大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

交渉と受け取り

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頼んだよ、と言ったはいいが。
彼が走り去ってから早くも三十分ほど経とうとしている。正直暇だ。
しかししくじったな。時間制限でもつけときゃよかったか。
いや、アレにさらに時間を制限しようものなら完全に悪役のセリフだ。いやまぁ、さっきのですら普通に悪役のセリフだし、怪しさ満点だし、人質いるしでもう完全にアウトなのだが。
「…ん」
ようやく来たか。遠目に走ってくる彼が見えてきた。
「すいま、せん。ちょっと、どこにご飯があるかって、わかんなくって」
「まぁ別にいいさ。息せき切って来てくれたみたいだし、君も頑張ってくれたみたいだし。ちょっと確認させてもらうよ」
マキナが身体を細長く伸ばし、男の手から水と食料が入っているらしい巾着を受け取る。
開くと、中には干し肉と黒いパン、水筒には水が入っていた。
「うん、少し少なめだけどありがたく頂くよ。それと、約束通り彼をそちらに譲り渡すね」
巾着を肩に引っ掛け、背負っていたハウナをの方へと渡す。
「あ、はい…って重っ!?」
ハウナを支えきれず、倒れそうになる彼を見て、思わず同意する。
「そうなんだよねぇ。彼、見た目よりかなり重いんだよねぇ。鍛えてるからかな?まぁ、ともかく彼の保護、よろしくね。私はもう行くから」
「あっ、ちょっと待ってください。一つ確認したい事が」
「うん?なんだい?」
くるりと振り返り、男の方を見ると、何やら目を泳がせて「えーっと、そのー、ですね」と言葉を探している様子。少し待っても何も言わないので、軽く聞いてみることに。
「何も無いなら私は行くけど」
「あぁいえ、ちょっと待ってください…そう、彼をどこでどうして保護したんですか?」
「うん?うーん…」
それを言われると少し困る。
どこでと言われたらそこら辺でだし、どうしてと言われたら放置して英雄が死ぬのは不味いからとしか言えない。しかも、そう言っても理解出来る者はそういないだろう。
じゃあなんでそうなったかも含めると、システナの話までしなくてはならないので、流石にそれは出来ない。
「ま、色々あったんだよ。で、意識のない彼をほっとくのは気分も悪いし色々と不味いから、誰か助けられる人がいないかって探してたところ」
「そ、そうですか」
「うん、そう。じゃ、もういいかな?」
今度こそくるりと踵を返し、聖学の方へ向かって歩き始める。
──瞬間、過去に無いほどの警告が俺の頭で鳴り響いた。
出処は恐らく西学の校舎の方。そちらから背筋が凍るような殺気が飛んできた。
拳を高く振り上げ、照準を真下、足元へ向ける。
「マキナぁ!!」
ほぼ全ての装甲が右腕に集中、同時に銀剣もかくやと言わんばかりの加重が俺の右腕にかかる。
そのまま真下へ振り下ろし、地面を強打。
巻き上がる砂と石、吹き飛ばされる男。
即座に身を翻し、マキナで壁を張る。
直後、マキナの壁を穿いて来たのは矢。
表面をあえて凸凹にしてあるマキナに当たったことで、射線が曲がったのだろう。矢は俺の真横につき立った。
「うっそだろ…厚さ五センチはあるぞ」
『後続・来ます』
「マジか!!」
金剣銀剣は目立ちすぎて抜けない。点の攻撃である矢を受け止めるのは髪じゃまず無理。
何?ゼランバで頭を銃弾で撃たれても大丈夫だったろうって?馬鹿野郎、あれはむしろレアケースだ。普通なら頭が割れて死んでたよ。
とか言っているうちに土砂が地面に落ち、視界が晴れる。
限界まで強化した緋眼で見えたのは校舎の上に立つ弓を持ったシルエット──と、もう一人。
強化した緋眼ならこの距離でも余裕でわかる。
あのもう一人の方、馬鹿みたいな膨大な量の魔力を同時に複数の魔法に込めてやがる。
あと五秒もしないうちに、ここら一帯は荒野から焦土へと変わる。
「くっ!」
マキナを全身に装備。一か八かやるしかない。
『第二射──射出』
正確に俺へと飛んできた矢は恐ろしく早く、俺の予想より遥かに早かった。
が、そっちの方がありがたい。
右手で払うようにして軌道を再びずらし、地面と平行になるように飛ばす。
同時にマキナを矢にくくりつけ、さらに重力魔法を最大展開し、俺の身体を限界まで軽くする。
あとはタイミングよくジャンプするだけで──ほら。
超速で俺を引っ張ってくれる素敵な乗り物の完成だ。
「それじゃあな!ありがとう!」
半ば皮肉でそう言いはしたものの…さて。聞こえていただろうか。
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