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本編
光と夢
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泥沼のような、深く、暗く、それでいてどこか暖かい安心感の中に沈んだまま、ずっとたゆたっていた。
時折、ちかちかと眩しい光と共に音や映像が俺の目の前に浮かんでは消えていく。
大半は、俺の記憶。
初めてナナキと魔獣を倒した時。
魔獣に一撃もらって、苦痛に喘いでいた時。
倒した魔獣から使えそうな所を持って帰り、ナナキと一緒に何に使えるか、とか考えた時。
そして──聖女サマと初めて会った時。
そんなありきたりだった毎日とありきたりではない日が浮かんで、俺を抜いてゆっくりと上に浮かんでいく。
やがてその光は、学校に来た頃の俺の記憶になっていく。
必死こいて走った試験だとか。
鍵戦争でひたすら大勢倒した時だとか。
班のみんなと会った時だとか。
森に一度帰って、ナナキに会った時。
そして──あの魔族との日。
ゆっくりと浮かんでは消えていっていた光は、だんだん加速し、泥沼の中を浮かぶのではなく、明確な意思を持って昇っていく。
早く、早くと。
まるで、ここにいちゃ帰れなくなると言わんばかりに。
ただただ浮かんでいた俺も、いつの間にか、かなりの速度で表面へ目指して浮上していく。
当然、今さっき俺の横を抜いていった光に追いつき、さらに今度は俺が抜いていく。
そうすれば、今まで見ていた光を逆に見ていくこととなる。
あの日から始まり、ナナキに再会、班のみんなと出会って鍵戦争。
俺はどんどん加速していく。
試験を受けて聖女サマに会って何に使えるか考え、苦痛に喘ぎ、魔獣を倒す。
さらに古い記憶へと遡り、俺すら知らない俺の記憶に辿り着き、一度全ての光が消えた。
が、しかし。
昇っていく光はまだ消えない。
俺の知らない膨大な光は、恐らく他の《勇者》達の記憶だろうと何となく察しがついた。
白銀に輝いていた俺の記憶と違い、赤、青、緑、黄色や、金色に輝く光、弱々しく灯る群青、明滅を繰り返す紫の光。
種類もさることながら、数も非常に多い。
死んだ者の記憶だと言うのに…いや、だからだろうか?非常に神秘的で、美しい。
少しばかり覗こうかとも思ったが、即座にやめた。
俺だって自分の記憶を覗かれていい気分はしないし、死んだ後だって嫌だ。
そっと離れ、さらに浮上をしていく。
薄らと記憶の光と違う、外の光が目を刺激し始めた頃、今まで何度も見た記憶を初めて見た。
金の髪を持った、美しい少女。
俺に背中を向けているのに、絶対に彼女を見ると心を奪われる、そう直感した。
無数の屍の築く山の上に立っていた彼女は血に濡れ、それが自分のものなのか、それとも屍の下にあるモノから浴びたものなのか分からないほど、区別がつかないほどに浴びている。
そんな中、その金の髪だけが美しく風に揺れ、何故だか非常に幻想的に見える。
いくらか見蕩れていると、彼女がこちらを振り向かずに、屍を踏みながら、見おろしながら俺に向かって言葉を発した。
──────もう、殺してください。
その言葉に俺が何かを返す前に。
俺の意識は浮上しきってしまった。
時折、ちかちかと眩しい光と共に音や映像が俺の目の前に浮かんでは消えていく。
大半は、俺の記憶。
初めてナナキと魔獣を倒した時。
魔獣に一撃もらって、苦痛に喘いでいた時。
倒した魔獣から使えそうな所を持って帰り、ナナキと一緒に何に使えるか、とか考えた時。
そして──聖女サマと初めて会った時。
そんなありきたりだった毎日とありきたりではない日が浮かんで、俺を抜いてゆっくりと上に浮かんでいく。
やがてその光は、学校に来た頃の俺の記憶になっていく。
必死こいて走った試験だとか。
鍵戦争でひたすら大勢倒した時だとか。
班のみんなと会った時だとか。
森に一度帰って、ナナキに会った時。
そして──あの魔族との日。
ゆっくりと浮かんでは消えていっていた光は、だんだん加速し、泥沼の中を浮かぶのではなく、明確な意思を持って昇っていく。
早く、早くと。
まるで、ここにいちゃ帰れなくなると言わんばかりに。
ただただ浮かんでいた俺も、いつの間にか、かなりの速度で表面へ目指して浮上していく。
当然、今さっき俺の横を抜いていった光に追いつき、さらに今度は俺が抜いていく。
そうすれば、今まで見ていた光を逆に見ていくこととなる。
あの日から始まり、ナナキに再会、班のみんなと出会って鍵戦争。
俺はどんどん加速していく。
試験を受けて聖女サマに会って何に使えるか考え、苦痛に喘ぎ、魔獣を倒す。
さらに古い記憶へと遡り、俺すら知らない俺の記憶に辿り着き、一度全ての光が消えた。
が、しかし。
昇っていく光はまだ消えない。
俺の知らない膨大な光は、恐らく他の《勇者》達の記憶だろうと何となく察しがついた。
白銀に輝いていた俺の記憶と違い、赤、青、緑、黄色や、金色に輝く光、弱々しく灯る群青、明滅を繰り返す紫の光。
種類もさることながら、数も非常に多い。
死んだ者の記憶だと言うのに…いや、だからだろうか?非常に神秘的で、美しい。
少しばかり覗こうかとも思ったが、即座にやめた。
俺だって自分の記憶を覗かれていい気分はしないし、死んだ後だって嫌だ。
そっと離れ、さらに浮上をしていく。
薄らと記憶の光と違う、外の光が目を刺激し始めた頃、今まで何度も見た記憶を初めて見た。
金の髪を持った、美しい少女。
俺に背中を向けているのに、絶対に彼女を見ると心を奪われる、そう直感した。
無数の屍の築く山の上に立っていた彼女は血に濡れ、それが自分のものなのか、それとも屍の下にあるモノから浴びたものなのか分からないほど、区別がつかないほどに浴びている。
そんな中、その金の髪だけが美しく風に揺れ、何故だか非常に幻想的に見える。
いくらか見蕩れていると、彼女がこちらを振り向かずに、屍を踏みながら、見おろしながら俺に向かって言葉を発した。
──────もう、殺してください。
その言葉に俺が何かを返す前に。
俺の意識は浮上しきってしまった。
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