215 / 2,040
本編
弱体と呪術
しおりを挟む
神経を逆撫でするような耳障りな音が響く。これで…そろそろ十回目か。
ラウクムくん達に思いっきりあんな事言ったけど、正直、押されているのは俺の方。
単純に、右手が使えないというハンデが大きいな。
しかし…だからこそおかしい。
俺は右腕が使えず、左腕一本。さらに得意な双剣で戦えず、寝ていないので身体もボロボロ。いつもより…森でこの魔族と戦った時より弱っているはずだ。
正直、二回か三回も剣を打ち合えば、俺が負ける、そうなっていても全くおかしくなかった。
そして十一回目の衝撃。やはり、おかしい。
「魔族…弱くなったか?」
「あァん?」
ピタリと止まり、俺の攻撃を大きく弾き、距離をとる魔族。
「嬢ちゃん、アンタがそれを言うのかい?」
そう言いながら、フードをとる魔族。
その下から出てきたのは、醜く膨れ上がった化物の面。
「『人を呪わば穴二つ』、って言葉知ってるか?」
面の唇が上下にカサカサと動き、言葉を発する。その時になって初めて気づいた。
所々がぐじゅぐじゅと音を立てて膿み、謎の吹き出物が顔だけでもあちこちに溢れる。
その顔は、前に森で見た顔とは全く違う…それでいて、その彼と間違えようのないものだった。
「俺がかけた呪術を、ものの見事に俺に返しやがったなァ…しかもご丁寧に、呪術の上乗せまでしやがって…なるほど?確かにこれなら呪術がお前に返ッてくることは無い。考えたな?銀の嬢ちゃん」
呪術…?確か、魔族の魔法、その上位にあたる魔法、だよな?
俺は呪術どころか、魔法すら使えない。なのに魔族は呪術を俺が返し、さらに上乗せまでしたらしい。
「オイオイ、訳が分からねェッて顔だな?ふざけるなよ?あの紅い鎖。あん時だよ。忘れたとは言わせねェぞ…?」
紅い鎖。その内容は全く覚えていないが、アーネから聞いた。
あの時、何が起きた…?
「お嬢ちゃんがそんなカワイソーな俺に合わせて右手を使わないでいてくれたんだろう?だからあの紅い鎖も出さないで戦ってくれてるんだろう?」
正直、そんな余裕はないし、紅い鎖とやらは自力で出せないし、そもそも出した記憶が無い。
「お嬢ちゃんが呪術を返しておかげで、魔力が何かを拒んでるみたいに内側で小さく小さく爆発を繰り返してんだよ。お嬢ちゃん、アンタどんな呪術の返し方をしたんだ?」
知らないものは答えようがない。だから適当に返すのがいいだろう。
「そうだなぁ…俺に勝てたら教えてやろうか?俺が勝つから関係無ぇけどさ」
「ははッ!いいねェ!なら、アンタをくれよ!惚れちまッたァ!それに、ちょうど向こうでも…」
魔族のセリフの最中で、廊下の奥から爆音が響く。
「山場みてェだしな!」
そう魔族は吼えると、より一層強化したらしい身体能力で俺の方へ突っ込んできた。
「さっさと終わらせようか。ほら」
そう言って両手を広げてやる。
「受け止めて、抱きしめてやるよ」
男との…しかも化物ヅラのヤツとの包容なんてゾッとしねぇから、絶対にしないけどな。
ラウクムくん達に思いっきりあんな事言ったけど、正直、押されているのは俺の方。
単純に、右手が使えないというハンデが大きいな。
しかし…だからこそおかしい。
俺は右腕が使えず、左腕一本。さらに得意な双剣で戦えず、寝ていないので身体もボロボロ。いつもより…森でこの魔族と戦った時より弱っているはずだ。
正直、二回か三回も剣を打ち合えば、俺が負ける、そうなっていても全くおかしくなかった。
そして十一回目の衝撃。やはり、おかしい。
「魔族…弱くなったか?」
「あァん?」
ピタリと止まり、俺の攻撃を大きく弾き、距離をとる魔族。
「嬢ちゃん、アンタがそれを言うのかい?」
そう言いながら、フードをとる魔族。
その下から出てきたのは、醜く膨れ上がった化物の面。
「『人を呪わば穴二つ』、って言葉知ってるか?」
面の唇が上下にカサカサと動き、言葉を発する。その時になって初めて気づいた。
所々がぐじゅぐじゅと音を立てて膿み、謎の吹き出物が顔だけでもあちこちに溢れる。
その顔は、前に森で見た顔とは全く違う…それでいて、その彼と間違えようのないものだった。
「俺がかけた呪術を、ものの見事に俺に返しやがったなァ…しかもご丁寧に、呪術の上乗せまでしやがって…なるほど?確かにこれなら呪術がお前に返ッてくることは無い。考えたな?銀の嬢ちゃん」
呪術…?確か、魔族の魔法、その上位にあたる魔法、だよな?
俺は呪術どころか、魔法すら使えない。なのに魔族は呪術を俺が返し、さらに上乗せまでしたらしい。
「オイオイ、訳が分からねェッて顔だな?ふざけるなよ?あの紅い鎖。あん時だよ。忘れたとは言わせねェぞ…?」
紅い鎖。その内容は全く覚えていないが、アーネから聞いた。
あの時、何が起きた…?
「お嬢ちゃんがそんなカワイソーな俺に合わせて右手を使わないでいてくれたんだろう?だからあの紅い鎖も出さないで戦ってくれてるんだろう?」
正直、そんな余裕はないし、紅い鎖とやらは自力で出せないし、そもそも出した記憶が無い。
「お嬢ちゃんが呪術を返しておかげで、魔力が何かを拒んでるみたいに内側で小さく小さく爆発を繰り返してんだよ。お嬢ちゃん、アンタどんな呪術の返し方をしたんだ?」
知らないものは答えようがない。だから適当に返すのがいいだろう。
「そうだなぁ…俺に勝てたら教えてやろうか?俺が勝つから関係無ぇけどさ」
「ははッ!いいねェ!なら、アンタをくれよ!惚れちまッたァ!それに、ちょうど向こうでも…」
魔族のセリフの最中で、廊下の奥から爆音が響く。
「山場みてェだしな!」
そう魔族は吼えると、より一層強化したらしい身体能力で俺の方へ突っ込んできた。
「さっさと終わらせようか。ほら」
そう言って両手を広げてやる。
「受け止めて、抱きしめてやるよ」
男との…しかも化物ヅラのヤツとの包容なんてゾッとしねぇから、絶対にしないけどな。
0
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。
「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」
と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる