中で俺は揺蕩っている。
久しぶりの休憩、もっと言えば睡眠。
身体の端から今まで溜まっていた疲労が抜け、身体の芯からゆっくりと、この心地よいえも言われぬ感覚が……。
待て、今どこでどうなっている?
あの牛魔獣の群れは?
首筋に強い衝撃を受けて…落ちた?
なら俺はもしかして死んだ?
いや、そんな訳が無い!
そう叫ぶと同時に、ガバッと起きると…ここは馬車の中?
寝汗はぐっしょり、息も荒い。およそ最悪の寝起きだろう。
外からはもう既に戦いの音は聞こえておらず、外は今にも日が落ちようとしている。
それなのに、馬車の中には俺一人と銀剣、あとはオードラル先生が俺達のために積んでおいてくれた食料やら何やらがあるのみ。
みんなはどこへ行った?
現在地は?結界まであとどのぐらいかかる?一時間か?それともあと五分?
わからないが、とにかく外に出てみるとわかるか?
身体をおこし、銀剣を掴みながら外へ出る。
「…何度も言っているように、お前達をここから先へ行かせる事は出来ん」
「けれど僕達はどうしても…」
「くどい!」
あん?何事だ。
外へ出ると、六つの人影。
どうやらもめているらしく、鎧を着たガタイのいい男とラウクムくんが言い争っているらしい。ちなみにもう一つの人影は、フードを被っておりわからない。
はて、こんなところへ一体誰が。
そっと近づき、ユーリアに聞くか。
「よおユーリア。何事だ?」
「お前もここを通ると言うのか?ダメだ。今すぐ引き返せ」
ユーリアに聞いたのに、男の方に返された。けど、この一言で何が起きたかわかった。
多分、結界まで行こうとする俺達を止めているんだろう。けど、何でまた。それにコイツらは誰だ?
ふいと男の顔を見る………と同時に全身を駆け巡る拒絶感、嫌悪感。
間違いない。コイツは英雄だ。
というか、入学式の時にスピーチをしていたあの英雄。名前は…たしか、フィール・ハウナだったか。
しかし、そばのフードの人影は誰だ?
「…英雄様がなんでここに?」
「英雄の仕事に決まっているだろう。結界に綻びがないか調べていた。見た所、異常はなく、今から王都へ戻る所だ。お前達も早く学校へ戻れ。さもないと、俺がお前達を無理矢理捕まえて送るぞ」
へぇ、マトモに返してくれるんだな。
「ふーん。結界が脆弱になって来てるから、そこの聖女サマを連れて結界のチェック、その帰りにウチの学校から矢文が飛んできて俺達の捕獲を頼まれたところに偶然俺達と鉢合わせた。仕方ない、なら連れて帰ってやるか。って所か?」
「何のことだ?」
英雄様は素知らぬ顔。
けど…甘いな。
「なるほど、英雄様はポーカーフェイスも一流らしい。けどな?そこのフード被ってる方は明らかに動揺してたぜ?なぁ、聖女サマ?」
言うが早いが俺は髪の毛を数本使い、フードを一気に引っぺがす。
俺の髪の毛の長さは、一本あたり三メートルと二十一センチ。フードの所までなら、簡単に届く。
日が落ちるその瞬間、一際強く輝いたその日が、フードの下に隠れていた金に輝く髪と、蒼く透き通る目を強く輝かせた。
その中で俺は揺蕩っている。
久しぶりの休憩、もっと言えば睡眠。
身体の端から今まで溜まっていた疲労が抜け、身体の芯からゆっくりと、この心地よいえも言われぬ感覚が……。
待て、今どこでどうなっている?
あの牛魔獣の群れは?
首筋に強い衝撃を受けて…落ちた?
なら俺はもしかして死んだ?
いや、そんな訳が無い!
そう叫ぶと同時に、ガバッと起きると…ここは馬車の中?
寝汗はぐっしょり、息も荒い。およそ最悪の寝起きだろう。
外からはもう既に戦いの音は聞こえておらず、外は今にも日が落ちようとしている。
それなのに、馬車の中には俺一人と銀剣、あとはオードラル先生が俺達のために積んでおいてくれた食料やら何やらがあるのみ。
みんなはどこへ行った?
現在地は?結界まであとどのぐらいかかる?一時間か?それともあと五分?
わからないが、とにかく外に出てみるとわかるか?
身体をおこし、銀剣を掴みながら外へ出る。
「…何度も言っているように、お前達をここから先へ行かせる事は出来ん」
「けれど僕達はどうしても…」
「くどい!」
あん?何事だ。
外へ出ると、六つの人影。
どうやらもめているらしく、鎧を着たガタイのいい男とラウクムくんが言い争っているらしい。ちなみにもう一つの人影は、フードを被っておりわからない。
はて、こんなところへ一体誰が。
そっと近づき、ユーリアに聞くか。
「よおユーリア。何事だ?」
「お前もここを通ると言うのか?ダメだ。今すぐ引き返せ」
ユーリアに聞いたのに、男の方に返された。けど、この一言で何が起きたかわかった。
多分、結界まで行こうとする俺達を止めているんだろう。けど、何でまた。それにコイツらは誰だ?
ふいと男の顔を見る………と同時に全身を駆け巡る拒絶感、嫌悪感。
間違いない。コイツは英雄だ。
というか、入学式の時にスピーチをしていたあの英雄。名前は…たしか、フィール・ハウナだったか。
しかし、そばのフードの人影は誰だ?
「…英雄様がなんでここに?」
「英雄の仕事に決まっているだろう。結界に綻びがないか調べていた。見た所、異常はなく、今から王都へ戻る所だ。お前達も早く学校へ戻れ。さもないと、俺がお前達を無理矢理捕まえて送るぞ」
へぇ、マトモに返してくれるんだな。
「ふーん。結界が脆弱になって来てるから、そこの聖女サマを連れて結界のチェック、その帰りにウチの学校から矢文が飛んできて俺達の捕獲を頼まれたところに偶然俺達と鉢合わせた。仕方ない、なら連れて帰ってやるか。って所か?」
「何のことだ?」
英雄様は素知らぬ顔。
けど…甘いな。
「なるほど、英雄様はポーカーフェイスも一流らしい。けどな?そこのフード被ってる方は明らかに動揺してたぜ?なぁ、聖女サマ?」
言うが早いが俺は髪の毛を数本使い、フードを一気に引っぺがす。
俺の髪の毛の長さは、一本あたり三メートルと二十一センチ。フードの所までなら、簡単に届く。
日が落ちるその瞬間、一際強く輝いたその日が、フードの下に隠れていた金に輝く髪と、蒼く透き通る目を強く輝かせた。
0
あなたにおすすめの小説
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる